住宅ローンの返済が困難になり滞納が始まっている状況では、「任意売却」によって自宅を売却するという選択肢があります。
任意売却は自宅が競売にかけられることを回避するための手段ではありますが、期限内に買い手を見つけなければならないため、迅速に対応しなければなりません。しかし一方で、売却活動を始めたもののなかなか買い手が見つからず、どうすればいいかわからないという悩みを抱えている人も少なくありません。
そこで本記事では、任意売却が思うように進まない場合の対策について詳しく解説します。
1.任意売却とは
住宅ローンの支払いを滞納し始めたのちに検討すべき売却方法に「任意売却」というものがあります。まずは不動産会社を通じた一般的な売却方法とは異なる点と、任意売却を利用するメリット・デメリットについて解説します。
1-1 .住宅の売却方法の1つ
住宅を売却する方法には「一般売却」と「任意売却」の2つがあり、これらの大きな違いは住宅を売却したあとにローン残債が残るかどうかという点にあります。
通常住宅ローンが残っている住宅を売却する場合、売却金を返済にあてることでローンを完済します。売却金額でローンを完済できる場合は、通常の売却方法である「一般売却」をりようできます。
それに対して「任意売却」は、住宅を売却したのちも住宅ローンが残ってしまう場合に行われる売却方法です。住宅ローンは滞納し続けると、担保にした自宅が差し押さえられて競売にかけられてしまうリスクがあるため、金融機関の同意を得たうえで自宅を売却し、残りの返済金額を少なくする救済措置として用意されている制度です。
1-2 .競売とは
競売とは、担保にした物件を裁判所が強制的に売却することを指します。
住宅ローンを借り入れる際、融資を行う金融機関は購入対象の不動産に対して「抵当権」を設定します。抵当権は、万が一債務者が住宅ローンを支払えない状況に陥った際に、金融機関が住宅を差し押さえて強制的に売却することで、融資した資金を回収する権利を与えるものです。
競売は住宅ローンの支払いが滞納された場合に実行されますが、滞納が始まってすぐに競売にかけられるわけではありません。住宅ローンを滞納し始めた最初の1~2ヶ月の間は、金融機関から電話や書面による支払いの督促が行われ、滞納期間が3~4ヶ月をすぎる頃にはローン残債の一括返済を求められるようになります。最終的に6ヶ月以上を滞納し、一括返済も不可能と判断された場合に、自宅が裁判所に差し押さえられ、強制的に売却=競売にかけられるという流れです。
自宅が差し押さえられてしまうと、ローン債務者がその家に居住していたとしても、個人の判断で不動産を処分(売却や譲渡)できなくなってしまうため、任意売却を含めた早い対処が求められるということになります。
1-3 .任意売却と競売の違い
任意売却と競売には、大きく分けて2つの違いがあります。
1つ目の違いは、任意売却は物件の所有者の意思で売却活動をコントロールできるという点です。
任意売却は金融機関の同意こそ必要ですが、不動産会社を通じて買主を探し、引き渡しの時期などの交渉も可能です。
それに対して競売の場合は、自宅を差し押さえられたあとの売却手続きは、全て裁判所が特殊なルートで行います。売却が決まった時点で所有権も買主に映るため、期日までに立ち退かなければ不法占拠の扱いを受けることになります。
もう1つの違いは売却価格です。任意売却は価格の交渉ができる分、一般的な不動産売買の相場と近い価格で売却できる可能性があります。一方競売では市場価格の60~80%程度で売却されることがほとんどです。
任意売却も競売も売却後に住宅ローン残債が残るという点では共通していますが、任意売却を利用するほうが残債を少なくでき、その後の返済負担を軽減できます。
2.任意売却のメリット
住宅ローンの返済が滞った際に、任意売却を行うことで得られるメリットは大きく分けて以下の6つが挙げられます。
- 分割返済できるので返済が現実的になる
- 売却するかどうかを自分の意志で決められる
- 市場価格に近い価格で売却できる可能性がある
- 手数料や住み替えにかかる費用負担が軽い
- プライバシーを侵害されない
- 同じ家に住み続けられる可能性がある
1つずつ詳しく解説します。
