離婚は夫婦のどちらにとっても大きな負担になるため、何から手をつければいいのかわからないというケースは少なくありません。
特に居住中のマンションの取り扱いについては、住宅ローンが残っていたり引っ越しをしなくてはいけなかったりと多くの問題が浮上することも多く、重大な決断をするための心労も相当なものです。
お互いの金銭的負担を減らしつつ公平に財産分与を行うためには、マンションを売却することも視野に入れる必要があるでしょう。マンションを売却するかどうか判断するポイントと、実際に売却する場合にどのように進めればいいのかを詳しく解説します。
- 1 1.離婚による財産分与とは
- 2 2.離婚するならマンションを売却したほうがよい理由
- 3 3.離婚時にマンションを売却するための条件
- 4 4.ローン中のマンションを売却して財産分与する3つのパターン
- 5 5.ローン完済後のマンションを売却する方法
- 6 6.離婚時のマンション売却の流れ
- 7 7.マンションを売却する場合にかかる費用と税金
- 8 8.売却できない場合の選択肢
- 9 9.離婚後にマンションを所有し続けるメリット
- 10 10.離婚後もマンションに住み続けることのリスク
- 11 11.売却しないなら実態に合わせて名義変更をしよう
- 12 12.離婚後によくあるトラブル
- 13 13.離婚によるマンション売却で注意すべきポイント
- 14 14.離婚してマンションの売却を検討するなら資産価値の把握から
- 15 この記事の監修者
1.離婚による財産分与とは
離婚時の財産分与とは、婚姻中に築いた財産や取得した資産を、離婚時に夫婦で分け合うことを言います。
財産分与の原則は、夫婦それぞれで全ての財産の2分の1ずつとされています。預貯金や株式といったプラスの財産だけでなく、住宅ローンや自動車ローンといったマイナスの財産も財産分与の対象となり、夫婦間の協議によって分与の方法を決めるのが一般的です。
1-1 .マンションも財産分与の対象となる
夫婦が居住していたマンションも、売却する場合・しない場合にかかわらず財産分与の対象です。売却する場合は売却益を夫婦間で分け、売却せずに残す場合は、マンションの評価額をもとに財産分与を行います。
なお住宅ローンが残っているマンションの場合は、マンションの評価額から住宅ローン残債を差し引いたプラス部分のみが財産分与の対象です。
1-1-1 .親から購入資金を援助されていた場合は特有財産となる
マンション購入時に親から購入資金の援助を受けた場合、援助を受けた部分に関しては「特有財産」として扱われ財産分与の対象になりません。
「特有財産」とは、夫婦のどちらかに帰属している財産のことを指します。例えば3,000万円のマンションを購入する際、購入資金のうちの1,000万円をAさんのお父さんが援助したとします。この場合は1,000万円分がAさんの特有財産という扱いになり、財産分与の対象から除外されるということです。
なお1つのマンションの中に共有財産と特有財産がある場合は、購入時に寄与(資金援助)を受けた割合をもとに計算するのが一般的です。
上記の例であれば、購入時にAさんのお父さんが援助した割合は購入資金の3分の1であるため、財産分与を行う際はマンションの売却益または評価額の3分の1が、財産分与の対象から除外されることになります。
1-2 .離婚時のマンションは売却しなければ問題になることも
マンションを売却する場合であれば、「売却益」という具体的な金額にもとづいて財産分与を行えますが、売却しない方法を選択した場合、夫婦間でトラブルに発展する可能性もあります。
1-2-1 .評価額・評価方法が問題となる
マンションを売却しない場合は評価額をもとに財産分与を行いますが、この評価額の算出方法でトラブルになるケースは少なくありません。
不動産の評価額には複数の種類があり、不動産会社による査定額のほか、不動産鑑定士による鑑定額、国が公表する固定資産税評価額・路線価など、それぞれ異なる評価方法で算出されています。つまりどの評価方法を採用するかによって、マンションの評価額も大きく異なるのです。
