農地の売買は難しい?売却するための条件や手続きについて解説します

使用していない農地を放置し続けることは、農地の所有者だけでなく近隣住民・農家にとっても多くのデメリットがあります。しかしいざ売却しようと思っても、農地には法的な制限がいくつもあり、手続きが煩雑だと感じる人も多いでしょう。

本記事では農地を売却する際に満たすべき条件と、スムーズかつ確実に売却するために押さえておきたいポイントについて詳しく解説します。一般的な土地の売却とは異なる手続きを踏む必要があるため、農地売却の全体像をしっかり把握しておきましょう。

目次

1.使用していない農地は売却したほうがよい

農業をやめたり、農地を相続したものの農業をする予定はなかったりといった理由から、使用していない農地を手つかずの状態で放置しているケースは少なくありません。しかし使用しない農地はそのまま放置しておくと、所有者にとって多くのリスクや損失が発生する可能性もあるため、早期に売却することをおすすめします。

1-1 .固定資産税を払い続けることになる

不動産を所有しているだけでも毎年発生する固定資産税ですが、農地を使用せず放置していると、通常よりも多くの固定資産税が課せられます。

以前は農地として使用していたものの、過去1年以上にわたり作物を栽培しておらず、かつむこう数年間は作物を栽培する意思のない土地のことを「耕作放棄地」と呼びます。2016年の税制改正以降、耕作放棄地には通常の農地の約1.8倍の固定資産税がかかるとされており、農地を放置しているだけで税金の負担が増えることに繋がるのです。

1-2 .周辺の農家に迷惑がかかる

農地の手入れを行わず放置し続けると、草が生い茂って荒廃することにより害虫や害獣が住み着く原因になります。害虫や害獣は周辺の農家の作物に被害を与えるだけでなく、死骸や糞尿による衛生上の問題を引き起こす可能性もあり、場合によっては近隣住民から損害賠償を請求されるケースもあります。

1-3 .放置が長引くと売却が困難になる

草むしりや農薬の散布などが行われず放置された農地は、雑草が生い茂ったりゴミや廃棄物が不法投棄されたりと、放置期間が長くなるほど再度活用・転用することが難しい状態になってしまいます。

そのためいざ買い手や借り手を探し始めても、なかなか契約が決まらない可能性が高くなるのです。

2.農地を売却する方法

農地を売却する方法には、土地の地目が「農地」の状態で売却する方法と、「宅地」や「雑種地」へ変更して売却する方法の2とおりがあります。それぞれの特徴について詳しく解説します。

2-1 .農地として売却する

農地を売却する方法で最も簡単なのは、土地の種目を変更せずに「農地」のまま売却する方法です。

近隣に規模を大きくしたいと考えている農家がある場合であれば、少ない手間と労力で売却を進められます。

その一方で種目が「農地」になっている土地は、原則として農業従事者でなければ購入できません。農業を営む人の人口は年々減少傾向にあり、さらに農地は利用用途が限定されるため、売却価格が低くなるという点がデメリットとして挙げられます。

2-2 .農地転用して売却する

農地のまま購入してくれる人が見つからない場合、農地転用して売却することを検討する必要があります。

「農地転用」とはその名のとおり、農地として使用していた土地を農地以外の用途で活用することを指します。詳しくは後述しますが、日本において農地は保護の対象であり、地目が農地(田・畑・果樹園)のままではほかの用途で使うことができません。そのため農地を農地以外の用途で使える状態で売却するためには、まずは「農地転用許可」を受け、そのあとに地目変更手続きを行う必要があります。

多くの手続きが必要になるため手間がかかりますが、使用用途の幅が広がるため売却したり貸し出したりしやすくなるのです。

3.農地の売買は国の保護政策により制限されている

日本では食料自給率の維持向上を目的として、現在ある農地を保護するために「農地法」と呼ばれる非常に厳しい法律が制定されており、使用用途の変更や売買・譲渡を自由に行えないという制限があります。農地を売却するためには、まずは農地に対する制限についての知識を身につけましょう。

3-1 .農地法により農地の売買は制限されている

「農地法」は現在日本にある農地を保護することを目的として制定された法律で、一般的な不動産売買で取引される宅地などとは異なり、個人の判断で勝手に賃貸・売却してはならないとしています。

