住宅ローンが払えない!返済しないとどうなる?対処法をあわせて解説

住宅ローンの返済期日を過ぎているのに、住宅ローンが払えないとどうなるのでしょうか。「すぐに家を差し押さえられて住めなくなる」と不安に思う人も多いことでしょう。もちろん滞納を続けると、最終的には競売にかけられて強制的に退去を要求されますが、すぐに立ち退かなければならないわけではありません。

この記事では、住宅ローンが払えなくなってからでもできる「8つの対処法」を紹介します。今後返済できなくなる可能性がある人も、事前に準備することが重要です。

また競売と任売の違いや住宅ローンが払えなくなった人の体験談、よくある質問のQ&Aも紹介しますので、住宅ローンに対して不安を感じている人はぜひ参考にしてください。

目次

1.家のローンが払えないとどうなる?

家のローン返済日に支払いができなくても、すぐに差押えされて退去を迫られるわけではありません。うっかり返済を忘れてしまった場合はすぐに金融機関に連絡し、できるだけ早く対応しましょう。そうすれば大きな問題になることはありません。

しかし2〜3回滞納すると、督促状などが内容証明郵便などで届くようになります。また融資担当者などから電話連絡が入る可能性がありますが、いずれも放置せず置かれている状況などをお伝えください。

金融機関の合意は必要ですが、この時点で「任意売却」をして残債を返済できるケースもあります。(詳しくはこの後の章で触れていきます)

おおむね最初の滞納返済日から3〜4ヶ月すると一括返済を求められることとなり、半年後程度で家は差し押さえられ、競売によって売却されることになります。

1-1.期限の利益の損失とは

「期限の利益の損失」とは定められた期限が到来するまでは、債務の履行を請求されないという債務者の利益のことをいいます。

例えば住宅ローンは月々分割して返済するものですが、期限の利益を喪失すると分割払いが認められず、残債を一括して返済しなければならなくなります。

住宅ローンを借入する際に締結する金銭消費貸借契約には、「期限の利益の喪失」についての条項があり、滞納期間や滞納回数が一定以上となった場合には、残金を一括返済しなければならないと定められています。

滞納を続けている人が一括返済をすることは通常難しいでしょう。この期限の利益の喪失状態となった場合は、何らかの対処をする必要があります。

1-2.競売(けいばい)とは

住宅ローンを組むときには、その対象となる住宅に金融機関が抵当権を設定します。万が一、返済を滞納したときに金融機関が融資した資金を回収するためです。

住宅ローンを一定期間以上、滞納した場合には、債権者である金融機関は裁判所に競売を申し立てます。そして抵当権を設定している不動産を入札形式で売却し、融資した資金を回収します。

競売で落札される金額は一般的な市場価格よりも安くなる傾向があり、住宅ローンの残債を下回ることもあります。その場合は残債として残りますのでご注意ください。

一般的に住宅ローン滞納から2〜3ヶ月後に督促状が届き、3〜4ヶ月で期限の利益を喪失することになります。競売まではおおむね6ヶ月程度と考えていいでしょう。

一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 金融機関から債務者に内容証明郵便などにより、督促状や催告書が届く
  2. 債権者である金融機関が裁判所に競売の申し立てをする
  3. 裁判所により対象となる住宅に差押登記がされる
  4. 債務者に「競売開始決定通知書」が届く
  5. 入札形式により売却する。
  6. 最も高額で入札した人が落札となる
  7. 住宅ローンの残債から落札金額を除いた額は残債として残る
  8. 債務者は立ち退き、住宅を引き渡す

1-3.任意売却とは

任意売却とは債権者である金融機関の合意を得て、債務者の希望を盛り込んだ価格や条件で対象となる住宅を売却することをいいます。競売との大きな違いは、一般市場で売却できることでしょう。そして債権者の了解が得られれば残債額を軽減してもらえる可能性もあります。

任意売却は競売よりも高額で売却できる可能性があり、その場合は回収できる金額が増えるため、債権者や債務者にもメリットがあります。また引渡しの時期について購入者と相談することができれば、即退去する必要がない可能性があり、余裕をもって不動産を引き渡すことができるでしょう。

