一棟マンションのように、価格帯が高く投資用に所有している不動産を高く売るコツは、マイホームのそれとは異なります。
この記事では、これから不動産投資を検討している人や一棟マンションの売却を考えている人に向けて、どのような一棟マンションが高く売れやすいのか、どのような工夫をすればさらに高く売れる可能性が上がるのか詳しく解説します。
事業用の不動産特有の注意点と売却の手順についても紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。
1.高く売れる一棟マンションに共通する3つの特徴とは?
マンションの価格は、さまざまな要因が複雑に絡み合って総合的に決まっています。ただ、特に高く売れやすいマンションには共通点があります。
そもそも高く売れやすい一棟マンションとはどんなものなのか、まずはその絶対条件について見ていきましょう。
1-1.入居率が高く、家賃下落率が低い
投資用マンションの売却査定においては、家賃収入がいくら期待できるのかが重要なポイントになります。
マイホームの売却と違い、空室は基本的にマイナス要因になります。入居率が高く満室に近い状態で、なおかつ家賃が新築時から大きく下がっていない物件は、今後の収益が見込めるため高く売れやすいでしょう。
もし今は空室が目立つマンションでも、リフォームを入れて内装を変えるなど工夫すれば人気を集められるかもしれません。急ぎでないなら、なるべく入居率を高めたうえで売却するのがおすすめです。
ただし、入居者を集めるために家賃を下げると、収益が悪化して高値で売りにくくなってしまうので要注意です。
利回りや査定額の計算方法など詳しくは後述します。
1-2.利便性が良く、需要が高い立地にある
そのマンションに住む人にとって利便性が高く、多くの人が住みたいと思う立地であれば高値が付きやすくなります。
一般的には交通アクセスのよい便利な駅の近くなどが人気ですが、そのマンションのターゲット次第で好まれる地域や間取り、優先順位は変わってくるでしょう。
たとえば学生の1人暮らしなら、大学から近い手頃な価格帯のワンルームマンションが人気ですし、ファミリー層なら一定以上の広さに加えて、小中学校の校区や広い公園の有無なども重視されるポイントです。
立地や周辺環境は自分の意思であとから変えるのが難しいポイントです。できるだけ購入前の時点で、出口戦略(売却)まで考えてよく吟味しておきたいところです。
1-3.適切な維持管理がされている
一棟マンションを高く売るには、そのマンションが適切に管理がされていることも絶対条件となります。
すみずみまで清掃や修繕が行き届いて築年数の割にきれいな状態を保てていたり、家賃や修繕積立金の滞納といったトラブルが随時解消されたりしている物件は、売却時の査定でも高評価を得られるでしょう。
逆に、汚れや損傷がそのまま放置されて薄汚れた雰囲気になっていたり、悪質な家賃滞納者が多かったりすると、維持管理の不備とみなされて資産価値の下落につながる可能性があります。
管理状況が悪いと、住民が危険にさらされたり大きなトラブルを引き起こす原因になったりするリスクも考えられます。第三者的視点できちんとメンテナンスされた状態になっているか、今一度確認してみましょう。
2.一棟マンションの売却に適したタイミングとは?
