不要な不動産の処分はどうする?処分方法や費用について徹底解説

空き家や相続で不要となっている不動産を処分したい方に向けて、本記事では不動産の処分方法や処分費用、事前準備について解説しています。
本記事を読むと、不動産を処分しなければ今後直面するであろうデメリットも含めて不動産処分について網羅的に学べるため、不要な不動産の処分にお困りの方は、ぜひ参考にしてください。

不要な不動産の処分方法は?

この章では、不要な不動産の処分方法として、主に3つの方法を紹介します。

  • 仲介売却
  • 相続放棄
  • 寄付

処分方法

メリット

デメリット

仲介売却

仲介手数料を払うだけで売却までできる

仲介手数料がかかる

 

相続放棄

相続税などを支払わずに土地を放棄できる

そのほかの相続できるものも放棄しなければならない

寄付

寄付した先によって税金がかからないなどのメリットがある

需要がない土地であれば寄付自体ができない可能性もある

それでは、1つずつ解説していきます。

方法1:不動産仲介で売却

不動産の処分方法として最もポピュラーなものは、不動産仲介での売却です。

不動産仲介で売却できれば利益にもつながるため、一番良い処分方法でしょう。

不要な不動産を売却するときに注意するポイントとしては、以下の2つがあります。

  • 建物がある場合は、解体の有無
  • 売り出し価格の適切な価格になっているか

空き家となっている場合には、解体の有無で解体費用の発生や諸経費なども多くかかることが予想されます。

しかし、少しでも高く売却したいからといって、相場よりも高い価格を設定してしまうと売れ残ってしまう恐れがあります。

「売れない」を避けるためには、不動産会社との連携が不可欠なため、しっかりとコミュニケーションを取り、相談しながら進めましょう。

方法2:相続放棄

不要な不動産を相続するのであれば、相続放棄も一つの選択肢として持っておくと良いでしょう。

相続放棄をするには、相続を知った時点から3ヶ月以内に家庭裁判所に対して申し立てを行う必要があり、時間が限られています。

また、手続きには専門的な知識がいるため、弁護士や司法書士などに依頼する必要があります。

相続放棄をすると、そのほかすべての相続も放棄しなくてはなりません。

不動産以外のプラスの財産も放棄してしまうことになるため、十分に考えて相続放棄を検討しましょう。

方法3:寄付

不動産処分の方法として、上記1.2が使えない場合、寄付するのも一つの選択肢として挙げられます。
寄付先は大きく分けて以下の3つです。

  • 自治体の寄付
  • 個人への寄付
  • 法人への寄付

自治体への寄付

自治体への寄付は、自治体ごとの条件をクリアする必要があります。

自治体としては、用途がない不動産の寄付を受けても、管理コストがかさむだけなため、厳しい条件設定になっている場合があり、断られるケースもあることを把握しておきましょう。

個人への寄付

利用してくれる個人への寄付もできます。しかし、贈与となるため贈与される側が贈与税を支払わなければなりません。

また、土地を個人に寄付する場合は、贈与契約書の締結も必要となります。

法人への寄付

法人への寄付は、寄付する側(処分したい方)に譲渡所得税が課される可能性があります。

寄付したときの時価で譲渡があったものとみなされ、不動産の取得時から寄付時までの値上がり益に対して所得税が課税されます。

ちなみに、お寺や神社、学校などの公益法人への寄付は、社会貢献とみなされて譲渡所得税が免除となります。

不動産を売却して処分する際の費用はどのくらい?

不動産を売却処分する際の費用について解説していきます。

売却処分にかかる主な費用としては、下記の4つがあります。

  • 仲介手数料
  • 譲渡所得税
  • 解体費用
  • 測量費用

 

費用

仲介手数料

売買価格×3%+6万円+消費税

譲渡所得税

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(一定の場合)= 課税譲渡所得金額

5年以下 短期譲渡所得 39.63%(所得税30.63%、住民税9%)