残債が残るか残らないかは、債権者である金融機関との交渉次第です。まずは金融機関に相談するようにしましょう。

一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 債権者である金融機関に住宅ローンの返済について相談する
  2. 金融機関が任意売却について了承する
  3. 不動産会社に査定を依頼する
  4. 金融機関と売却価格や残債(軽減が可能かなど)について相談する
  5. 購入希望者と売買契約
  6. 不動産引渡し

2.住宅ローンが払えない理由

住宅ローンが払えなくなる人は、どんな理由を抱えているのでしょうか。「コロナ禍で収入が激減して返済できなくなった人」や、「ボーナス払いを設定していたけれど、ボーナスの支給が無くなった人」など理由はさまざまです。

ここでは住宅ローンが払えなくなった人の代表的な3つの理由を紹介します。他人事と考えずに、自分の状況と照らし合わせながら読んでみてください。

2-1.収入が減った(病気・けが・失業・転職)

住宅ローン問題の解決を支援する「一般社団法人 住宅ローン問題解決支援機構」の2022年10月に行った「住宅ローンの支払い遅延に関する調査」によると、住宅ローンの支払いが遅れた理由の第1位は「収入減(63%)」でした。

収入減の理由にも色々ありますが、その中でも多かったのは「残業代の見直しなどによる給与減(31.5%)」や「ボーナスの減少やカットによる収入減(31.5%)」でした。

  • 残業代の見直しなどによる給与減
  • ボーナスの減少やカットによる収入減
  • ケガや病気で療養期間が長くなり休業した
  • 転職による年収ダウン
  • 会社都合によるリストラなど

2-2.支出が増えた

住宅ローンが支払えなくなる理由は、収入減だけではありません。予期せぬケガや病気による医療費の増加や、結婚や出産などによる支出の増加が原因になる場合があります。

また子どもの学費や親の介護などが重なり、負担が大きくなることもあります。ライフイベントはすべて予定できることとはかぎらないため、余裕をもった資金計画を立てたいものです。

ライフイベントによる出費の例

  • ケガや病気による医療費の増加
  • 結婚や出産による出費
  • 子どもの入学や受験などによる支出
  • 親の介護費
  • 住宅の改修費
  • 車の修理代や買換えにともなう出費

2-3.定年退職後にローン支払いが残った

定年時の退職金によって、残債を一括返済しようと考えている人もいるかもしれません。しかし勤務先の退職金制度の変更や転職などによって、完済できない場合もあります。

そもそも晩婚化や出産のタイミングが遅くなることによって、住宅購入のタイミングも遅くなる傾向にあります。住宅購入の年齢が高齢化すると、住宅ローンの返済期間によっては完済時期も遅くなるため、定年退職後にローンの残債が残る人も多いようです。

定年後も継続雇用で働く人も増えていますが、60歳以降は年収が低くなる傾向があります。定年退職後にもローンが残る場合は注意が必要です。

3.住宅ローンを払えないときの対処法

住宅ローンが払えないときの対処法を紹介していきます。それぞれにメリットやデメリットがあるりますので、自分に合った方法を選択するようにしましょう。もちろん1つではなく、複数の対処法を混合して実践するのもいいでしょう。

  1. 返済条件の変更を金融機関に相談
  2. 住宅ローンの借り換え
  3. 売却
  4. リースバック
  5. 保険適用
  6. 個人再生(住宅ローン特則)
  7. 給付金・補助金
  8. リバースモーゲージ

3-1.返済条件の変更を金融機関に相談

まず住宅ローンの返済に困ったら、金融機関に相談してみましょう。あまり知られていませんが、例えば一時的に返済期限を延長する方法があります。返済期間が長くなれば月々の返済額を減らすことができ、返済を続けられる可能性が高くなります。

ほかにもボーナス払いを減額もしくは中止する、一定期間は元金の返済は据え置き、金利のみ支払うという方法もあります。しかし金利だけは支払わなければなりません。金利のみ支払っている間は元金が減りませんので、長い期間据え置くのは得策ではないでしょう。

