ビル売却の方法や流れ・注意点を解説!初心者でも高くビル売却をするには

「ビルを急に相続することになったけど、早く売りたい」「事業縮小などの事情があってビルを手放したい」など、ビル売却を検討している方は少なくありません。ビルは普通の不動産と異なり、大規模かつ高額になりやすいため売却に際して気をつけておきたい点が数多くあります。

この記事では、初心者でもビルを早く、なるべく高い価格で売却するための手順や方法について、わかりやすく解説します。ビル売却について具体的なイメージをつかむきっかけにしていただけると幸いです。

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目次

1.ビル売却と一般的な不動産売却の違い

ビルは一般的なマンションの一室や戸建て住宅などと違い、収益性が重視される不動産です。売却にかかる費用も高額となるため、ビルならではの特徴、注意点などをよく理解したうえで売却を進める必要があります。

まずはビル売却と他の不動産売却の相違点を4つ取り上げて解説します。

  • 流動性が低い
  • 大規模な販売活動をしない
  • テナントへの対応が必要
  • ブローカーがいる場合がある

1-1.流動性が低い

ビルは流動性が低い不動産として知られています。不動産の流動性とは「どれくらい売却しやすいか」ということ。すぐに買い手が見つかるタイプの不動産は、流動性が高いと評価されます。

ビルは他の不動産と比べて価格が高く、誰でも簡単に買える物件ではありません。さらに、ビルの買い手は不動産投資家や法人、個人事業主などに限られるため、一般的な住宅と違って買い手の母数が少ない傾向となっています。また、収益性についても買い手や金融機関から厳しく審査されるので、採算が合わないと評価されるとなかなか売却交渉が進まないこともあります。

1-2.大規模な販売活動をしない

ビル売却では通常、大規模な販促活動はしません。ビルのオーナーは個人、法人を問わず事業者であるケースが多く、保有するビルを売却する場合、オーナー側の事業の縮小・撤退が関連することがあるためです。ビルの売却情報が流れると、取引先や金融機関から経営状態を不安視される可能性があり、売却側が販売活動自体をあまり公にしたがらない傾向がみられるのです。

売却を急ぐ場合を除くと、大規模な宣伝を行わず時間をかけて、少しでも良い買い手を見つける売買戦略をとるのが一般的です。

1-3.テナントへの対応が必要

ビル売却では、入居中のテナントへの対応を考えなくてはなりません。ビルの運営状況によって、テナントを満室にしたまま売却するのか、空っぽにしてから売却にするのかの判断が必要です。

テナントが入った状態でビルを売却する場合は、オーナーだけが変わることになるため、事前にテナントの許可をとる必要はありません。売却後の事後報告や賃料の振込先の変更手続きなどでテナント対応は済みます。

問題はテナントに立ち退いてもらう場合です。どのような事情があるにせよ、オーナー側の一方的な通告だけで立ち退きを求めることは難しいので、テナント側としっかり交渉したうえで合意を取り付ける必要があるでしょう。立ち退きに合意してもらった場合は、賃料や敷金、付加使用料などの清算だけでなく、「立ち退き料」をテナント側に支払うケースも多いです。

1-4.ブローカーがいる場合がある

売却情報があまり表に出ないビル売却の世界では、ブローカーの存在にも注意が必要です。ブローカーとは国家資格や免許を持たずに、売主と買主を仲介し、勝手に手数料を受け取る業者のこと。買い手が見つかりにくいビル売却の特性を利用して、ビルのオーナーに接触してくる場合があります。

不動産の仲介行為は宅建業法の許可がない業者にはできません。しかし、こうしたブローカーは免許を持つ正規の不動産会社に紹介し、その会社に仲介業務を担ってもらうことで法律違反を避けています。

大手の不動産会社や資産家の名を出して近づいてくる場合もあるようですが、基本的に信頼しない方が賢明です。近年はコンプライアンスを重視する企業も増えており、大手の不動産会社を中心にブローカーを締め出すケースが増えています。

2.ビル売却の手順 ビル売却の流れを説明

次にビル売却までの手続きの流れを説明します。手順は下記の通りです。

  1. 相場の調査
  2. 不動産管理会社への連絡
  3. パートナーとなる不動産会社の選定
  4. 売却価格の決定と販売活動
  5. 不動産売買契約の締結
  6. 決済と引き渡し
  7. テナントへの連絡
  8. 確定申告(売却時の翌年)

