相続した土地を使う予定がない場合や、相続税を納付する資金を捻出したい場合などは、相続した土地を売却することが有力な選択肢となります。
では、相続した土地を売却する際にはどのような税金がどの程度かかるのでしょうか?
今回は、相続した土地を売却する際にかかる税金について詳しく解説します。
かかる税金をあらかじめ把握しておくことで、土地の売却に伴う資金計画を立てやすくなります。
相続した土地の売却でかかる主な税金
相続した土地を売却する際は、さまざまな税金がかかります。
ここでは、主にかかる税金とその概要を解説します。
- 相続税
- 印紙税
- 登録免許税(相続)
- 登録免許税(抵当権抹消)
- 譲渡所得税
相続税
相続税とは、亡くなった人(「被相続人」といいます)の遺産や一定の生前贈与に対してかかる税金です。
相続税はすべての相続でかかるのではなく、遺産総額などが次の基礎控除額を超える場合にのみかかります。
- 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
被相続人の遺産は、土地や建物、預貯金などすべてがこの相続税の対象となり、相続開始後に売却した土地や建物も例外ではありません。
相続が起きてからすぐに売却したからといって、その土地が相続税の対象から外れるわけではないことには注意してください。
印紙税
印紙税とは、契約書や領収証などの文書を対象とする税金です。
相続した土地の売却時の売買契約書も、印紙税の課税対象とされています。
土地の売買契約書にかかる印紙税の額は、契約書に記載した売買金額に応じてそれぞれ次のとおりです。
なお、2024年3月31日までに作成された契約書には、軽減税率が適用されます。
契約金額 | 印紙税額 (2024年年3月31日までの軽減税率) |
---|---|
50万円以下 | 200円 |
100万円以下 | 500円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
1億円以下 | 30,000円 |
5億円以下 | 60,000円 |
10億円以下 | 160,000円 |
50円以下 | 320,000円 |
50億円超 | 480,000円 |
なお、土地の売買契約書は2通作成したうえで、売主と買主がそれぞれ1通保管することが多いです。
収入印紙も、売主と買主が自分の保管する分に貼付すべき分をそれぞれ負担することが一般的です。
登録免許税(相続)
相続した土地を売却する際、被相続人(亡くなった人)から買主に直接名義変更をすることはできません。
相続した土地を売却するには、土地の名義を被相続人から相続人(相続財産を受け取る人)へと変えることが必要です。
この名義変更のことを「相続登記」といいます。
相続登記には、次の税金や費用がかかります。
税金・費用 | 金額の目安 |
---|---|
登録免許税 | 土地の評価額×4/1,000 |
必要書類の取得費用 | 相続の状況などによって異なり、おおむね1万円~2万円程 |
司法書士報酬 | 8万円~15万円程度(司法書士に手続きを依頼した場合) |
登録免許税(抵当権抹消)
相続した土地に「抵当権」が付いている場合は、遅くとも土地の引き渡し時点までに抵当権を抹消しなければなりません。
抵当権とは、ローンを組んで土地を購入した場合に、その土地に付される担保のことです。
契約どおりにローンの返済ができなくなった場合、金融機関がその土地を競売(けいばい)にかけて、売却対価からローン残債の返済を受けるための仕組みです。
抵当権の抹消には、次の費用などがかかります。
税金・費用 | 金額の目安 |
---|---|
登録免許税 | 抵当権を抹消する不動産の数×1,000円 |
司法書士報酬 | 1万円~2万円程度(司法書士に手続きを依頼した場合) |
なお、抵当権を抹消するには、原則としてローン残債をすべて返済しなければなりません。
ローン残債の繰り上げ返済をする場合は、金融機関へ繰り上げ返済手数料がかかることがあります。
繰り上げ返済にかかる手数料は、1万円から3万円程度です。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、土地を売って得た利益に対してかかる税金です。
納付書などが送られてくるのではなく、売主が自ら計算をして譲渡所得税の申告と納税をしなければなりません。
譲渡所得税の計算方法は後ほど詳しく解説しますが、土地の売却額がわかった時点で税理士や管轄の税務署に相談をして試算をしてもらっておくとよいでしょう。
相続した土地の売却相場が知りたい場合は、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する「おうちクラベル」をご利用ください。
おうちクラベルは、1度の入力で複数の不動産会社に査定の依頼をすることができる不動産一括査定です。
複数社による査定額を比較することで、その土地の売却適正額を把握しやすくなります。
相続した土地を売却する際の譲渡所得税の計算方法とポイント
