土地は1人がすべての権利を有する単独所有であることもある一方で、複数人が権利を有する単独所有であることもあります。
このような共有名義の土地は、売却することができるでしょうか?
また、売却するにはどのような方法があるでしょうか?
今回は、共有名義の土地の売却について詳しく解説します。
共有名義の土地の基本
はじめに、共有名義の土地の基本的な概要について解説します。
共有名義の土地とは
共有名義の土地とは、複数人で共有している土地のことです。
たとえば、土地をA氏が1人で所有している状態を「単独所有」といいます。
一方、土地をA氏、B氏、C氏が各1/3の割合で有している状態などが「共有」です。
各共有者の所有割合は必ずしも同一であるとは限らず、1/3ずつなど等しい割合で有していることがある一方で、A氏が98/100、B氏とC氏がそれぞれ1/100など共有者によって持分に大きな差があるケースもあり得ます。
各共有者は、「共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」とされています(民法249条1項)。
これは、たとえば土地が300㎡である場合において、1/3ずつの共有持分を有しているA氏、B氏、C氏がそれぞれ100㎡部分の権利を持っているということではありません。
この場合、A氏、B氏、C氏は300㎡の土地全体を使用することができます。
ただし、1人が土地全体を使用していると他の共有者は土地を使うことができないため、原則として次の3択となります。
- 1年のうち4か月ずつ使用するなど、3人が交代して土地全体を使用する
- A氏が単独で使用し、A氏からB氏とC氏に償金(使用料)を払う
- 土地全体を貸して、賃料を分ける
一般的な土地の場合は「1」は現実的ではなく、「2」か「3」がほとんどです。
または、「2」であるものの、親族であることなどを理由に事実上償金の支払いを免除されているケースも多いでしょう。
土地が共有名義かどうかを確認する方法
ある土地が共有名義かどうかを調べたい場合は、法務局からその土地の「全部事項証明書(登記簿謄本)」を取得します。
全部事項証明書には、原則として「権利部(甲区)」に所有者に関する情報が記載されています。
この欄に所有者の氏名が単独で書かれている場合は、土地は単独所有です。
一方、次のように複数者の氏名が書かれており、それとともに共有持分が併記されている場合、その土地は共有です。
- 持分3分の2 A
- 持分3分の1 B
ただし、現在の共有者が同じタイミングで土地を取得した場合は一見して共有であることがわかりやすい一方で、共有者が異なるタイミングで土地の共有持分を取得した場合などには、全部事項証明書を見ても共有であることがわかりにくいかもしれません。
その際は、無理に自分で判断するのではなく、法務局の窓口や司法書士などの専門家などに相談することをおすすめします。
共有名義の土地を売却する方法
土地が共有である場合であっても、土地を売却することは可能です。
しかし、単独所有の土地のように、1人で土地全体を売却することはできません。
ここでは、土地がA氏、B氏、C氏による各1/3の割合での共有であるケースにおいて、A氏が土地を売却したいと考えていることを前提に、4つの方法を解説します。
- 共有者全員が協力して全体を売却する
- 共有持分のみを第三者に売却する
- 共有持分を他の共有者に売却する
- 土地を分筆して単独名義にしたうえで売却する
共有者全員が協力して全体を売却する
多くのケースでまず目指すべき方法は、共有者全員が協力して土地を売却する方法です。
A氏とB氏、C氏の3名が協力することで、土地全体を完全な状態で売却することが可能となります。
当然ながら、A氏がB氏やC氏の持分までを無断で売ることはできません。
そのため、あらかじめ全員でよく話し合い、売却へ向けての意見をまとめることが必要です。
この場合は、A氏が「2,800万円程度でよいから早く売りたい」と考えている一方で、B氏やC氏が「売却は急がないので、3,000万円以上でないと売りたくない」と考えているなど、売却方針が異なり意見がまとまらないリスクがあります。
いずれにしても、売却するかどうかの話し合いを進めるにあたっては、あらかじめ査定を受け、土地がどの程度の価格で売却できるか確認することをおすすめします。
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共有持分のみを第三者に売却する