特に住宅ローンが残っているマンションに夫婦の一方が住み続けるケースでは、評価額によってマンションが財産分与の対象になる場合とならない場合があります。財産分与と住宅ローンの関係性については後ほど詳しく解説します。
1-2-2 .ローンの残債が問題となる
マンションを売却するしないにかかわらず、住宅ローン残債が残っている場合には離婚後の返済方法についての話し合いが必要になります。
誰が支払うか・双方で負担する場合はいつどのように支払うかを明確に決めるだけでなく、確実に返済し続ける意思や能力があるかを確認しておかなければ、大きなトラブルに発展する可能性も否定できません。
1-3 .離婚が決まったらまずはマンションの査定を
財産分与をトラブルなく行うためには、まずは所有するマンションがどれくらいの価値を持つのかを把握しておくことが重要です。
多くの話し合いや手続きが必要な離婚協議中は、「おうちクラベル」をはじめとした不動産一括査定サイトを活用するのがおすすめ。一度マンションの情報を入力するだけで、複数の不動産会社から査定結果を受け取れるため、財産分与時の売却価格や評価額の目安にできます。
2.離婚するならマンションを売却したほうがよい理由
離婚時にはそれまで住んでいたマンションを売却するか、売却せずにどちらかが所有し続けるかを選択する必要がありますが、トラブル回避のためには売却を選択することをおすすめします。その理由は大きく分けて下記の2つです。
2-1 .公平な財産分与ができる
公平性を持ってお互い納得したかたちで財産分与を行えるというのが、離婚時にマンションを売却するメリットの1つです。
売却せずに評価額で財産分与する場合、評価方法によって分配される財産が変動するということもあり、双方合意のうえとは言え、不公平感をぬぐえないケースも少なくありません。
マンションを売却して現金化することにより、夫婦間で公平に財産を分け合った実感が持てるようになります。
2-2 .住宅ローンの残債の問題を回避できる
離婚後に夫婦間に起こるトラブルとして特に多いのが、住宅ローン残債の支払に関するものです。売却せずに一方が所有し続ける場合、残りのローンを継続して返済する必要がありますが、支払の滞納が起きたり音信不通になったりする可能性もあるため、双方にとって大きなリスクが残ることになります。
マンションを売却することで得られた売却金額で住宅ローンを完済できれば、離婚後にローンの返済状況を巡ったトラブルに発展せずにすみます。
3.離婚時にマンションを売却するための条件
マンションは所有者が自由に売却できるわけではなく、下記2つの条件を満たさなければなりません。
- 住宅ローンの完済が必要
- 名義人や連帯保証人の同意が必要
いずれも夫婦以外への相談や交渉が必要になるため、夫婦間の協議と並行して進めていきましょう。
3-1 .住宅ローンの完済が必要
マンションを売却するためには、住宅ローンを完済しておくか、もしくはマンションの売却代金で一括返済する必要があります。
これは住宅ローンを組んだ際に、金融機関がマンションに対して設定した抵当権(返済不能に陥った際にマンションを競売にかけられる権利)を抹消するために必要なことで、ローンが完済できない場合は原則としてマンションの売却が認められないことが理由です。
ただし金融機関の許可があれば、住宅ローンが残っている状態でもマンションを売却できるケースもあるため、後ほど詳しく解説します。
3-2 .名義人や連帯保証人の同意が必要
マンションを夫婦2人やその他親族などと共有名義で購入した場合、名義人全員の同意を得る必要があります。誰か1人でも反対する場合は、マンションを売却することはできないため注意が必要です。
またマンションの購入にあたっては多くの人が住宅ローンを利用しますが、売却時には住宅ローン契約の際に設定した連帯保証人からの同意も必要になるという点も押さえておきましょう。
4.ローン中のマンションを売却して財産分与する3つのパターン