相続した土地を売却する場合にかかる譲渡所得税は、次の式で算定します。
- 課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
- 譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率
ここでは、それぞれの計算要素の概要を解説します。
参照元:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)(国税庁)
収入金額
収入金額は、その土地を売ったことによって買主から受け取る金銭の額です。
金銭以外の物や権利で対価を受け取る場合は、その物や権利の時価が収入金額となります。
取得費
取得費とは、売却した土地を取得するのに要した費用です。
次の費用などが該当します。
- 売った土地の購入代金や購入手数料
- 土地を購入したときや相続したときに納めた登録免許税、登記費、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税
- 借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
- 土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
- 土地の取得に際して支払った土地の測量費
- 所有権などを確保するために要した訴訟費用(相続争いに関する訴訟費用を除く)
これは、例えば所有者について争いのある土地を購入した後、紛争を解決して土地を自分のものにした場合に、それまでにかかった訴訟費用のことをいいます。
- 建物付の土地を購入してその後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
- 土地を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
- 既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件(今回売却する土地)を取得することとした場合に支出する違約金
取得費は相続人である売主が自ら支出した費用のみならず、被相続人が支払った費用を引き継ぐことが可能です。
なお、相続した土地は取得費がわからないことが少なくないでしょう。
その場合は、「収入金額×5%」で取得費を計算します。
譲渡費用
譲渡費用とは、その土地を売却するために直接要した費用です。
次の費用などが譲渡費用に該当します。
- 土地を売るために支払った仲介手数料
- 印紙税で売主が負担したもの
- 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
- 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
一方、固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用や、売った代金の取り立てのための費用などは譲渡費用になりません。
なぜなら、これらはその土地を売るために直接かかった費用とまではいえないためです。
特別控除額
譲渡所得税には、さまざまな特別控除が存在します。
特別控除とは、要件を満たすことで適用できる実際の支出を伴わない控除のことです。
相続をした土地の売却で使える可能性がある主な特別控除は次のとおりです。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除の特例
- 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の 800万円特別控除
- 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除
特別控除にはそれぞれ要件があるため、あらかじめ税理士などの専門家へ特別控除適用の有無について相談してください。
税率
譲渡所得税とこれに伴う住民税の税率は、売却した土地の所有期間がその年1月1日時点で5年超であるか5年以下であるかによって2段階に分かれています。
それぞれの税率は次のとおりです。
2037年までは、所得税率の2.1%分の復興特別所得税が加算されています。
売却した年の1月1日時点での所有期間 | 税率 | |||
所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 | |
長期譲渡所得(5年超) | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
なお、所有期間は被相続人の所有期間を引き継ぐことが可能です。
そのため、土地を相続してからすぐに土地を売却する場合でも、被相続人がその土地を5年超所有している場合は長期譲渡所得に該当します。
相続した土地を売却する場合に使える税金の特例
相続した土地を売却する場合の譲渡所得税の計算では、さまざまな特例の適用が受けられる可能性があります。