一棟マンションを売却するとなると大金が動きます。マンション価格は日を追うごとに変動しているため、どのようなタイミングで売却に踏み切るかは重要な決断になるでしょう。
ここでは、一棟マンションの売却を検討すべきタイミングとはいつなのか、具体的に解説します。
2-1.築10~20年で大規模修繕前のタイミング
通常、マンションは築10年~20年程度で大規模修繕の時期を迎えます。大規模修繕には多額の費用がかかります。マンションの規模などにもよりますが、1戸あたり100万円程度が1つの目安です。
大規模修繕のタイミングで追加投資が必要になるため、その前に売るかどうかを判断するケースが多いのです。
基本的に築年数が経っていない(築浅)物件ほど高く売れやすいですが、所有期間5年未満での売却は、たとえ利益が出たとしても税金も高くなるため避けたほうがよいでしょう。
また、新築で購入した場合は新築ならではの特典やコストが加味された、いわゆる「新築プレミアム」を含んだ価格になっているため、よほど地価や需要が上がっているエリアでない限りは築10年未満で売却すると損をするケースが多いです。
一方、築10年前後で価格の下落幅が小さくなる傾向があります。築25年以下の中古マンションの需要が高いというデータもあり、築15年程度の物件は売却益を得られる可能性が上がります。
マンションの築年数と自身がそれを所有している期間を考慮して、検討してみましょう。
2-2.設備の減価償却が終わるタイミング
減価償却とは、購入時の費用を複数年に分割して少しずつ計上できる会計上のしくみのことです。一気にまとめて経費とするより、税金の負担を軽減しやすくなる効果があります。
マンションでは、建物自体や付属する設備ごとに「耐用年数」が決められていて、それに応じて減価償却費として計上できる金額が決まります。耐用年数は、たとえば以下のとおりです。
・【建物】鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造……47年 ・【建物】木造または木骨モルタル造……21年 ・【設備】水道……15年 ・【設備】冷暖房装置……15年 ・【設備】ガス装置……15年 ・【設備】通信装置……10年 など (出典:財務省「耐用年数表」) |
ポイントは、築15年時点で減価償却が終了する設備が多いという点です。このタイミングで税金の負担が重くなりやすく、さらに先述の大規模修繕の時期とも重なってくるため、ここが売り時と考える不動産投資家も多数います。
2-3.不動産相場が上昇し、中古マンション市場が活況なタイミング
マンション自体の状況とは別に、不動産相場が上昇したり中古マンション市場が活況になったりしている時期も、高く売れやすいタイミングです。
不動産相場が上昇しやすいのは、たとえば以下のようなときです。
- 景気が良いとき
- インフレが進んでいるとき
- 住宅ローン金利が下がったとき
- 国の住宅購入支援制度が拡充したとき など
タイミングよく時流に乗れるかどうかは、運の要素もあるため簡単ではないでしょう。ただ、うまくいけば本来の価格より高めに売り出しても買い手がつく可能性もあります。
ちなみに、近年のマンション価格は以下のとおり上昇傾向にあります。
(出典:国土交通省「不動産価格指数」※2010年の平均を100としてグラフ化)
2-4.周辺環境に変化があったタイミング
近くに新しく駅ができるなど、周辺環境が好転するタイミングなら高く売れることが期待できます。
なかには大学の撤退など、住民の減少につながりやすい変化が起きる場合もありますが、それも今後のマンションの収益性などを考えて保有し続けるか検討する機会になるでしょう。
周辺環境が変わるときは、実際に変わる前に「いつからどのように変わるか」といった情報が流れていることも少なくありません。保有しているマンション近辺のエリアでどんな変化が起きようとしているのか、しっかりとアンテナを張って情報収集に努めましょう。
3.一棟マンションを高く売る秘訣とは?
一棟マンションを売るなら、少しでも高く売りたいと考える人が多いのではないでしょうか。ここからは、一棟マンションを高く売るために必ず押さえておきたい9つのコツについて解説します。すべて実践すれば、高額売却を実現できる可能性がアップするでしょう。
3-1.一棟マンションを高く売りやすいタイミングで売却を検討しよう
前述の通り、一棟マンションを売るのに適しているタイミングとそうでないタイミングが存在します。できる限り高く売りやすいタイミングを狙って売ることで、成功確率は高まるでしょう。
まずは保有するマンションの現状や経済の動向を把握して、売り時を探ってみましょう。いつ売るかによって納める税額が大きく変わってくるケースもあるので、顧問税理士に相談してみるのもおすすめです。
3-2.一棟マンションの売却に強い不動産会社をパートナーに選ぼう
不動産会社は名の知れた大手から地元密着の中小企業まで多数ありますが、それぞれ「売買が得意」「入居付けが得意」「高値買取に定評がある」など、得意分野や専門分野が異なります。