同法の条文によると、農地を農地のまま賃貸・売却する場合には、農地がある市区町村の農業委員会による許可を得る必要があり(農地法第3条)、農地転用を前提とした賃貸・売却の場合には、取引の当事者が都道府県知事の許可を得なければなりません(農地法第5条)。

3-2 .転用には農業委員会の許可が必要

上記は農地を第三者に貸し出したり売却したりする場合ですが、農地を転用して駐車場を作ったり自宅を建てたりする場合であっても、農地法による規制を受けることになります。

農地は後に解説する5つの立地基準に分類され、農地以外の目的で使用できるのはそのうちの2つのみです。さらに農地転用が認められるのは、優良な農地や高い農業生産性を確保しながら、転用した土地を有効活用できると認められた場合とされています。

つまり農地転用の審査は非常に厳しく、一般の土地所有者が農地転用の許可を得たり、農地転用を行って売却までこぎつけたりすることは困難と言えます。

4.地目を変更せず農地のまま売却するには

それでは実際に、使用していない農地を売却する方法を順番に見ていきましょう。まず地目を変更せずに農地のまま売却する方法について解説します。

4-1 .農地法3条による制限を受ける

前提として知っておかなければならないのは、農地は「農地法」という法律によりさまざまな制限を受けるという点です。

農地は日本の食料自給率の維持向上を目的とした保護の対象となっており、売買だけでなく売買や貸し借りをする場合であっても、農業委員会による許可を受ける必要があると定められています(農地法第3条)。

万が一許可を受けずに行った取引は法律上無効となり、農地以外の用途での使用が開始されていたとしても、原状回復をして元の農地の状態に戻すことを求められるケースもあります。

4-2 .購入者は農業従事者に限られる

誰でも欲しい土地を自由に購入できる一般的な不動産売買とは異なり、農地の場合は購入できる人も限られています。

まず前提として、購入する個人または法人が農業を営んでいる必要があり、さらに「下限面積要件」と呼ばれる条件も加わります。「下限面積要件」とは、農地を購入したのちに経営する面積のトータルが一定以上でなくてはならないとするもので、北海道で2ヘクタール以上、そのほかの都府県は50アール以上である必要があります。

農地法の目的が生産性が高く安定した農業経営を目指すことであり、あまりにも小さい面積の農地を売買したとしても、有効活用できる可能性が低いとされているためです。

4-3 .農地の売買価格は宅地よりも安い

農地の売却を検討しているのであれば、農地は一般的な不動産売買で取引される宅地よりも、売買価格の相場が安いということは頭に入れておく必要があります。

農地が低い価格で取引される理由は、農業従事者の減少や後継者不足により、そもそも農地への需要が高くないということも挙げられますが、それ以上に収益性の低さも原因になっています。農地を購入したとしても、農業を営んで得られる農業収益が比例しないため、結果的に農地の買い控えが起きているのです。

4-4 .農地のまま売却する手続きの流れ

上述のとおり、農地を売却するためにはさまざまな条件をクリアし、必要に応じた手続きを行う必要があります。そのため売却活動を始める前に、一連の流れを把握しておくことが重要です。

4-4-1 .買い手を探す

農地の買い手を探す方法は大きく分けて2つあります。1つは不動産会社に仲介を依頼する方法、もう1つは自分で買い手を見つける方法です。

近隣や知人の中に農業従事者がおらず、自分で買い手を見つけることが難しい場合は不動産会社の手を借りることになりますが、農地は一般的な土地よりも取引価格が安いため、不動産会社によっては仲介を断られるケースもある点に注意が必要です。

4-4-2 .農地法3条の許可が下りることを前提に売買契約の締結

買い手が見つかったら、売主と買主との間で売買契約を締結します。

この場合の売買契約書には、契約が有効となるのは「農地法第3条の許可が下りた場合を条件とする」特約を入れます。この特約により、万が一農地法第3条の許可が下りなかった場合には、売買契約を解除すると取り決めることが可能です。

4-4-3 .農業委員会に許可を申請する

売買契約締結後に、農業委員会に許可申請を行います。

申請のためには、下記の書類を準備しましょう。

  • 許可申請書
  • 土地の登記事項証明書
  • 位置図
  • 公図の移し
  • 営農計画書
  • 耕作証明書

なお、必要書類は許可申請提出先の自治体によって異なる場合もあります。

4-4-4 .所有者移転登記の仮登記を行う

一般的な土地の売買の場合は、売買契約締結後の引き渡しと合わせて所有権登記を行いますが、農地売買の場合は、農業委員会から売却の許可が下りる前の「仮登記」を行うケースもあります。