主な特例は次のとおりです。
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
1つ目は、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」です。
これは、その土地を相続するにあたって相続税を支払っていた場合において、相続税のうちその土地にかかる分の額を譲渡所得税の計算をする際の取得費に加算することができる特例です。
この特例によって取得に加算する金額は、次の式で算定します。
- 取得費に加算する相続税額=その者(売主)が支払った相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した土地の相続税評価額÷その者の取得財産の価格等
計算式は複雑に見えるかもしれませんが、その者が支払った相続税のうち、その土地の分の相続税を算定するための計算式です。
その相続で相続税を支払っている場合は、この特例の適用を受けられる可能性があります。
あらかじめ税理士などの専門家に相談してください。
参照元:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除
2つ目は、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除」です。
これは、一定の要件を満たす場合に、最大3,000万円の特別控除の適用が受けられる特例です。
この特例を受けるには、次の要件などを満たさなければなりません。
なお、ここでは被相続人が居住していた家屋(「被相続人居住用家屋」といいます)を取り壊し、その敷地である土地を売却する場合を前提として要件を解説します。
- 被相続人居住用家屋が次の3つの要件をすべて満たすものであること
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物(マンションなど)でないこと。
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
- 売主が、相続などによって被相続人居住用家屋とその敷地である土地を取得したこと
- 相続の時から譲渡の時まで、事業の用や貸付けの用、居住の用など他の用途に供されていないこと
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
- 他の一定の特例の適用を受けていないこと
特例の適用を受ける際は、税理士などの専門家に相談のうえ要件の確認をしてください。
参照元:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
相続した土地を売却する流れ
相続した土地を売却する際の一般的な流れは次のとおりです。
- 相続登記をする
- 不動産会社に査定の依頼をする
- 土地の売却を依頼する不動産会社を選定する
- 不動産会社と媒介契約を締結する
- 土地を売りに出す
- 売買契約を締結する
- 土地を引き渡す
- 税金の申告(確定申告)をする
相続登記をする
故人名義のままの土地をそのまま売却することはできません。
売却の前に相続登記を行い、土地を相続人などの名義へと変えておく必要があります。
相続登記をするには、原則として遺産分けの話し合いを行い、必要書類を集めたり作成したりしなければなりません。
そのため、遺産分けの話し合いがスムーズにいったとしても、相続登記に取り掛かってから相続登記が完了するまでは1か月から2か月程度を要することが多いです。
不動産会社に査定の依頼をする
遺産分けの話し合いがまとまる見込みが立ったら、不動産会社に査定の依頼をします。
査定とは、その土地の売却想定額を不動産会社に試算してもらう手続きです。
査定を受けることで、その土地がいくらで売れるのか想定することができます。
査定は、1社のみではなく複数の不動産会社に依頼することが鉄則です。
なぜなら、不動産会社によって査定額が異なることは珍しくないためです。
査定結果が出たら、税理士などの専門家に相談をして税金の試算をしてもらっておいてください。
複数の不動産会社に査定の依頼をする際は、1度の入力で複数の不動産会社に査定の依頼をすることができる「おうちクラベル」をご利用ください。
土地の売却を依頼する不動産会社を選定する
査定の結果を踏まえて、土地の売却を依頼する不動産会社を選定します。
不動産会社は査定額の高さのみで選ぶのではなく、査定額への説明や担当者の対応、アドバイスの内容などを総合的に踏まえて選定するとよいでしょう。
なぜなら、査定額はあくまでもその不動産会社が考える売却予想額でしかなく、その額で土地を売却できる保証ではないためです。
不動産会社と媒介契約を締結する
土地の売却を依頼する不動産会社を選定したら、不動産会社との間で媒介契約を締結します。
媒介契約は次の3種類があります。
希望に合った媒介契約を選択してください。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
