家を相続したものの、その家を活用する予定がない場合は、売却を検討することとなります。
相続した家を売却する場合、どのような手順で進めればよいでしょうか?
また、相続した家を売却する際はどのような税金がかかるのでしょうか?
今回は、相続した家を売却する流れや売却で発生する可能性がある税金などについて詳しく解説します。
相続した家はすぐに売却するのがおすすめの理由
相続した家に住む予定がない場合、早期に家を売却することがおすすめです。
はじめに、使用する予定がない相続した家を早期に売却したほうがよい主な理由について解説します。
- 固定資産税などの維持費がかからなくなるから
- メンテナンスの手間から解放されるから
- 家の価値は築年数の経過とともに低下するから
固定資産税などの維持費がかからなくなるから
固定資産税とは、毎年1月1日時点における土地や建物の所有者に課される税金です。
家のある地域によっては、固定資産税と併せて都市計画税もかかります。
家を所有していると、たとえその家に住んでいなくても、毎年固定資産税や都市計画税を納めなければなりません。
1年あたりの税額はさほど高額でなかったとしても、毎年の分が積み重なると大きな金額となる可能性があります。
一方、相続した家を売却すると、翌年度分(1~3月に売却した場合は翌々年度)からは固定資産税や都市計画税の納税義務者ではなくなります。
メンテナンスの手間から解放されるから
家を所有し続けている限り、家やその敷地である土地のメンテナンスをし続けなければなりません。
家を適切にメンテナンスしないと、劣化の進行が早まる可能性が高くなるためです。
また、家のメンテナンスをしないと野生動物や害虫の棲家となったり屋根瓦が落下したりして、近隣住民に迷惑をかけるおそれがあります。
外壁が崩れて通行人をケガさせるなど、状況によっては損害賠償請求がなされるリスクも否定できません。
そのため、家を所有し続けている間は定期的に現地に出向いてメンテナンスをしたり、対価を支払って現地付近の管理会社などに管理を依頼したりする必要が生じます。
一方、相続した家を売却すると、以降はメンテナンスの手間やコストから解放されます。
家の価値は築年数の経過とともに低下するから
家の価値は、原則として築年数の経過とともに低下していきます。
そのため、家を相続してから売却するまでの期間が長ければ長いほど、家の売却価格が低くなる可能性があります。
今後その家に住む予定がない場合は、早期に売却へ取り掛かることをおすすめします。
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相続した家を売却する流れ・手順
相続した家を売却する際は、どのような手順を踏めばよいでしょうか?
ここでは、相続した家を売る一般的な流れについて解説します。
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人を確認する
- 遺産の全容を確認する
- 遺産分割協議をする
- 相続登記をする
- 相続税の申告をする
- 家の査定を受ける
- 家の売却を依頼する不動産会社を選定する
- 家を売却する
- 譲渡所得税の申告をする
遺言書の有無を確認する
家や土地を持っていた人が亡くなったら、その亡くなった者(「被相続人」といいます)が有効な遺言書を遺していたかどうかを確認します。
遺言書がある場合は、原則としてその遺言書の指定どおりに遺産を分けることとなり、この先の手続きの進め方が大きく異なることとなるためです。
遺言書は被相続人の自宅や関係先を探すほか、最寄りの公証役場や法務局で所定の手続きを踏むことで見つかることもあります。
なお、以降は遺言書がないことを前提として解説を進めます。
相続人を確認する
相続人の確認を行います。
遺言書がない場合において、家などの遺産を誰が相続するかを決めるには、相続人全員による話し合いである「遺産分割協議」が必要となるためです。
相続人の確認は、次の書類などを取り寄せて行います。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人が被相続人の兄弟姉妹や甥姪である場合は、被相続人の父母それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
