転勤やライフステージの変化による住み替え、離婚の財産分与のためなど、家を売る理由は人それぞれです。中には家を相続したけれども、自分は住まないから売りたいという方もいるでしょう。
マイホームは一生に一度の大きな買い物といわれますが、家を売るのも人生でそう何度もあるわけではありません。いざ家を売却する必要が出てきたとき、何をどうすればいいのか分からなくても当然です。
この記事では家を売るための手順や流れについて、事前に必要な準備から売却後の確定申告に至るまで全体像を解説します。家を売却するにあたって知っておきたい知識も解説するとともに、売却時にありがちな疑問についても回答しますので参考にしてください。
1.家を売る手順・全体像を理解しよう
家を売却するためには事前の準備から始め、さまざまな手順を踏んでいかなければなりません。滞りなく家を売るためには、まず手順を理解しておくことが重要です。家を売るための一歩を踏み出すためにも、最初に全体像を把握しておきましょう。
1-1.家を売る手順
- 事前準備
- 売却にかかる費用確認・資金計画
- 一括査定
- 媒介契約の締結
- 販売活動
- 条件交渉と売買契約
- 物件の引き渡しと決済
- 確定申告
売却の手続き前に売却相場の把握や必要書類の収集、土地や建物の状態などを調べる事前準備が必要です。売却時にかかる費用を把握し、資金計画も立てておかなければなりません。
その後、一括査定を行って売却を依頼する不動産会社が決まったら媒介契約を締結し、販売活動をしてもらいます。買主が現われたら条件交渉を経て媒介契約を結び、物件の引き渡しと決済が済めば完了です。その後、確定申告をします。
1-2.各手順の必要期間目安
物件価格の相場を調べ、住宅ローンの残債や土地の権利関係、建物の状態を確認するなど、事前準備にはそれなりに時間がかかるでしょう。必要書類も集めなければなりません。
費用の確認や資金計画、一括査定を行って、売却を依頼する不動産会社と媒介契約を結ぶまで、売り出し前の期間だけでも2週間から1カ月くらいはかかると考えておいたほうがいいでしょう。
販売活動を開始してから買主が見つかり、条件交渉を経て売買契約を結べるまでの期間が約3カ月です。契約締結から引き渡し・決済までの期間が通常1~2カ月かかることから、全体では6カ月程度をみておく必要があります。ただし、なかなか買主が見つからなければ、もう少し時間がかかる可能性もあるため、あくまでも目安です。
2.家を売る2つの方法
家を売る方法は「仲介」と「買取」の2種類があり、仲介は不動産会社に家を購入したい方を探してもらいます。一方で、「買取」は不動産会社が売却の相手です。次の段落からは仲介と買取それぞれのメリット・デメリットを解説します。
2-1.「仲介」のメリット・デメリット
仲介とは、家を購入したい方を不動産会社に探してもらって家を売却する方法です。
もう1つの家を売る方法である買取と比較して、高い価格で売却できるのが大きなメリットです。
特に立地がいい物件や築年数が浅い物件、リフォームが済んでいる物件など、条件のいい家は高く売れる可能性が高いでしょう。高く売れる率が高いわりには、極端に手間が増えるわけではないのもメリットです。
不動産会社には家を売りたい方だけではなく、購入を希望している方も訪れます。すでに家の購入を希望して来店しているお客様の条件に合えば、短期間で買主が見つかるかもしれません。しかし、そう簡単にいかないことが多く、一般的には売却までの必要期間が長くなるデメリットがあります。
また、仲介手数料がかかることもデメリットのひとつです。家を購入するときだけではなく、売るときにも意外と費用はかかるため、売却にかかる費用も考慮に入れた資金計画を立てる必要があります。
2-2.「買取」のメリット・デメリット
仲介では販売活動で買主を探す期間が必要なのはもちろん、条件交渉にも時間がかかることがあります。一方買取では、売買の相手は不動産会社です。買取価格がどのくらいになるのか査定してくれたあと、金額に納得できればすぐにでも売買契約の手続きに入れます。すぐに現金化できるため、早く売却したい方にはメリットが大きいでしょう。
また、仲介では不動産会社に仲介手数料を支払わなければなりませんが、買取では買主との間を仲介してもらうわけではないため、仲介手数料が必要ないのもメリットです。