マンションを売却する方法は、売却代金と住宅ローン残債のどちらが上回っているかによって異なります。さらに、通常住宅ローンを完済できない状態でのマンションの売却は認められませんが、例外的に金融機関の承諾を得たうえで売却する方法もあるため、合わせて押さえておきましょう。
4-1 .アンダーローンのマンションなら売却して財産分与しやすい
「アンダーローン」とは、マンションの売却代金で住宅ローン残債を完済できる状態のことを指します。売却金額が十分にあれば、ローンを完済することでマンションに設定された抵当権を抹消できるため、問題なく売却が可能になります。
マンションの売買契約締結後、買主への引き渡しのタイミングで抵当権抹消登記も行うことで、住宅ローンの完済とマンションの売却が同時に成立します。
4-2 .オーバーローンのマンションを売却するときは要注意
住宅ローン残債よりもマンションの売却金額よりも多い「オーバーローン」の場合は、売却金額で足りない分をほかの方法で補って完済しなければ、マンションを売却することはできません。
手持ち資金が十分にあれば、マンションの売却金額に自分の預貯金を追加して返済するという方法があります。この場合はアンダーローンの場合と同じ方法で、売買契約と抵当権抹消までを行うことになります。
また新居の購入資金に、現在の住宅ローン残債を上乗せして融資を受ける「住み替えローン」を活用するのも1つの選択肢です。但し借入金額が通常の住宅ローンよりも多くなるため、審査が厳しいというデメリットもあります。
4-3 .金融機関の許可を得らえれば任意売却という方法も
オーバーローンの状態においては、手持ち資金の持ち出しや住み替えローンなどでローンを完済できなければ、マンションを売却できないというのが原則です。
しかし住宅ローンを完済できる状態でなくても、「任意売却」で売却が可能な場合もあります。
任意売却は住宅ローンが残ってしまう不動産を、金融機関の承諾を得て売却する方法です。一般的には、住宅ローンの滞納により自宅を競売にかけられる可能性がある場合の、救済措置として用いられる方法ですが、離婚を原因とした経済的理由によりローン返済の継続が難しい場合でも、任意売却が許可される可能性があります。
ただし任意売却を行うと、個人の信用情報に傷がついてしまうことになるため、マンションをできるだけ高く売却することが望ましいです。
5.ローン完済後のマンションを売却する方法
住宅ローンを完済している、あるいは売却金額で完済できる見込みのあるマンションの場合は、「買取」と「仲介」のいずれかの方法を選択して売却することが可能です。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
5-1 .買取
「買取」は不動産会社が買主となり、マンション所有者から直接物件を買い取る取引方法です。
最初にマンションの価格を査定してもらい、査定結果や取引方法・スケジュールに納得すればすぐに買い取ってもらえるスピードが特徴。また不動産会社が仲介に入らないため、一般的な不動産売買で必要な仲介手数料の支払がありません。
ただし買取による売却金額は、同様のマンションを仲介で売却した場合の6~7割程度になるというデメリットがあります。ローンの支払が残っている場合は、完済できるだけの売却金が得られるかどうかを確認することが重要です。
5-2 .仲介
少しでも多く売却金額を得る必要がある場合は、不動産会社による「仲介」を利用しましょう。
不動産会社にマンションの売却を依頼して買主を探してもらい、物件の引き渡しまでの手続きをサポートしてもらいます。買主が見つかるまで時間がかかる場合があり、さらに仲介手数料の支払も発生しますが、市場価格の売却が期待できるため、売却金でローンを完済する予定がある場合には仲介を利用することをおすすめします。
6.離婚時のマンション売却の流れ
離婚時のマンション売却は、所有者は誰か・住宅ローンの名義は誰になっているかを確認するところからスタートし、あとは通常のマンション売却と同じ流れで進めていきます。
6-1 .物件の所有者や住宅ローンの名義を確認する