さらに、売却に強い不動産会社だけで絞っても「マンションに強い⇔戸建てに強い」「一棟に強い⇔区分所有に強い」「投資用不動産に強い⇔マイホームに強い」などさまざまです。
それぞれ高く売るためのポイントが違うため、多数の選択肢の中から「特に一棟マンションの売却に強い不動産会社」を選ぶことで、成功確率を高められるでしょう。
3-3.入居率が高く、家賃がキープできているタイミングで売却しよう
一棟マンションの売却価格に大きな影響を与えるのは「収益性」です。高い家賃で満室経営ができている状態なら、今後の収益性にも期待できるため、高値で売れやすくなるでしょう。
一方、入居率が低くなっているタイミングや家賃を下げないと空室が埋まらないようになってきてからでは、不動産投資家にとって物件が魅力的に映らず、売却に不利になってしまいます。
できる限り魅力を高めて、入居希望者が集まるようなマンションにしておきたいところです。そのためにできるのが、このあと紹介するような行動です。
3-4.売却前にマンションの見た目を改善しよう
外観や共用部など、見た目の印象が価格に与える影響は大きいものです。いくらほかの条件がよくても、汚れや劣化が目立って荒れていたら第一印象で「住みたくない」「買いたくない」と思われてしまうかもしれません。
一方、たとえ築年数が古くても、今人気のテイストに合わせた大胆な内装変更を行うことで入居希望者が絶えない物件になった例は枚挙にいとまがありません。
そこまでお金をかけなくても、管理に力を入れて清掃を徹底するなどして対応できる部分もあります。安く簡単に改善できるところは、売却前にサクッと直しておきましょう。
3-5.費用対効果の高い人気設備の導入を検討しよう
大がかりなリフォームをしなくても、セキュリティー面を強化したり需要の高い人気設備を導入したりすることで、入居率や家賃をアップできる場合もあります。入居率や家賃が上がれば当然、高く売れやすくなるという効果が期待できます。
求められる設備はそのマンションがターゲットとしている住民層や時代によって変わりますが、たとえば現在は以下のようなものが人気です。
- 無料インターネット
- お風呂の追い焚き機能
- 浴室乾燥機
- 宅配ボックス
- エアコン
- カメラ付きインターホン
- オートロック
比較的安い費用で導入できるものもあるので、あまり手を入れない方針で保有している人でも、充分検討の余地があるでしょう。
3-6.トラブルや故障などの問題は解消しておこう
売却時に設備の故障や家賃滞納などのトラブルがあるのはマイナス要因です。ほったらかしにせず、なるべく売却する前に解消しておくようにしましょう。
困ったときは設備の故障なら修理業者、家賃滞納なら管理会社か弁護士に相談すれば解決策を提示してくれるはずです。
また、もしうまく解消できなかった場合も、買い手側とのトラブルを避けるため「このような問題を抱えている」と誠実に現状を伝えておくことが大切です。
3-7.自分でも相場を調べてみよう
不動産会社に売却を依頼するだけでなく、いくらくらいで売れそうか自分でも調べておくとよいでしょう。
不動産価格の相場は常に変動しています。日ごろからアンテナを張り、類似物件がどのくらいの価格で売りに出ているのか調べてみる習慣があれば、イメージや思い込みだけに左右されることなく納得して売却価格を決められます。
スマホかパソコンがあれば、国土交通省の「土地総合情報システム」や不動産ポータルサイトなどを使って手軽に情報収集できます。
3-8.複数の不動産会社に査定を依頼しよう
一棟マンションを売却するときは、他の不動産を売却する場合と同様に、複数の不動産会社に査定を依頼するのが鉄則です。
1社だけだと、提示された金額が本当に適正価格なのか、もっと高く売れる可能性はないのかが判断できません。高額なものを購入するときに「相見積もり」を取るのと同じで、いくつかを比較することでより検討しやすくなります。
今は「不動産一括査定サイト」などもあるので、複数社に依頼する場合でもそこまで手間や時間をかけずに済むでしょう。
3-9.スケジュールと価格設定には余裕を持とう
一棟マンションは価格帯が高くなりがちです。区分所有と違い、購入できる人が限られるため、売却まで時間がかかってしまうことも珍しくありません。
一般的には数ヶ月~半年程度で売却できることが多いですが、ケースバイケースです。長めに見積もっておくと安心です。
あまりに売却を急いでいると足元を見られてしまい、より安い価格で売るよう交渉されるかもしれません。また、不動産売買では価格交渉が入ることも珍しくありませんので、それを想定した売り出し価格に設定しておくことも必要と言えます。
あとで「こんなはずでは」とならないよう、一般的なスケジュールと価格を把握をしたうえで、ギリギリを避けて余裕を持った設定にしておくのがおすすめです。
4.一棟マンションの売却で注意すべきポイントとは?