2つ目は、A氏が自己の共有持分のみを第三者に売却する方法です。
実は、土地は共有持分だけでも売却することができます。
自己の共有持分のみを売る場合は、他の共有者の承諾などを得る必要もありません。
たとえば、A氏が1/3である自己の持分を第三者であるXに売却することで、その後土地はXとB氏、C氏による1/3ずつの共有となります。
とはいえ、Xはせっかく土地を購入してもB氏やC氏との共有となり、自由に土地を使うことができません。
そのため、共有持分のみを売却する場合、その土地の相場どおりに売ることはできず、売却価格は持分の売却相場の5割から2割程度となることが一般的です。
このような理由から、これは他の方法による売却ができず、損をしてでも共有関係から離脱したい場合の選択肢となります。
共有持分を他の共有者に売却する
3つ目は、共有持分を他の共有者に売却する方法です。
具体的には、A氏が自己の共有持分をB氏やC氏に買い取ってもらうということです。
A氏としては、第三者ではなく他の共有者に売却する方が、土地を高く売りやすくなります。
また、B氏やC氏としてもA氏が第三者に共有持分を売ってしまう事態は避けたいと考えることが多いため、A氏から持ちかけられた売却の申し出に応じる可能性が高いでしょう。
土地を分筆して単独名義にしたうえで売却する
4つ目は、土地を分筆して単独名義としたうえで、個々が自由に売却する方法です。
分筆とは、1筆の土地を複数の土地に切り分けることを指します。
たとえば、土地が300㎡である場合、これを100㎡ずつの3筆に切り分け、切り分けた後の100㎡の土地をそれぞれA氏、B氏、C氏が単独で所有することが考えられます。
単独所有となった土地は、それぞれが自由に利用することができ、売却もしやすくなります。
ただし、さほど広くない土地である場合は、切り分けてしまうと利便性が極端に損なわれて売却が難しくなるほか、土地の位置や形状によっては建物が建てられない無道路地が生まれてしまいます。
ほかにも、分筆には注意点が少なくありません。
そのため、土地の分筆は不動産会社へ相談のうえ、総合的に判断することをおすすめします。
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共有名義の土地を売却する流れ
共有名義の土地の売却は、どのように進めればよいでしょうか?
ここでは、共有者全員が協力し、土地全体を売却する前提で解説します。
- 共有者を正しく把握する
- 代表者を決める
- 査定を受ける
- 費用負担を取り決める
- 媒介契約を締結して不動産を売りに出す
共有者を正しく把握する
はじめに、全部事項証明書などから、共有者と共有持分を正しく把握します。
全部事項証明書から確認できる共有者に故人が含まれている場合は、売却に先立って相続人を探し、相続登記(故人から存命の相続人などへと土地の名義を変える手続き)をしなければなりません。
名義人に故人が含まれている場合は、あらかじめ司法書士などの専門家へご相談ください。
代表者を決める
共有者が把握できたら、共有者全員で売却へ向けて進める方針をまとめます。
そのうえで、売却手続きを主導する代表者を決めます。
共有者が2人程度であり、売却に向けて常に一緒に動けるのであれば、代表者を決めず一緒に手続きを進めても構いません。
一方で、共有者が多い場合や遠方に共住している場合、多忙である場合などは、代表者を決めた方がスムーズです。
査定を受ける
次に、不動産会社から土地の査定を受けます。
査定とは、不動産会社にその土地の売却適正額を算定してもらう手続きです。
査定を受けないと土地の売出価格(売主の希望売却価格)を決めることが難しいため、土地の売却にあたっては原則として査定を受けなければなりません。
査定を受けることで、売却で得られる額や費用などの試算がしやすくなり、共有者間で売却に向けた話し合いをより具体的にまとめやすくなります。
査定は1社だけではなく、複数の不動産会社へ依頼することをおすすめします。
不動産会社によって査定額が異なることは珍しくなく、複数社へ依頼することで売却適正額を把握しやすくなるためです。
また、査定額や売却へ向けたアドバイスなどを比較することで、その土地の売却を任せる不動産会社を選定しやすくなります。
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費用負担を取り決める