2-1 .分割返済できるので返済が現実的になる
任意売却は住宅ローン残債が残る場合に行うため、自宅売却後も継続してローンの返済をする必要があります。しかし任意売却後は、金融機関が債務者の経済的な事情を考慮したうえで、無理なく分割返済できるプランを提案してもらえる場合もあり、月々の返済負担額を現実的な範囲内に抑えられる点は大きなメリットです。
2-2 .売却するかどうかを自分の意思で決められる
先述した競売の場合は、物件売却の主導権を握るのは裁判所であるため、売却の条件や明け渡しの時期などに債務者の希望は一切考慮されません。
それに対して自宅を任意売却する場合は、売却先を見つける期限こそありますが、基本的には通常の不動産売買と同じ手順や方法で売却できます。そして買主の承諾次第では、想定していたより好条件で売却できる可能性もあるのです。
2-3 .市場価格に近い価格で売却できる可能性がある
任意売却は債務者の意思を反映した売却活動を行えるという性質上、通常の不動産売買における市場価格に近い価格での売却も目指せるという利点があります。
競売は通常の不動産売買とは異なる方法で売却先を決めることもあり、内見・広告・入札方法など、細部にわたって厳しい制限があります。そのため市場価格よりも低い価格で取引されます。
住宅ローン残債が残る任意売却においては、自宅の売却金額が高くなるほど、任意売却後の返済負担を軽くできます。そのため物件の状態や市場動向、買主への交渉次第で、相場と同水準あるいはさらに高値で売却できる可能性のある任意売却は、ローン債務者にとって有効な売却方法と言えます。
2-4 .手数料や住み替えにかかる費用負担が軽い
不動産を売却する際には、売主であっても不動産会社への仲介手数料や登録免許税など、さまざまな費用を負担する必要があります。
任意売却を利用すると、自宅を売却する際にかかる費用を売却費用でまかなえます。さらに買主との交渉により高値で売却できた場合、自宅の売却にかかる費用に加え、新居への引っ越し費用もまかなえる可能性があり、新生活を低コストでスタートできるのです。
2-5 .プライバシーを侵害されない
裁判所によって自宅が競売にかけられると、競売物件の情報がインターネットや新聞に掲載されるため、親戚や職場の人・友人などに住宅ローン滞納の事実を知られてしまう可能性があります。
一方任意売却の場合は、通常の不動産売買と同じ方法で売却活動を行うため、ローンを滞納しているということを伏せた状態で買い手を探すことが可能です。他人に知られたくないプライバシーを守りながら自宅を売却できるという点も、任意売却を利用するメリットです。
2-6 .同じ家に住み続けられる可能性がある
売主が買主を選べる任意売却においては、自宅を売却してもそのまま住み続けられる「リースバック」という方法があります。
「リースバック」とは、売買契約と賃貸借契約がセットになった不動産取引です。自宅を一度不動産会社や投資家に売却したのち、新たな所有者と賃貸借契約を結ぶことで、自宅売却後も住み慣れたマイホームに住み続けることが可能になります。
ただしリースバックは金融機関・債務者・リースバック会社という三者間での交渉が必要になるため、成立させるのは容易ではないため、経験豊富な専門家の力が必要不可欠です。
3.任意売却のデメリット
住宅ローンが残る状態でも自宅を売却できるという大きなメリットを持つ任意売却ですが、利用するにあたって知っておきたい4つのデメリットもあります。
- 信用情報に傷がつく
- 売却には金融機関の同意が必要
- 期限までに売れなかったら競売になる
- 残債分の支払いは続く
任意売却利用前に必ず確認しておきましょう。
3-1 .信用情報に傷がつく
任意売却を行うということは、住宅ローンの支払いを滞納しているということです。ローンの返済が滞ったことは、個人信用情報機関と呼ばれるところに事故情報として一定期間記録されることになります。
個人信用機関は、金融機関などが個人の支払い能力や支払いの意思を確認するために参照するものです。つまり住宅ローンを滞納してしまうことで、ほかのローンを組んだりクレジットカードを作ったりする際に、審査に通ることが難しくなります。
3-2 .売却には金融機関の同意が必要
