相続した土地はすぐ売却すべき?メリット・注意点・流れを解説

相続した土地をすぐに売却する事情がある場合もあるでしょう。

相続した土地をすぐに売却することにはどのようなメリットがあり、どのような点に注意すべきでしょうか?

今回は、相続した土地をすぐに売却するメリットや注意点、かかる税金などについて詳しく解説します。

相続した土地をすぐに売るメリット

相続した土地をすぐに売るメリット

相続した土地をすぐに売る主なメリットは次のとおりです。

  • 相続税の納税資金の確保ができる
  • 固定資産税など維持費の負担を抑えやすくなる
  • メンテナンスの手間を抑えやすくなる
  • 共有によるトラブルを避けやすくなる
  • 譲渡所得税の特例が受けられる可能性がある

相続税の納税資金の確保ができる

相続した土地をすぐに売却することで、相続税の納税資金が確保しやすくなります。

相続税は、遺産などに対してかかる税金です。

相続税がかかる場合、亡くなった人(「被相続人」といいます)の死亡日の翌日から10か月以内に申告と納税をしなければなりません。

なお、相続税はすべての相続でかかるものではなく、遺産総額や過去の一定の贈与の合計額(「課税価格の合計額」といいます)が、基礎控除額以下である場合はかかりません。

相続税の基礎控除額は、次の式で算定します。

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税がかかるかどうかわからない場合は、税理士などの専門家へご相談ください。

固定資産税など維持費の負担を抑えやすくなる

土地を使っていなくても、所有している限り固定資産税がかかり続けます。

固定資産税とは、毎年1月1日時点の所有者に対して課される税金であり、土地のある地域によっては、ほかに都市計画税の負担も必要です。

土地を売ることで、翌年以降の固定資産税などを支払う必要がなくなります。

メンテナンスの手間を抑えやすくなる

使っていない土地は、あっという間に雑草が生い茂ります。

放置すると近隣住民の迷惑となりかねず、定期的に伐採や剪定をしなければなりません。

しかし、遠方に住んでいる場合は草刈りに出向くだけでも大変でしょう。

地域の事業者へ委託することもできるものの、その場合は費用がかかります。

一方、土地を売却すると、以降はメンテナンスの手間が不要となります。

共有によるトラブルを避けやすくなる

たとえば相続人が長男と二男の2名である場合、法律で決まった相続分(「法定相続分」といいます)はそれぞれ2分の1です。

しかし、遺産をきれいに2分の1ずつに分けられるケースはさほど多くありません。

主な遺産がA土地しかない場合、遺産分け(「遺産分割」といいます)に苦慮すると考えられます。

この場合、長男と二男が合意のうえで長男が全財産を相続することとしたり、二男がA土地を相続する代わりに、二男から長男へA土地の評価額の1/2相当額の代償金を支払うこととしたりすることで解決を図ることは可能です。

ただし、一方の相続人が全財産を相続することについて合意ができない場合や、代償金を支払うだけのお金がない場合は、これらの方法をとることはできません。

そこで苦肉の策として、土地を1/2ずつ共有することがあります。

しかし、共有となった土地をその後賃貸したり駐車場用地として整地したりする際は、原則として長男と二男が協力しなければなりません。

そもそも遺産分割の話し合いがまとまらなかった兄弟が土地を共有すると、土地の活用についてもその都度トラブルとなったり心理的負担が生じたりする可能性があります。

相続してからすぐに土地を売却してそのお金を分けることで、共有状態による以後のトラブルを避けることが可能となります。

譲渡所得税の特例が受けられる可能性がある

土地を売って売却益が生じると、これに対して譲渡所得税がかかります。

譲渡所得税にはさまざまな特例が設けられており、相続した土地をすぐに売る場合、「取得費加算の特例」や「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除」などの特例の適用が受けられる可能性があります。

そのため、相続した土地をいずれ売るつもりである場合はすぐに売却した方が得策です。

しかし、相続した土地がいくらで売れるのかわからないと、売却するかどうかを決めることは困難です。

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相続した家をすぐに売る際の注意点

相続した家をすぐに売る際の注意点

相続した土地をすぐに売る際は、次の項目に注意が必要です。

  • 売却を急ぐと買い叩かれるリスクがある
  • 故人名義のままでは売却できない
  • 小規模宅地等の特例の要件を満たせなくなる可能性がある

売却を急ぐと買い叩かれるリスクがある

相続した土地をすぐに売却する理由が、相続税の納税資金確保であることは少なくありません。

しかし、申告期限に間に合わせようと土地の売却を急ぐと、買い手から足元を見られて安く買い叩かれるリスクが生じます。

そのため、相続した土地の売却はできるだけ早くから進めることをおすすめします。

故人名義のままでは売却できない

故人名義のままでは、土地は売却することができません。

そのため、相続した土地をすぐに売却するとしても、売却の前に土地の名義を相続人などへと変えておく必要があります。

この手続きを「相続登記」といいます。

誰がその土地を相続するかの話し合い(「遺産分割協議」といいます)がまとまっていても、書類の取得期間を含めると相続登記の完了までには1か月から2か月程度がかかります。