なお、誰しも希望どおり条件を変更できるわけではありません。病気療養や親の介護による休職など、正当な理由が必要になります。

  • 返済期間を延長し、月々の支払いを減額する
  • ボーナス払いの減額もしくは中止
  • 一定期間は元金の返済を据え置き、利息のみ支払う

3-1-1.コロナ禍で支払いが難しくなったケース

2020年以降は、コロナ禍により住宅ローンの返済が困難になっている事例が増えています。この状況を救済するために、金融庁から新型コロナウイルス感染症の影響で、住宅ローンの返済に困っている人を救済するガイドラインが発表されています(個人事業主の場合は事業性ローンなど)。

住宅ローンに加え、カードローンなどほかの債務を抱える個人や個人事業主に対して、住宅を手放すことなく、住宅ローン以外の債務の免除や減額を申し出ることができる制度です。弁護士による手続き支援を無料で受けることができ、財産の一部を手元に残すことができます。また個人信用情報に登録されないことはメリットといえるでしょう。

しかし債務の免除や減額については一定の条件が必要になり、借入先である金融機関の同意が必要になりますので、詳しくは金融機関にご相談ください。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響で、失業や収入が減少しローンの返済ができない人
  • 住宅ローンに加え、新型コロナウイルス感染症の影響でカードローンなどの返済が大きくなり返済できない人
  • 資産より負債が多く、将来の収入の見通しがつかない人

3-2.住宅ローンの借り換え

現在借入している住宅ローンをほかの金融機関で借り換えることによって、返済額を減らすことができる可能性があります。もちろんより金利が低い金融機関でなければ、返済額は減りません。

また借入先の変更に際して返済期間を伸ばすことができれば、月々の返済を減らすこともできます。この場合短期的には月々の返済が減るため返済は楽になりますが、総支払額は増える可能性があるのでご注意ください。状況をみて繰り上げ返済するといいでしょう。

通常住宅ローンを借り換えしてメリットがあるのは、借り換え前後で金利差が1%以上あるときや、ローン残高が1,000万円以上あるときなどです。しかし年齢などによって借り換え自体ができない場合もあります。まずは金融機関に条件も含めて相談してみましょう。

借り換えする場合には一度抵当権を抹消して、新たに設定する必要があるため、金融機関の事務手数料や登記費用がかかります。必要になる経費については事前に確認するようにしましょう。

  • 借り換え前後で住宅ローンの金利差が1%以上ある場合
  • ローン残高が1,000万円以上あるケース
  • 返済期間が10年以上残っている場合
  • 一度も繰り上げ返済をしたことがない人

3-3.売却

住宅ローンの月々の返済額が大きく、借り換えや住宅ローンの条件変更だけではどうにもならないときは、売却して住宅ローンを完済してしまうのも1つの方法です。

不動産を所有していると固定資産税がかかります。マンションの場合は管理費や修繕積立金も支払わなくてはなりません。もし売却できればそういった費用の支払いからも解放されます。賃貸物件に住む場合は家賃がかかりますが、収入に合わせた賃料であれば月々の支払いにもゆとりが生まれるでしょう。

売却する場合のデメリットとしては、売買代金によっては残債を完済できない可能性があることです。自己資金で抹消できれば問題ありませんが、難しい場合は両親や祖父母などに援助を求めることも視野に入れてみてください。ただし資金援助は贈与税がかかるケースもあるのでご注意ください。贈与税がかからないのは年に110万円(基礎控除)までです。

ほかにも、残債と新居購入の資金を合算して借入できる「住み替えローン」を利用して、現在の返済よりも少ない返済となる物件に買い換える方法も考えられます。この場合は売却と購入に諸費用がかかるため、本当に最適な方法なのかどうか、慎重に検討するようにしてください。

3-4.リースバック

リースバックとは、自宅売却後に買主と賃貸借契約を結び、賃料を払って住み続ける方法です。売却によって得られる売買代金で、住宅ローンを返済することができます。

リースバックをおこなうと自分の資産では無くなりますが、住み慣れた家に住み続けることができ、近所からも売却したことを知られることはありません。また引っ越し費用やその労力も必要ありません。

なお、リースバックは売却にあたるので、固定資産税などの税金や建物のメンテナンス費用もかからないのが魅力です。しかし一般的な居住を目的とした個人への売却に比べて、売買代金が安い可能性があります。また賃料を支払い続けなければならないことや、将来的には賃料の値上げや退去を要求される可能性は否定できません。

