マンションから戸建てに住み替えると、毎月の固定費が安くなり土地も手に入るなどのメリットがあります。一方、セキュリティ面が脆弱になり修繕も自分で行う必要があるなどのデメリットもあります。
後悔なく快適に戸建てでの生活を始めるには、マンションから戸建てへ住み替えるメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。
本記事では、マンションから戸建てへ住み替えるメリット・デメリットや、住み替えに適したタイミングと気を付けるべきこと、利用できる税金の特例などを解説します。
売却・購入から引っ越しまでの流れについても解説しますので、マンションから戸建てに住み替える具体的なイメージができます。住み替えの検討中で情報収集している方は、ぜひ参考にしてください。
1.マンションから戸建てに住み替えるメリット
まずは、マンションから戸建てに住み替えるメリットを5つ解説します。
- 毎月の固定費が安くなる
- 管理規約による縛りがない
- 間取りやデザインの自由度が高い
- 土地を所有できる
- 騒音を気にしなくてすむ
1-1.毎月の固定費が安くなる
マンションから戸建てに住み替えると、次の費用が不要となるため毎月の固定費が安くなります。
- 管理費:15,956 円
- 修繕積立金:12,268 円
- 駐車・駐輪場代:約8,000円
※いずれも全国平均
管理費や修繕積立金が不要になれば、物件や地域にもよりますが、月36,000円ほどの固定費を節約できます。特に駐車場代は地域による金額差が大きいため、都市部ではさらに大きく節約できるかもしれません。
一方で、戸建ての場合は修繕に備えた資金の準備が必要です。とはいえ、マンションの修繕積立金とは違い、自分たちのペースで貯蓄できるのは戸建てのメリットの1つです。戸建てのランニングコストは住宅ローンや火災保険、修繕費などにどれだけ費用をかけるかにより異なります。
しかし、マンションと戸建ての住宅ローンの支払い額が同じであれば、管理費や修繕積立金などが不要な分、戸建てのほうが安くなるといえるでしょう。
1-2.管理規約による縛りがない
マンションには管理規約があり、敷地の用途や範囲などが定められています。一方、戸建ては自分の敷地の範囲内であれば好きなように利用可能です。
管理規約による縛りがなく自由に使える敷地があれば、次のようなメリットがあります。
- 敷地内に駐車場があれば駐車代を節約できる
- 洗濯物が干しやすく家事の効率が良くなる
- 物置を置けるため収納の悩みが解消される
- ペットを飼うことができる
- ガーデニングができ日々の楽しみが増える
- バーベキューができ家族付き合いが良くなる
自分の土地なら、ほかにもさまざまな用途で使うことができるため、趣味や収納など生活の幅が広がるでしょう。
1-3.間取りやデザインの自由度が高い
マンションの場合はデザインや間取りに制限があり、増改築には下記のような条件があるため実施するのが難しいのが現実です。
- マンションの建て替え:区分所有者(専有部分を所有している者)の5分の4以上の賛同が必要
- 共有部分の建て替え:区分所有者の4分の3以上の賛同が必要
※出典:マンション建替え関連制度の概要 建替えに係る現行の法令・施策 ②区分所有法の概要│国土交通省
つまり、マンションの場合は、共有部分に欠陥があっても個人の判断では修繕できません。
自室であっても、吹き抜けや間取りに関わる増改築は原則できず、フローリングや設備のリフォーム程度に留まってしまいます。
一方、戸建であればデザインや間取りを自由に決められます。
特に注文住宅は、建築基準法を遵守していればデザインや間取りも希望どおりに建てられます。建売住宅でもマンションよりは選択肢の幅は広いでしょう。
つまり、戸建ては予算の範囲内で自分好みにリフォーム(基礎を残して改築)したり、建て替え(基礎部分を取り壊して建築)したりできます。費用を抑えるために自分でDIYも可能です。専門の業者に建て替えを頼めば資産価値を高められ、子ども達に残せる戸建てとなるでしょう。
1-4.土地を所有できる
マンションでも敷地利用権を所有できますが、共有の土地であるため個人で自由に手を加えることはできません。土地付き戸建てであれば、個人で自由に扱える土地が手に入ります。
また、住宅ローンの支払いが終われば、個人の所有物となり資産として土地を持つことができます。
土地を所有するメリットは次のとおりです。
- 資産として子どもや孫に残すことができる
- 建物の価値が無くなったとしても土地値で売却ができる
- 建物を取り壊したあともアパートや駐車場の経営などで土地活用ができる
土地は長期的に価値の高い資産であり、さまざまな活用ができます。
1-5.騒音を気にしなくてすむ
戸建てであれば、マンションなどの集合住宅ならではの騒音に悩まされません。
マンションの場合は、上下左右の部屋から騒音が聞こえてきたり、こちらからの生活音を気にしたりする必要があります。
しかし、戸建ては上下左右の接点がないため、よほど大きな音を立てないかぎりはこちらの音が漏れたり、ほかの家の音が聞こえてきたりしないでしょう。
