「マンションの寿命は47年」などといわれることもありますが、これは適切ではありません。
では、実際にはマンションの寿命はどのくらいなのでしょうか?また、寿命が近いマンションを所有している場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
今回は、マンションの寿命についての考え方やマンションが寿命を迎える前の対応などについて詳しく解説します。
マンションの寿命とは
マンションの寿命はどのように考えればよいのでしょうか?はじめに、マンションの寿命の考え方について解説します。
マンションの寿命は安全に住める期間
「マンションの寿命」が何を指すのかはその文脈によって異なりますが、一般的にはそのマンションに安全に住める期間を指すことが多いでしょう。
その意味でのマンションの寿命は、一概に何年であるといえるものではありません。構造部の強度に問題がなくメンテナンスや管理が適切にされていれば、100年以上となる場合もあります。
なお少し古い資料ですが、国土交通省が平成25年8月に公表した資料「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」によると、鉄筋コンクリート造である住宅の平均寿命は68年であるとの調査結果が存在するとされています。
法定耐用年数=寿命ではない
マンションの寿命がメンテナンスなどの状況によって異なるとするのであれば、マンションの寿命としてしばしば挙げられる「47年」は何を根拠にしているのでしょうか?これは法定耐用年数の考え方によるものです。
法定耐用年数はあくまでも計算上の資産価値が持続する年数を指し、寿命と法定耐用年数は必ずしもイコールではありません。法定耐用年数を過ぎたからといってマンションがいきなり倒壊したり危険な状態になったりするということではないということです。
法定耐用年数とは
耐用年数とは、「通常の維持補修を加える場合にその減価償却資産の本来の用途用法により通常予定される効果をあげることができる年数(東京都主税局)」です。平たくいえば、その資産が通常使用できる年数にあたります。
耐用年数は、資産を保有する企業が独自に定めて減価償却などをすることが原則です。減価償却とは、数年間使用する資産の取得費用をその年度にすべて計上するのではなく、その使用期間に配賦(はいふ)して経費計上をする仕組みです。
しかし、企業が自由に耐用年数を設定できるとなれば、法人税などを算定する際の経費が企業の自由に操作できてしまいます。これは課税の公平性から問題があるため「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって法定耐用年数が定められており、税務申告の際には原則としてこの法定耐用年数を基準とすることとされています。
この法定耐用年数は法人税などの申告の際に使用されるのみではなく、実際には資産を売買する際の価値の算定や資産の担保価値を算定する際にも参考とされています。
マンションの法定耐用年数
「マンションの寿命は47年」と簡易的にいわれることがありますが、これは法定耐用年数の考え方によるものです。しかし、法定耐用年数はマンション(建物)の構造や用途によって異なっており、一律47年とされているわけではありません。
「住宅用」のものに絞った建物の耐用年数はそれぞれ次のとおりです。
構造 | 耐用年数 |
---|---|
木造・合成樹脂造のもの | 22年 |
木骨モルタル造のもの | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの | 47年 |
れんが造・石造・ブロック造のもの | 38年 |
金属造のもの | 骨格材の肉厚により次のとおり 4mm超のもの:34年 3mm超4mm以下のもの:27年 3mm以下のもの:19年 |
このように、住宅用の建物であるからといってすべての耐用年数が47年というわけではありません。ただし、多くのマンションは「鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの」に該当するため、簡易的に「マンションの寿命は47年」などといわれるのです。
マンションの寿命を左右するポイント
ここからは法定耐用年数ではなく、マンションの実際の寿命を念頭に置いて解説を進めます。マンションの寿命はそのマンションの状況によって異なるため一概にいえるものでないことは先ほど解説したとおりです。
では、マンションの寿命はどのような要素によって左右されるのでしょうか?マンションの寿命に影響を与える主な要素は次のとおりです。
- 耐震基準
- メンテナンスの状況