リースバックを活用する場合は、通常買主(大家)と結ぶ賃貸借契約書を「定期借家契約」などにして、一定期間住むことができるようにすることも可能ですが、その期間満了後には退去しなければなりません。賃貸契約を更新できる「普通賃貸借契約」と比較し、どちらが自分にとってメリットがあるのかなどよく確認し、家族で相談するようにしましょう。

一度売却した不動産を買い戻すことができる「買戻し特約」をつけられるタイプのリースバックもあります。リースバックを検討する場合は、売却前に条件や契約内容を細かく確認し、トラブルを未然に防ぐようにしましょう。

3-5.保険適用

金融機関で住宅ローンを組む場合には、団体信用生命保険に加入することが条件になっていることが多く、その保険料は通常金利に上乗せして支払っています。契約者が死亡もしくは重度の障がいを負ったときには、残債と同額の保険金が下ります。つまり万が一の際は、その後の残債がゼロになる特殊な保険です。

実は団体信用生命保険には、いくつかの特約が用意されているのをご存知でしょうか。その特約の中でも一般的なのは「三大疾病特約」といわれるものです。がんや急性心筋梗塞、脳卒中の診断が出たときには、保険金を受け取ることができます。

加入する団体信用生命保険によって多少異なりますが、一般的な保障内容は以下のとおりです。また三大疾病の診断が下りた場合には、住宅ローンの支払いを猶予してもらえることもあります。

  • がんや急性心筋梗塞、脳卒中の診断が下りたときに保険金が支払われる
  • 三大疾病により入院したときは一時金の支払い
  • 三大疾病による入院や通院する場合は日額手当が支払われる

もし特約を付加していて、該当する病気を疾病している場合は保険金などを受け取れる可能性があります。契約から年数が経っている場合は保障内容など忘れてしまいがちなので、今一度該当する項目がないか確認してみましょう。

3-6.個人再生(住宅ローン特則)

「個人再生」とは、返済ができなくなった人の借金を減額し、その少なくなった借金を原則3年間で分割して返済する、再生計画の手続きです。

裁判所の認可決定を受ける必要がありますが、計画どおり返済できれば残りの債務などは免除されます。しかし返済期間中に返済ができなくなると、個人再生計画は取消になり、借金全額を支払う義務が復活する可能性があります。

個人再生には、個人商店など事業を営んでいる人などを対象とした「小規模個人再生手続」と、給与所得者を対象とした「給与所得者等再生手続」の2種類があります。

借金のほかに住宅ローンの借入がある人は個人再生手続きに加えて、「住宅ローンについての特則」を希望することができます。住宅ローンの残債はほかの借金のように減額することはできませんが、返済を続けることができるためマイホームを手放さなくて済みます。

個人再生手続をする場合に必要となる費用や書類は以下のとおりです。

  • 手続き費用(代理人弁護士がいる場合は30,000円、代理人弁護士がいない場合は215,000円)
  • 申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 添付書類(源泉徴収票,給与明細,財産目録,戸籍謄本,住民票など)

3-7.給付金・補助金

新型コロナウイルスに感染した人や生活困窮者などを対象とした給付金や補助金があるのをご存知でしょうか。

既に申請期間が終了したものもありますが、給付金や補助金は不定期に公表されるため、一度過去の制度を確認しておくと制度再開のときに慌てずに済みます。新型コロナウイルスに感染した人や生活に困っている人向けの給付金などを3つピックアップして、概要を紹介します。

より詳しい内容を知りたい方は、厚生労働省など公式ホームページなどで確認をしてみてください。

新型コロナウイルス感染症

生活困窮者自立支援金

「緊急小口資金等の特例貸付」を終了した世帯や、再貸付について不承認とされた世帯に対して支給

単身世帯6万円、二人世帯8万円、三人以上世帯10万円

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

時短営業などで勤務時間が短くなった人や、シフトの日数が減少した人

休業前の1日当たりの平均賃金×60%×(各月の休業日数-就労した日)

住居確保給付金

世帯主が離職や廃業後2年以内である場合、もしくは個人の責任・都合によらず給与などを得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合

 

市区町村ごとに定める額を上限に実際の家賃額を原則3ヶ月間支給(延長は2回まで最大9ヶ月間)

   