仮登記は必須ではないうえに費用が発生する手続きではありますが、買い手にとっては許可がおりるまでの間、自分の権利を保持しておけるという安心感に繋がります。

4-4-5 .所有者移転登記の本登記を行う

農業委員会から売却の許可が降りたら、合わせて発行される許可証を持って所有権移転の本登記を行い、買主と売買代金の授受を行えば取引完了です。

5.転用して宅地や雑種地として売却するには

農地を転用し宅地や雑種地といったほかの地目で売却する際には、農地法第5条の制限を受けます。

農地のまま売却する場合との違いと、売却する流れについて見ていきましょう。

5-1 .農地法5条による制限を受ける

農地を転用して売却する場合に適用されるのが農地法第5条です。

農地法第5条は、元々は農地の減少を防ぐことによる農業生産性の確保を目的とした法律ですが、現在では宅地や工業用地といったほかの用途の土地とのバランスを取りながら、計画的・効率的に活用できる農地を増やすことを目指すものとされています。

農地をほかの用途で使用することを前提として売却する場合、農地法第5条の許可を得る必要があり、許可なく農地の売却と転用を行った場合は法律上無効になります。

5-2 .転用できれば購入者を見つけやすい

農地を農地のまま売却する場合は、買主も農業従事者である必要があるだけでなく、売却後の用途も農地に限定されます。

その点農地転用を行って売却すれば、農業従事者以外の買主であっても土地を売却でき、さらに農地以外の用途で使用できます。

買主や使用用途が限定されないことにより、売買の仲介をする不動産会社も売主からの依頼を受けやすくなるというメリットは大きなメリットです。

5-3 .農地のまま売却するよりも価格が高くなる

農地転用を前提として売却することで、農地のままの場合と比較して高く売ることが可能になります。

農地の売却価格が安くなる原因の1つに、農地の価格に対して農業収益が見込めないという「農業収益性」の低さがあります。農地転用して賃貸物件を建築したり工場を建てたりすることで、農業よりも高い収益が期待できるようになるのです。

農地転用のためには複雑な手続きを踏む必要がありますが、宅地や雑種地のほうが売買市場での需要は高いため、高く・早く売却したい場合は転用したほうがいいと言えます。

5-4 .転用して売却する手続きの流れ

農地転用をともなう売買では、先に農地転用のための許可申請を出してから売買契約を締結するため、農地のまま売却する場合と異なる手続きが必要になります。一般的な土地の売買と比較して手順が複雑なため、事前に流れを確認しておきましょう。

5-4-1 .農地売買に強い不動産会社に相談

農地転用をともなう売買の場合は、農地売買の実績が豊富な会社を選ぶことが重要です。

農地を売却するためには農業委員会から確実に農地転用の許可を得る必要があるのに加え、通常の土地の売買では行わない手続きも発生します。農地売買の経験が豊富な不動産会社を選ぶことで、売却完了までスムーズに進めることが可能になるのです。

5-4-2 .5条の許可が下りることを前提に売買契約の締結

買い手が見つかったら、農地法第5条の許可が下りることを前提に売買契約を締結します。

この際売買契約書上で「農地法第5条の許可が下りることを条件に契約を有効とする」という旨の特約を設定しておくことで、万が一許可が下りなかった場合には契約が解除されると定めることができます。

5-4-3 .農地転用許可の申請

売買契約を締結後、農業委員に転用許可申請を行います。

転用許可申請のために必要な書類は下記のとおりです。

  • 許可申請書
  • 土地の登記事項証明書
  • 位置図
  • 公図の写し
  • 事業計画書
  • 土地利用計画書
  • 資金証明書

必要書類は申請先の自治体ごとに異なる場合があるため、必ず事前に確認しておきましょう。

また農地転用の申請においては、売主と買主の連著が必要になる点には注意が必要です。

5-4-4 .仮登記を行う

転用の許可が下りる前の仮登記は、農地のまま売却する場合と同様必須ではありませんが、買主の権利を確保しトラブルを防ぐために仮登記を行うケースもあります。

5-4-5 .本登記を行う

農業委員会から農地転用と売却の許可が下りると許可証が交付されます。許可証が発行されたら売主と買主の間で売買代金の受け渡しを行い、速やかに所有権移転の本登記を行いましょう。