これらの書類は相続人の確認のためだけに使用するのではなく、その後行う相続登記などにおいても必要となります。
これらの書類を自分で集めることが難しい場合は、司法書士や行政書士などの専門家による取得代行なども検討するとよいでしょう。
遺産の全容を確認する
相続人の確認と併せて、被相続人の遺産の確認を行います。
次のステップで行う遺産分割協議では相続人全員が話し合って遺産を分けることとなりますが、この前段階として遺産の全容が判明していないと、遺産分割協議をすることが難しいためです。
判明した遺産は、一覧表などにまとめておくとスムーズです。
遺産分割協議をする
相続人と遺産の全容が確認できたら、遺産分割協議をします。
遺産分割協議とは、相続人全員で行う遺産分けの話し合いです。
遺産分割協議では、「家はA氏が相続し、X銀行の預貯金はB氏が相続する」というように、誰がどの遺産を相続するのかを具体的に決めていきます。
遺産分割協議を成立させるには、相続に全員が合意をしなければなりません。
遺産分割協議が成立したら、その内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が実印で署名と押印をします。
相続登記をする
相続登記とは、被相続人名義の家や土地を相続人などの名義へと変える手続きです。
遺産分割協議が成立したら、必要書類を取りまとめて相続登記を申請します。
相続登記の申請には、次の書類などが必要です。
- 相続登記申請書
- 遺産分割協議書
- 先ほど解説をした相続人を確認するための書類
- 被相続人の除票または戸籍の附票
- その家や土地を取得する相続人の住民票
- その家や土地の固定資産税課税明細書
自分で書類を集めたり作成したりすることが難しい場合は、司法書士へ依頼することで手続きを代行してもらうことが可能です。
相続税の申告をする
相続税とは、遺産などに対してかかる税金です。
その相続に相続税がかかる場合は、期限内に相続税の申告をします。
相続税の申告と納税の期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は、被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内です。
相続税については、後ほど詳しく解説します。
家の査定を受ける
相続登記が済んだら、家の査定を依頼します。
査定とは、不動産会社にその家の売却想定額を試算してもらう手続きです。
査定は相続登記が済んでから行うのが基本ではあるものの、家の売却を急ぐ場合は相続登記の申請と並行して行うこともできます。
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家の売却を依頼する不動産会社を選定する
査定結果を踏まえ、家の売却を依頼する不動産会社を選定します。
不動産会社は査定額の高さのみで決めるのではなく、査定額への説明の明確さや担当者の誠実さなどを総合的に考慮して決めることをおすすめします。
なぜなら、査定額はあくまでもその不動産会社が想定する「売却予想額」でしかなく、その不動産会社がその価格で家を売るとの保証額ではないためです。
不動産会社を選定したら、不動産会社と媒介契約を締結し、家を売りに出します。
家を売却する
家の買主が見つかり金額など条件の交渉もまとまったら、売買契約を締結して家を売却します。
売却後は、あらかじめ取り決めた日に家を引き渡し、これと引き換えに売買対価を受け取ります。
譲渡所得税の申告をする
譲渡所得税とは、土地や家を売って得た利益に対してかかる税金です。
譲渡所得税がかかる場合は、家を売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告をしなければなりません。
譲渡所得税については、後ほど詳しく解説します。
相続した家の売却でかかる税金・費用
相続した家の売却では、どのような費用や税金がかかるでしょうか?
