実家の相続などで空き家を所有していると、税金や維持費の支払いに頭を悩ませてしまうことがあるでしょう。この記事では空き家を持ち続けるデメリットや具体的な売却の流れ、費用面などを解説します。
空き家を売却する3つの方法
空き家を売却する方法として、大きく分けると「古家付き土地としてそのまま売却」「空き家を解体して更地で売却」「不動産会社に買取してもらう」の3つがあります。それぞれの方法について詳しく解説します。
①古家付き土地としてそのまま売却
建物は築年数が古くなると劣化が進んでしまうため、資産価値は低下していきます。木造戸建ての物件であれば、築25年以上が経過していると不動産会社によっては資産価値がほとんどないと判断する場合もあるでしょう。
しかし、購入希望者側の視点からみれば、古家ならリフォームやリノベーションを自由に行えるメリットがあります。古家付き土地として一定のニーズがあるため、そのまま売り出してみるのも1つの方法です。
売主としても建物の解体が不要であるため、費用や手間がかかりません。不動産会社と相談をしたうえで、1つの選択肢として考慮してみましょう。
②空き家を解体して更地で売却
古家付き土地として売り出しても思うように買主がみつからないときは、解体費用はかかりますが空き家を解体して更地の状態で売却する方法もあります。更地のほうが購入者は自由に建物が建てられるため、早期に買主が現れる可能性が出てきます。
更地であれば土地の広さのイメージが湧き、売主としても建物の内覧を行う必要がありません。ただし、土地によっては再建築不可の場合もあるため注意が必要です。
再建築不可の土地であれば、更地にしてしまうと新たに建物を建てられないため、解体前によく確認しておくことが大切だといえます。
➂不動産会社に買取してもらう
仲介による売却ではなく、不動産会社に直接買取を行ってもらう方法があります。新たに買主をみつける必要がないため、急な住み替えなどで早期に売却する必要がある場合におすすめの方法です。
売却価格は市場価格の7割程度になってしまう可能性もありますが、契約条件や金額に合意できればすぐに決済が行えます。相手が不動産会社であるため、契約不適合責任を負うこともなく、仲介手数料もかからないため多くのメリットがあります。
ただし、すべての物件について買取を行っているわけではないため、買取を希望するときは早めに不動産会社に相談をしてみましょう。また、「空き家の買取」について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
空き家を売却しないことによる3つのデメリット
空き家を解体しないまま所有し続けていると、多くのデメリットが生じてしまうため注意が必要です。ここでは、デメリットとして考えられる3つのポイントを解説します。
- 維持費がかかり続ける
- 特定空き家に指定される
- 近隣迷惑になる可能性がある
①維持費がかかり続ける
物件を所有し続けているかぎり、所有者は毎年固定資産税を支払う義務を負います。築年数が古い建物の固定資産税は低くなりますが、土地に対しても税金はかかるため常にコストが発生することになるでしょう。
また、誰も住んでいなくても水道光熱費の基本料金や火災保険・地震保険などの保険料もかかります。将来的に住む予定があればコストを負担する意味もありますが、特に住む予定がなければ売却してしまったほうが負担の軽減につながるでしょう。
空き家を売却することで、維持費がかからなくなるため今後の予定も踏まえたうえで売却を検討するのがおすすめです。
②特定空き家に指定される
空き家の維持管理を行わないまま放置してしまうと、自治体によっては「特定空き家」に指定される場合があります。草木が生い茂ったり、建物の劣化が進んでいたりすると近隣住民への悪影響があるとみなされ、ペナルティが課せられてしまうことがあります。
特定空き家の指定を受けると、空き家として優遇されていた固定資産税の軽減措置が受けられなくなり、税負担が重くなる恐れがあります。自治体からは物件の所有者に対して、空き家の修繕を行うように助言・指導・勧告・命令といった措置が取られる場合があるため注意しましょう。
自治体によっては空き家を解体するための費用を補助してくれるところもあるため、空き家の取り扱いに困っているときは早めに相談をすることが大切です。
③近隣の迷惑になる可能性がある
空き家を持ち続けていると、近隣住民の迷惑になる場合があります。発生しがちな悪影響としては、次のようなものが挙げられるでしょう。
- 空き巣や放火などの犯罪に使用される危険性が高まる
- 地域の景観を損なってしまう
- 建物の破損・倒壊、屋根材や外壁の飛散・落下の危険がある
- 害虫の発生源となってしまう
- 野良犬・野良猫などが集まる など
近隣住民とのトラブルに発展すれば、物件を売却する際に支障が出てしまう恐れもあります。遠方にある空き家は維持管理を行いたくても実際には難しい面があるため、早めに売却することを検討するのも1つの方法です。
空き家売却の流れ【全7ステップ】
空き家をスムーズに売却するには、全体的な流れをきちんと把握しておくことが大切です。主に7つのステップを経て売却活動を進めることになるため、それぞれのポイントをしっかり押さえておきましょう。
空き家を売却するときの7つのステップ
- 査定依頼
- 売買仲介を依頼・媒介契約を結ぶ