一方、買取では購入後に不動産会社がリフォームやリノベーションなどを行って再販するため、買取時の価格はその分の費用を見込んで低めに設定される傾向があります。一般的には、仲介で売買される相場の10~30%程度の低い価格にしかならないのがデメリットです。
そもそも老朽化や破損の状態がひどいなど、建物の状態によっては買取が不可能な場合もあります。また、買取はどの不動産会社でも行っているとはかぎらないのもデメリットのひとつです。
2-3.仲介と買取での手順の違い
<仲介>
仲介の手順 | 必要期間 | 合計期間 |
事前準備 | 2週間~1カ月 | 6カ月 |
売却にかかる費用確認・資金計画 | ||
一括査定 | ||
媒介契約の締結 | ||
販売活動 | 3カ月 | |
条件交渉と売買契約 | ||
物件の引き渡しと決済 | 1~2カ月 | |
確定申告 | 翌年 | 翌年 |
仲介では事前準備を始めてから一括査定を行い、依頼する不動産会社を決めなければなりません。そのため媒介契約を締結するまでに2週間から1カ月の期間が必要です。その後、買主が見つかって条件交渉を行い、売買契約に至るまでに最低でも3カ月はかかるでしょう。引き渡しはさらに1〜2カ月後で、売却できるまでトータルで約6カ月です。
<買取>
買取の手順 | 必要期間 |
事前準備 | 早ければ1~2週間 遅くても1カ月程度 |
価格査定 | |
売買契約 | |
物件の引き渡しと決済 | |
確定申告 | 翌年 |
買取の場合は買主を見つける必要がないため、不動産会社を相手に条件調整を行います。価格などに納得ができれば売買契約のステップに進み、早ければ1~2週間、遅くても1カ月程度で物件の引き渡しと決済まで完了します。
2-4.高く売るなら「仲介」がおすすめ
仲介では広く一般の不動産市場に売りに出し、売主が売り出し価格を自由に設定できるのはもちろん、じっくり検討して買主を探せます。買取よりも相場どおりや相場を上回る価格で売却できるケースが多いため、高く売りたいなら仲介がおすすめです。
買取は仲介のように買主が見つかるのを探す時間をかける必要がありません。多少は買取価格が低くなったとしても、なるべく早く現金化したい場合などは不動産会社に直接買い取ってもらうほうがおすすめです。
3.家を売る手順1.事前準備
ここからは具体的に家を売る手順を紹介していきます。家を売るためには、まず対象となる家や土地の状況を正しく把握し、必要書類も集めておかなければなりません。スムーズに売却を進めるためにも、以下の事前準備をしっかりしておいてください。
3-1.売却価格相場の把握
まずは、おおよその売却相場がどのくらいなのかを把握することから始めましょう。そのためにも、売却の目的をはっきりさせることが大事です。人によって家を売りたい理由はさまざまですが、売却の目的を満たせる価格になるかどうか確認しておく必要があります。
相場を知っておくことで、提示された金額が適正価格かどうかもある程度判断がつきます。成約価格の相場をネット検索できるサイトとしては、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」や国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理している「レインズマーケットインフォメーション」などがあります。
3-2.必要書類の収集
あらかじめ土地や建物の状況を判断できる必要書類を集めておくと、売却の手続きもスムーズに進みやすくなります。具体的には購入したとき売買契約書や土地の地積測量図、境界確認書、家の設計図や間取り図、マンションなら管理規約集なども準備しておいたほうがいいでしょう。
固定資産税納税通知書のほか、特に権利関係が分かる登記事項証明書(登記簿謄本)や住宅ローンの状況が把握できる書類なども大切です。
リフォームを行ったことがあるのなら、現状を把握するためにも履歴が分かる書類が必要になります。売買契約後に違いが発覚すると売主の責任になり、契約が無効になったり、賠償しなければならなくなったりするケースもあるため注意してください。
3-3.住宅ローン残債の確認
転勤による引っ越しや離婚などの理由で、住宅ローンの残債がある状態でも家を売らなければならない状況になることがあります。住宅ローンの残債よりも売却価格が低ければオーバーローンの状態となり、売却が難しくなるかもしれません。