通常の不動産売買と同様の流れで自宅を売却できる任意売却ではありますが、最終的に売却の可否を判断するのは融資をしている金融機関です。
金融機関からの同意を得るためには、任意売却後の明確な返済プランを提示する以外にもいくつか条件を満たしている必要があり、場合によっては同意を得られないケースもある点に注意が必要です。
3-3 .期限までに売れなかったら競売になる
任意売却はローンの滞納が始まってから、自宅が競売にかけられるまでの間に売主を探さなくてはなりません。
ローン滞納から競売までの期間は物件によっても異なりますが、最初の滞納から6か月経過した時点で競売にかけられるケースもあるため、基本的には短期間で売却活動を行うことになると認識しておきましょう。
3-4 .残債分の支払いは続く
任意売却で自宅を手放したからといって、住宅ローン契約が消滅するわけではありません。物件に設定された抵当権抹消後も、残ったローン残債については返済を続ける必要があります。
ただし、任意売却後の返済計画は金融機関との交渉によって決定するため、月々の返済負担は自宅取得時よりも軽くすることは可能です。
4.任意売却できない3つのケース
任意売却は住宅ローンの支払いが苦しいと感じる人を救済するための制度ではありますが、誰もが必ず利用できるというわけではありません。ここでは任意売却ができない3つのケースについて触れていきます。
4-1 .期限までに買い手がつかない
裁判所が定めた期限までに買い手がつかなかった不動産に関しては、任意売却を行うことはできません。
住宅ローンを滞納し始めて6~7ヶ月が経過した時点で、「競売開始決定通知書」という書類が届きます。これは「あなたの自宅は裁判所によって差し押さえられたため、これ以降は自宅を勝手に処分(売却や譲渡)できません」ということを通知するものです。この書類が届いても任意売却できる可能性はありますが、金融機関に任意売却の承諾を得ることが一段と難しくなります。
不動産会社への相談が送れるとその分買い手を探す期間が短くなります。住宅ローンの返済が苦しいと感じ始めたら早めに不動産会社に相談し、裁判所から競売開始を知らせる書類が届いた場合は、記載されている期限も必ず確認しましょう。
4-2 .債権者の同意を得られない
任意売却は、債権者である金融機関からの同意を得られなければ行えない手続きです。
通常不動産に設定された抵当権は、物件の売却金でローンを完済することにより抹消されます。しかし任意売却の場合は、売却金額がローン残債に満たない状態で物件を売却するため、金融機関にとっては返済されていない融資金額を回収できないリスクが残ることになります。
そのため金融機関から「ローン残債が残っている状態で抵当権を抹消する」ことへの同意を得る必要があるのです。
金融機関は物件の売却予定額や任意売却後の返済プランなどから、任意売却の可否を総合的に判断するため、提示条件によっては同意が得られず、任意売却できない可能性も考えられます。
4-3 .共有名義人・連帯保証人の同意が得られない
任意売却は債権者だけの判断だけで行えるものではなく、共有名義人や連帯保証人の同意も得る必要があります。
例えば親子で一棟の戸建て住宅を購入した場合、親だけ・子だけの判断では任意売却を行えません。双方の思惑に相違により交渉が長引いた場合、売却活動の開始が遅れる分任意売却の成功率が下がることになります。
また、住宅ローンを組んだ際に立てた連帯保証人に対する交渉も必要です。連帯保証人は住宅ローンの支払いに対して債務者と同様の責任があるため、任意売却により残ったローン残債についても支払いを求められる可能性があるという点に同意してもらわなくてはならないのです。
5.任意売却の流れ
実際に任意売却を行う場合、限られた期間内に多くの手順を踏む必要があるため、全体の流れやスケジュール感を把握しておくことが重要です。ここからは任意売却を検討し始めてから、取引完了までの一連の流れについて解説します。
5-1 .不動産会社への相談
住宅ローンの返済が厳しいと感じ始めたタイミングでは、まずは不動産会社に売却の相談をすることをおすすめします。
任意売却を行う目的は、自宅をできるかぎり高く売却することで住宅ローン残債を減らすことにあります。そのため売買を専門とする不動産会社に相談し、任意売却のために必要な手続きや流れなどを確認しておきましょう。