他の不動産会社へ重ねての依頼 | 不可 | 不可 | 可 |
自己発見取引 (自分で買主を見つけて売却すること) | 不可 | 可 | 可 |
指定流通機構(レインズ)への登録義務 | 5営業日以内 | 7営業日以内 | 義務なし |
報告頻度 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 指定なし |
土地を売りに出す
媒介契約を締結したら、相続した土地を売りに出します。
土地の販売活動は、原則として依頼先の不動産会社が行います。
売買契約を締結する
買い手が土地の購入を決めたら、売買契約を締結します。
売買契約の締結時は、買主から手付金の交付を受けることが多いです。
手付金の額に明確な決まりはないものの、売買価格の5%から10%程度とされることが一般的です。
土地を引き渡す
あらかじめ取り決めた日程にて、土地を引き渡します。
この引き渡し日のことを決済といい、次のことが行われることが一般的です。
- 売主から買主へ土地の名義を変えるための書類への署名押印
- 買主側のローンの実行
- 買主から売主への売買代金(手付金を除く全額)支払い
決済後は、立ち会った司法書士が名義変更の登記を申請することで、土地が正式に買主の名義へと変わります。
税金の申告(確定申告)をする
相続した土地の売却で利益が出る場合、売却日の属する年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。
特別控除の適用を受けた結果、税額がゼロとなる場合であっても確定申告は必要となるため、忘れずに行うようにしてください。
相続した土地を売却する場合のその他の注意点
相続した土地を売却する際は、次の点にも注意が必要です。
- 故人名義のままでは土地を売却できない
- 売却を急がない
- 小規模宅地等の特例の要件に注意する
- 売れない場合は不動産買取を検討する
故人名義のままでは土地を売却できない
相続した土地は、故人名義のままで売却することはできません。
売却の前に、相続人などに名義を変える相続登記をする必要があります。
そのため、相続した土地の売却を希望する際は、あらかじめ相続登記を済ませてください。
売却を急がない
相続した土地を売却する理由はさまざまですが、相続税を支払うために売却する場合も少なくありません。
その場合は、相続税の納税期限に間に合わせたいことでしょう。
相続税の申告と納税の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
遺産分けの話し合いや相続登記などの期間を含めると、10か月はあっという間です。
これに間に合わせようとすると、売却を非常に急がなければなりません。
売却を急ぐと、土地を安く買い叩かれてしまうリスクが高くなります。
そのため、可能な限り売却を急がずに済むよう、余裕を持った資金計画を立てておく必要があります。
小規模宅地等の特例の要件に注意する
小規模宅地等の特例とは、相続税の計算上、一定の要件を満たすことで土地を最大8割減で評価することができる特例です。
相続税の申告に際しては、この特例の適用を受けることが多くあります。
しかし、小規模宅地等の特例では、その土地を相続税の申告期限まで有していることが要件の1つとなっています。
小規模宅地等の特例の適用を受けた土地を先走って売却してしまうと、小規模宅地等の特例の適用が受けられなくなって追加での納税が必要となる可能性があります。
そのため、相続税の申告が必要となる土地を売却する際は、税理士などの専門家に相談しておくことをおすすめします。
売れない場合は不動産買取を検討する
土地を売りに出しても、土地がなかなか売れない場合もあるでしょう。
その場合は、不動産買取が選択肢の1つとなります。
不動産買取とは、不動産会社に直接土地を買い取ってもらう取引形態です。
市場で売りにくい土地であっても買い取ってもらえる可能性があるほか、スピーディーに土地を売却できる可能性が高くなります。
一方で、不動産買取の場合の売買価格は、市場での売却の7割から8割程度と低くなることが一般的です。
まとめ
相続した土地を売却する際は、印紙税や登録免許税、譲渡所得税などの税金の対象となります。
特に譲渡所得税は高額となる可能性も否定できません。
そのため、相続した土地を売却する際は、税金の試算をしておくことをおすすめします。
試算をしておくことで、資金計画を立てやすくなります。
売却にかかる税金を正しく試算するには、土地の売却額を想定しておく必要があります。
土地の売却予想額を知りたい場合は、ぜひ「おうちクラベル」をご利用ください。
おうちクラベルは、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する不動産一括査定です。
複数社による査定額を比較することで、その土地の売却適正額を把握しやすくなるほか、その土地の売却に強い不動産会社を見つけやすくなるでしょう。