5年以下 長期譲渡所得 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

解体費用

100200万円

測量費用

官民立ち会いの必要な測量費用が6080万円

官民立ち会いの不要な測量が3545万円

1つずつみていきましょう。

費用1:仲介手数料

仲介手数料とは、不動産取引が成立した際に、契約から決済・引き渡しまでサポートしてくれた不動産会社に支払う手数料です。

不動産の売買契約が成立時に、不動産会社に成功報酬として支払われます。

400万円以上の不動産取引を行った場合、仲介手数料を算出する計算式は「売買価格×3%+6万円+消費税」です。

あくまで、宅地建物取引業によって定められているものは上限額であるため、仲介手数料をゼロにできる可能性もあります。

とはいえ、仲介手数料は不動産会社の売上になるため、上限額で請求するのが一般的です。

また、400万円以下の場合とあわせて、仲介手数料上限の計算方法を以下の表にまとめました。

売買価格

計算方法

200万円以下の場合

物件価格×5%+消費税

200万円超400万円以下の場合

物件価格×4%+2万円+消費税

400万円超の場合

物件価格×3%+6万円+消費税

たとえば、200万円の不動産取引を行った場合、200万×5%+消費税となるため仲介手数料は、11万円が上限額になります。

また、3,000万円の不動産取引を行った場合、3,000万×3%+6万円+消費税となるため、仲介手数料は、105万6,000円となります。

費用2:譲渡所得税

不動産を売却し、得た譲渡所得には、ほかの所得とは分離して住民税と所得税(2037年まで復興特別所得税を含む)が課せられます。

この際に課せられる住民税と所得税と復興特別所得税を譲渡所得税といいます。

譲渡所得税を計算するためには、譲渡所得金額を算出しなければなりません。

譲渡所得金額の計算方法は、下記の通りです。

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(一定の場合)= 課税譲渡所得金額

不動産の取得費は、不動産購入にかかった金額と購入のために必要だった経費が含まれ、これらを合算した金額が取得費です。

また、売却時に利用できる特例などがあれば、控除額を差し引けます。

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間が5年以下か5年超かによって異なり、5年以下の所有期間で売却する場合は短期譲渡所得、5年超で売却する場合は長期譲渡所得として扱われます。

税率は次の通りです。

期間

税額

5年以下

短期譲渡所得 39.63%(所得税30.63%、住民税9%)

5年超

長期譲渡所得 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

譲渡所得税について、詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
不動産売却でかかる譲渡所得税を徹底解説!計算方法と5つの特例もご紹介

費用3:解体費用

解体工事は、大きく分けて2種類の費用に分けられます。

①建物解体工事費用
建物を取り壊す費用です。解体する建物面積に解体坪単価をかけて算出します。
解体費用は、主に以下項目によって金額が異なってきます。

  • 建物の構造
  • 敷地の広さ
  • 地域
  • 前面道路幅
  • 立地条件

上記の項目によって、重機や人件費、産廃費などの解体費用が変わってきます。

②付帯工事費用
建物以外の付帯設備の処理や残置物撤去などの費用です。
付帯工事として分類される工事は、下記の通りです。

  • 残置物の処分
  • 植木の抜根
  • ブロック塀
  • 倉庫・物置の撤去
  • 井戸や池の埋め戻し
  • 庭石の撤去

解体工事は依頼業者によって金額差が大きくなるため、見積書はしっかりと確認するようにしましょう。

空き家の解体について、詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
空き家の解体にかかる費用は?費用を抑えるコツや補助金について知っておこう

費用4:測量費用

不動産の売却において、最も多いトラブルは境界のトラブルでしょう。

境界トラブルは最悪の場合、訴訟にまで発展する恐れがあります。

測量をするためには、土地家屋調査士や測量士に依頼するのが一般的です。

測量にかかる費用の相場は、土地の広さや接道状況によって変わります。

たとえば、100~200平米の土地で、官民立ち合いの場合は60〜80万程度。
官民不要であれば35〜45万円程度が相場となります。

測量にかかる期間としては、3ヶ月程度かかる場合が多いです。

不動産の売却前には必ず測量し、境界を確定してから売却するようにしましょう。

不動産を処分せず放置しておくデメリットとは

この章では、不動産を処分せずに放置しておく4つのデメリットについて解説していきます。

  • 固定資産税がかかる
  • 特定空き家に認定されるリスクがある
  • 資産価値の低下
  • 倒壊リスクが高い

数年後・数十年後に再開発で土地の価値が上がる可能性があるかもしれませんが、不動産を処分せずに放置しておいてもさまざまなリスクが伴います。処分や有効活用を視野に入れて行動しましょう。