そのため、相続した土地をすぐに売却したい場合は、相続登記を早期に済ませておく必要があります。

小規模宅地等の特例の要件を満たせなくなる可能性がある

小規模宅地等の特例とは、相続税の計算上、土地を最大8割減で評価できる特例です。

この特例を受けるための要件は土地の用途や土地の取得者などによって異なるものの、相続税の申告期限までその土地を有していることが要件の1つとなっている場合があります。

そのため、先立って売却をしてしまうと小規模宅地等の特例を受けられなくなるかもしれません。

相続で相続税がかかる場合は、相続した土地を売却するにあたって小規模宅地等の特例の要件にも注意が必要です。

相続した土地をすぐに売る場合の流れ

相続した土地をすぐに売る場合の流れ

続いて、相続した土地をすぐに売る際の流れについて解説します。

売却の流れは次のとおりです。

  • 遺産分割協議をする
  • 相続登記をする
  • 不動産会社に査定の依頼をする
  • 土地の売却を依頼する不動産会社を選定する
  • 不動産会社と媒介契約を締結する
  • 相続した土地を売りに出す
  • 土地の売買契約を締結する
  • 土地を引き渡す

遺産分割協議をする

はじめに、遺産分割協議をして誰がその土地を取得するのか決めます。

遺産分割協議の成立には相続人全員による合意が必要であり、1人でも納得しない相続人がいる場合は協議を成立させることができません。

また、行方不明の相続人がいる場合は家庭裁判所に失踪宣告の申立をする必要があり、通常の手続きよりも時間がかかります。

遺産分割協議を成立させることが難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談のうえ解決を図るようにしてください。

相続登記をする

遺産分割協議がまとまり誰がその土地を相続するか決まったら、相続登記を行います。

相続登記は自分で行うこともできますが、自分で相続登記をしようとすると1つずつ調べながら進めていくことに時間がかかる傾向にあります。

そのため、相続した土地をすぐに売却したい場合は、司法書士へ依頼するとよいでしょう。

不動産会社に査定の依頼をする

次に、不動産会社に査定の依頼をします。

査定とは、不動産会社にその土地の売却適正額を算定してもらう手続きです。

査定の依頼は、相続登記が終わり土地の名義が相続人へと変わってからではなく、遺産分割協議がまとまった時点から取り掛かっても構いません。

相続した土地をより高く売りたい場合は、複数の不動産会社に査定の依頼をすることをおすすめします。

なぜなら、不動産会社によって査定額が異なることは珍しくなく、複数の不動産会社から査定を受けることでその土地の売却適正額が把握しやすくなるためです。

また、複数社の査定額を比較することで、その土地をより高値で売ってくれる不動産会社を見つけやすくなります。

しかし、自分で1社1社不動産会社を回って査定の依頼をするには、膨大な手間と時間が必要です。

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土地の売却を依頼する不動産会社を選定する

査定額が出揃ったら、土地の売却を依頼する不動産会社を選定します。

不動産会社は査定額の高さのみで決めるのではなく、査定額への説明や担当者の対応などを総合的に踏まえて決めることをおすすめします。

査定額はあくまでもその不動産会社が考える売却予想額でしかなく、必ずしもその価格で売ってくれるとの保証ではないためです。

不動産会社と媒介契約を締結する

土地の売却を依頼する不動産会社を決めたら、不動産会社と媒介契約を締結します。

媒介契約には次の3種類があります。

  • 専属専任媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 一般媒介契約

状況や希望に沿った媒介契約を選択してください。

専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
他の不動産会社へ重ねての依頼 不可 不可
自己発見取引
(自分で買主を見つけて売却すること)
不可
指定流通機構(レインズ)への登録義務 5営業日以内 7営業日以内 義務なし
依頼者への業務状況の報告頻度 1週間に1回以上 2週間に1回以上 指定なし

一般的に、比較的売りづらい土地である場合は「専属専任媒介契約」や「専任媒介契約」を選択します。

なぜなら、これらは重ねて他社との契約ができずその土地の売買契約が成立したらその不動産会社が仲介手数料を得られるため、不動産会社に販売活動へ力を入れてもらいやすいためです。