査定額がわかったら、費用負担についても話し合っておくことをおすすめします。
土地の売却には、次の費用などがかかります。
費用・税金 | 概要 |
---|---|
印紙税 | 土地の売買契約書にかかる税金。 収入印紙を貼付して納付する。 1億円を超えるような高額な土地などでない限り、数千円から数万円程度。 |
抵当権の抹消費用 | 売却する土地に抵当権(担保)が付いている場合に、これを抹消するためにかかる費用 ・登録免許税:不動産の数×1,000円 ・司法書士報酬:1万円~2万円程度 |
不動産会社の仲介手数料 | 土地の売買契約が成立した際に、不動産会社に支払うべき報酬。 原則として「売却価額×3%+6万円+消費税」で計算する |
土地の測量費用 | 30万円〜80万円程度。 隣地との境界が確定されていない場合などに必要となる |
他の共有者がこれらの費用がかかることを認識していないと、費用負担を求めた際にトラブルとなるおそれがあります。
そのため、あらかじめかかる費用について確認して情報を共有したうえで、負担割合を取り決めておくことをおすすめします。
なお、土地の売却後には売却によって得た利益に応じて譲渡所得税や住民税がかかりますが、これは各共有者が得た利益に応じてそれぞれ確定申告をすべき性質のものであり、共有者間で負担割合を決めるようなものではありません。
媒介契約を締結して不動産を売りに出す
査定結果を踏まえ、土地の売却を依頼する不動産会社を決め、不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社に土地の買主を探してもらったり、買主との売買契約を仲介してもらったりするために締結する契約です。
媒介契約には次の3種類があります。
状況や希望に合った契約を選択してください。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
他の不動産会社へ重ねての依頼 | 不可 | 不可 | 可 |
自己発見取引 (自分で買主を見つけて売却すること) | 不可 | 可 | 可 |
指定流通機構(レインズ)への登録義務 | 5営業日以内 | 7営業日以内 | 義務なし |
報告頻度 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 指定なし |
媒介契約を締結したら、土地の売り出しを開始します。
共有名義の土地を売却する際の主な必要書類
共有名義の土地を売却するには、どのような書類が必要となるでしょうか?
ここでは、一般的な必要書類をまとめて紹介します。
土地に関する書類
はじめに、土地自体に関する必要書類を紹介します。
- 権利証または登記識別情報
- 土地測量図と境界確認書
権利証または登記識別情報
共有名義の土地を売却するには、その土地の「登記済権利証」または「登記識別情報通知」が必要となります。
これらはいずれも、その土地の権利を取得して登記をした際に、法務局から発行された書類です。
以前は土地の登記に伴い権利証が発行されていたものの、2004年に不動産登記法が改正されたことによって登記識別情報通知が発行されることとなりました。
改正法への対応時期は登記所によって異なり、「〇年〇月以降は登記識別情報通知が発行されているはず」などと一律に言えるものではありません。
目安としては、土地の取得時期が2006年頃より前である場合は「権利証」が、それ以後である場合は「登記識別情報通知」が発行されている可能性が高いといえます。
なお、権利証と登記識別情報通知は、発行通数にも違いがあります。
権利書は土地が共有名義でも、1通のみの発行であることが原則でした。
ただし、たとえば父と長男が共有していた土地についてその後父が亡くなり父の共有持分を二男が相続した場合など、1つの土地について有効な権利証が複数あるケースもあります。
一方、登記識別情報通知は原則として、共有者全員にそれぞれ発行されます。
権利書や登記識別情報通知が見当たらない場合であっても、再発行を受けることはできません。
その際は、司法書士が別途、所定の本人確認手続を踏むこととなります。
これらの書類を日ごろから目にしない人にとっては、紛失しているのか揃っているのかの判断が難しいこともあると思います。
その際は、あらかじめ共有者全員の権利書と登記識別情報通知を集め、手元にある書類で不足がないか不動産会社の担当者や司法書士に確認してもらうと安心です。