3-8.リバースモーゲージ

リバースモーゲージとは自宅に住み続けながら、その自宅を担保にして金融機関から融資を受けるシニア向けのローンです。

住宅ローンは最初にまとまった融資を受けて、毎月元本とその金利を返済しますが、リバースモーゲージは融資限度内(自宅の担保評価内)で毎月一定額もしくは一括で融資を受けて、元本の返済は契約者死亡後(契約期間終了後)に担保としている不動産を売却することで返済します。

月々の返済は利息のみで負担が少ない点や、契約後も自宅に住み続けられる点がメリットです。

しかし存命中にローンの受取総額が融資限度額に到達した場合は、その後融資は受けられなくなります。また金融機関によっては契約期間を定めているケースもあり、想定よりも長生きしたときは、元金を一括返済しなければなりません。

そのほかにも、以下の特徴を理解して利用を検討してください。

  • 金利が上昇した場合は借入残高が増えることになり、契約期間内でも融資限度額に達してしまう可能性がある
  • 契約期間中に金利が上昇した場合は、借入残高が増えて担保割れとなるリスクがある
  • 担保割れになった場合は、契約期間の途中で融資可能金額の上限に達してしまい、当初想定よりも融資を受けられる金額が少なくなる

想定より長生きした場合や金利の上昇などによっては、家を退去しなければならず借金だけが残る可能性があります。また家が財産として残らないため、相続人の同意も必要になります。家族とよく相談のうえ借入するようにしましょう。

4.住宅ローンが払えなかった人の体験談

住宅ローンが払えなくなっても誰にも相談ができなかったり、家庭のお財布事情は隠していたりすることが多いので、体験談を聞くことはほとんどないでしょう。

ここでは実際にあった3つの体験談を紹介します。

  • マンション購入の落とし穴
  • 競売前に任意売却に成功!
  • 精神的な病により競売を免れなかったケース

4-1.体験談1「マンション購入の落とし穴」

当初一戸建てとマンションのどちらを購入するか迷っていたAさんでしたが、リノベーション済みのマンションを気に入り3,800万円で購入。自己資金は800万円、3,000万円は住宅ローンを組みました。

3,000万円の借入は、Aさんの年収から考えると無理のない金額でしたが、いざ返済が始まると、管理費や修繕積立金、駐車場代など住宅ローン以外の支払いも発生するため、徐々に住宅ローンの支払いに不安を覚えるようになりました。

当初は一戸建ての購入を想定していたため、管理費などの支払いについて、あまり重要視していなかったのです。

Aさんは結局5年ほどでマンションを売却し、収入に見合った賃貸物件に引っ越しました。早い段階で売却を決められたことが、功を奏した例です。

マンションを購入する場合は、無理のない範囲であるとされる月々返済額から、管理費などの想定額を差し引いた額で検討しなければなりません。

4-2.体験談2「競売前に任意売却に成功!」

高級住宅街の一角にあるひときわ目立つ豪邸に住むBさんは、大きな会社の代表でした。

しかしある取引が原因で会社が傾いてしまいます。自分の資産を投入しますがそれでも立て直すことができず、結局倒産してしまいました。それを機に妻とは離婚し、家族と別れて暮らすようになります。

会社が倒産したため収入はなく、自分の資産を使ってしまったため住宅ローンの支払いができなくなってしまいました。

しかしBさんは早い段階で金融機関に返済ができなくなることを相談し、売却の準備もできていたため、競売になる前に任意売却をすることに成功します。

自宅は手放すことにはなりましたが、残債はすべて返済することができた一例です。

4-3.体験談3「精神的な病により競売を免れなかったケース」

Cさんは家族思いの人でしたが、あることがきっかけで精神的な病を発症してしまいます。真面目なCさんは、それでも家族を養うために一生懸命働きましたが、最終的には仕事ができなくなり、休職、退職に追い込まれ、家族とも別居してしまいます。

住宅ローンの返済ができなくなり、その後に金融機関から督促状が届いても、連絡すらできない状態が続き、滞納から6ヶ月後には、競売となってしまいました。もし早い段階で金融機関と相談できていれば、任意売却ができたのではないかと悔やまれるケースです。

5.住宅ローンが払えない!よくある質問

住宅ローンの支払いに困ったとしても、誰に相談したらよいか分からず不安になることもあるでしょう。ここからは住宅ローンの支払いについて、よくある質問をQA形式で紹介します。

  1. 親や子どもにローンを肩代わりしてもらえますか?
  2. 離婚してペアローンが払えないときどうすればいいですか?
  3. キャッシングやカードローンを利用していいですか?
  4. 半年後のボーナスで払ってもいいですか?
  5. 家のローンが払えないとすぐに差し押さえされますか?