- 外壁の強度
- 立地
耐震基準
耐震基準とは、一定規模の地震に耐えられることを保証した構造基準であり、クリアしなければ建築の許可を受けることができません。1981年6月以降に建築確認を受けたマンションではより厳しい「新耐震基準」が適用されており、震度6強から7程度の地震でも家屋が倒壊したり崩壊したりしないことが基準とされています。
新基準が適用されたマンションの方が建物の強度が高く、マンションの寿命が長くなる傾向にあります。
メンテナンスの状況
適切にメンテナンスがされているマンションの方が、寿命が長くなる傾向にあります。特に、配管のメンテナンスはマンションの寿命を左右する重要な要素です。
比較的古いマンションの中には配管がコンクリート内部に埋め込まれているものがあり、この場合には配管の寿命がマンション自体の寿命となってしまいかねません。配管の寿命は、一般的に30年から40年程度とされています。
また、長期のメンテナンスや修繕計画の有無も重要なポイントです。管理組合が適切に機能しておらず長期修繕計画がない場合などには、マンションの劣化が進行しやすいといえるでしょう。
外壁の強度
外壁の強度もマンションの寿命を左右する重要な要素です。外壁に使用されているコンクリートの質によっては、経年劣化で雨漏りをしたり外壁の一部が剥がれ落ちて危険な状態になったりする可能性があります。
10年から15年ごとのサイクルを目安に塗装や修繕など適切なメンテナンスが行われていれば、外壁の寿命を延ばすことが可能となるでしょう。
立地
マンションの寿命には、マンションの立地も影響します。
特に海沿いに建てられたマンションなどでは塩害の影響が大きいことから、設備の劣化がしやすい傾向にあるでしょう。また、日当たりが悪いマンションであればカビなどによる劣化への対策が必要となります。
劣化しやすい環境に立地するマンションの場合は、他のマンションよりもメンテナンス状況に注意を払うことが必要です。
寿命が過ぎたマンションはどうなる?
マンションが寿命を迎えた場合、そのマンションはどうなるのでしょうか?寿命を迎えたマンションの主な取り扱いは次のとおりです。
- 建て替えられる
- まるごと売却される
- 解体して土地のみが売却される
- そのまま放置される
建て替えられる
1つ目は、マンションを丸ごと建て替えるパターンです。
マンション内の各部屋を所有している人(「区分所有者」といいます)が費用を出し合って、マンションを丸ごと建て替えます。マンションの建て替えには多額の費用がかかるため、一戸あたり数千万円もの負担金が生じることも珍しくありません。
なお、マンション戸数を増やす余地があり、かつ購入ニーズが見込める場合には建て替えで増えた戸数の購入対価から建て替え費用の一部が賄えるため、一戸あたりの負担金が少なくなる可能性もあります。
ただし、マンションを建て替えるには区分所有者の5分の4以上の賛成と議決権の5分の4以上の賛成による決議が必要であり、ハードルが高いといえます。そのため、建て替え決議がまとまった事例はさほど多くありません。
国土交通省が公表している「マンション建替えの実施状況(2022年4月1日現在)」によると、建て替え工事が完了したマンションの総数は270件に過ぎません。
まるごと売却される
2つ目は、寿命を迎えたマンションと土地をまるごとデベロッパーなどに売却するパターンです。
売却対価は各区分所有者に配分されますが、解体費用が差し引かれることが多く、受け取れる金額は少なくなることが多いでしょう。そのため区分所有者が反対する可能性が高く、実現のハードルは高いといえます。
解体して土地のみが売却される
3つ目は、マンションを解体して土地のみを売却するパターンです。こちらも各区分所有者が解体費用を負担する必要があり、ハードルは高いでしょう。
そのまま放置される
4つ目は、有効な対処がなされずそのまま放置されるパターンです。そもそも寿命を迎えたマンションの住民は高齢となっていることも多く、施設への入所や入院、死亡などによってマンションから去るケースも少なくありません。
死亡すれば相続が発生して法律上は子どもなどがマンションの権利を引き継ぎますが、相続しても子ども世代が築古のマンションに住まないことが多いうえ、名義変更さえ放置されるケースも多いのが現状です。
残った住民の中には危険性を把握しながらもそのまま住み続ける人もいる一方で、マンションを放置して引越しをする人も発生します。結果的に、居住者がほとんどおらず管理組合も機能しない「ゴーストマンション」となる可能性もあるでしょう。