売却価格のほうが高かったとしても、売却にはさまざまな費用や税金もかかります。もし、売却益が目的を果たすために必要な金額に届かなかったら、以後の生活に支障をきたす事態にもなりかねないため、残債は必ず確認してください。
3-4.土地の権利関係の確認
登記事項証明書や地積測量図などの公的書面があると、査定でより正確な金額の算出が可能です。登記事項証明書には土地の所有者の氏名や所在地、地目や地積などのほか、所有権や抵当権などの権利関係なども記載されています。
地積測量図は、対象の土地の面積や隣地・道路などとの間の境界を測量した図面です。土地の売買では境界線を明確にしておく必要があるため、土地の面積や境界が記載された地積測量図があると明確に示せます。所有者が複数いる共有物件では、全員が売却に同意する必要があります。
3-5.建物の状態の確認
建物の状態も売却価格に影響します。不利な条件で売却してしまうことがないよう、基本的には提示価格を鵜呑みにせずに、自分でまずは確認しておいてください。例えば、外壁や屋根の塗装などのメンテナンスを定期的に実施しているか、シロアリなどの害虫が発生していないか、雨漏りや床の傾きがないかどうかなどが挙げられます。
水回りの仕様やリフォームの履歴も確認しておきましょう。建物建築時の確認申請書や確認済証、検査済証のほか、専門家の調査による耐震診断結果報告書や建物状況調査などがあれば準備しておいてください。
4.家を売る手順2.売却にかかる費用確認・資金計画
家を売る際は以下のような費用が必要になります。それらの資金計画をする必要があります。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税
- 抵当権抹消登記の登録免許税
- 司法書士に支払う手数料
仲介で家を売った場合は、成功報酬として不動産会社に支払う仲介手数料が必要になります。仲介手数料は宅建業法で金額の上限が定められており、売買金額が200万円以下では「(売却価格×5%)+消費税」です。200万円を超えて400万円以下は「(売却価格×4%+ 2万円)+消費税」、400万円を超えると「(売却価格×3%+ 6万円)+消費税」になります。
不動産売買契約書は課税文書として、契約金額に応じた印紙税も必要です。売却益が出た場合、所有期間5年以下は短期譲渡所得、5年を超えると長期譲渡所得として所得税や住民税がかかります。
住宅ローンの残債がある場合は、抵当権抹消登記をしなければならず、登録免許税がかかります。司法書士に登記手続きを依頼すると、司法書士報酬も必要です。
5.家を売る手順3.一括査定
事前準備がある程度済んだら、不動産会社に査定を依頼します。同じ査定といっても複数の方法があるため、特徴をつかんでおきましょう。ここでは机上査定(ネット査定)と訪問査定に加え、AI査定についても解説します。
5-1.机上査定(ネット査定)と訪問査定
不動産査定には、机上査定(ネット査定)と訪問査定の2種類があります。机上査定はネット査定ともいわれるように、査定サイトに所在地や面積、築年数などの必要事項を入力するだけで、おおよその金額が算出される簡易的な査定方法です。
訪問査定は実際に不動産のプロが現地を訪問して詳細に調査をするため、より現実的な査定額が算出されます。まずは机上査定で概算を把握したうえで、訪問査定してもらう不動産会社を選定するのがおすすめです。
5-2.「おうちクラベル」なら一括査定とAI査定で相場が分かる
「おうちクラベル」は、不動産の売却価格を無料で一括査定できるサイトです。一括査定には、実績豊富な優良企業も多く参加しています。一般的な一括査定と同様に必要事項を入力するだけで、AIによる高精度な査定による基準値がその場で算出されます。
依頼する不動産会社によって、査定価格が大きく違うことも珍しくありません。おうちクラベルでは一括査定とAI査定を組み合わせることで相場価格や最高価格が把握できるため、客観的な判断もしやすいでしょう。
売却価格の相場を最初に把握しておく必要がありますが、できるだけ手間暇をかけず、楽に相場を把握したい方には、おうちクラベルの一括査定とAI査定がおすすめです。査定後は納得できる価格を提示してくれた不動産会社と契約し、買主を探してもらうこともできます。
6.家を売る手順4.媒介契約の締結
家の売却を依頼する不動産会社を決めたら、実際に販売活動をしてもらうために媒介契約を交わす段階に入ります。ここでは3種類ある媒介契約の違いを説明するとともに、不動産会社や営業担当の選び方についても解説しますので参考にしてください。