売却活動を始める前に、マンションの所有者と住宅ローンの名義が誰になっているかを確認します。
住宅ローンを組む際にはマンションに所有権と抵当権を設定するため、法務局に問い合わせて登記簿謄本・登記事項証明書を取得することで確認可能です。
名義人が複数いる場合・連帯保証人がいる場合は、最終的な売買契約の際に全員の同意を得る必要があるということを念頭に入れて売却活動を開始しましょう。
6-2 .不動産会社に査定を依頼する
マンションがいくらで売却できそうかを把握するために、不動産会社に査定依頼を出します。
このときに重要なのは、一度に複数の不動産会社を比較し、売却金額・会社の規模・担当者の対応力などを総合的に判断することです。
「おうちクラベル」のような不動産一括査定サイトを経由すれば、少ない手間と時間で多くの不動産会社に査定依頼を送れるため、積極的に活用しましょう。
6-3 .不動産会社と媒介契約を締結して売却活動を開始
不動産一括査定により集まった査定結果を比較して、マンション売却を依頼する不動産会社を選んで媒介契約を締結します。
「媒介契約」とは不動産会社に正式に売却活動を依頼するためのもので、締結後に買主を探すための広告掲載や、購入検討者への営業・内見の案内・条件交渉などが開始されます。
6-4 .売買契約を締結する
購入希望者から申込書を受領し、売買条件に合意したら売買契約を締結します。
売買契約時には下記のような書類などが必要になるため、事前に準備しておくとスムーズです。
- 実印、認印
- 身分証明書
- 登記済権利証
- マンションの管理規約、長期修繕計画、総会議事録
- 印鑑証明書
- 収入印紙
上記のほかにも、住宅ローンの残高証明書や固定資産税・都市計画税納税通知書が必要になる場合もあるため、早めに不動産会社の担当者に確認しておくといいでしょう。
売買契約当日には、手付金として売買金額の10%ほどを買主から売主に対して支払います。
6-5 .決済・物件の引き渡し
売買契約書で定めた引渡し日に、売買代金の残金決算や各種精算金の授受と、抵当権抹消申請を行います。この日をもってマンションの所有権が買主に移るため、マンションの鍵や抵当権抹消に必要な書類など、買主に引き継ぐ書類などの準備と並行して、家財を処分したり引越しのための荷物の搬出を行ったりしておきましょう。
7.マンションを売却する場合にかかる費用と税金
マンションの売買においては、買主側だけでなく売主側にも費用が発生するため、どのタイミングにどれくらいの費用がかかるかをあらかじめ知っておくと安心です。また売却によって利益が出た場合に発生する税金もあるため、合わせて確認しておきましょう。
7-1 .仲介手数料
不動産会社を通じてマンションを売却する場合、発生する費用の中で最も高額なのが仲介手数料です。これは不動産会社に対する成果報酬のようなもので、売買契約が成立した際に支払います。
仲介手数料の金額は法律で上限額が定められており、400万円を超える不動産を売却する場合は「物件価格×3%+6万円+消費税」という計算式で求められます。
7-2 .引越し費用
マンションを売却するということは新しい住まいに引っ越すことになるため、引越しにかかる費用(不用品処分費や運搬費)も考えておく必要があります。
特に引越し業者に依頼する場合は、引越しの時期によって見積金額が大きく変動します。また夫婦のどちらかが引っ越すかや、費用負担の割合をどうするかについては、事前に相談して決めておくことが重要です。
7-3 .印紙税
印紙税とは、マンションの売買契約書に貼り付ける収入印紙にかかる代金です。印紙税の金額は印紙税法で定められた下記の金額が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
表に記載の軽減税率が適用されるのは、2024年3月31日までに作成された売買契約書にかぎります。
7-4 .登録免許税
住宅ローンを完済してマンションを売却する場合、マンションに設定された抵当権を抹消するためにも費用がかかります。このときの費用を「登録免許税」と呼びます。