順を追って解説します。

2-1.相場を調べる

最初に売却予定のビルの相場を調べましょう。ビル売却は売り出しの価格設定次第で、売却に至るスピードが大きく変わってきます。相場に合わない価格設定で売りに出すと、なかなか買い手が見つからなかったり、不利な条件で売却が決まったりといった失敗につながりかねません。

ビルは立地や築年数、建築構造だけでなく、各テナントの面積や間取りの違い、利回りや付属設備の状況など、複数の項目を複合的に判断して価値評価が行われます。値決めの際は、専門の不動産会社に査定を依頼して正確な相場を把握する必要があります。

なるべく早く、手間をかけずにビルの売却相場を知りたい人は、インターネットで利用できる「不動産一括査定サイト」を利用するとよいでしょう。

たとえば、高精度なAIによる不動産一括査定が無料で利用できる「おうちクラベル」なら、複数の不動産会社による査定結果をスピーディーに確認できます。売却したいビルの相場を知りたい方は、ぜひ試してみてください。

2-2.管理会社への相談・報告

売却相場を把握したら、ビルの管理会社にビル売却を考えていると伝えます。売却の希望時期を知らせ、必要書類は何か確認するなど相談を進めましょう。

なお、ビル売却の際にテナントの同意を取る必要はありませんが、賃料の振込先が変わるなど実務上の手続きが生じます。管理会社にはテナント対応業務もお願いすることになるため、早い段階で売却の話を伝えてください。

2-3.不動産会社を選び査定を進める

ビルは買い手の数が限られるうえに、広告活動なども大々的に行わないことが多いので、販売活動を進める不動産会社の力次第で、売却額に大きな差が出てしまいます。実績が豊富で信頼できる不動産会社を選ぶためには、複数の不動産会社に販売価格の査定を依頼して比較検討する必要があるでしょう。

不動産会社選びの第一歩としては、「不動産一括査定サイト」の利用がおすすめです。年々、不動産一括査定サイトの登録審査基準は高くなってきていますので、登録済みの不動産会社は優良企業が中心で信頼できます。不動産会社ごとの査定額や評価方法の違いなどを比較しながら、高額かつスムーズにやり取りできそうな不動産会社を絞り込んでいきましょう。

 

2-4.媒介契約を結ぶ

ビル売却をサポートしてもらう会社が決まったら、不動産会社と「媒介契約」を締結します。不動産の媒介契約とは、ビルの売却に関する販売活動を委任するかわりに、成約時に法定の「仲介手数料」を支払う契約のことです。一般的な家やマンションの購入・売却で締結する契約と基本的に同じで、契約形態は3種類に分かれています。

その3種類とは

  • 専属専任媒介契約
  • 専属媒介契約
  • 一般媒介契約

の3つです。それぞれの契約の特徴を説明します。

2-4-1.専任専属媒介契約

専任専属媒介契約とは、1つの不動産会社と契約し、売却活動に関しての一切を一任する契約です。3つの契約のうち、不動産会社の裁量が最も大きい契約形態といえます。

例えば売主が売却先を見つけてきたとしても、不動産会社を介さずに直接買主と取引することはできません。そのかわり、不動産会社は販売活動に関して1週間に1回以上の報告義務が生じます。

自分で売却先を探したり、広告活動をしたりといった手間はなくなりますが、契約した不動産会社の力量に頼る部分が大きくなるため、不動産会社選びは慎重に進める必要があるでしょう。

2-4-2.専任媒介契約

専任媒介契約も不動産会社1社に販売活動を任せる契約です。専任専属媒介契約と比べて、売主側の裁量もある程度認められており、売主が自分で買主を見つけて直接取引交渉することも可能です。不動産会社から売主への報告も2週間に1回となり、専任専属媒介契約よりは頻度が少ないです。

専任媒介契約では、売主と不動産会社に間で柔軟な役割分担が可能となるのはメリットといえます。営業活動が契約に結びつきやすいことから、不動産会社側も比較的熱心に販売活動をする傾向にあります。

2-4-3.一般媒介契約

一般媒介契約は、売主側が複数の不動産会社に対して販売活動を依頼できる媒介契約です。3つの契約のうち、売主側に最も強い主導権のある契約といえます。不動産会社側から売主への報告義務がなく、売主自ら買主を見つけて直接交渉することもできます。