6-1.媒介契約の3つの種類
媒介契約のひとつは「一般媒介契約」です。複数の不動産会社で買主を探してもらえる自由度がある一方、状況報告やレインズへの登録義務がなく、積極的な売却活動をしてもらえない懸念もあります。
「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」は、報告義務やレインズへの登録義務があり、契約期間も定められています。1社だけにしか依頼できない分、力を入れて販売活動をしてもらえるメリットがあるものの、不動産会社の力量に左右されるデメリットもある契約です。専属専任媒介契約では、自分で見つけた買主であっても取引できない縛りがあります。
6-2.不動産会社と営業担当の選び方
家を売却する際はできるだけ高く、早く売りたいと思いつつ、うまくいかないかもしれないと思うと怖いのではないでしょうか。これまで大事に所有してきた家を適正な価格で売るためのパートナーとして、不動産会社や営業担当者を選ぶポイントを紹介します。
高い査定価格を提示してくれることも大事ですが、販売力や信頼できるかどうかも大事です。具体的な販売計画を聞くことで販売力を推察したり、営業担当者の対応を見て信頼できるかどうかを感じ取ったりして不動産会社や営業担当を選んでみてください。
7.家を売る手順5.販売活動
媒介契約が済んだら、いよいよ家を売るための販売活動が始まります。実際には仲介してくれる不動産会社が対応してくれますが、少しでも高く売るためにはどうすればいいのか、内覧のポイントや販売のポイントを知っておきましょう。
7-1.内覧対応のポイント
販売活動自体は売却を依頼した不動産会社がやってくれます。家の持ち主が実際に行うことになるのは内覧対応です。成約につなげるためには、少しでもいい印象を持ってもらうことが大事になります。
当然ながら、家が散らかっていたり、汚れが目立ったりするようでは印象がよくありません。いつ内覧を希望する方が現われてもいいように、家を売ることを決めたら不用品などを片付け、掃除してなるべく綺麗にしておくことが大切です。
水回りやベランダ、クローゼットや押し入れなど、どこを見られてもいいように隅々まで綺麗にしつつ、大切に住んでいた家という印象を与えられるようにしましょう。意外と気になる、その家特有の臭いなどにも気をつけるようにしてください。
購入を希望する方に向けての訴求ポイントについては、事前に情報を得てある程度絞っておきましょう。ただし、人気がないのではないかと思われないためにも、あまりアピールしすぎないことも大事です。当日はスリッパを忘れず用意しておいてください。
7-2.販売活動のポイント
- 仮説をもって販売戦略を立てる
- 売り出し価格を高めに設定する
- 販売活動状況を確認する
ただやみくもに売り出しをしていても、思ったように買い手が付かないこともあります。そもそも売り出し価格はどのくらいに設定すればいいのか、よくわからないという方もいるのではないでしょうか。次は具体的な販売活動のポイントを3つ紹介します。
7-2-1.①仮説をもって販売戦略を立てる
売却する理由や、いつまでに売却したいのか、優先したいことは何かなど、同じ家を売るのでも事情はさまざまです。ただ、それぞれの事情によって、方針や広告の仕方などの販売戦略は異なってきます。販売活動をするにあたり、個別の事情を踏まえた仮説をもって販売戦略を考えることがポイントのひとつです。
もし、あらかじめ仮説を立てておけば、販売が思うように進まなかった場合も立て直しがききます。または最初から複数のシナリオを用意しておき、柔軟に対応するのもいいでしょう。
7-2-2.②売り出し価格を高めに設定する
家を売りに出す際、当初の売り出し価格そのままで売却できるとはかぎりません。不動産会社が出してくれる査定価格は、もちろん売れる見込みのある金額です。売主としてはできるだけ高く売りたいところですが、売りたい価格と売れる価格は一致するとはかぎりません。
実際に交渉が入って価格が下がることも多いため、売り出し価格は希望する売却価格よりも高めに設定しておくのがおすすめです。具体的にどのくらいの価格にするのかは、不動産会社とよく相談してください。
7-2-3.③販売活動状況を確認する