1部屋ずつの売買と一棟丸ごとの売買では、少し勝手が違います。ここからは、一棟マンション売却ならではの特徴や注意点、理解しておきたいポイントについて解説します。
4-1.投資用不動産と居住用不動産では査定方法が異なる
不動産の価値を見極めるための算定方法には、いくつかの種類があります。マイホームなど本人が住むために利用する不動産(居住用不動産)と一棟マンションのように投資目的で所有する不動産では異なる算定方法が用いられることがあり、算定結果も変わってきます。
居住用不動産であれば、周辺の似たような物件がいくらで取引されたかを確認して参考にする「取引事例比較法」や、今からその場所にその建物を建築するとしたらいくらかかるかをもとに算出する「原価法」などが一般的です。
一方、投資用不動産では上述の算定方法だけでなく「収益還元法」もあります。これは、その不動産が今後いくら収益を上げられるのか、投資先として見たときの「稼ぐ力」を重視した算定方法です。将来期待できる収益が高いほど高値がつきます。
収益還元法はさらに「直接還元法」と「DCF法」の2種類にわかれます。
- 直接還元法:不動産価格 = 一定期間の純収益 ÷ 還元利回り
- DCF法:不動産価格=毎期の純収益の現在価値+将来の売却予測価格の現在価値
精度は劣るものの計算しやすいのが直接還元法、計算が複雑ながら高い精度で算出できるのがDCF法です。
投資用不動産としての価値を高めるためには、収益還元法の算定に影響する「入居率」や「家賃収入」を高めることが重要と言えます。
4-2.一棟中古マンションの購入者は不動産投資家に限定される
一棟マンションを購入するのは、一般の人(マイホームを求める人)ではなく、おもにオーナーチェンジ物件を探している不動産投資家になるでしょう。高価格帯の物件や、築古のマンションの場合は、資金調達ができる人がさらに限定されます。母数が少ないので買い手が見つかるまで時間がかかるかもしれません。
また、不動産投資家にいかに物件の情報を伝えるか(広告を打つか)が、一棟不動産売却の鍵となります。オーナーチェンジ物件や投資用不動産に特化したポータルサイトや特集ページに掲載してもらうのもよい方法です。
あわせて、住み心地のよさよりも入居付けのしさすさや空室率の低さをアピールする、安心して取引してもらえるよう売却する理由を明確に伝えるなど、「住むところ」ではなく「投資先」として魅力的に見えるように工夫したいところです。
買い手が決まってからは、修繕履歴の引継ぎや家賃の清算(入居者への賃貸人変更のお知らせ)なども必要になります。
よくわからない場合やうまくいかない場合は、不動産投資家とのつながりが強い不動産会社にサポートしてもらうのも1つの方法です。
4-3.売却にかかる税金や手数料を把握しておこう
マイホームの場合と同じように、一棟マンションを売るときもさまざまな手数料や税金がかかります。一棟マンションは売買価格が高額になることが多く、それと連動して諸費用も高くなりがちです。
諸費用がいくらかかるのか把握しておかないと、売った後に「思ったより手元に残る金額が少なかった……。」と後悔してしまうかもしれません。
たとえば以下のような費用がかかります。
- 印紙税……売買契約書に貼付する収入印紙にかかる費用
- 仲介手数料……買主との間に入ってくれた不動産会社に支払う手数料
- 測量費用……土地を測量する場合にかかる費用
- 登記費用……所有権移転や抵当権抹消の登記にかかる登録免許税や司法書士報酬など
- ローン関連費用……ローンが残っていた場合、銀行で完済の手続きをするための費用
- 所得税と住民税……売却して利益が出たときにかかる税金
物件価格や選定した不動産会社・司法書士・銀行などによって、金額が変わってきます。
ちなみに、あらかじめ1年分をまとめて支払っている固定資産税や都市計画税などは、残りの期間に応じて売却後に清算され、買主から戻ってきます。
4-4.スケジュールに余裕がないなら買取も検討しよう
先述のとおり、一棟マンションの売却を検討するなら時間に余裕を持って進めるのがおすすめです。売却まで数ヶ月~半年程度かかるのが一般的ですが、なかには「そんなに待てない」「事情があって売却を急いでいる」という人もいるでしょう。
スケジュールに余裕がないなら、不動産会社に買い取ってもらうという選択肢もあります。売主と買主の間に不動産会社が入る一般的な取引が「仲介」、不動産会社が直接買主となるのが「買取」です。