不動産会社が多くて選べない場合は、一般媒介契約を選ぶのも1一つの手です。不動産会社同士で競争意識が発生し、売却までのスピードが早まることもあります。

その反面、多数の不動産会社とのやり取りがかなりの手間になったり、販売活動の状況がわかりにくくなるなどのデメリットには注意が必要です。

2-5.売出価格を決定し販売活動を開始する

販売を担当してもらう不動産会社が決まると、いよいよビルの売却に向けて販売活動が始まります。買い手の少ないビル売却では、売り出し物件を購入希望者に知ってもらうための販売促進活動が欠かせません。

ビル売却の販売促進活動には、「レインズ」への登録や、ネットや新聞などの各媒体を使った広告掲載が中心となります。

2-5-1.レインズ

レインズとは、国土交通大臣の指定を受けた公益法人で「指定流通機構」ともいいます。全国の不動産会社に向けた不動産情報の共有サービスを提供する組織です。

宅地建物取引業の許可を受けた不動産会社は、媒介契約で取り扱う不動産をレインズに登録し、掲載情報を全国の不動産会社に公開します。レインズの登録によって全国に売却情報が伝わるため、買い手を見つける確率は格段に上がります。

なお、レインズへの登録義務があるのは「専属専任媒介契約」と「専属媒介契約」を結んだ不動産会社となっています。

レインズサイト

https://system.reins.jp/

2-5-2.インターネット/新聞広告

昔ながらの販売促進方法に「新聞広告」「チラシ広告」があります。不動産の購買層でもある高齢者や、地元の不動産投資家や企業向けの広告として有効と考えられています。エリアやターゲットを絞って宣伝すると、良い反応を得られることも少なくありません。

また、ビル売却の際はインターネット広告の利用も欠かせません。不動産会社のサイトに掲載するだけでなく、圧倒的な検索数を誇る「不動産ポータルサイト」に掲載することで、売却のチャンスはより広がります。

2-6.不動産売買契約をする

ビルの買い手が見つかったら、いよいよ売買契約締結に向けての準備に入ります。ビルの売買契約書は一般的な住宅などとは異なり、契約に必要となる書類の数が膨大です。

登記事項証明書や公図、建築確認証、固定資産評価証明書などのほか、ビルの管理状況を証明する書面(修繕履歴一覧表や設備の点検確認報告書類など)、テナントとの契約条件を示す書類(レントロール・家賃表)や管理規約など、買主側に対してビルの状況を明らかするための書類も必要になります。

2-7.決済して物件を引き渡す

売買契約を結んだあとはお金の支払いと物件の引き渡しを同時にする決済を行います。億単位のお金が動くビルの決済の場合、万全のセキュリティーで保護された銀行の一室で、当事者と不動産会社、金融機関の担当者、司法書士の立会いのもとで実行されます。

決済の主な手順は以下のとおりです。

  1. 司法書士や金融機関が書類をチェック
  2. 登記申請と決済金の支払
  3. 買主側のローン融資を実行
  4. 売主から買主へ領収書を発行
  5. 税金の精算や仲介手数料、司法書士の報酬などの支払
  6. 売主側の残債ローンの返済
  7. 抵当権抹消登記手続きの申請
  8. 鍵と重要事項説明書などの引き渡し

問題がなければ、これらの手続きを1日で一気に行います。

2-8.テナントへ事後連絡する

借り手側はそのままの状態で貸し手側だけが変わることを、法律用語で「賃貸人たる地位の移転」といいます。「賃貸人たる地位の移転」では借り手側の許可は必要なく、テナントへの通知は基本的に売却後の事後報告で問題ありません。オーナーが変わることをテナントに通知した後、家賃や各費用の支払い先や敷金の償還先を新オーナーに変更します。

なお、通常売却と同時に全テナントに通知する必要があります。売却の際には不動産会社に依頼して、通知書類一式を用意してもらいましょう。

2-9.ビル売却の翌年に確定申告をする

個人名義でビル売却をしたときに得たお金は「譲渡取得」として扱われます。譲渡所得に対して課税されるのが譲渡所得税(分離課税)で、確定申告をする必要があります。

譲渡所得税の確定申告は、ビルを売却した翌年の2月16日から3月15日までに行います。ビルの売却額は高額ですので、譲渡所得税の課税額もかなりの金額となるでしょう。ビルの取得費用を減価償却として計上したり、特別控除を利用したりといった税務申告上の節税対策が必須です。