6.転用するためにクリアしなければならない立地基準と一般基準

農地転用はどのような土地でも許可が下りるわけではなく、「立地基準」と「一般基準」という2つの基準をクリアしなくてはなりません。それぞれがどのようなものなのか解説します。

6-1 .立地基準とは

「立地基準」とは、自治体が定めた農地転用許可の基準のことを指し、農地の営農条件(農業に適した土地であるかどうか)などによって分類された農地ごとに異なる基準が設定されています。

6-2 .農地は立地によって5種類に分類される

立地基準の農地区分は、下記の5つに分類されます。

  • 農用地区域内農地
  • 甲種農地
  • 第1種農地
  • 第2種農地
  • 第3種農地

一般的に市街地に近い農地ほど転用・売却の許可が下りやすいとされており、上記のうち第2種農地・第3種農地の場合は許可を得られる可能性があります。

逆に第2種農地・第3種農地は原則として転用が認められない土地とされており、農地のまま売却せざるを得ないケースも考えられます。

そのため農地の売却を進める前に、立地区分を確認しておくことは重要なステップです。立地区分は農業委員会の窓口のほか、インターネット上でも確認可能です。

eMAFF農地ナビ

各農地区分に定められている立地基準は下記のとおりです。

6-2-1 .農用地区域内農地

農用地区域内農地は、「農業振興地域の整備に関する法律(農振法)」という法律に基づいて設定された農用地区域内にある農地です。最も厳しい基準を設けており、原則として農地転用の許可は下りません。

6-2-2 .甲種農地

市街化調整区域内にあり、特に良好な営農条件を備えている農地のことを「甲種農地」と呼びます。近隣住民の日常生活に業務上必要な施設の建設などの例外もありますが、農業に適した土地であるため原則として転用の許可は下りません。

6-2-3 .第1種農地

第1種農地は、おおむね10ヘクタール以上続いて存在しており、土地改良事業や開拓事業といった農地に対する公共投資の対象になっている農地のことを指します。甲種農地の許可基準に該当する場合や、農業用施設や病院の建設を目的とした例外もありますが、原則的には転用の許可は下りません。

6-2-4 .第2種農地

第2種農地は市街地に近接しているか、市街地化の傾向がある地域に隣接している農地のことを指します。「市街地化の傾向がある」とは、具体的には鉄道の駅や市町村役場が近くにある場合などです。ただし第2種農地の転用が許可されるのは、周辺のほかの土地で事業の目的が達成されない場合にかぎります。

6-2-5 .第3種農地

市街地の区域内にあるか、または市街地化の傾向のある区域内にある農地が第3種農地です。第3種農地に関しては、後述する一般基準を満たさない場合を除き、原則として転用が許可されます。

6-3 .一般基準とは

農地転用の許可を得るためには、農地の立地ごとの基準のほか「一般基準」も満たしている必要があります。

一般基準として挙げられるのは下記のような項目です。

  • 転用の目的を実現できるだけの資金や信用はあるか
  • 転用する農地の関係権利者からの同意を得ているか
  • 転用許可がおりたのち、速やかに申請した用途として使う見込みがあるか
  • 申請目的の事業を行うための免許や許可を受けている、あるいは受ける見込みはあるか

ただし上記の項目を満たしていても、農地転用することにより災害の発生や、近隣農地の営農条件への支障が懸念される場合には許可が下りないケースもあります。

7.農地売却にかかる税金

農地を売却する場合にはさまざまな税金が発生します。売買契約締結時に納税するものだけでなく、確定申告が必要なものもあるため、取引を行う前にあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

7-1 .譲渡所得税

譲渡所得税は、土地や建物といった不動産を売却した際に得た利益(譲渡所得)に対して課せられる税金のことを指し、「所得税」と「住民税」の2つの税金を総称した呼び方です。

7-1-1 .譲渡所得税が課税されるのはどんなとき?