販売活動は不動産会社が行ってくれますが、中には販売してくれていると思っていたら、それほど力をいれてくれていなかったり、思うように進んでいなかったりすることもあります。特に一般媒介契約では売却状況を報告する義務がないため、把握しにくいかもしれません。
専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、売却状況を報告する義務があります。ただし、想定した時期に売却できないという事態に陥らないよう、任せきりにせず自分でも進捗状況を確認しましょう。
8.家を売る手順6.条件交渉と売買契約
販売活動の結果、買主候補が現われたら、条件交渉を行いながら詳細を詰めていきます。売主・買主の双方が条件に合意できたら売買契約の段階です。どのようなところに気をつければいいのかなど、それぞれポイントを確認しておいてください。
8-1.売買契約書の草案を確認・調整する
買主が決まったらいよいよ売買契約を結ぶことになりますが、売買契約書の草案はしっかりチェックするようにしましょう。引き渡し日や売却価格など物件の情報や契約に関する内容が記載されているため、間違いがないかどうか確認してください。
正式な契約前の最終的な条件調整、交渉の段階です。もし、買主の購入希望価格に対して、不足すると考えられる部分があれば補足しつつ、希望売却価格前後でお互い納得できる金額に着地できるように調整していきましょう。
8-2.契約書で見るべきポイント
売買契約書で売却価格以外に注意すべきポイントとして、「契約不適合責任」の項目があります。従来は「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、2020年の民法改正で名称が変更されました。しかも、売主の責任が大きくなっています。
引き渡し後、もし本来の契約内容とは適合しない不具合などがあった場合、売主は買主に対して責任を負わなければなりません。修繕する必要が出てくる場合や、契約の解除、損害賠償請求に発展する可能性もあります。
建物では経年劣化による外壁のひび割れや屋根・天井などの損傷による雨漏り、シロアリの被害や腐食、水道管の老朽化などが具体例です。土地を売る場合は土壌汚染や地中の埋設物、面積の違いなどが挙げられます。不具合のある箇所は隠さずに伝えることが大事です。また、いつまで責任を負うべきかも明確にしておく必要があります。
8-3.契約の手順
- 売主と買主の顔あわせ
- 不動産会社から買主への重要事項説明
- 不動産売買契約書の読み合わせ
- 不動産売買契約書への署名・捺印
- 買主から売主へ手付金の受け渡し
- 売主・買主が仲介手数料の半分を不動産会社に支払う
売買契約は、不動産会社の事務所などで行われるのが一般的です。不動産会社の宅地建物取引士が同席し、売主・買主の双方が集まったら、挨拶して契約手続きの開始です。まずは、宅地建物取引士から買主に対して、物件の重要事項説明が行われます。
特に問題がなければ不動産売買契約書の読み合わせを行ったうえで、売主・買主が契約書に署名・捺印し、収入印紙を適切な場所に貼付します。契約書は売主と買主が双方一部ずつ持ち帰ることになるため、大切に保存しておきましょう。
次に買主から売主に対して手付金が支払われれば、契約自体は完了します。また、契約時に不動産会社に対し、仲介手数料のうち半額を支払うのが一般的です。あとは後日の引き渡しと決済の日時を確認して終了です。
9.家を売る手順7.物件の引き渡しと決済
売買契約の締結後、定めた日時に物件の引き渡しと決済が行われ、いよいよ家を売る手続きも大詰めです。次に引き渡しと決済はどのように実施されるのか、流れを解説します。当日必要なものも紹介しますので、忘れずに用意してください。
9-1.引き渡し・決済の手順
- 買主から売主へ売買代金の残金を支払う
- 抵当権が付いている場合は抵当権抹消登記を行う(売主)
- 住宅ローンを組む場合はローンの実行および新たな抵当権設定登記登記を行う(買主)
- 所有権移転登記を行う(買主)
- 固定資産税など金銭の精算
- 決済完了後に物件の引き渡し
引き渡しと決済の当日には、買主から売主へ売買代金の残金が支払われます。一般的に引き渡し時には司法書士が立ち会い、抵当権が付いている物件の場合は売買代金の残金を入金して抵当権抹消登記を行います。