①固定資産税がかかる

不動産は所有している限り、固定資産税や都市計画税が毎年かかります。

まったく使っていない不要な不動産の場合、固定資産税は無駄なコストなため、売却や有効活用の検討が必要です。

固定資産税や都市計画税は具体的にどれくらいの税金が毎年かかるのか、算出方法をみてみましょう。

  • 固定資産税:課税標準×1.4%
  • 都市計画税:課税標準×0.3%

※市区町村によって税率が異なるため、ホームページや役所で確認が必要です。

上記の計算方法は土地にかかる計算方法です。

建物がある土地だと、固定資産税が最大6分の1になる特例が適用できます。

ただし、空き家で、適切な管理がされていないと特定空き家に認定されるリスクがあり、特例の適用を受けられなくなる恐れがあります。

②特定空き家に認定されるリスクがある

特定空き家とは、国土交通省が示している基本指針の4項目のいずれかに該当する空き家をいいます。

  • 倒壊などの著しく保安上危険となる恐れがある状態
  • 著しく衛生上有害となる恐れがある状態
  • 適切な管理が行われず、著しく景観を損なっている状態
  • そのほか周辺の生活環境の保全を図るために、放置する行為が不適切である状態

また、空き家と判断する基準は、次の要素を考慮して判断されます。

  • 水道やガス、電気などが1年を通して使用していない
  • 1年以上人の出入りがない

空き家対策特別措置法の施行により、特定空き家の認定を受けた空き家は、固定資産税が最大6分の1になる特例が適用できなくなりました。

固定資産税を6分の1に軽減する軽減措置対象から外れてしまうため、大幅な増税となってしまいます。

例)空き家の敷地面積が200平米以下、課税標準額が【建物】700万円【土地】1,500万円だった場合

特例あり
【建物】700万×1.4%(税率)=9万8,000円
【土地】1,500万×1/6(住宅用地の特例措置による減額)×1.4%(税率)=3万5,000円
合計13万3,000円

特定空き家に認定(特例なし)
【建物】700万×1.4%(税率)=9万8,000円
【土地】1,500万×1.4%(税率)=21万円
合計30万8,000円

年間17万5,000円多く払う必要があり、年4回の支払いでは1回あたり約4万円の支払い増となります。

空き家となっている土地を持っている方は、注意が必要です。

③資産価値の低下

当然ながら建物を放置しておくと、年々資産価値が低下してしまいます。

公益財団法人不動産流通推進センターの価格査定マニュアルによると、建物の査定は経過年数やリフォームなどの維持管理状況を踏まえて建物価格を決定しています。

そのため、建物を建ててある程度経過し、メンテナンスを怠っていると、想像以上に資産価値は低下してしまう恐れがあるようです。

また、不要な不動産である場合は、メンテナンスがされていないと予測され、建物の資産価値はない可能性が高いでしょう。

将来的に手放す予定があれば、一度査定をしてもらうのをおすすめします。

④倒壊リスクが高い

空き家などの不動産は、倒壊のリスクが高くなってしまいます。

古い建物は旧耐震基準で建てられたものがあり、大きな地震で倒壊してしまう可能性があります。

倒壊する恐れがある不動産を所有していることで、近隣住民や所有者におよぶ主なリスクは下記の通りです。

  • 空き家の外壁やガラスなどが落下して、通行人にけがをさせてしまう
  • 外壁や屋根がはがれて、隣家に被害がでてしまう
  • 害虫や野良犬、野良猫の住処になって、近隣トラブルに発展する

建物の倒壊や壁の落下などの瑕疵が原因で、人やものに損害を与えてしまった場合、建物所有者が賠償請求される可能性があります。

不要な不動産を所有し続けるデメリットは大きいといえるでしょう。

不動産を処分する際の5つの事前準備

それでは、不要な不動産を処分するには何から進めていけば良いのでしょうか。

不動産を処分する際に必要な事前準備を5つ紹介していきます。

  • 土地境界線を明確にする
  • 必要書類を収集
  • 相続した土地は登記を確実に行う
  • 不動産の相場を把握する
  • 売却を依頼する不動産会社の選定