農地の売却において譲渡所得税が課せられるのは、農地の取得にかかった費用よりも売却金額のほうが高かった場合です。

譲渡所得税を計算するには下記のような計算式を使用します。

譲渡所得金額=譲渡による収入金額-(取得費用+譲渡費用)

譲渡所得税=譲渡所得金額×税率

上記のうち「取得費用」は農地を購入する際にかかった費用、「譲渡費用」は農地を売却する際にかかった費用のことです。

譲渡所得税を計算する際に用いる税率は、農地の所有期間が5年以下(短期)か5年超(長期)かによって異なり、下記のように定められています。

 

短期譲渡所得(5年以内)

長期譲渡所得(5年超)

所得税

30%

15%

住民税

9%

5%

復興特別所得税

0.63%

0.315%

合計

39.63%

20.315%

相続で引き継いだ農地の場合は、被相続人の所有期間をそのまま引き継ぐことになります。そのため、例えば親から相続した農地を1年後に売却したとしても、親が4年以上所有していた場合は長期譲渡所得の税率が適用されます。

なお相続などで取得した農地の場合、取得時の費用がわからないことも少なくありません。その場合は売却価格の5%を取得費用として計上する「概算法」という方法で譲渡所得税を計算します。

譲渡所得税の申告には、農地を売却した翌年に確定申告を行う必要があるため注意しましょう。

7-1-2 .特別控除の特例がある

一定の要件を満たした農地の売買取引の場合、譲渡所得から一定額が控除される特別控除の特例が適用され、譲渡所得税額を減らし節税に繋げることが可能になります。

特別控除の種類と適用条件は下記のとおりです。

譲渡の目的

特別控除額

適用要件

農地利用

800万円

・農用地区域内の農地を農用地利用集積計画、または農業委員会のあっせん等により譲渡した場合

・農用地区域内の農地を、農地中間管理機構に譲渡した場合

1,500万円

農業経営基盤強化促進法に基づく買入協議により、農地中間管理機構に譲渡した場合

2,000万円

農業経営基盤強化促進法に基づく農用地利用規定に基づき、農用地区域内の農地を農地中間管理機構に譲渡した場合

転用

5,000万円

農地が土地収用法等により買い取られる場合

参照:農林水産省「農地を売った場合の税金」

これらの特別控除の適用にも、農地売却翌年の確定申告が必要になります。

7-2 .印紙税

印紙税は農地の売買契約を締結する際に、売買契約書に貼り付ける収入印紙にかかる費用です。

印紙税の税額は農地の売却金額によって異なり、下記のとおり定められています。

契約金額

本則税率

軽減税率

100万円を超え 500万円以下のもの

2千円

1千円

500万円を超え 1千万円以下のもの

1万円

5千円

1千万円を超え 5千万円以下のもの

2万円

1万円

5千万円を超え 1億円以下のもの

6万円

3万円

国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」より抜粋)

なお表に記載の軽減税率は、2024年3月31日までの間に作成され不動産売買契約書に適用されます(2023年2月現在)。

7-4 .登録免許税

登録免許税は農地の所有権を新しい所有者に移転させる際に必要な費用で、下記の計算式により算出します。

税額=不動産の価格(固定資産課税台帳価格)×税率(売買の場合2%)

なお登録免許税率は2%が本則とされていますが、2023年3月31日までに農地を購入し所有権移転登記を行う場合は、登録免許税率が1.5%になる軽減税率が適用されます(2023年2月現在)。これは国が農地取得を推進しているという背景によるものです。

(参考:農林水産省「農地を取得した場合の登録免許税の特例」

8.農地を売却しないという選択肢もある

農業委員会の許可が下りない・買い手が見つからないなどの理由から農地の売却が難しい場合には、売却せずに所有者自身で活用するという選択肢もあります。

ここでは農地として賃貸借する方法と、農地民宿として活用する方法の2つについて解説します。

8-1 .農地として賃貸借する

農地を賃借する方法は大きく分けて2つあります。1つは農地法に基づくもの、もう1つは農業経営基盤強化促進法に基づくものです。それぞれの特徴と違いについて解説します。