もちろん、過度な騒音は戸建てであっても近所迷惑になる可能性があります。しかし、マンションよりも騒音に気を使わず自由に日々を過ごせるでしょう。
2.マンションから戸建てに住み替えるデメリットと対策
マンションから戸建てに住み替えることで、戸建てならではのデメリットにどう対応するかが後悔なく快適に暮らせるポイントとなります。ここでは、戸建てに住み替えるデメリット4つとその対策を解説します。
- セキュリティ面が心配
- 修繕・メンテナンスを自分で行う
- ダブルローンになる可能性がある
- 近所付き合いの悩みができる可能性がある
2-1.セキュリティ面が心配
戸建てはマンションで暮らしていたときよりも、セキュリティ面が脆弱になる可能性があります。
例えば、戸建てでは次の面でセキュリティ面が脆弱になります。
- 窓や裏口など侵入経路が多い
- 監視カメラやオートロックがない
- 車の有無やポストの状況などにより住人が留守かどうか推測しやすい
実際にマンションよりも戸建てのほうが犯罪率は高いというデータがあります。
一戸建住宅 | 一般事務所 | 共同住宅(3階建以下) | |
2021年侵入窃盗の認知件数 | 36.4% | 11.4% | 8.7% |
戸建てでの生活は、マンションとは違う点で防犯意識を持ち、防犯対策を高める努力が必要となるでしょう。
2-1-1.対策
戸建てのセキュリティ対策の一例は次のとおりです。
- 家族一人ひとりの防犯意識を高める
- 窃盗や施錠忘れが生じたら警備会社などへ通報されるホームセキュリティシステムを導入する
- 人感センサー付きライトや防犯カメラ、窓の補助錠、強化ガラスなど防犯対策をする
特に家族の防犯意識を高めるのは重要です。防犯意識が低いとセキュリティのスイッチを入れ忘れたり、施錠を忘れたりする恐れがあるためです。
戸建ての場合、たとえ治安のいい地域であったとしても、防犯対策は怠らないようにしましょう。
2-2.修繕・メンテナンスを自分で行う
戸建ての場合は修繕・メンテナンスを自分で行う必要があるため、次の内容を考慮しておきましょう。
- 修繕が必要になることを見越して計画的に貯蓄をしなければならない
- 業者の手配を都度自分たちで行う手間が発生する
修繕は自分で行うこともできますが、状況によっては専門知識が必要になったり、足場が必要になったりします。安全面や費用を考慮して業者に頼んだほうがいいかを判断してください。
戸建てに住み替える場合は、マンションの管理費や修繕積立金から解放される分、計画的な貯蓄をしましょう。
2-2-1.対策
マンションから戸建てに住み替える場合は、長期的な修繕計画を立てる必要があります。
修繕計画を立てるポイントは次のとおりです。
- 修繕やメンテナンスのトータル費用を想定する
- トータル費用から年間いくら貯蓄すべきかを計算する
- 戸建ての劣化状況を定期的に確認する
- 戸建てを建てる際に耐久性の高い建築素材を選ぶ
屋根や外壁、水回りなどの修繕は、高額のメンテナンス費用がかかる場合があります。修繕費用によって生活に支障をきたさないためにも、長期的かつ綿密な修繕計画を立てましょう。
2-3.ダブルローンになる可能性がある
マンションの住宅ローンを払い切らずに戸建てを購入すると、マンションとのダブルローンになり月々の返済費用が増える可能性があります。2つの住宅ローンを支払うのは容易なことではありません。日々の生活が厳しくなり生活水準を下げなければならない可能性もあります。
また、教育費や介護費などで思わぬ出費が必要になることや、不慮の事故や病気により給料が減る可能性もあるでしょう。つまり、ダブルローンは金銭に余裕がないかぎり、滞納のリスクがあるためおすすめはできません。
2-2-3.対策
マンションと戸建てのダブルローンはおすすめできません。金銭に余裕がない方は、マンション売却を先に行いその後に戸建てを購入しましょう。
そうすれば、住宅ローンの支払いも終了して、売却による収入で戸建て購入のための資金計画も立てられます。しかし「残っているマンションの住宅ローンを支払うお金がない」という方もいるでしょう。
まずは、次を参考にして住宅ローン残債を支払えるか確認してください。
- 住宅ローン残債を確認する
- 売却するマンションを査定依頼する
- 査定価格で住宅ローン残債を支払えるか確認する
マンションをできるだけ高く売却するには、複数社の査定価格を比較することが重要です。そのためには、まとめて査定依頼ができる不動産一括査定サイトの利用をおすすめします。優良な不動産会社と提携している「おうちクラベル」をぜひご利用ください。
2-4.近所付き合いの悩みができる可能性がある
戸建てはそれぞれの常識で暮らしているがゆえに、近所付き合いに悩まされる可能性があります。
近所付き合いの悩みの種となるトラブルの一例は次のとおりです。
- ゴミ捨ての日や分類のトラブル
- ペットの鳴き声やフンによるトラブル
- 子どもの声などの騒音トラブル