なお任意売却を成功させるために重要な、不動産会社の選び方については後ほど詳しく解説します。
5-2 .住宅ローン残高証明書を入手
不動産会社に売却の相談をするのと並行して「残高証明書」を準備しましょう。
「残高証明書」は現時点での住宅ローン残債や返済状況が記載された書類で、自宅の売却金額とローン残債の差額を確認するのに使用します。
残高証明書は毎年の確定申告のために必要な書類で、毎年10月にローン契約者あてに郵送されます。もし紛失している場合は、金融機関の窓口で再発行してもらうことも可能です。
そのほかにも、融資実行時に郵送されてきた返済予定表や、インターネットサービスを展開している金融機関であればWEBサイトでもローン残高を確認できます。
5-3 .物件の査定
残高証明書でローン残債を確認したら、不動産会社に依頼して物件の査定を行ってもらい、自宅がいくらで売却できるかを把握しましょう。
査定結果を受け取ったら査定価格とローン残高を比較し、実際に任意売却を行うかどうかの判断をします。
査定価格がローン残高を上回っている(アンダーローン)場合、通常の売却方法でローンを完済できる可能性がありますが、査定価格が金額がローン残債に満たない(オーバーローン)場合は、任意売却の手続きを進めることを検討しなくてはいけません。
5-4 .任意売却の手続き開始
査定の結果任意売却が必要だと判断した場合は、不動産会社と相談のうえ、金融機関に任意売却の同意を得るための交渉を行います。
売却価格や売却時期の見込みをもとに、任意売却後の返済計画を立てたうえで交渉しますが、ローン残債の金額によっては金融機関からの同意を得られないケースもあります。そのため査定や売却金額の決定の段階から、不動産会社を通じて金融機関との協議を密に行うことが重要です。
正式に任意売却の同意を得られたら不動産会社と依頼主との間で媒介契約を締結し、任意売却を目指して売却活動を開始します。
5-5 .売却活動を行う
不動産の売却が決まるまでの期間は1~6ヶ月程度ですが、任意売却の場合は自宅が競売にかけられるのを避けるためにも、可能なかぎり早期の売却を目指すことが重要です。
また任意売却は、家に住みながら売却活動を進めることがほとんどです。居住中に購入を検討してる人が家の中を見学することになるため、普段から室内を清掃しておくことをおすすめします。
購入希望者から申込書を受け取ったら、金融機関に詳細を報告し再度任意売却の合意を得ます。金融機関からの正式な合意を得たのちに、買主と売買契約を締結しましょう。
5-6 .所有権の移転完了
不動産会社を通じて売買契約を締結後、物件の引き渡し当日に売買代金の支払いを行うのと合わせて、司法書士による抵当権抹消登記・所有権の移転登記の申請が行われます。
引き渡し当日に物件の所有権が買主に移るため、新居への引越しは引き渡しの前日までに済ませておく必要があるという点は押さえておきましょう。
5-7 .残債の支払い
任意売却後の住宅ローン残債の返済方法は、金融機関と債務者との間での相談によって決定します。
残債を一括で返済する方法と、分割して毎月一定額を返済する方法のうちいずれかを選択することになりますが、任意売却を行う場合は債務者が一括返済できるほどの支払い能力を有していないケースがほとんどです。
そのため多くの場合は分割での返済になり、最初の融資実行時に設定した月々の返済額よりも負担を軽減した形で、無理のない返済計画を立てることになります。
6.任意売却で買い手がつかない理由
住宅ローンの返済負担を減らすために任意売却をしようとしても、なかなか買い手がつかないケースも少なくありません。
買い手がつかない原因としては売却方法や物件の状態以外にも、金融機関や不動産会社とのやりとりに問題があることも考えられます。
6-1 .売却方法に問題があるケース
任意売却で買い手がつかない大きな原因のひとつとして、売却方法が挙げられます。売出し条件や時期だけでなく、購入検討者への対応によっても物件の成約スピードは大きく変化するため注意が必要です。
6-1-1 .売り出し価格の設定が高い
売り出し価格を高く設定しすぎると、物件を探している人の検討対象にならずに売れ残る可能性があります。