8-1-1 .農地法に基づく賃貸借

農地法に基づいて賃貸借を行う場合、農地法第3条の適用により農業委員会の許可を受ける必要があります。

手続きの方法や手順は先述した売買の場合と同様で、農地の効率的な利用を推進するため、農業従事者が耕作を目的とした賃貸借契約(使用貸借契約)のみが対象です。

この場合の使用継続のための契約更新は、賃貸借契約(使用貸借契約)締結時の取り決めによります。

8-1-2 .農業経営基盤強化促進法に基づく賃貸借

通常農地を貸し借りする場合には、農地法第3条の許可を受ける必要がありますが、「農業経営基盤強化促進法」に基づいて利用権設定を行うことにより、簡易な手続きで農地を賃貸借することが可能です。

農地の利用権設定とは、農業委員会が貸主と借主の間に入って賃貸借契約(または使用貸借契約)を成立させることを指します。利用権設定を受けられるのは、借主が農業従事者であり、賃借する農地すべてに対して効率的に耕作を行う場合です。

設定できる契約期間は3年・5年など自治体によって異なり、使用を継続したい場合は更新手続きにより引き続き賃貸借を行えます。

8-1-3 .農地の賃貸は収益性が低い

農地を賃貸借する際に念頭に置いておきたいのは、農地だけを貸し出した場合に得られる収益はさほど多くないということです。また農業従事者に限定されることから、借主を見つけることも容易ではありません。

考えられる対策として「畑付きの一戸建て」として貸し出す方法もありますが、物件や敷地の管理を貸主がしなければならないという手間が発生するという点には注意が必要です。

8-2 .農家民宿として農地を活用する

「農家民宿」とは実際の農家を宿泊施設として開放し、農業や郷土料理など、その土地でしか味わえない経験を提供する取り組みのことです。近年リモートワークの普及から、地方への移住に関心を抱く人が増えており、農家民宿に対する需要や人気も高まりつつあります。

8-2-1 .転用せずそのまま利用できる

農地民泊を営業するのが所有者自身であれば、農業委員会に転用の許可を得ることなく農地を活用できるというメリットがあります。ただし民泊を開設すること自体は自治体の許可が必要で、規定も自治体ごとに異なるという点には注意が必要です。

8-2-2 .管理が大変で収益は安定しない

安定した集客を実現するためには、物件や提供するサービスの管理が不可欠です。農地の場合は親からの相続で取得するケースも多く、自宅から離れた場所で農家民泊を営業する際には管理に労力がかかることが考えられます。

またしっかりと管理していたとしても、通年で安定した集客を得られるとも限らないため、収益が安定しない可能性もあるということは理解しておきましょう。

9.農地は転用して売却するのがおすすめ

使用しない農地を売却することで、日頃の管理の手間や固定資産税の納付が不要になります。さらに農地転用も行っておけば、収益性や需要増加も見込めるため、早く売却先を見つけられる可能性が高まります。

9-1 .転用の成否は申請者の力量にも左右される

農地転用を行う際、農業委員会からさまざまな基準に基づいた許可を得る必要があるということは、既に解説したとおりです。転用の許可を受けるためには農業委員会との相談が必要になり、対象の農地が許可の基準を満たしているか、書類に不足はないかを含めた専門知識が問われる場面でもあります。

つまり農地転用の許可を得られるかは、申請者の知識量やノウハウによって大きく左右されると言っても過言ではないのです。

9-2 .転用手続きには時間がかかる

農地転用の手続きは申請してからすぐに完了するわけでなく、農業委員会で申請の協議が行われます。申請から許可の決定までに数ヶ月、長くて半年以上かかる場合もあるということを念頭に置いておく必要があります。

売却する場合は買主との間で引き渡し日を調整する必要があるため、早めに申請に向けた動きを取ることが重要です。

9-3 .農地を売却できるかどうかは不動産選びが重要

一般的な土地の売買とは異なり、農地の売却時には特別な手続きを取る必要があります。特に転用手続きは数ヶ月以上という期間が必要な一方で、時間をかけるほど農地が荒れて売却自体が難しくなるリスクもあり、仲介に入る不動産会社の力量や対応の早さが試される部分です。