登録免許税の金額は不動産1件につき1,000円です。マンションの場合は建物部分と敷地部分をそれぞれ別の不動産としてカウントするため、不動産2件分2,000円の登録免許税が必要になります。
また抵当権抹消のための申請は、物件の所有者自身でも行えますが、司法書士に依頼する場合は手数料として1万円~1万5千円程度がかかります。
7-5 .譲渡所得税
「譲渡所得税」はマンションを売却して出た売却益に対してかかる税金のことで、「所得税」と「住民税」を合わせた総称です。税額計算の際にはマンションの所有期間によって異なる税率が適用され、マイホームを売却する場合には特別控除の対象になるということを知っておきましょう。
7-5-1 .マンションの所有期間が「5年以下」か「5年超」かで税率が異なる
譲渡所得税の税額を計算する際には、下記の計算式を用います。
譲渡所得=マンションの売却代金-(マンションの取得費用+売却費用)
課税譲渡所得=譲渡所得-控除額
税額=課税譲渡所得×税率
ここで用いられる税率は、マンション売却時点での所有年数によって異なります。
所有期間 | |||
期間 | 短期譲渡所得(5年以内) | 長期譲渡所得(5年超) | 10年超所有軽減税率の特例 |
自己居住用 | 39.63%* (所得税30.63%・住民税9%) | 20.315% (所得税15.315%・住民税5%) | ①課税譲渡所得6,000万円以下の部分:14.21%(所得税10.21%・住民税4%) ②課税譲渡所得6,000万円超の部分:20.315%(所得税15.315%・住民税5%) |
上記以外 | 39.63%* (所得税30.63%・住民税9%) | 20.315% (所得税15.315%・住民税5%) |
*復興特別所得税2.1%を含む
なお上の表における「10年超所得軽減税率の特例」は、マンションを買い替える場合に適用される住宅ローン控除とは併用ができないため注意しましょう。
7-5-2 .マイホームの売却なら3,000万円の特別控除を受けられる
さらにマイホームを売却する場合には、所有期間の年数に関係なく譲渡所得から最大3,000万円を控除できるという特例があります。
この特別控除が適用されることで、譲渡所得税を算出するもととなる課税譲渡所得を少なくでき、結果的に譲渡所得税を抑えることが可能になるのです。
なおこの特例が適用されるには、マンションに住まなくなった日から3年以内にマンションを売却する必要があります。
8.売却できない場合の選択肢
住宅ローンを返済できない・名義人の同意を得られないなどの理由でマンションを売却できない場合、何らかの形で利用することを検討しなくてはなりません。離婚後のマンションの活用方法としては、夫婦のどちらか一方が住み続ける以外に、賃貸物件としての貸し出しやレンタルスペースの運営といった選択肢があります。
8-1 .どちらか一方が住み続ける
特に子供がいる家庭の場合は、離婚後も夫婦の一方がマンションに住み続けることを選択するケースは多くあります。
ただし住宅ローンの名義人ではないほうが住み続ける場合には注意が必要です。お互いが別の拠点で生活を始めると、連絡をとらないことで元配偶者であり名義人の滞納に気づかず、ある日突然一括返済の請求が届くといったトラブルが起きる可能性もあります。
8-2 .賃貸として活用する
居住しなくなったマンションは、賃貸に出すことで投資物件として扱うことも可能です。賃貸に出せば家賃収入が見込めるうえ、賃貸をやめれば再度自分が住むこともできます。
ただし一般的な住宅ローンの規約では、ローンを完済しなければ賃貸に出すことはかなわないため、「住宅ローンを払えないから第三者に貸そう」という運用は難しいでしょう。
また夫婦間で経営方針や収益の配分などについて合意する必要もあり、夫婦間のトラブルもなく安定した賃貸経営を続けることは容易ではありません。
8-3 .レンタルスペースにする
一時的な使用を目的とした貸し出しを行う、レンタルスペースを運営するというのも選択肢の1つです。