5-1.Q1.親や子どもにローンを肩代わりしてもらえますか?

住宅ローンが払えなくなった場合、親や子どもに肩代わりしてもらうことは可能です。しかしその資金援助は贈与と見なされるため、その金額に応じて贈与税がかかります。この場合現金でのやり取りではなく、記録を残すために銀行振込などにしてくのがいいでしょう。

ちなみに年間110万円までは基礎控除となり、贈与税がかかりません。また確定申告も不要です。

また住宅ローンが払えなくなったことを理由に、親や子に売却する場合はその売買価格に気をつけましょう。相場相応の金額であれば問題ありませんが、あまりに安い価格での親族間売買は、贈与税が課せられる可能性があります。また親子間売買の場合は通常ローンが使えませんので、現金での支払いに限られます。

5-2.Q2.離婚してペアローンが払えないときどうすればいいですか?

ペアローンとは1つの不動産に対して夫婦がそれぞれ住宅ローンを借入し、お互いが連帯保証人となるローンです。

夫婦がその住宅に住むことを前提に融資しているため、金融機関によっては離婚によって別居することになると、残債の一括返済を求めてくる場合があり、結果として競売になる可能性があります。つまり返済の有無にかかわらず、離婚によって競売になる可能性があるということです。

もしペアローンの返済ができない場合はまず金融機関に相談し、条件変更ができる場合は支払期間など延長してもらい、任意売却をするのが一般的な流れでしょう。

5-3.Q3.キャッシングやカードローンを利用していいですか?

住宅ローンが払えないときに、キャッシングやカードローンで支払いたくなる気持ちは分かりますが、その場しのぎの安易な借入は絶対にやめましょう。

キャッシングやカードローンは住宅ローンより金利が高いため、利息が膨らんで総額が大きくなり、返済できなくなる可能性があります。

金融機関はキャッシングやカードローンに借入歴があると、住宅ローン審査を厳しくする傾向があります。借り換えをしたい場合にローンがとおりにくくなる可能性もあるので、安易な利用は控えましょう。

5-4.Q4.半年後のボーナスで払ってもいいですか?

今は住宅ローンの支払いはできないけれど、半年後にボーナスが入る予定があるからといってそのときまで支払わないのは、絶対にNGです。

住宅ローンは金銭消費貸借契約により支払いや、滞納したときの対応などが定められています。返済を滞納すると2〜3ヶ月後に督促状が届き、3〜4ヶ月で期限の利益を喪失することになります。6ヶ月もしたら競売になってしまいます。

住宅ローンの返済ができない場合は勝手に判断せず、必ず金融機関に相談するようにしましょう。

5-5.Q5.家のローンが払えないとすぐに差し押さえされますか?

家のローンが払えない状況はいいとはいえませんが、すぐに差し押さえられて退去しなければならないわけではありません。

通常は数か月後に督促状などが届き、半年程度で競売になります。しかしその間ただ待っているだけではいけません。まずは支払いができない状態であることを、できるだけ早く金融機関に相談することをおすすめします。

状況によっては支払い期間を延長してもらったり、ボーナス払いを減額したりなど条件を変更できる可能性があります。

まとめ.住宅ローンの返済が払えないなら早めの対策を

住宅ローンを滞納してしまったとき、あるいは今後返済が難しくなる可能性がある場合は、早めの金融機関への相談が不可欠です。住宅ローンの条件変更や任意売却など、競売になる前にできることはあるはずです。諦めずに何らかの対処をするようにしましょう。

ただし返済に困ったとしても、キャッシングやカードローンは金利が高いため自分の首を絞めることになりますのでおすすめできません。資金に困った際は、金融機関や親族などへの相談や、国が用意している補助金などの利用を検討するようにしましょう。

この記事の監修者

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