- 売り出し価格を決めて販売活動
- 買主と条件交渉
- 売買契約の締結
- 決済・引き渡し
- 確定申告
①査定依頼
空き家を売却する際はどれくらいの金額で売却できるのかを知るために、まずは不動産会社に査定依頼を行います。不動産の査定は基本的に無料で行ってもらえるため、売却を検討するときは気軽に申し込んでみましょう。
査定方法としては、依頼者が提供した物件情報をもとに査定を行う「机上査定」と、不動産会社の担当者が実際に現地を訪れて査定する「訪問査定」の2種類があります。不動産会社に査定依頼を行うことで、「空き家のまま売却できるか」「更地にしたほうが売却しやすいか」など気になる点を直接質問できます。
査定依頼を行うときのポイントは、はじめから1社に絞り込んでしまうのではなく、複数の会社に依頼する点が挙げられます。できるだけ多くの不動産会社から査定額を提示してもらうことで、適切な相場を把握することにつながるでしょう。
ただし、1社ごと個別に問い合わせを行うのは時間や手間がかかります。不動産の一括査定サイトを利用すれば、入力フォームに沿って物件情報などを打ち込むだけで、一度に複数の会社に査定依頼を行えます。
査定額を把握してから売却するかどうかの判断を行っても問題ないため、まずは気軽に査定を受けてみましょう。
②売買仲介を依頼・媒介契約を結ぶ
不動産の一括査定サイトを通じて知り合った不動産会社のなかから、気に入ったところに物件の売買仲介を依頼します。担当者が丁寧に対応してくれて、売却の提案などが熱心な会社を選ぶとスムーズです。
仲介を依頼する会社とは媒介契約を結ぶことになるため、売却にあたって必要な準備やどのような流れで売却活動を進めてもらえるのかを確認しておきましょう。契約形態によって複数の会社と媒介契約を結べたり、1社としか結べなかったりするため自分に合った方法を選んでみてください。
➂売り出し価格を決めて販売活動
不動産会社と媒介契約を締結したら、次に査定額や相場をもとに担当者と物件の売り出し価格を決めていきます。売主としてはできるだけ高く売却したいという気持ちが働きますが、相場とかけ離れた金額を設定しても思うように買主が現れないため、担当者のアドバイスを交えながら適正な価格設定を行いましょう。
物件の販売活動そのものは不動産会社が行います。物件情報をレインズに登録し、Webやチラシなどで広告宣伝を行って買主を募ります。そのため、売主のほうで取り組むことはほとんどありません。
購入希望者が現れたら、物件の内覧が必要になる場合もあるため、担当者とスケジュールなどを調整しましょう。
④買主と条件交渉
物件の買主が現れたら、売買にあたって条件面や金額などをすり合わせます。不動産はまとまった金額の買い物となるため、買主から価格交渉を打診されるケースが多いといえるでしょう。
売却価格については、どのあたりまで譲歩できるのかを事前に決めておくとスムーズです。不動産会社の担当者の意見も聞きながら、売却価格や条件を調整してみましょう。
⑤売買契約の締結
売却価格や条件面で売主と買主双方の合意が得られたら、売買契約を締結します。売買契約書の作成は不動産会社が行ってくれるため、書面の内容に問題がないかを確認してみてください。
また、売買契約を交わす際には買主から手付金として、物件価格の10%程度が支払われます。手付金は代金の一部として充てられるものですが、途中で契約解除となる場合もあるため、物件の引き渡し時までは手元に保管をしておくほうが無難です。
⑥決済・引き渡し
売買契約書で定めた引き渡し日に、残金の決済を行います。スムーズに決済と物件の引き渡しを行うには事前に準備すべき書類などもあるので、早めに担当者からどのような書類が必要であるかを聞いておきましょう。
引き渡しの当日は、売主・買主・司法書士・不動産会社の担当者が集まって手続きを行います。基本的に司法書士などの指示に従って手続きを進めれば問題はなく、残金を受領して物件を引き渡します。
⑦確定申告
物件を売却した翌年には、確定申告を行って納付すべき税金があれば、期日までに支払いを行う必要があります。空き家を売却して利益が出たときはもちろん、売却損が発生した場合でも税金の特例制度が利用できることがあるので、確定申告を行うほうが良いでしょうす。
確定申告の時期は毎年2月中旬から3月中旬となっており、物件の所有期間などによって税率は異なります。売却代金(譲渡価格)そのものに税金がかかるのではなく、物件を購入したときにかかった費用(取得費)や売却にかかった費用(譲渡費用)を差し引いた金額に課せられます。
申告期限を過ぎてしまうと、加算税や延滞税が課せられてしまう場合があるので、早めに必要書類を準備して確定申告を行いましょう。
空き家売却にかかる費用
空き家を売却するときにかかる主な費用は、「仲介手数料」と「解体費用」です。それぞれの費用についてみていきましょう。
仲介手数料
仲介手数料とは、物件の売買契約が成立した際に不動産会社に報酬として支払う費用のことです。売買が成立しなければ支払う必要はなく、宅建業法によって以下のように上限額が定められています。
売却価格 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下 | 売却価格×5%(税別) |
200万円超400万円以下 | 売却価格×4%+2万円(税別) |
400万円超 | 売却価格×3%+6万円(税別) |