売主が少しでも高く売りたいと考えるのと同様に、物件を探している人は少しでも安く買いたいと考えます。そのため価格を比較する際に基準となる「市場価格の相場」からかけ離れた価格設定では、買い手がつかない可能性が高いと言えます。
6-1-2 .購入希望者の内見に消極的
住宅ローンの支払いが困難になったことにより、仕方がなく物件を売却せざるを得なくなった人にとって、購入検討者が内見に来た際の対応を億劫に感じる場合もあるでしょう。
だからといって内見の対応に消極的な姿勢が見えてしまうと、購入希望者の購買意欲が損なわれる原因になる可能性があります。
6-1-3 .売却に不利な時期もある
不動産は1年を通して物件に対する需要が一定というわけではなく、売れやすい時期と売れにくい時期があります。
一般的に引っ越しシーズンである2~4月頃は、新居の購入を検討する人が多いことから売れやすい時期であり、逆に閑散期である7~8月頃は売れにくい時期だと言えます。
6-2 .住宅の状態に問題があるケース
物件の売り出し条件がある程度相場にそっており、不動産売買が活発な時期に売却活動を行っていても買い手がつきにくい場合、売却対象である住宅の状態に問題がある可能性があります。
中古物件は特に第一印象や生活感の程度によって、売却につながる確率が大きく変わるため注意しましょう。
6-2-1 .第一印象が良くない
不動産の専門知識を多く持たない一般の消費者にとって、物件に対して抱く第一印象は非常に重要です。
特に建物の外観や庭先への手入れが行き届いていないと、本来の築年数よりも古く見えたり、快適な新生活をイメージできなかったりと、購買意欲を損ねる要因にもなりかねません。
買主が最初に物件に対してマイナスの印象を抱いてしまうと、のちにプラスに転じることは難しくなるため、日頃から清掃や修繕をしっかりと行っておくことが重要です。
6-2-2 .物件に目立つキズや汚れがある
傷や汚れが目立つ物件は、売主が物件を雑に扱ってきたイメージを持たれてしまい、耐久性や耐震性が劣るのではないかという不安要素に繋がります。そのため、室内は常にきれいな状態を保てるように清掃を行い、必要に応じて修繕を行っておくことも重要です。
ただし中古物件の購入を検討している人は、購入後に自分でリフォームを行うことを前提にしているケースも少なくなくないため、売主側で大規模なリフォームを行う必要はありません。
6-2-3 .生活感がマイナスイメージとなっている
所有者の居住中に行う内見においては、実際にその物件でどのような生活を送れるかイメージできるという点がメリットです。ところが室内にあまりにも生活感がありすぎると、新生活のイメージが湧きにくくなるだけでなく、物件の状態を正確に把握することも難しくなります。
購入検討者に物件の魅力を知ってもらうためにも、生活感の出やすい水廻りや収納周りを中心に、清掃や整理整頓を心がけるようにしましょう。
6-3 .コミュニケーションや相談相手に問題があるケース
物件の所有者1人では成り立たない任意売却においては、相談先である金融機関や不動産会社とのコミュニケーションを、いかに正確かつ迅速に行うかが成功のカギと言えます。思ったように物件が売れないと感じた場合は、下記の2点についても見直すことが重要です。
6-3-1 .金融機関との連携が不十分
自宅がなかなか売れない場合、売り出し価格を下げて売却活動を行うことも視野に入れる必要がありますが、売り出し価格を見直すためには金融機関からの同意を得なくてはいけません。
金融機関との連携が十分に摂れていない場合、売り出し価格の見直しに想定以上の時間がかかってしまうことで、任意売却の期限をむかえてしまう可能性も否定できないのです。
6-3-2 .相談相手の不動産会社が任意売却に精通していない
任意売却はただ物件の買主を探せばいいというわけではなく、債権者である金融機関との交渉をはじめとした専門的な知識や経験が必要になります。
そのため相談先の不動産会社が任意売却に精通していなかった場合、期限までに物件を売却できなかったり、売却できても思ったほど高値にならなかったりする可能性も考えられるのです。
7.任意売却で売れなかった場合はどうなる?