ここでは、かかる主な費用と税金を紹介します。
- 相続税
- 相続登記費用
- 印紙税
- 仲介手数料
- 譲渡所得税
- ハウスクリーニング費用
- 家の解体費用
相続税
かかる可能性がある1つ目の税金は、相続税です。
相続税とは、被相続人の遺産総額などに対してかかる税金です。
相続した家を売ったからといって相続税の対象から外れるわけではなく、相続後に売った家も相続税の課税対象となります。
ただし、相続税には次の基礎控除額が設けられており、遺産総額や被相続人から受けた過去の一定の贈与の合計額が基礎控除額以下である場合は、相続税は発生しません。
- 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
その相続で相続税の申告が必要であるかどうか判断に迷う場合は、税理士などの専門家へ早期に相談するようにしてください。
相続登記費用
相続登記費用とは、相続登記に要する費用です。
相続した家を売るには、相続登記をして家の名義を相続人などへと変えなければなりません。
この手続きにかかる費用は、おおむね次のとおりです。
- 登録免許税(登記に対してかかる税金):相続登記をする家や土地の価格×4/1,000
- 司法書士報酬(司法書士に手続きを依頼した場合):標準的なケースで8万円~15万円程度
- 必要書類の取得費用:標準的なケースで1万円~2万円程度
印紙税
印紙税とは、契約書や領収書などの文書に対して課される税金です。
家の売買契約書も印紙税の課税対象であり、家の売却価格に応じて次の額の収入印紙を契約書に貼付しなければなりません。
2024年3月31日までに作成する家や土地の売買契約書では、軽減税率が適用されます。
契約金額 (マンションの売買価格) | 本則税率 | 軽減税率 (2024年3月31日まで) |
---|---|---|
50万円以下 | 400円 | 200円 |
100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
家の売買契約書は、2通作成したうえで売主と買主が1通ずつ保管することが多く、印紙税もそれぞれ保管する分の契約書に貼付すべき分を負担することが一般的です。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社による仲介で家の売買契約が成立した場合に、不動産会社に支払うこととなる報酬額です。
仲介手数料の上限額は法令で定められており、それぞれ次のとおりです。
なお、これはあくまでも上限額であるものの、実際はこの上限額をそのまま仲介手数料の額として定めている不動産会社が大半です。
売却価格 | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 売却価格の5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の部分 | 売却価格の4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 売却価格の3%+消費税 |
家の売買価格が400万円超である場合は、次の算式1つにまとめて計算することもできます。
- 仲介手数料の上限額=売買価額×3%+6万円+消費税
仲介手数料は高額となることもあるものの、相続した家をよりよい条件で売却するには、信頼できる不動産会社によるサポートが不可欠です。
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譲渡所得税
譲渡所得税とは、家や土地の売却益に対してかかる税金であり、次の式で算定します。
- 課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
- 譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率
譲渡所得税は国などから納付書が送付されるわけではなく、自分で計算して納税しなければなりません。
また、特別控除など税金が軽減される特例も数多く設けられており、自分で正確に算定することは困難です。
相続した家を売却する際は、あらかじめ税理士などの専門家へ相談し、譲渡所得税の試算をしてもらうことをおすすめします。
ハウスクリーニング費用
家を売る際は、家を買主に引き渡す前にハウスクリーニングを入れることが一般的です。
ハウスクリーニング費用は依頼先の清掃会社によって異なるものの、戸建ての場合は5万円から15万円程度が目安となります。
ただし、家の間取りや汚れ具合などによってもこれ以上の費用がかかる可能性もあるため、見積もりをとるとよいでしょう。
家の解体費用
相続した家の老朽化が進んでいる場合、売主の負担にて家を解体したうえで土地のみを売却することがあります。
解体にかかる費用は依頼先の解体会社によって異なるものの、1坪あたりの解体金額の目安は、家の構造に応じてそれぞれ次のとおりです。
建物の構造 | 解体費用の目安 |
---|---|
木造 | 3万~5万円/坪 |
鉄骨造 | 4万~6万円/坪 |
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造 | 6万~8万円/坪 |
ただし、解体する建物の状態や周辺の道路状況など解体の難易度が高い場合などは、これ以上に費用がかかる可能性があります。
建物を解体する際は、見積もりをとることをおすすめします。
相続した家の売却で使える譲渡所得税の主な特例
相続した家を売る際は、譲渡所得税の計算において、次の特例が使える可能性があります。
- 相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特別控除
- 取得費加算の特例
それぞれの概要を解説します。
相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特別控除
「相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特別控除」とは、相続を機に空き家となった被相続人の元自宅(「被相続人居住用家屋」といいます)やその敷地を売却して譲渡益が出た場合に、最大3,000万円の特別控除が受けられる特例です。
控除額が大きいため、適用を受けることで譲渡所得税額がゼロとなることも少なくありません。
適用にはさまざまな要件が課されており、この要件から1つでも外れてしまうと適用を受けることができなくなります。
参照元:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
この特例の適用を受けられるかどうかによって税額に大きな差が生じる可能性があるため、家の査定額がわかった時点で特例の適用可否などについて、税理士などの専門家へ相談するようにしてください。
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取得費加算の特例
「取得費加算の特例」とは、相続した家や土地を売却した場合において、その家や土地を相続する際に負担した相続税額を、譲渡所得税の「取得費」に加算することができる特例です。
この特例の適用を受けることで取得費が増えるため、譲渡所得税額が安くなります。
この特例の適用を受けるには、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(つまり、相続開始の翌日から3年10か月以内)に売却をしなければなりません。
参照元:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)
相続した家を売却する際の注意点
相続した家を売却する際は、どのような点に注意すればよいでしょうか?