3.テナントへの対応方法と注意点

売却前のビルの用途や属性、買い手のニーズによって、テナントへの対応は変わります。売却に不利な状況になったり、テナントと無用なトラブルが生じたりといったリスクを避けるためにも、テナントへの対応方法と注意点を把握することが大切です。

3-1.フリーレントでテナントを満室に

収益物件としてビルを売却する場合、空室があまり目立つと買い手側の評価が下がってしまいます。売却価格自体も低めの金額で交渉せざるを得なくなるでしょう。収益物件として売り出すのであれば、可能な限り空室を埋める対策を考えた方が得策です。

どうしても空室が埋まらない場合は「フリーレント」を利用してみましょう。フリーレントとは、入居からしばらくの間(通常は1~6か月ほど)、テナントに対して賃料を無料で貸し出すサービスです。そのままテナントが入居を継続するケースも多く、ビルの不動産としての価値を効率良く上げるきっかけにもできます。

3-2.テナントを空にする|立ち退き料の発生

テナントを空にした方が、売却先が見つかりやすいケースもあります。例えば自社ビルを売り出す場合や、リフォーム・リノベーションをした方が資産価値が上がる場合などです。空室が多めで、間取りや用途を変えやすいビルを購入したいといった買い手も一定数存在します。

ただ、空室の方が都合がよいからといって、入居中のテナントに対していきなり立ち退きを要求するのはトラブルの元です。

どうしても立ち退いてもらいたい場合は、立ち退きに至るまでの事情を説明し、粘り強く交渉する必要があるでしょう。正当な理由を提示できないのであれば「立ち退き料」を支払うことも検討します。

4.ビルを売るときの3つの注意点

ビルを売るときに特に注意したいポイントを3つ、解説します。

ビルの買い手となるのは主に不動産投資家です。不動産投資家は、ビルがどれくらい収益を上げているか、テナントとのやり取りがスムーズに出来ているかなどに注目して、購入の判断をしています。

ビル売却では買い手のニーズを読み取り、売主として万全の準備を整えておかなければなりません。

4-1.検討資料をまとめておく

ビルの収益状況や管理状況をすぐに伝えられる資料を準備しておくことが大切です。検討に必要な資料をスムーズに共有すれば相手側にも好印象を与えられますし、購入希望者が複数現れた場合にも対処しやすくなります。

具体的にどんな資料を用意しておくべきか、代表的なものは以下の通りです。

  • レントロール(家賃表)
  • ビルの修繕履歴の一覧表
  • 管理経費の一覧表
  • 水道光熱費の内訳、支払いの記録
  • ビルメンテナンス費用の内訳、一覧表
  • 固定資産税と都市計画税の納税記録
  • 固定資産税評価証明書

過去にどれくらい経費が掛かったかもわかるように、普段から支払い記録などをきちんと保管しておくのも大切です。税金関連の資料は税理士や公的機関から、光熱費やメンテナンス関連の資料については管理会社の力を借りて、資料一式をそろえます。

4-2.敷金の精算が必要

「賃貸人たる地位の移転」によって、ビルのオーナーが買主に移ると、テナント側が預けた敷金の返還義務も買主に承継されます。しかし、敷金を実際に受け取ったのは前オーナーである売主となるため、買主側は敷金そのものを持っていません。

そこで、手続きが煩雑にならないように、売却価格から敷金分をあらかじめ差し引くことで敷金の精算を行います。売却時に調整することによって、新オーナーに敷金が受け渡されるものとみなすわけです。

売り手側から見ると敷金分が売却代金から差し引かれることになるため、売却益の手取り額自体は減ってしまう点に注意しましょう。ビル一棟分の敷金となると数百万円単位になるケースも少なくありません。売却前の段階から敷金の総額がどれくらいになるか、しっかり計算しておく必要があります。

4-3.敷金以外の精算内容を調整する

敷金以外に固定資産税と都市計画税、賃料、共益費、管理手数料などについて、売主と買主でどのような割合で負担するかを調整します。通例では、敷金と固定資産税(都市計画税もセット)、賃料・共益費などが調整対象です。

固定資産税と都市計画税に関しては、引き渡し日以降を基準に、引き渡し日以前は売主、以後は買主で税負担を分担します。ただし、納税自体は納税する年の1月1日時点の所有者になるため、売主側で全額納税しなければなりません。