物件の売却活動の方法や売り出し条件などの見直しを行っても、結果的に買い手が見つからず売れ残ってしまう可能性も否定できません。任意売却で物件が売れなかった場合に債務者に対して起きる2つのことを知っておきましょう。
7-1 .競売にかけられ自宅を失う
任意売却を選択したからといって競売を回避できるということではなく、任意売却と競売は同時進行で行われることがほとんどです。つまり、売却活動を行っている間もタイムリミットは迫りつづけ、期限までに買い手が見つからないと、対象物件は予定どおり裁判所により競売にかけられることになります。
物件が競売にかけられた状態でも任意売却の手続きを進めることは可能ですが、その期限は債務者に届く「競売開始決定通知」に記載された競売の取り下げ期限(改札期日の前日)です。
物件が競売で落札されると所有権が債務者から競落者に移動し、債務者は自宅を失うことになります。
7-2 .残債を返済できなければ自己破産
任意売却が成立せず自宅が競売にかけられると、競売による売却金が住宅ローン残債の返済に充てられることになります。競売による売却金額は、通常の不動産売買における市場相場の60~80%程度にしかならないため、債務者は競売後も継続してローン残債を返済する必要があります。
競売後の残債の返済方法は、金融機関と債務者の間で相談のうえ、債務者が確実に完済できる返済計画を立てることになります。しかし返済金額や債務者の支払い能力によっては、競売後の残債すら返済できないケースもあり、最終的に自己破産を余儀なくされる可能性もあるというのが事実です。
8.任意売却で買い手がつかないときの対処法
任意売却で買い手が見つからない場合、債務者には前章で解説したような重いペナルティが課せられることになります。そのため売却活動を進める中でなかなか買い手が見つからないと感じた際には、下記の3つの点に着目して売却の方法を見直すことが重要です。
8-1 .販売価格を見直す
任意売却では裁判所から提示される期限までに買い手を見つけなくてはならないため、思ったように売却活動が進まない場合は販売価格の見直しを行う必要があります。
価格の見直しは債務者が勝手に行うことはできず、販売価格の最終決定権を持つ金融機関と交渉し承諾を得なければなりません。スピーディーに販売価格を変更して売却活動を進めるためにも、日頃から金融機関と密に連携を取っておくことが重要です。
8-2 .丁寧な内見対応を心がける
早期に買い手を見つけるためには、内見時に丁寧に対応することも意識しましょう。
快適な生活をイメージできるように室内を清潔にしておいたり、内見に来た人からの質問に過不足なく答えたりすることで、「購入したい」という気持ちを後押しすることに繋がります。
また住宅の購入を検討している人は、多くの場合週末の内見を希望します。自宅を手放さなければならないという苦しい状況ではありますが、可能なかぎり週末を空けておき購入希望者に丁寧な対応をできるように準備しておきましょう。
8-3 .任意売却に強い不動産会社を選ぶ
任意売却は通常の不動産売買とは異なり、金融機関や連帯保証人・共有名義人との交渉を行わなければ契約が成立しません。こうした交渉は非常に難易度が高いものであり、任意売却に精通した不動産会社に依頼する必要があります。
既に依頼している不動産会社が任意売却に協力的でないと感じた場合は、相談先の変更も視野に入れなければなりません。各不動産会社のホームページに掲載されている取引実績などを確認し、早めに相談することをおすすめします。
9.任意売却に強い不動産会社を選ぶポイント
任意売却を成功させるためには、任意売却に強い不動産会社を見極めることが重要です。
不動産会社選びで注目したいポイントは下記の5つ。
- スピーディーな対応をしてくれるかどうか
- 任意売却の実績について確認する
- 住宅(一軒家やマンション)の売却が得意か
- 地域密着型か全国展開型か
- 交渉力や専門知識のある不動産会社を選ぶ
下記で1つずつ詳しく解説していきます。
9-1 .スピーディーな対応をしてくれるかどうか
通常の不動産売買であれば、希望条件で購入してくれる買主が見つかるまで売却活動を続けられますが、任意売却では決められた期限内に買い手を見つけなければなりません。
担当者が何度も変更になったり意思決定に時間がかかったりすれば、その分滞納期間も長く、そして物件が売れ残るリスクが高まることになります。つまり任意売却の成功には、不動産会社の迅速な対応が必要不可欠なのです。
売却活動を進める中で担当者が頻繁に変わったり意思決定に時間がかかったりするようであれば、ほかの不動産会社に依頼することを検討したほうがいいと言えます。
9-2 .任意売却の実績について確認する
任意売却では特殊な専門知識や交渉力が必要なうえ、契約業務以外の手続きも多く発生します。そのため通常の売買のみを行っている不動産会社ではなく、任意売却の知識が豊富な担当者のいる会社、もしくは任意売却を専門とする不動産会社を探すのがおすすめです。