大きな事務所を持たない企業が会議室として使用したり、セミナーや講習会を行うレクリエーションスペースになったりとさまざまな用途が考えられるため、運営次第では賃貸物件として貸し出すよりも収益を得られる可能性もあります。
ただし利用者を集めるためには、物件のメンテナンスや広報活動などが必要になり、元パートナーと連絡を取り合って協力体制で進めなければならない点は押さえておきましょう。
9.離婚後にマンションを所有し続けるメリット
離婚後にマンションを売却するかどうか決断するには、離婚後もマンションを所有し続けることにどんなメリット・デメリットがあるかも理解しておく必要があります。
まずは2つのメリットから見ていきましょう。
9-1 .生活の拠点を変えずにすむ
離婚後も同じマンションに住み続けるということは、それまでと同じ環境で生活できるということです。特に子供のいる家庭にとっては、生活環境や拠点がそれまでと変わらないということは非常に重要なポイントです。
引越しを行うことで通学路の変更以外にも、学区が変わる場合は転校の手続きも必要になる場合があります。子供にとって両親の離婚は精神的にショックが大きく、さらに新しい学校での友人関係や学習環境にも適応しなければならないことも負担になります。
生活の拠点を変えず、住み慣れた地域・仲のいい友達の中で暮らせる状況を作ってあげられるのは、離婚後も同じマンションに住み続けることのメリットといえるでしょう。
9-2 .金銭的負担を軽減できる
マンションを売却すると必然的に新居への引っ越し費用が発生します。新しい物件を契約するためには、賃貸の場合でも敷金礼金・前払いの家賃や仲介手数料が、購入する場合は新たに住宅ローンを組んだり保証会社への委託料が必要になったりと、どうしても多くのお金がかかってしまいます。
その点離婚後もマンションを売却せずに住み続けると、新しい物件を契約するための費用だけでなく家財の運搬費用も発生しないため、金銭的な負担を軽減させることが可能になるのです。
10.離婚後もマンションに住み続けることのリスク
同じマンションに住み続けることで、多額の費用の持ち出しなく慣れ親しんだ環境で生活することが可能になりますが、その後のマンション売却や元パートナーとのやりとりにおいて、トラブルに発展するリスクがあることも知っておかなければなりません。
10-1 .売却の自由度が大きく制限される
マンションの名義が共有名義であったり、住宅ローンを組んだ際に夫婦でお互いに連帯保証人になっていたりするケースでは、後々売却しようとした際に名義人や連帯保証人全員の同意を得なければなりません。
離婚後にも頻繁に連絡を取り合っている元パートナーは非常に少なく、いざ売却しようとしたときに連絡が取れなくなっていたということも少なくないため、離婚後も同じマンションに暮らし続けることで、自由に売却することが難しくなってしまうリスクが考えられます。
10-2 .ローンの返済トラブルが起こりやすい
住宅ローンの名義人と、マンションに住み続ける人が同一ではない場合、ローンの支払いを滞納し続けたことによる差押え・競売にかけられる可能性も否定できません。
例えばローンの名義人である元夫が引っ越し、元妻がマンションに居住し続けるとします。住宅ローンの返済義務は名義人にあるため、元夫がローン完済まで支払いを継続すれば問題ありません。しかし万が一元夫がローンを滞納し続けた場合、抵当権のつけられたマンションは差押え・競売の対象となります。
また夫婦で連帯保証の関係にある住宅ローン契約の場合は、離婚時にローン返済の約束をしていても、相手方が支払いを滞納することでもう一方が一括返済を求められることになります。
10-3 .財産分与で揉めやすく公平な財産分与ができない
既に解説したとおり、マンションを売却せずに財産分与を行う場合は、離婚時のマンションの評価額をもとに分与する金額を決定しますが、評価方法によって価格に差が生まれるため、なかなか双方が合意できるポイントが見つからないことも考えられます。