買主が住宅ローンを組む場合は、ローンの実行とともに新たな抵当権設定登記が必要です。所有者が売主から買主に移ったことを示す所有権移転登記は、買主側の負担で行うのが一般的です。その後、固定資産税や都市計画税などを引き渡し日で按分して精算するとともに、残りの仲介手数料を不動産会社に支払います。最後に物件を引き渡して手続きは完了です。
9-2.引き渡し・決済時に必要なもの
- 本人確認書類
- 実印
- 印鑑証明書
- 住民票
- 戸籍謄本
- 抵当権抹消に必要な書類
- 登記費用
- 仲介手数料の残り半分
- 物件の鍵
- 建築確認済証または検査済証
- 物件状況等報告書や設備表
- マンションの管理規約や長期修繕計画書
- 登記済証(権利証)または登記識別情報通知
- 固定資産税納税通知書・都市計画税納税通知書
- 銀行口座の情報や通帳・銀行印
引き渡し時には免許証やパスポートなどの本人確認書類、実印、印鑑証明書が必要です。登記簿上の住所と現住所が違う場合は住民票、氏名が違う場合は戸籍謄本も準備しておいてください。抵当権が設定されている物件は、抵当権抹消に必要な書類や登記費用も必要です。不動産会社に支払う残り半分の仲介手数料も、引き渡し日に支払います。
引き渡しには物件の鍵一式のほか、土地や建物の状況を詳細に示した物件情報等報告書や、設備の状況を記載した設備表などを用意しておきます。物件が所有者のものであることを証明する登記済証(権利証)または登記識別情報通知、建築基準法に基づいて建築されていることを示す建築確認済証または検査済証なども必要です。
マンションの場合は管理契約や長期修繕計画書など、買主に引き継ぐべき書類もそろえておきましょう。固定資産税や都市計画税の納税通知書は、買主との税額の負担割合を決めるときや登記費用を算出する際に必要になります。買主からの売買代金は通常、売主の口座に振り込むため、口座情報が分かるものも用意しておいてください。
10.家を売る手順8.確定申告
引き渡しと決済が行われたら、家の売却手続き自体は終了です。あとは、翌年に確定申告の手続きが残っています。どのようなケースで確定申告をしなければならないのか、時期はいつなのかなどを解説しますので、忘れずに行いましょう。
10-1.利益・損失どちらでも確定申告をする
家を売って利益が出た場合は譲渡所得税(所得税および住民税)が課税されるため、必ず確定申告をしましょう。譲渡所得は、単純に家を売った際に受け取る売却代金そのものではありません。
最初に家を購入したときにかかった代金や、売却時に支払った仲介手数料などの諸経費を差し引いた残りが譲渡所得税の課税対象です。譲渡所得税は給与所得や事業所得とは合算せず、独自の税率をかけて納税額を算出する分離課税として扱われます。
また、居住していたマイホームを売った場合は、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に軽減税率が適用される特例や、3,000万円の特例控除も利用が可能です。
もし、家を売却して損失が出た場合はそもそも所得が発生しておらず、基本的には確定申告の義務はありません。ただし、必要な条件を満たしていれば、ほかの所得と相殺して所得税や住民税を減らせる税法上の特例があるため、損失が出たときも確定申告するのがおすすめです。
10-2.売却日の翌年に確定申告と所得税納付が必要
家の売却で得た譲渡所得は、自分で申告する必要があります。確定申告を行うのは、家を売却した翌年の2月16日から3月15日の間です。確定申告書に添付書類を添えて申告します。
申告は税務署の窓口のほか、郵送やオンラインのe-Taxでも可能です。その際に所得税を納付する必要があるため、税額分のお金を残しておいてください。住民税は確定申告した年の5月以降に、市町村から納税通知書が届きます。
譲渡所得税の税率は物件を所有していた期間によって違いがあり、5年以下ならば短期譲渡所得、5年を超えていれば長期譲渡所得として計算されます。
短期譲渡所得は所得税39.63%(所得税30.63%+住民税9%)、長期譲渡所得は20.315%(所得税15.315%+住宅%)です。2037年までは所得税に復興特別所得税2.1%が含まれています。
11.家を売る手順に関するよくある質問
ここまで家を売る流れを解説してきました。実際にはさまざまな状況で売りに出されることがあるため、一般的な手順どおりに進まないこともあります。そこで、よく疑問に挙がる4つのケースについて対応を示しますので、当てはまる場合は参考にしてください。
11-1.ローン残債がある家を売る手順は?