そのため農地の売却を依頼するのであれば、農地の売却実績と知識が豊富な不動産会社を選ぶことが重要です。

10.農地の売買に強い不動産会社選びのポイント

農地の売買をスムーズに進められる不動産会社を選ぶためには、下記3つのポイントに着目しましょう。

  • 農地の売買実績がある
  • 信頼できる担当者がいる
  • 地域に精通している

どれが欠けても農地の売却はうまくいかないため、不動産会社選びは慎重に行う必要があります。

10-1 .農地の売却実績がある

本記事で解説してきたとおり、農地の売却には多くの法的な制限があるため、一般的な不動産売買の知識だけではスムーズな取引ができません。

特に農地転用をともなう売買の場合は、仲介を行う不動産会社が行う業務が多く、仲介期間も長くなります。そのため農地売買の取引実績が多い不動産会社に依頼したほうが、買い手探しから転用の手続き・売却までを滞りなく行ってもらえる可能性が高いと言えます。

10-2 .信頼できる担当者がいる

農地売却に限った話ではありませんが、納得のいく売買を行えるかどうかは、信頼できる担当者を見つけられるかにかかっていると言っても過言ではありません。

担当者に豊富な知識や経験があり、さらに依頼主の希望に対するヒアリング力や不安点に対する提案力があれば、複雑な手続きの多い農地売買であっても納得のいく形で終えることが可能になります。

信頼できる担当者かどうかを見極めるには、農地の査定結果を受け取った際に査定の根拠を聞いたり、不明点について質問してみたりすることをおすすめします。そこで明確な根拠をもって説明できる・依頼主に寄り添った提案ができる担当者であれば、仲介を依頼しても問題ないと判断することができます。

10-3 .地域に精通している

農地を転用にあたっては周辺の土地や環境の整備を行わなければならないケースもあり、その土地に精通していない不動産会社では、手続きに手間取ってしまいスムーズに取引が進まないことも考えられます。

確実に農地転用の許可を得て売買契約を成立させるためにも、不動産会社のホームページを参照するなどして、取引実績の多い地域に含まれているかどうかを確認しておきましょう。

11.不動産会社を探すなら不動産一括査定サイトが便利

土地の売買を行っている不動産会社の中から、農地の売却に精通している会社を探し出すには多くの手間と時間がかかります。そこで是非利用を検討したいのが、不動産一括査定サイトと呼ばれるサービスです。

11-1 .不動産一括査定サイトとは

不動産一括査定サイトとは、複数の不動産会社に一括で査定を依頼することができるサービスのことを指します。

通常不動産会社を選定する場合、インターネットで検索したり街中で見つけた不動産会社に1件1件問い合わせ、売却したい不動産の情報を伝えて査定依頼するという手順を踏みます。しかしその方法ではリサーチや不動産会社とのやり取りに膨大な時間がかかってしまい、売却活動を始めるまでに多くの労力が必要になるという難点があります。

そうした手間や労力を大幅に減らせるのが不動産一括査定サイトです。売却したい農地の情報をインターネット上に入力するだけで、一度に複数の不動産会社に対して査定依頼を送れます。

11-2 .複数の不動産会社からアドバイスを受けることができる

複数の不動産会社に査定依頼できる大きなメリットは、不動産会社をあらゆる側面から比較し、売却したい農地の条件や自分に合った不動産会社を選べるという点です。

査定依頼を送るのが1社だけだと、提示された査定価格が妥当な金額かわからず、また不動産会社自体も農地売買に強い会社かどうかを判断する基準もありません。一度に複数社比較することで、農地売買に強い不動産会社を見極められるのに加え、信頼して仲介を頼める担当者に出会える確率も高まります。

また農地のまま売却するか転用するかを決めかねている段階であっても、不動産一括査定サイトを活用することで、複数の不動産会社からアドバイスを受けられ便利です。

12.農地の売却を相談するなら信頼できる不動産会社へ

農地を納得のいく形で売却するためには、最初の不動産会社選びを慎重に行うことが重要です。

複数の不動産会社を比較して自分に合った会社を見極めるには、不動産一括査定サイト「おうちクラベル」の利用がおすすめ。一度農地の情報を入力するだけで、条件に合った不動産会社を自動的に提案してもらえるため、1社1社リサーチして問い合わせる手間が省けます。

さらに不動産一括査定の利用後には、膨大な売買データから農地の価格を瞬時に算出する「AI査定」も利用可能。不動産会社からの査定結果を待ちながら、精度の高いAI査定の結果をもとに売却活動を進められるのは「おうちクラベル」だけです。

農地の売却は多くの手間と労力が必要になります。不動産一括査定サイト「おうちクラベル」を上手に利用して、スムーズな農地売却を実現しましょう。

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