それに対してマンションを売却する場合は、売却金額という具体的な数字をもって公平に財産分与を行うことが可能なため、「納得はいかないけれど早く終わらせたいから渋々同意した」といった後味の悪さを避けられるでしょう。
11.売却しないなら実態に合わせて名義変更をしよう
離婚後もマンションを売却せずに居住したり運用したりする場合は、マンションの名義人と使用する人が異なるという状況を作らないためにも、名義変更は必ず行っておくことをおすすめします。
11-1 .マンションの名義変更は比較的簡単
マンションの名義変更の手続きは、法務局に申請して所有権移転登記を行うだけのため比較的簡単に完了します。
一般的にマンションのような不動産の譲渡や売却の際、「不動産取得税」や「贈与税」が発生するのでは?と考える人もいるかもしれません。しかし離婚による財産分与として不動産を譲渡する場合には、不動産取得税も贈与税もかからないことになっています。
ただし例外もあり、元々夫婦の共有名義だったマンションを単一名義にする場合(一方の持ち分を相手に財産分与した場合)や、慰謝料がわりに不動産を譲渡した場合には「不動産取得税」がかかります。
11-2 .住宅ローンの名義を変更できずにトラブルになることも
比較的簡単に名義変更できるマンションとは対照的に、住宅ローンの名義変更はなかなか容易には行えません。
住宅ローン契約は融資を行う金融機関が借入希望者を厳しく審査したうえで締結しているものであるため、名義を変更するためには金融機関の承諾を得る必要があります。そして承諾を得るためには、新しく住宅ローンの名義人になる人が単独で返済できるだけの支払い能力があるということを認めてもらわなくてはならず、夫名義あるいは共有名義で借入たローンを妻一人で背負うことになる場合は、ローン完済が難しいと判断されて名義変更を認めてもらえないケースも少なくないのです。
離婚後もマンションを所有し続ける理由があるにもかかわらず、住宅ローンの名義変更が認められない場合には、下記に解説する2つの方法を検討する必要があります。
11-2-1 .住宅ローンを一括返済する
住宅ローン残債が手持ち資金で返済できるくらいの金額であれば、住宅ローンを一括返済してしまうのが最も確実な方法です。
すでに解説したとおり、返済中の住宅ローンの名義を変更するためには金融機関の承諾が必要になりますが、ローンを完済すればマンションに設定された抵当権を抹消する許可が下りるため、その後自由に譲渡したり売却したりすることが可能になります。
11-2-2 .住宅ローンの借り換え
手持ち資金での住宅ローン完済が難しい場合は、住宅ローンを借り換えるという方法があります。住宅ローンの借り換えとは、新しく住宅ローンの契約をして融資を受けることで、現在返済中の住宅ローンを完済することを指します。
例えば元々の住宅ローンを元夫の名義で借りていた場合、借り換えローンを元妻の名義で借りることによりローンの名義を移動させることが可能です。
ただしマンションを購入した際に夫婦2人分の収入で審査に通過していた場合、どちらか一方の単独名義で新しく住宅ローンを組もうとしても、返済負担が大きくなりすぎるため融資を受けることが難しくなります。
12.離婚後によくあるトラブル
離婚の際のマンションの取り扱いは非常に難しく、元配偶者との間にトラブルが起きる可能性は否定できません。先回りして対策するためにも、どのようなトラブルが多いのかをあらかじめ知っておきましょう。
12-1 .元配偶者と連絡が取れない
離婚後はお互いに引越しによる生活環境の変化や、元配偶者と連絡を取りたくないという心情的な理由により、お互いに連絡がとれなくなってしまうケースは少なくありません。
特に共有名義でマンションを購入していた場合、名義人である元配偶者と連絡がとれず売却を進められないという事態に陥ることもあります。
しかし相手側に連絡を取れない・取りたくない事情がある可能性もあるため、無理やり連絡をとろうとせず、弁護士をはじめとした専門家に相談することが重要です。
12-2 .ローン残債の支払いが止まる