賃料と共益費についても「引き渡し日」を基準にして清算することが多いです。精算方法自体は売主と買主の合意によって行われるものですので、細かな方法については売買契約を結ぶ時点で決めておくようにしましょう。

5.ビル売却時の費用

ビル売却では、手続き上必要となる費用がたくさんあります。代表的なものをまとめておきます。

費用の内容

金額の目安

仲介手数料

売却額の3%+6万円が上限

印紙税

売却代金ごとに税額が決定

登録免許税

登記申請にかかる税金。売主が支払うのは抵当権抹消登記の登録免許税で1,000円

譲渡取得税

({譲渡価格-(取得費+売却費用) }-特別控除)×税率

不用品の処分費用等

一部では売却なども検討する必要あり
設備の修理費用も含む

クリーニング代

清掃規模による。フロアクリーニングなら100㎡で2万円代が目安

測量費用

ビルの敷地規模次第で高額になることも
200坪前後なら80~150万円ほど

司法書士への報酬

司法書士によって違うが数千~数万円ほど

各種書類の発行費用

トータルで数千円未満 
検査費用が必要な書面は高額になることも

仲介手数料は売買を仲介してくれた不動産会社に支払う手数料です。印紙税は売買契約書などに印紙を添付します。抵当権登記抹消費用など、登記にかかる登録免許税は登記申請時に税務署に収めますが、司法書士に手続きを一任するケースがほとんどです。

不用品の処分や設備の修理にかかる費用はビルごとに異なるので、売主と買主で話し合って清算します。

5-1.仲介手数料

仲介手数料は売買契約の成立後に、売買を仲介してもらった不動産会社に支払う手数料です。手数料報酬は法律で決められていて、以下のようになっています。

  • 売却額200万円以下…売却額×5%+消費税
  • 売却額200万円超400万円以下…売却額×4%+2万円+消費税
  • 売却額400万円超…売却額×3%+6万円+消費税

上の仲介手数料に消費税率を乗算した金額が実際に支払う仲介手数料の上限額です。

例えば売買価格1億円のビルであれば、仲介手数料の上限は306万円、消費税込みで336万6,000円になります。上限額は仲介業者が複数いたとしても一定です。1一社ごとに加算されることはありません。

支払いのタイミングは、媒介契約時と引き渡し後で、それぞれ50%ずつ支払うケースがほとんどです。仲介手数料には業務でかかった経費が含まれますが、売主側から特別にお願いした広告費用などは、別途費用請求されることがあります。

5-2.抵当権抹消費用

ビル売却時に「所有権移転登記」や「抵当権設定登記」などを申請しますが、売主側に費用負担があるのは「抵当権抹消登記」です。「抵当権抹消登記」はローン残債の支払いを済ませた際に、物件に設定された「抵当権」を抹消する目的で申請します。登記手続きの中でも比較的簡易な申請で、登録免許税は不動産1件につき1,000円です。

ローンの返済が完了した後に申請しますが、決済と同時に、他の登記と合わせて申請するのが通例です。

6.ビル売却時の税金4つ

ビル売却時に特別にかかる税金を4つご紹介します。売却金額が高額になるため、各税金の支払いについて事前に準備しておくことが大切です。特に「譲渡所得税」については、おおまかな課税の仕組みと計算式を理解しておきましょう。

6-1.印紙税

印紙税とは、法定の課税文書を作成するときにかかる税金です。課税金額に相当する金額の収入印紙(印紙)を課税文書に貼り付ける方法で納税します。ビル売却で課税対象となるのは「売買契約書」で、売主の保管用、買主の提出用の2通にそれぞれ貼付をします。

売却価格が1,000万円超5,000万円以下で1万円 (2通分で2万円)、5,000万円超1億円以下で3万円(2通分で6万円)です。もし支払いを怠ると、本来の納税額の2倍を追徴される「過怠税」を支払うことになるため注意が必要です。

6-2.登録免許税

抵当権抹消登記の申請で、不動産1件につき登録免許税が1,000円かかります。ビル売却時の売却代金でローン残債を完済すると抵当権が消えるため、決済時に他の登記手続きとセットで申請することがほとんどです。