築40年を超えた高経年マンションは今後ますます増加し、2038年末には366.8万戸にものぼる見込みです。国はこの状況を問題視しており、今後建て替えや売却などへ向けた新たな方策が講じられる可能性が高いでしょう。
マンションの寿命が近い場合の対処法
現在所有しているマンションの寿命が近い場合、個人としてはどのように対応すればよいのでしょうか?主な選択肢は次のとおりです。
- 建て替えに賛同する
- そのまま住み続ける
- 早めに売却する
建て替えに賛同する
1つ目は、マンションの建て替えの話が浮上した際に建て替えに賛同することです。
上で解説をしたように、建て替えには多額の費用が生じる場合が多いため、費用の捻出を覚悟しておかなければなりません。また、建て替え決議のハードルは非常に高く、反対する住民が多ければ建て替えの実現は困難でしょう。
そのまま住み続ける
2つ目は、そのまま住み続けることです。費用をかけたくなく住み替えることにも抵抗がある場合には、この方法をとらざるを得ないでしょう。
早めに売却する
3つ目は、建て替えの話が浮上する前に早めに売却をすることです。売却ができれば、これで得た資金を元手として住み替え先の検討もしやすくなります。
しかし、寿命が近いマンションは買い手が見つかりにくいことも多いでしょう。そのため、まずはそのマンションの売却に強みを持つ不動産会社を見つけることがカギとなります。
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寿命が来る前にマンションを売却するポイント
マンションの寿命が来る前にマンションを売却する際の主なポイントは次のとおりです。
- 信頼できる不動産会社へ相談する
- 法定耐用年数内での売却を目指す
- 不動産買取も視野に入れる
信頼できる不動産会社へ相談する
寿命の近いマンションは老朽化が進んでいることも多く、買い手が見つかりにくい可能性があります。そのため、そのマンションの売却に強みを持つ信頼できる不動産会社への依頼がカギとなるでしょう。
そのマンションの売却に強い不動産会社をお探しの際には、「おうちクラベル」の不動産一括査定をご利用ください。
法定耐用年数内での売却を目指す
法定耐用年数はマンションの寿命とイコールではないものの、法定耐用年数を過ぎたマンションは売却がしづらくなります。なぜなら、法定耐用年数が過ぎたマンションは担保としての価値が低いと判断されることが多く、買い手の住宅ローン審査が通りづらくなる傾向にあるためです。
そのため、可能な限り法定耐用年数内での売却を目指すとよいでしょう。
不動産買取も視野に入れる
寿命が近いマンションなど一般的に売りづらいとされるマンションは、「不動産買取」も視野に入れるとよいでしょう。
不動産買取とは、不動産会社に買い手を探してもらうのではなく、不動産会社にマンションを直接買い取ってもらうことです。リノベーションなどマンションの再生に自信のある不動産会社であれば、寿命の近いマンションを買い取ってくれる可能性があるでしょう。
ただし、不動産買取の場合には市場での売却と比較して売却価格が低くなる傾向にあるほか、必ずしも買い取ってもらえるわけではない点に注意が必要です。
寿命の近いマンションを売却する流れ
寿命の近いマンションを売却する基本の流れは次のとおりです。
- 売却について検討する
- 不動産の査定を依頼する
- 不動産会社を選定する
- 媒介契約を締結する
- マンションを売りに出す
- 内見や問い合わせに対応する
- 売買契約を締結する
- 決済をしてマンションを引き渡す
売却について検討する
はじめに、マンションの売却について十分に検討しましょう。売却の検討にあたっては、次の事項を行うことをおすすめします。
- おおまかな相場を知る
- 住み替え先を検討する
おおまかな相場を知る
売却の検討に際しては、そのマンションのおおまかな相場を確認しておくとよいでしょう。自分でマンションの相場を知るためには、次のウェブサイトが参考になります。
- 国土交通省が運営する「不動産取引価格情報検索」
- 不動産流通機構(レインズ)が運営する「レインズ・マーケット・インフォメーション」
いずれも、町名までの所在地とともに実際のマンションの売却事例を見ることができます。築年数や間取り、広さなども表示されるため、売却しようとするマンションの情報と比較することでマンションの売却額が想定しやすくなるでしょう。
住み替え先を検討する
売却を検討しているマンションに現在居住している場合には、住み替え先も検討しなければなりません。
住み替え先ははじめから購入してもよいですが、一時的に賃貸住宅に引っ越して購入する物件をその後じっくり検討することも1つの手です。また、物件を相続させたい相手がいない場合にはあえて新たな物件は購入せず、今後は賃貸で暮らすことも選択肢となるでしょう。