最後に、相続した家や土地を売る際の注意点をまとめて紹介します。
- 故人名義のままでは売却できない
- 売却対価を分けると贈与税がかかる可能性がある
- 家の売却を急ぐと買い叩かれるリスクがある
- 小規模宅地等の特例の要件に注意する
故人名義のままでは売却できない
故人名義のままで家は売ることはできず、売却の前には存命の相続人などの名義へと変える「相続登記」をしなければなりません。
相続登記は司法書士に依頼したからといってすぐに完了するものではなく、遺産分割協議がスムーズにまとまったとしても、書類取得からの期間を含めると1か月から2か月程度はかかることが一般的です。
特に家の売却を急ぐ場合は、できるだけ早期に相続登記に取り掛かるようにしてください。
売却対価を分けると贈与税がかかる可能性がある
主な遺産が家しかない場合などにおいて、いったん家の名義を相続人の1人(仮に、長男)に変え、その後家が売れたときに長男から他の相続人(仮に、二男)へ、売却によって得た費用の半額を支払うとすることもあります。
しかし、特に書面を取り交わすことのないまま長男から二男に売却対価を渡してしまうと、長男から二男への贈与であるとして贈与税の対象となるリスクがあります。
そのため、このような分け方をしたい場合は、司法書士などの専門家へ相談のうえ、長男から二男へ対価を渡す旨の規定を遺産分割協議書に明記する必要があります。
家の売却を急ぐと買い叩かれるリスクがある
相続した家を売る理由はさまざまですが、相続税の納税資金を確保するために家を売るケースも少なくありません。
その場合は、相続税の納税期限までに現金化したいことでしょう。
しかし、家の売却を急ぐことはおすすめできません。
売却を急いでいることが買主に伝わると、買主から無理な値下げ交渉をされるリスクが高くなるためです。
そのため、相続税の申告期限までに現金化を間に合わせたい場合は、売却を急がなくて済むよう相続が起きたらできるだけ早期に売却の準備に取り掛かることをおすすめします。
小規模宅地等の特例の要件に注意する
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たすことで適用を受けられる、相続税を安くする特例の1つです。
この特例の適用を受けると、相続税の計算上、土地を最大8割減で評価することが可能となります。
ただし、小規模宅地等の特例にはさまざまな要件が課されており、「その宅地等を相続税の申告期限まで有していること」が要件となっていることも少なくありません。
そのため、その家の敷地について小規模宅地等の特例の適用を受けた場合は、税理士と相談のうえその家を売却する時期を慎重に検討するようにしてください。
まとめ
当面の間使用する予定のない家を相続した場合は、家の売却が有力な選択肢となります。
相続した家を売却するためには、あらかじめ相続登記をしなければなりません。
相続登記の完了までには時間を要するため、売却までの全体の流れを踏まえつつ早期に相続登記を済ませることをおすすめします。
家の売却を急ぐ場合は、相続登記と並行して家の査定も進めましょう。
相続した家を売却したい場合の査定には、「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルとは、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する不動産一括査定です。
複数社による査定額を比較することで、その家の売却適正額を把握しやすくなるほか、査定額への説明や担当者の対応などを比較することで、その家の売却を依頼する信頼できる不動産会社を見つけやすくなります。