住宅ローンの残債がある家を売るケースでも、基本的な手順は同じです。ただし、残債があるということは登記上、抵当権設定登記がされているため、そのままの状態では買主に売却できません。抵当権を外すためには、まず住宅ローンを完済する必要があります。
もちろん自己資金で残債を一括返済できる場合は、売却前に住宅ローンの残債を完済してしまって問題ありません。家の売買代金を返済にあてる場合は、引き渡しと決済のタイミングで住宅ローンの完済と抵当権抹消登記も行います。
事前に金融機関に売却する旨を報告して、抵当権抹消登記に必要な書類の作成を依頼しておき、引き渡し当日に売買代金を受け取って住宅ローンを完済します。引き渡し時には司法書士に立ち会ってもらい、抵当権抹消登記の手続きをしてもらうのが一般的です。
11-2.住み替えする場合は、売り先行と買い先行どちら?
家を売る理由が住み替えや買い替えの場合は、先に家を売却する「売り先行」と、先に住み替えや買い替え先の家を購入する「買い先行」があります。本来は同時に進行できるのが理想ですが、現実にはなかなか思うようなタイミングで進行することは少なく困難です。
希望どおりに売却できるかどうかは、実際に販売活動をしてみないとわかりません。買い先行にすると新居探しに時間をかけられるメリットはありますが、もとの家が売れなかった場合、資金を確保するために売却価格を下げざるをえない可能性があります。
売り先行では新居が決まるまでの間の仮住まいを用意する必要はあるものの、新居の資金計画や販売活動を慎重に進められます。家が売れないリスクを考えると、売り先行にするのがおすすめです。
11-3.相続後の空き家を売る手順は?
相続した家を売る場合、登記上の所有者が相続人になっていなければなりません。亡くなった方の名義のままでは売却ができないため、被相続人から相続人に所有権を変更する相続登記を行う必要があります。
販売活動を開始して購入希望者が現われても、相続登記をしていないとすぐには売れず、せっかくのチャンスを逃す可能性があります。家を売ることを決めたなら、早いうちに相続登記は済ませておきましょう。
また、空き家の状態のままで適切な管理をせずに放置し、特定空き家に指定されると、土地に対する固定資産税や都市計画税の優遇対象から外れます。大幅な増税になってしまうため、空き家になっているのなら早めに売却するのがおすすめです。
11-4.相続前に売却する場合は?
相続前に家を売却する場合の売主は、親など、もとの所有者になりますが、売却の手順自体は通常と同様です。
ただし、後に相続が発生した際、不動産で相続するのと現金や預貯金で相続するのでは相続税が違ってきます。不動産は土地が公示価格の80%程度の路線価や、70%程度が目安の固定資産税評価額をもとにした倍率方式などで評価されます。建物も固定資産税評価額で評価されますが、建物の場合は建築費の50~60%が目安です。
一方で、現金や預貯金はそのままの金額で評価されます。もし、1,000万円を現金や預貯金で相続した場合、相続税は「1,000万円×10%(1,000万円以下の相続税税率)=100万円」です。土地や建物の不動産を相続する際は、そもそも相続税を計算するもとになる金額が低くなるため、当然相続税も低くなります。
複数の相続人がいる場合、不動産は簡単には分割できず、相続財産の分割協議で揉めることも珍しくありません。そのため、相続前に家を売却して現金化するのも争いを避けるための方策のひとつですが、不動産で相続するよりも税金など費用がかかるケースがあることに注意してください。
家を売る手順・全体像を押さえて後悔ない売却を
家を売るためには事前にある程度のリサーチをする必要があるとともに、パートナーとして寄り添ってくれる不動産会社に売却を依頼することも大事です。ただ、家を売る方法には仲介と買取の2種類があったり、仲介する場合も不動産会社との媒介契約が3種類あったりなど、どの方法がいいのか迷うこともあるでしょう。
買主が見つかってから条件交渉を経て売買契約を結び、引き渡しと決済まで、それぞれの段階で確認しなければならないことや対応しなければならないこともあります。ケースによって差はあるものの、仲介の場合、家の売却にかかる期間は6カ月程度です。後悔しないためにも全体像を押さえ、スムーズに家を売れるように準備を整えましょう。
「おうちクラベル」では同時に複数の不動産会社の売却価格を一括査定できます。加えてAIによる推定査定価格も参照できるため、相場や最高価格などを客観視するのに役立つでしょう。家を売ることを検討しているのなら、まずはおうちクラベルで一括査定をしてみてください。