不動産の査定を依頼する
マンションを売却する方向である程度気持ちがまとまったら、不動産会社に査定を依頼します。
マンションの売却で失敗しないためには、査定は複数の不動産会社に依頼するとよいでしょう。なぜなら、複数社による査定額や査定への説明などを比較することで、そのマンションの売却に強みを持つ不動産会社を選定しやすくなるためです。
複数社に査定を依頼したい場合には、ぜひ「おうちクラベル」の不動産一括査定をご利用ください。
不動産会社を選定する
複数社に査定を依頼したら、マンションの売却を依頼する不動産会社を選定します。
不動産会社は査定額の高さのみでなく、査定額の説明や対応の誠実さなどを総合的に考慮して選定するとよいでしょう。なぜなら、査定額はあくまでもその不動産会社が想定する売却見込み額でしかなく、必ずしもその査定額で売れるとの保証ではないためです。
媒介契約を締結する
不動産会社を選定したら、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には次の3種類があります。
- 専属専任媒介契約:他の不動産会社に重ねて仲介を依頼できない媒介契約。自分で買い手を見つけることも制限される。不動産会社側には5営業日以内のレインズへの登録と1週間に1回以上の報告義務がある。
- 専任媒介契約:他の不動産会社に重ねて仲介を依頼できない媒介契約。自分で買い手を見つけることは可能。不動産会社側には7営業日以内のレインズへの登録と2週間に1回以上の報告義務がある。
- 一般媒介契約:重ねて複数の不動産会社に仲介を依頼できる媒介契約。不動産会社側にはレインズへの登録義務がなく、報告頻度の制限もない。
寿命の近いマンションは一般的に売れにくい不動産であるため、このうち「専属専任媒介契約」や「専任媒介契約」を選択するとよいでしょう。なぜなら、他の不動産会社と重ねて媒介契約を締結できないこれらの契約の方が、不動産会社に売却へ向けて注力してもらいやすいためです。
マンションを売りに出す
媒介契約を締結したら、いよいよマンションを売りに出します。
売り出すにあたっては売り出し価格を決める必要がありますが、この値決めがマンション売却の成否を決める非常に重要な要素です。売り出し価格が高すぎるとマンションがなかなか売れない一方で、売り出し価格が低すぎると損をしてしまうことになるためです。
売り出し価格は、査定額をベースに売主の希望を加味して設定します。不動産会社からのアドバイスを受けながら適切な売り出し価格を設定しましょう。
内見や問い合わせに対応する
購入希望者からの問い合わせには、原則として不動産会社が対応します。ただし、不動産会社が問い合わせに回答するために不動産会社から売主に対して質問がされる場合もあります。その際は質問にはすみやかに回答しましょう。
またマンションの買主は、購入を決める前に内見を希望することが一般的です。売買契約の成立につなげるため、居住中の場合であっても内見には積極的に対応しましょう。
売買契約を締結する
買主がマンションの売却を決めたら売買契約を締結します。
売買契約の締結に際しては、買主から手付金が交付されることが多いでしょう。手付金の額はケースバイケースですが、売買代金の5%から10%程度とされることが一般的です。
決済をしてマンションを引き渡す
最後に、決済をして買主にマンションを引き渡します。決済の日までにマンションを空室にしてハウスクリーニングを済ませておきましょう。
決済日には、次のことが同時に行われることが一般的です。
- 買主の住宅ローンの実行
- 買主から売主への売買代金全額(支払い済みの手付金を控除した残額)の支払い
- 売主から買主へマンションの名義を変えるための書類への押印
決済の後には立ち会いをした司法書士が法務局へ出向いて登記申請を行い、マンションの登記名義が買主へと変わります。
まとめ
マンションの寿命は一律で年数が決まっているわけではなく、メンテナンスの状況次第で変動します。寿命を迎えたマンションは原則として建て替えや売却されますがこれらのハードルは低くなく、実際にはそのまま放置されるケースも少なくありません。寿命を迎えたマンションで難しい決断が必要となる前に、マンションの売却を検討するとよいでしょう。
しかし、寿命が近いマンションではなかなか買い手が見つからない可能性があります。そのため、そのマンションの売却に強みを持つ不動産会社を選定することが売却成功のカギとなるでしょう。
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