住宅ローンの名義人が引っ越し、名義人でないほうがマンションに住み続けるケースでは、住宅ローンの支払いが止まってしまうリスクもあります。
自分が居住していない住まいのローンを支払い続けることに対して、ローンの名義人のモチベーションが低下してしまうことは少なくありません。何ヶ月もローンの返済が滞った結果、マンションを強制退去させられる可能性もあるということは押さえておきましょう。
12-3 .マンションを勝手に売却してしまう
夫婦どちらか一方の名義で購入したマンションを、名義人が元配偶者に相談せず勝手に売却してしまうケースがあります。
本来婚姻期間中に購入したマンションは、単独名義で購入したものだとしても財産分与の対象になります。配偶者にも売却金額を受け取る権利があるため、売却前に双方で配分や分配方法を決めておかなければなりません。
12-4 .財産分与の期限を過ぎてしまう
離婚による財産分与の期限は「離婚後2年以内」と定められており、それを超えてしまうと家庭裁判所への申し立てができなくなってしまいます。
何らかの理由で離婚後2年以内に財産分与の話ができない場合は「財産分与請求調停」を申し立て、家庭裁判所の力を借りて財産分与を進めることが重要です。
13.離婚によるマンション売却で注意すべきポイント
離婚時のマンション売却はさまざまなトラブルが発生するリスクがあり、慎重に進めていく必要があります。特に注意したい3つのポイントを紹介します。
13-1 .売却のタイミングに注意する
マンションの売却は、離婚前より離婚後に行ったほうがトラブルが起きにくく、売却にともなう費用を抑えられます。
離婚前にマンションを売却した場合、売却金額の分配が「贈与」とみなされ、売却金額の分配を受ける側に贈与税が課税される可能性があります。一方離婚後に売却した場合は、売却金額の分配は「財産分与」とみなされるため、贈与税課税の対象にはなりません。
離婚と合わせてマンションの売却を検討している場合は、売却計画は離婚前に、売却の手続きは離婚後に行うことで、トラブルと課税による損失を少なくできます。
ただし財産分与には「離婚後2年以内」という期限があるため、先延ばししすぎないことが重要です。
13-2 .公正証書で離婚協議書を作成する
離婚協議書とは、離婚の際に夫婦間で取り決めた金銭などに関する約束事を記録しておくためのものです。
特に離婚後にローンの支払いやマンションの売却などで、金銭のやり取りが発生する場合には、離婚協議書を公正証書にしておくことで、万が一約束事が守られなかった場合に強制執行の対象となります。
13-3 .財産分与請求調停を申し立てる
離婚後のマンション売却や財産分与は、当事者間だけでは話し合いがまとまらないケースも少なくありません。また両者の関係性によっては、相手と会いたくない・感情的になってしまいかえって対立が悪化してしまうといったことも考えられます。
「財産分与請求調停」の申し立てを行うと、申し立てた人と申し立てられた人が、別々に調停委員と話すことで調停が進められます。家庭裁判所の力を借りて財産分与の話を進めることができ、大きなトラブルを回避することも可能になるのです。
14.離婚してマンションの売却を検討するなら資産価値の把握から
離婚後に双方が納得できる形で財産分与を行うには、まずは所有するマンションにどれくらいの価値があるかを知り、売却するかそのまま活用するかを判断する必要があります。
不動産一括査定サイト「おうちクラベル」は、数多くあるマンション売買専門の不動産会社を一度に比較できる便利なサービスです。一度物件情報を入力するだけで複数の不動産会社に査定依頼を送れ、受け取った査定結果からマンションを売却した場合の相場だけでなく、どの会社に依頼すれば高く売却できるかを見極められるという大きなメリットがあります。
離婚後の財産分与でトラブルにならないためには、マンションをできるだけ高く売って住宅ローンを完済することが理想です。「おうちクラベル」を上手に活用し、離婚後の財産分与を円満に進められる価格でのマンション売却を目指しましょう。