登録免許税はローンの返済が終わり次第申請できます。比較的、簡単な登記申請のため自力で申請手続きをする方もいますが、司法書士に依頼すると手数料込みで数千円から数万円かかることもあるようです。

6-3.譲渡所得税

譲渡所得税は、ビル売却で得た「譲渡所得」に対して課される所得税、住民税、復興特別所得税を指します。他の給与所得などと別で課税される「分離課税方式」となり、売却した年の不動産所得として確定申告が必要です。基本となる計算式は以下のようになります。

譲渡所得税=[{売却価格-(取得費用+売却費用) }-特別控除額]×税率

「取得費用」はビルを購入したときにかかった費用、「売却費用」は売却手続きにかかった仲介手数料や各種税金などの経費です。なおビルの場合、取得費用は実際の購入金額から減価償却費用を差し引いた金額となります。

税率は売却不動産の所有期間によって変わる点が大きな特徴で、所有期間5年以下(短期譲渡所得)での所得税率は30.63%(復興特別所得税を含みます)、住民税率は9%、所有期間5年以上10年以下で(長期譲渡取得)では所得税率15.315%、住民税率は5%となります。

6-4.消費税

消費税は事業者が事業の対価として得た資産に対して課税される税金ですので、個人がビルを売却しても消費税を支払う必要がありません。

しかし、法人として売却すると事業としての売却となり、消費税の課税対象となります。不動産の売却にかかる消費税は「建物」のみが対象で、「土地」の売却価格には課税されません。

個人でのビル売却の場合、不動産の売却代金以外の「仲介手数料」や専門家への報酬などに消費税がかかります。

7.ビルを高く売るコツ 主なコツ

ビルを高く売るコツは、買主となる不動産投資家の目線に立った準備を進める点にあります。ビルの収益性やコスト面が一目でわかるように必要なデータを資料にまとめておくと、良い反応を得られるでしょう。

それと同時に相場を意識した価格設定で売り出すことも大事なポイント。市場が低金利となるタイミングを狙って売り出すなど、買い手のつきやすい時期を狙った販売戦略も重要になります。

7-1.レントロールを作成する

レントロールとは「家賃明細表」のことです。ビルに入っているテナントの状況や賃貸借契約の条件、管理費・共益費・敷金などの情報を細かく記載したもので、一目で物件の賃貸状況がわかるように作成します。

買い手となる不動産投資家は、レントロールを元にビルの収益性や将来性を判断します。興味を持った段階で相手側からレントロールの提供を求められますので、売却を検討する段階から準備しておかなければなりません。

レントロールで示される内容は、ビルの各部屋の間取り、用途、テナントの名前や契約状況などの一覧です。賃料や管理費・共益費、賃料の保証会社名、解約予告期間など、可能な限りわかりやすく、正確に記載しましょう。

7-2.修繕履歴をまとめる

買い手となる不動産投資家が注目するポイントの一つに、ビルの「修繕履歴」があります。ビルやマンション1棟のような大きな構造物の場合、リフォームや設備工事にかかるコストも大規模です。近いうちにどのようなリフォームや設備工事が必要になるかによってビルの収益性に大きな影響が出るため、不動産投資家はビルの「修繕履歴」を詳細に知りたいと考えています。

修繕履歴は任意の作成資料ですが、過去に行った修繕工事の内容、かかった金額、工事日時、工事の受注先の会社名など、どんな工事をこれまで行ったかを一目でわかるように一覧表にしておくことが大切です。修繕工事やメンテナンスが行き届いていることがわかれば、収益性の高い物件として強くアピールすることができます。

7-3.ネット査定で相場を調べる

ビルは買い手の母数が少ない以上、相場とあまりにかけ離れた値段設定にすると、なかなか売れない状況が続きがちです。そこで、手っ取り早く相場観をつかむために、不動産一括査定サイトを利用する方法がおすすめです。特に収益物件専門のサイトを利用すると、より正確な売却相場をつかめます。当サイトの提供する「おうちクラベル」も有力な不動産一括査定サイトの1つですので、ぜひご検討ください。

ただし、不動産一括査定サイトでの査定額に関して、注意点が1つあります。ネットでの査定額はあくまでも不動産会社ごとの予測額にすぎません。不動産会社によって参考にするデータやノウハウも違うので、できるだけ複数の会社に査定を依頼し、各社の出した査定額をよく比較してください。