たとえば、不動産の売却価格が4,000万円であった場合、「4,000万円×3%+6万円+12万6,000円(消費税)=138万6,000円」が仲介手数料の上限となります。仲介手数料は売却にかかる費用としては大きな割合を占めるものなので、大まかな目安を把握して準備をしておきましょう。
解体費用
空き家を解体して更地にするには、専門会社に支払う費用が必要になります。建物の広さや仕様などによって費用は異なりますが、相場としては木造戸建ての場合で1坪あたり3~4万円程度かかるケースが多いといえます。
たとえば、35坪の広さであれば105~140万円程度がかかる計算です。解体費用を考慮したうえで、物件を売却したときに手元にどれくらいの費用が残るのかを把握しておきましょう。
空き家売却にかかる税金
空き家を売却したときにかかる税金として、譲渡所得税・登録免許税・印紙税が挙げられます。それぞれの税金がどのようなものであるかを解説します。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、所得税・復興特別所得税・住民税の総称です。空き家を売却して利益が出た場合には譲渡所得税を納める必要があります。
税率は一律ではなく、物件の所有期間によって異なります。所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)です。
所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得税」となり、税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)です。相続した物件を引き継ぐ場合には、親が所有していた期間もカウントされます。相続人が相続をしてから5年以下で売却を行ったとしても、親の所有期間が5年超であれば長期譲渡所得となります。
登録免許税
登録免許税とは、不動産の所有権を登記する際や抵当権を設定する際にかかる税金のことです。売買契約が成立して、買主に所有権を移すときに発生します。
一般的には司法書士に登記手続きを依頼する場合が多いため、税金を負担しているという感覚が薄くなりがちですが、費用としてかかっていることを押さえておきましょう。
印紙税
売買契約書を交わすときには、契約金額によって定められた印紙税を納める必要があります。具体的には売買契約書に収入印紙を貼ることであり、売主側が負担するのが一般的です。
納めるべき印紙税は、以下のとおりです。なお、2022年3月31日までは軽減税率が適用されるため、通常よりも税負担は軽減されています。
空き家を売却する時の注意点
契約金額 | 印紙税額(通常) | 軽減後税率 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億万円以下 | 6万円 | 3万円 |
空き家を売却するときに注意しておきたい点として、名義人の確認や建物を解体するタイミングなどが挙げられます。事前によく確認しておかなければ、余分なコストがかかることもあるためスムーズに売却を進めるためのポイントとして押さえておきましょう。
空き家の名義人を確認する
両親が住んでいた家を相続した場合などは、名義人が誰になっているかを確認しておきましょう。空き家を売却しようとしても、実際に売買契約を結べるのは名義人本人だけとなっているからです。
つまり、親やほかの人の名義のままだと空き家を売却できないため気をつけましょう。売却を進めようとする前に、法務局に出向いて相続登記を行う必要があります。
解体の判断は査定を依頼してからにする
建物の解体はすぐに行おうとするのではなく、不動産会社に相談をしてから決めましょう。物件によっては、空き家として残したまま売却するほうが良い場合もあるからです。
建物を解体せずに売却できるのであれば、その分の費用や手間がかかりません。自分の考えだけで判断してしまうのではなく、不動産会社の担当者からアドバイスを受けたうえで判断しましょう。
売却も検討して、空き家にかかる負担を減らそう
空き家をそのまま所有し続けると、固定資産税や保険料など物件を維持するためのコストがかかり続けます。そのため、将来的に住む予定がなければ、早めに売却を進めるほうが負担の軽減につながるでしょう。
空き家を解体して売却するか、そのままの状態で売り出すかは不動産会社の意見を聞くことが大切です。不動産の一括査定サイトを通じて、細かな質問にも丁寧に対応してくれる会社をみつけましょう。
Q.解体して更地にするタイミングってありますか?
A.空き家を更地にすると、住宅用地に適用されていた固定資産税の軽減措置が外れてしまい、固定資産税が高くなります。土地の上に住宅が建っている事実は1月1日時点で決定されます。
1月1日に建物が残っているとみなされ、1年間は軽減措置が適用されるのです。そのため、解体して更地にするタイミングとしては、1月2日以降が良いでしょう。
Q.空き家をそのまま売却するとしたらどれくらいの期間で売れる?
A.空き家の状態や立地によりますが、空き家は時間がかかるものと考えておいたほうが無難でしょう。新築物件を好む日本人の特性として、古家を積極的に購入したいと考える買い手は多くありません。空き家のまま売却するのか、更地にして売却するのか不動産会社の意見も参考にして進めてみましょう。