土地測量図と境界確認書
土地測量図と境界確認書は、土地の境界が確定していることを証する書類です。
土地測量図や境界確認書境界がなく隣地との確定されていない場合は、売却に先立って測量を依頼する必要が生じます。
これらがある場合は土地購入時の資料と一緒になっていることが多いものの、わからない場合はそれらしい書類を集めておき、査定時に確認してもらうことをおすすめします。
各共有者に関する書類
共有名義の土地を売却する際は、共有者全員の「実印」と「印鑑証明書」が必要となります。
たとえ代表者を取り決めても、代表者のみの実印や印鑑証明書のみで共有不動産全体の売却手続きを完了させることはできません。
なお、状況によっては、ここで挙げた以外の書類が必要となることもあります。
そのため、より具体的な必要書類は、不動産会社の担当者へ個別でご相談ください。
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共有名義の土地に関する主なトラブル
共有名義の土地の売却では、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。
最後に、共有名義の土地の売却にまつわるトラブルを3つ紹介します。
- 売却に関する意見がまとまらない
- 他の共有者が持分を売却した買取会社から強引な買い取りを持ちかけられる
- 共有者の一部が行方不明になる
こちらも、A氏、B氏、C氏が各1/3の割合で土地を共有している前提で解説を進めます。
売却に関する意見がまとまらない
1つ目は、売却に関する意見がまとまらないことです。
A氏とB氏が土地を売りたいと考えている一方で、C氏が売りたくないと考えている場合のほか、売却条件に関する意見がまとまらない場合もあります。
なお、共有者が多くなるほど全員の意見をまとめることは困難となる傾向にあります。
そのため、共有者が多数いる場合は全員で足並みをそろえて土地を売却するのではなく、売却を主導したい共有者(A氏)が先に他の共有者の持分を買い取り、土地をA氏の単独所有としたうえで第三者に売却することも1つの手です。
他の共有者が持分を売却した買取会社から強引な買い取りを持ちかけられる
2つ目は、他の共有者が売却した共有持分買取会社から、強引な買い取りを持ちかけられることです。
先ほど解説したように、共有持分のみを第三者であるXに売却することは可能です。
しかし、土地の持分のみを買い取ったからといって、Xが土地を自由に使えるわけではありません。
そのため、共有持分の購入者は一般個人ではなく、共有不動産の買取を専門に取り扱う会社であることが一般的です。
共有持分買取会社は共有持分を安く買い取り、その後他の共有者からも土地の持分を買い取ることなどで単独所有とし、転売した差額で儲けることを目指していることが一般的です。
そのため、共有者の一部であるB氏が共有持分買取会社Xに持分を売却してしまうと、その後XからA氏やC氏に対して強引な買い取りを持ちかけられたり、買い取るための裁判を提起されたりするおそれがあります。
共有者の一部が行方不明になる
3つ目は、一部の共有者が行方不明となり連絡が取れなくなることです。
共有者が行方不明になると、土地の管理や売却に支障が生じます。
ただし、打つ手がないわけではありません。
共有者が所在不明となった場合は、所定の要件を満たしたうえで裁判手続きを踏むことで、その共有者の持分を買い取ることなどが可能です。
そのため、不動産に詳しい弁護士などの専門家へご相談ください。
まとめ
共有名義の土地も、売却することが可能です。
共有名義の土地を売却するにはさまざまな方法がありますが、自己の共有名義のみを売却する場合は売却価格が非常に低くなりかねません。
そのため、まずは他の共有者と話し合い、共有者全員での売却を目指すことをおすすめします。
共有名義となっている土地の売却をご検討の際は、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルは、査定依頼フォームへ1度入力するだけで複数の不動産会社へ査定の依頼ができる不動産一括査定です。
複数社による査定額を比較することで、その土地の売却適正額を把握しやすくなるほか、担当者によるアドバイスを比較することで、その共有名義の土地の売却を成功へ導いてくれる不動産会社を見つけやすくなります。