査定額の根拠など、気になる点はどんどん質問してみると、より適正な相場をつかめるでしょう。

7-4.低金利のタイミングを狙う

ビル購入は億単位の資金が必要になるため、買主は金融機関から多額の融資を受けています。たとえ金利がわずか0.1%ほど違っても年間で数百万円単位の収益差が生じるため、買い手となる不動産投資家は金利動向にかなり敏感です。

日本は長らく低金利政策をとっていたので、不動産投資家は比較的融資を受けやすく、売り手にとっては有利な状況が続いていました。しかし、2022年12月20日に日本銀行は長期金利誘導目標を上限0.5%に引き上げるとの発表があり、今後は不動産市場にも大きな影響が出ると予想されます。住宅ローンをはじめ、不動産投資向けローンの金利が上昇する可能性があるため、これまで以上に市場の動向を注視しながら、売り出しのタイミングを見極める必要があるでしょう。

金利が下がったタイミングでは、買い手となる不動産投資家の購入意欲が増えますので、時期を逃さないように売却へ向けた準備を整えておくことが大切です。

8.よくある質問

「空きテナントが増えて収益率が落ちている」「相続税対策を検討している」など、ビル売却をお考えの方にはそれぞれのお悩みがあると思います。何棟ものビル売却を経験する方は少ないので、売却先がうまく見つかるか、高値で売れるかなど、不安な点も少なくないはずです。

そこで、ビル売却をご検討中の方からよくいただく質問をピックアップし、簡潔にお答えしていきます。参考にしていただけると幸いです。

8-1.Q1 ビルの築年数が古くても売れますか

古くても十分売れる可能性はあります。

ビルは鉄筋コンクリートや鉄骨造で作られているため、築年数が経っていても大きく資産価値を下げることはありません。ビル売買で注目されるのは築年数よりも「収益性」です。古いビルであっても立地がよかったり、テナントがほぼ満室状態であったりすると、投資先としてメリットは大きいと判断されます。古いビルは比較的立地が良いケースが多いため、更地にして再開発するといった需要もあるようです。

ただし、大規模修繕工事やリフォーム工事が必要な状況の場合は、費用対効果が悪いと判断される可能性も考えられます。物件によっては必要最低限のリフォーム工事を行ったほうが売れやすくなるケースもありますので、ビルの状況に合った売却戦略を考えることが大切です。

8-2.Q2 ビルはどんな人に売ればいいですか?

不動産会社、法人、自営業者などです。不動産投資家と一般の事業者でニーズが変わってきます。

利回りが良く、収益性の高いビルであれば、不動産投資家がメインターゲットです。不動産投資家は全国にいるので、多くの投資家の情報が集まる東京や大阪の不動産会社を利用して、売却先を探しましょう。

人の集まりやすい立地にあるビルは、法人や自営業者など、一般的な事業者に人気があります。特に規模の大きな法人は目ぼしいビルを見つけると自ら営業をかけてきますので、もし話が来たら売却を検討してみてもよいでしょう。

あまり目立った強みのないビルの場合は、不動産会社に買い取ってもらう方法も検討してみてください。将来的に土地開発が予想されるエリアにあるなど、地価上昇を見込んで買い取りに応じてくれる可能性もあります。

9.まとめ

この記事では、ビル売却についての基本的な流れや注意点について解説しました。ビルの不動産としての特徴や、売却の流れ、どのような税金や費用がかかるかなどを一通り理解しておけば、ビル売却のイメージをつかめるはずです。

ビルのような高額な物件を扱う上で重要なのは、「相場観」をつかむことです。売却先となる不動産投資家や法人、個人事業主の数は限られているので、相場とかけ離れた価格で売り出すとなかなか売却先が見つからない状況になりがちです。

そのような事態にならないために、まずは「不動産一括査定サイト」を利用することで、売却するビルの適正価格をつかんでおくことが大切です。

近年では不動産査定の精度も向上しており、中にはAIによる査定を導入するサイトも登場しています。ソニーグループ関連企業が提供する「おうちクラベル」もその一つです。複数の不動産会社からの査定結果だけでなく、より客観的なAIによる査定も可能となっているので、フラットな目線で相場価格を比較検討することができます。

特に「おうちクラベル」のAI査定は精度の高さでもご好評をいただいておりますので、売却相場をつかむ大きな足掛かりとなるでしょう。サービスの利用自体は無料となっていますので、ぜひ気軽にご利用ください。

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