それぞれ確認していきましょう。

準備1:土地境界線を明確にする

事前準備の1つ目として、土地境界線を明確にする必要があります。

土地境界線を明確にして得られるメリットは、以下の通りです。

  • 土地を高く売却できる
  • ローンを組みやすくなる

土地境界線が曖昧だと、2つのメリットが生きないため、境界線をはっきりさせておくことは非常に重要です。

また、土地の境界線を調べる方法としては、下記の4つがあります。

  • 登記事項証明書を確認
  • 測量士に依頼する
  • 土地家屋調査士に依頼する
  • 筆界特定制度を利用する

なお、境界線が分かっている場合は、この事前準備は必要ありません。

準備2:必要書類を収集

不動産を売却処分する場合には、さまざまな書類が必要となってきます。

いざ売却するときに急いで必要な書類を集めようとしても、慣れていないために時間がかかってしまうかもしれないので、事前に準備できる書類は揃えておくと良いでしょう。

不動産売却に関する必要書類は、下記の通りです。

  • 登記済証・登記識別情報通知
  • 間取り図
  • 固定資産税納税通知書・固定資産税評価証明書
  • 印鑑証明書
  • 建築確認済証・検査済証
  • マンションの管理規約、使用細則
  • 地積測量図、境界確認書
  • 本人確認書類
  • 耐震診断報告書、アスベスト使用調査報告書
  • 維持費が分かる書類
  • 住民票
  • 建築設計図書、工事記録書
  • ローン残高証明書
  • 銀行口座書類、通帳

あらかじめ必要書類を準備しておくと、売却するとなったときにスムーズに進められます。

準備3:相続した土地は登記を確実に行う

相続した土地の場合、登記は確実に行っておきましょう。

なぜなら、相続時に登記を相続人に変更していなければ、所有権移転登記ができていないため、売買ができないからです。

売却は相続登記を終わらせてからでないと行えないため、その分無駄に売却期間が長くなってしまいます。

所有権移転登記が済んで、名義変更されていれば売買ができるため、相続した不動産は確実に登記を済ませておきましょう。

準備4:不動産の相場を把握する

不動産を売却する際には、相場を知らなければ適切な価格での売却は難しいといえます。

相場を知るためには、近隣の売却価格を調べて売却価格の参考にするのも良いでしょう。

自分で相場を把握する方法を2つ紹介します。

①国土交通省の「不動産取引価格情報検索」
不動産の取引価格、地価公示・都道府県地価調査の価格を検索できる国土交通省のWEBサイトです。

②レインズマーケットインフォメーション
指定流通機構が保有する、不動産の成約価格などの取引情報を公開しているもの。
一般の消費者が相場を適切に把握して、安心して不動産取引を行えるようにとの観点から開発されたシステムです。

準備5:売却を依頼する不動産会社の選定

売却を依頼する不動産会社の選定は、売却価格を左右する非常に大事なポイントです。

そのため、選定するには、複数社に査定を依頼して、売却を依頼する不動産会社を決める方法が良いでしょう。

複数社に査定依頼することで、相場も掴めます。

とはいえ、1社1社問い合わせをして、査定の依頼をするとなると時間も手間もかかってしまいます。

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不要な不動産は早めの処分で負担軽減を

本記事では、不要な不動産の処分に関する費用や処分方法、放置しておくデメリット、事前準備に必要な書類や準備について紹介しました。

記事で解説したように、不要な不動産を所有し続けることにはデメリットが多くなっています。

相続したものの不要な不動産や長い間放置している空き家などがある場合は、なるべく早くに手離してしまうほうが良いケースが多いでしょう。

処分する方法は1つではないため、処分方法を検討し、不要な不動産は早めに処分して負担を軽減させましょう。

Q .曽祖父の代から所有している土地で、売却しようと登記簿を確認したところ、相続登記がされていない状態でした。この場合どうやって相続登記を行うのでしょうか?
A.相続登記をする場合、家系図を作成する必要があります。作成した家系図をもとに、当時の民法に従って相続人を確定しなければなりません。そのあと、相続分の算定などを経て、相続登記ができる状態になります。こういったケースでは、個人で相続登記は難しいため、専門家に依頼しましょう。

Q.不動産を処分する際に、寄付先として国への寄付はできませんか?
A .基本的に国は土地の寄付を受けつけていません。
ただし、2023年よりスタート予定の「国庫帰属制度」を利用できれば、寄付できる可能性があります。しかし、承認申請の条件が厳しく、申請が通ったとしても10年分の費用を納めなければなりません。国庫帰属制度を利用した不要な土地の寄付は、ハードルが高いといえます。

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