相続した土地を売りに出す

媒介契約を締結したら、相続した土地を売りに出します。

購入希望者からの問い合わせには、原則として不動産会社が対応してくれます。

土地の売買契約を締結する

購入希望者が土地の購入を決め、諸条件の交渉もまとまったら、土地の売買契約を締結します。

この時点では、買主から売主に対して売買代金の5%から10%程度の手付金が交付されることが一般的です。

これ以降、相手方が履行に着手するまでの間に契約を解除する場合はそれぞれ次の対応が必要となります。

  • 売主からの解除:手付金の倍額返し
  • 買主からの解除:手付金の放棄

土地を引き渡す

あらかじめ取り決めた日に、相続した土地を引き渡します。

この引き渡し手続きを決済といいます。

決済では、一般的に次のことが同時に行われます。

  1. 買主のローンの実行
  2. 買主から売主への売買代金全額(手付金を除く)の支払い
  3. 売主から買主へ土地の名義を変えるための書類への署名押印

その後、決済に立ち会った司法書士が所有権移転登記を行い、土地の名義が正式に買主へと変更されます。

相続した土地をすぐに売る際にかかる税金

相続した土地をすぐに売る際にかかる税金

相続した土地を売却する場合は、さまざまな税金がかかります。

主にかかる税金は次のとおりです。

  • 相続税
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 譲渡所得税

相続税

相続税とは、遺産や一定の生前贈与に対してかかる税金です。

相続した土地をすぐに売却する場合でも、その土地が相続税の対象から外れるわけではありません。

たとえすぐに売却しても、売却しなかった場合と同じく相続税の対象となります。

ただし、相続税は課税価格の合計額が基礎控除額以下である場合にはかかりません。

相続税がかかるかどうか確認したい場合は、税理士などの専門家へご相談ください。

登録免許税

登録免許税とは、登記などに対してかかる税金です。

相続した土地を売却するには、売却に先立って相続登記をしなければなりません。

相続登記にかかる登録免許税額は次のとおりです。

  • 登録免許税(相続)=その土地の固定資産税評価額×0.4

なお、相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、別途8万円から15万円程度の報酬がかかります。

印紙税

印紙税とは、契約書や領収証などに対してかかる税金です。

土地の売買契約書も印紙税の課税対象であり、税額は契約金額に応じて次のとおりです。

2024年3月31日までに作成する契約書では軽減税率が適用されます。

契約金額
(マンションの売買価格)
本則税率 軽減税率
(2024年3月31日まで)
50万円以下 400円 200円
100万円以下 1,000円 500円
500万円以下 2,000円 1,000円
1,000万円以下 10,000円 5,000円
5,000万円以下 20,000円 10,000円
1億円以下 60,000円 30,000円
5億円以下 100,000円 60,000円
10億円以下 200,000円 160,000円
50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円

譲渡所得税

譲渡所得税とは、土地を売って得た利益に対してかかる税金です。

次の式で計算します。

  • 課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
  • 譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率

譲渡所得税にはさまざまな特例が設けられており、特例の適用を受けることで税額がゼロとなる可能性もあります。

相続した土地をすぐに売却する際に使える可能性がある主な特例は次のとおりです。

  • 取得費加算の特例
  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る特別控除

ただし、特例の適用にはさまざまな要件が設けられているため、相続した土地を売却する際は税理士などの専門家へ相談してください。

取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、売主がその相続で支払った相続税のうちその土地にかかった分の相続税を「取得費」に加算することができる特例です。

この特例の適用を受けるには、相続した土地を相続開始後3年10か月以内に売却しなければなりません。

被相続人の居住用財産(空き家)に係る特別控除

「被相続人の居住用財産(空き家)に係る特別控除」とは、相続した空き家(被相続人の元自宅)を売った場合に、最大3,000万円の特別控除の適用が受けられる特例です。

被相続人の元自宅とその敷地である土地をセットで売却することが原則であるものの、被相続人の元自宅を取り壊して土地のみを売却する場合も適用を受けられる可能性があります。

まとめ

相続した土地をすぐに売却することにはメリットが少なくありません。

たとえば、売却すると翌年以降の固定資産税の支払いが不要となることやメンテナンスの手間がかからなくなること、まとまった対価が得られる可能性があることなどが挙げられます。

相続した土地を売却する際は、査定の依頼から始めてください。

よりよい条件で土地を売るには、複数の不動産会社に査定の依頼をすることが重要です。

しかし、自分で1社1社不動産会社を回って査定の依頼をするには、膨大な手間を要します。

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複数社の査定額を比較することで、その土地の売却適正額を把握しやすくなるほか、その土地をより高く売ってくれる不動産会社を見つけやすくなります。

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この記事の監修者

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