買取の場合、通常の売却に比べて高く売ることは難しいものの、その分スピーディーに取引を進められるのがメリットです。
また、仲介ではないので仲介手数料がかからずに済みますし、相手が不動産会社なので瑕疵担保責任(あとから欠陥などが見つかったときに責任を負うこと)が免責になるのが一般的です。
一般市場では買い手を見つけにくい一棟不動産だからこそ、居住用の分譲マンションよりも買取を検討する余地があるでしょう。買取専門の不動産会社などもあります。
4-5.分割して区分不動産として売るという選択肢も存在する
一棟不動産を所有しているからといって「1つのマンションを丸ごと売買しなければならない」というわけではありません。一棟ではなく、それを分割してそれぞれ「区分所有」として売却することも可能です。
一棟から区分にすることで、不動産投資家だけでなくマイホームを探している人にも買ってもらいやすくなるでしょう。「一部だけ残しておきたい」「相続のため何人かの親族に分けたい」といった場合にも役立ちます。
ただし、一棟を分割するには「区分登記」が必要です。この登記を行うためには、土地家屋調査士に依頼して図面を作成してもらう必要があり、費用も時間も手間もかかります。
物件などによっても違いますが、数十万円単位のお金が飛んでいく場合もあります。特に、部屋数の多いマンションは費用がかさみやすいので要注意です。
また、区分所有になるということは、そのマンションに自分以外のオーナーもいる状態になるということです。「売却前は修繕などの方針を自分の意思で決められたのに、売却後に意見の違うオーナーが現れて運営が難しくなった」という事態になる可能性もあります。
メリットとデメリットを天秤にかけたうえで、よく考えて決断しましょう。
4-6.立ち退き後に売却するという選択肢もある
ここまではすべてオーナーチェンジ物件としての売却を前提としていましたが、住人に立ち退いてもらってから売るという選択肢も存在します。
一般的に、古い物件や住人トラブルを抱える物件、入居率が低い物件などで用いられる手法です。通常は入居率が高いほうが高く売れやすい傾向がありますが、「入居中だから高く売れる」「空室だから売れない」とは限りません。
立ち退き後の物件は、トラブルに巻き込まれるリスクが減ったり、建て替えなども含め物件を自由に扱いやすくなったりするため、購入を検討する不動産投資家にとって魅力的に見えるケースがあります。
立ち退いてもらうための交渉に手間や費用がかかったり、入居率が下がったりするデメリットもあるため、どんな物件にも向いている方法とは言えません。ただ、効果てきめんな場合もあるので、こういった選択肢があることも頭の片隅に入れておきましょう。
5.一棟マンションを売却する手順とは?
最後に、実際に一棟マンションを売却するときの手順を確認しておきましょう。
基本的にはまず今の相場を把握し、売ると決めたら不動産会社と契約し、買い手が見つかったら手続きして引き渡す、という流れになります。それぞれの工程について詳しく解説していきます。
5-1.①ポータルサイトでマンションの相場を調べる
自分の所有するマンションはいくらくらいで売れそうなのか、相場をチェックしておおまかな目安を把握するところから始めましょう。
もしまだしばらく売るつもりがない状態でも、現状を知っておくことは大切です。適切な売り時を考えるのに役立つので、定期的に値動きをチェックして直近の傾向をつかんでおきたいところです。
不動産ポータルサイトの中には、オーナーチェンジ物件など不動産投資家向けの特集を組んでいるサイトなどもあります。レインズマーケットインフォメーションや国土交通省の「土地総合情報システム」なども便利です。同エリア内の類似物件の情報を集め、マンション相場を調べておきましょう。
5-2.②不動産会社に売却査定を依頼する
相場がある程度わかったら、次は不動産会社に査定を依頼してみましょう。自分のマンションの資産価値を、より具体的に把握することができます。
不動産会社の担当者が実際にマンションを訪れて査定する場合もあれば、近年はAIなどを使ってその場ですぐにシミュレーションできるようなサービスもあります。
不動産会社によって査定額が異なるので、先述のとおり、複数社に依頼して比較するのがおすすめです。「不動産一括査定サイト」を使えば、一度にまとめて複数の不動産会社に依頼ができます。