任意売却の実績があるかどうかは、各不動産会社のホームページを確認する以外にも、不動産会社に直接問い合わせたり、インターネットの口コミサイトを閲覧する方法で確認できます。
9-3 .住宅(一軒家やマンション)の売却は得意か
ひとくちに不動産会社といっても、会社毎に得意分野が異なるという点は押さえておかなければなりません。
任意売却は「住宅を売買」する不動産取引であるため、数多くある不動産会社の中でも戸建やマンションといった居住用物件の売買を専門にする会社に依頼することをおすすめします。
住宅の売買が専門の不動産会社であれば、自宅をスムーズかつ高値で売却するノウハウを持っているため、早期に競売を回避できる可能性が高まるのです。
9-4 .地域密着型か全国展開型か
不動産売買を行っている会社には、全国展開している会社と地域密着型の会社がありますが、任意売却を行う場合は「地域密着型」の不動産会社を選択するのをおすすめします。
任意売却を成功させるためには、不動産会社から金融機関に対して交渉を行う必要があります。しかし任意売却の手続きや条件は金融機関毎に異なり、確実な交渉を行うためには、依頼主が住宅ローンを借りている金融機関の任意売却の実績を把握しなければなりません。
そのため全国展開している不動産会社よりも、地域に根付いて売買を行っている不動産会社のほうが、地域の金融機関との連携や交渉を確実に行える確率が高いのです。
9-5 .交渉力や専門知識のある不動産会社を選ぶ
住宅ローン残債が残る状態で自宅を売却する許可を得なくてはならない任意売却では、不動産会社の持つ交渉力が成功のかなめと言っても過言ではありません。
金融機関への交渉は、自宅に設定された抵当権を抹消してもらうためのものではなく、自宅を売却することで住宅ローン残債を減らし、残った債務を計画的に返済していくために行います。そのため金融機関に対しては、売却後の返済計画も含めた交渉が必要です。
任意売却を行っている不動産会社の中でも、残債務処理の知識が豊富な会社を選択することで、債務者の立場で新たな返済計画を立ててもらえるとともに、金融機関に対しても確実な交渉を行える可能性が高まります。
10.まずは不動産一括査定サイトを利用してみよう
住宅ローンの返済が厳しい状況に陥った場合でも、任意売却はあくまでもオーバーローン状態の最後の手段です。
債務者に極力負担のない形で住宅ローンを完済するためには、まずは不動産一括査定サイトで自宅の売却価格を知り、一括返済が可能かどうかを見極めることをおすすめします。
10-1 .不動産一括査定サイトとは
不動産一括査定サイトは、一度に複数の不動産会社に対して査定依頼を出せる、無料のインターネットサービスです。
通常不動産会社に物件の査定を依頼する場合、1社毎に問い合わせたり物件の情報を伝えたりする必要があります。それに対して不動産一括査定サイトでは、一度物件情報を入力するだけでいくつもの不動産会社に一斉に査定依頼を出せるため、短時間で多くの情報を得ることが可能です。
複数の査定結果を受け取れるため、所有する不動産の売却相場を知ることができるだけでなく、各不動産会社の得意分野や対応力などを比較できるのが大きなメリット。不動産会社の力量が試される任意売却において、売却を依頼する会社を見極めるのに大いに役立ちます。
10-2 .AI査定との併用でその後の見通しを立てやすくなる
任意売却はスピード感を持って進めることが重要なため、不動産一括査定サイトだけでなくAI査定も併用することをおすすめします。
AI査定とは、AI(人工知能)に蓄積された膨大な売買データや周辺の取引データをもとに、対象の不動産の価値を瞬時に算出するインターネットサービスです。物件の情報を入力すればその場で査定結果が分かるため、早い段階からローンの返済計画や任意売却の準備を進められるという点が大きなメリットです。
通常不動産一括査定とAI査定は別々のサイトを経由して行いますが、「おうちクラベル」を利用すれば2つの査定方法を1つのサイト内で行えるため便利です。
11.任意売却を成功に導くには不動産会社選びが重要
任意売却はただ不動産を売却するだけでなく、金融機関や連帯保証人・共有名義人への交渉のほか、売却後の残債務の返済計画の立案なども行う必要があり、高い専門知識とノウハウが必要です。そのため任意売却成功のカギは不動産会社選びにあるとも言えます。
不動産一括査定サイト「おうちクラベル」を利用することで、自宅の売却予想金額を把握しながら、任意売却を依頼する不動産会社を比較することが可能です。売却金額のほか、任意売却に精通した不動産会社かどうか、担当者が誠意をもって対応してくれるかどうかを見極められるため、任意売却を成功に導くツールとして大いに役立ちます。
任意売却は時間との勝負でもあります。住宅ローンの返済が困難に感じ始めたら早めに不動産会社に相談し、その後の対応策を模索しましょう。