ちなみに、売却査定は無料で依頼できるのが一般的です。査定してもらったからといって、その不動産会社と契約しなければならないわけではありません。
5-3.③不動産会社と契約を結ぶ
ここまでの手順を経て「一棟マンションを売却しよう」と決めたら、売却を依頼する不動産会社を選定して契約を結びます。
不動産会社は目的を達成するまで二人三脚で進む大切なパートナーになります。査定価格の差だけでなく、実績や査定額の根拠などを確認したうえで信頼できる人を選びましょう。
不動産会社との契約には「媒介契約」と「代理契約」があります。不動産会社が売主と買主のあいだに入る「媒介契約」が一般的ですが、遠方の投資用不動産を保有しているケースなどでは不動産会社が売主の代理人になる「代理契約」が結ばれるケースもあります。
また、媒介契約は「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類に分かれます。それぞれの違いは以下のとおりです。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
複数社との契約 (他社へも依頼) | × | × | ○ |
自分で見つけた買主との直接契約 | × | ○ | ○ |
レインズ(指定流通機構)への物件登録義務 | ○(5日以内) | ○(7日以内) | × |
進捗状況の報告 | 週1回以上 | 2週間に1回以上 | 義務なし |
イメージとしては専属専任媒介は「狭く深く」、一般媒介は「広く浅く」です。信頼できる1社に任せて積極的に動いてもらうなら専属専任、いろいろな可能性を残しておきたいなら一般媒介など、それぞれの特徴を踏まえて、希望に合う契約形態を選びましょう。
5-4.④販売活動を行う
マンションを高く買ってくれる買主を探します。基本的には不動産会社におまかせできますが、売り出し価格の設定や広告の打ち方など不動産会社の担当者の知見も取り入れながら、協力して販売活動を行っていくとよいでしょう。
購入希望者の中には内覧を望む人もいますし、ポータルサイトに掲載した物件写真をくまなくチェックする人もいます。できれば内覧前にハウスクリーニングを入れるなどして清掃や細かい修繕を済ませ、見た目をきれいにしておくのがおすすめです。
より高く売れやすい条件を整えながら、よい取引相手が現れるのを待ちましょう。
5-5.⑤売買契約を結び物件を引き渡す
購入希望者が現れ、価格・リフォームの有無・支払い方法・引き渡し時期などの諸条件が折り合ったら売買契約を結びます。
不動産会社を間に入れて、売主と買主が売買契約書と重要事項説明書を交わします。売買契約書には契約上の諸条件、重要事項説明書には物件に関する注意点などが記載されます。のちのちトラブルになることを避けるため、リスクや瑕疵(欠陥や不具合)があれば必ず申告して重要事項説明書に記載してもらうようにしましょう。
買主から手付金や売却代金を受け取り、不動産会社には仲介手数料を支払います。さらに所有権移転登記を(ローンが残っていた場合は一括返済して抵当権抹消登記も)行い、引き渡しとなります。
5-6.⑥確定申告をする
売却が済んだら終わり、ではありません。利益が出ても損失を被っても、どちらの場合も確定申告を行いましょう。
利益が出たのに確定申告しないままでいると「脱税」とみなされ、ペナルティとして追加の税金を支払うことになる場合があります。また、損失が出た場合は税負担を軽減できる可能性があります。
確定申告では自分で税額を計算し、手続き書類を作成して提出するのが基本です。ただ、わからないことがあれば税務署に問い合わせて確認することもできますし、面倒な手続きも含めて税理士に依頼して任せることもできます。
6.一棟マンションを高く売るための戦略を立てよう
一般的なマイホームと違い、一棟マンションを高く売るためには「不動産投資家としての目線」が欠かせません。高く売りやすいタイミングを見計らって、戦略をもって、優秀なパートナーのサポートを受けながら行う必要があると言えるでしょう。
一棟マンションを売りたいと思ったら、まずは今の相場がいくらくらいなのか調べるところからスタートしましょう。不動産一括査定サイトを利用して、複数社に査定を依頼してみるのもおすすめです。
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