マンションは管理組合の規則等で生活上のルールが最低限決まっており、問題が起きたら管理組合などが間に入ってくれます。しかし、戸建ての場合は問題が起きても間に入ってくれる人は基本的におらず、当人同士で解決しなければなりません。
2-4-1.対策
近所付き合いの悩みの種を生み出さないために、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 引っ越した際の挨拶回りを必ず行う
- 近所の方に会ったら明るく挨拶をする
- 常識を守り近所迷惑な行為をしない
- ゴミ出しなどのルールを守る
特に日ごろから近所の方と良好な関係を築いておくことは大切です。良好な関係を築いておけば、トラブルが起きても譲り合ったり助け合ったりできるためです。解決しにくいトラブルがあった場合は、自治会や町内会に参加して頼ってみるのもいいでしょう。
3.マンションから戸建てに住み替えるときの流れ
ここからは、マンションから戸建てに住み替える流れを次の項目にそって解説します。
- 資金計画・マンションの査定
- 不動産会社と媒介契約締結
- 売却活動・戸建ての情報収集
- マンションの売買契約
- 仮住まいへ引っ越し
- マンションの引き渡し
- 戸建ての売買契約
- 引っ越し
住み替える流れを具体的にイメージして、スムーズにマンションから戸建てに引っ越しましょう。なお、今回はマンションを先に売却する「売り先行」と仮定して解説します。
3-1.資金計画・マンションの査定
マンションを売却して戸建てを購入する際は、資金計画を綿密に立てることが重要です。下記の手順で資金計画を立てていきましょう。
- マンションのローン残債を確認する
- 複数の不動産会社に査定依頼をして売却額を想定する
- 売却額を考慮して、戸建ての予算や月々の返済計画を立てる
ここで重要なのが、複数の不動産会社に査定依頼することです。複数に査定依頼をして価格を比較しないと、適正価格が分からず「高く設定しすぎて売れない」「安く設定しすぎて売り損をする」といったことが発生する可能性があります。
とはいえ、個人で複数の不動産会社に査定依頼をするのは大変です。査定価格の比較には、不動産一括査定サイトを利用して査定依頼を出すことをおすすめします。
「おうちクラベル」は、優良な不動産会社と提携しているため安心です。高精度のAI査定も可能ですのでぜひご利用ください。
3-2.不動産会社と媒介契約締結
仲介をお願いしたい不動産会社が見つかったら媒介契約を結びます。媒介契約する会社の数は、1社または2〜3社を目安にするといいでしょう。
複数の査定結果を比較して相場価格を把握するのも大切ですが、営業担当者の対応方法などを参考にするのもポイントです。売主の要望を親身に聞いてくれる営業担当者の会社を選択しましょう。
3-3.売却活動・戸建ての情報収集
媒介契約を締結したら売却活動に入ります。広告などは主に営業担当者が行ってくれるため、売主は内見の準備とマンション室内の片付けや掃除を行います。特に「風呂・トイレ・キッチン」の水回りは売却価格に影響するためきれいにしましょう。当日の対応もできるように、営業担当者と相談してスケジュールの調整を行ってください。
売却活動の期間に具体的な戸建てを探し始めます。予定どおりの資金計画を進めるためにも、この時点では情報収集だけに留めて、マンション売却が決定したら戸建ての購入を進めてください。
「価格を下げてこの日までに売らなければ」という無理な値下げを避けるためにも、マンション売却と戸建て購入のタイミングには十分に気をつけましょう。
3-4.マンションの売買契約
買主が決まったら売買契約を締結して、売主は不動産会社へ仲介手数料を支払い、買主は売主に手付金を支払います。
マンションのローン残債がある場合は一括で支払うのが基本です。しかし「思った売却価格にならずローンを一括で支払えない」というケースも考えられます。その場合は住み替えローンの利用を検討しましょう。
住み替えローンとは、新居の購入費とローン残債をまとめて貸し付けるタイプの住宅ローンです。(詳細は後述)
住み替えローンを利用すれば、当然ローン残債が加わるため月々の支払い料金が増えます。生活が苦しくならないか綿密な資金計画を立てて、住み替えローンを利用するか検討しましょう。
3-5.仮住まいへ引っ越し
売り先行の場合は仮住まいが必要です。マンション売却を終えたら、引き渡しに向けて仮住まいへ引っ越し準備を進めます。
仮住まいは、賃貸物件かマンスリーマンションを利用する方が多いようです。荷物が多い場合は、広い仮住まいを探すのではなくトランクルームを併用したほうが余計な出費が抑えられます。
予定外の出費とならないためにも、次の費用を参考にして綿密な資金計画を立てましょう。
- 仮住まいと新居への引っ越し費用
- 仮住まいの家賃や敷金礼金、光熱費、水道代、ガス代など
- トランクルームの賃貸料
また、住民票と住所変更の手続きも必要であるため注意してください。さらに、マンション売却後は確定申告が必要であり、譲渡所得によっては住民税や所得税が高くなることを想定しておきましょう。
3-6.マンションの引き渡し
マンション売買契約が終了したら、約1カ月後に引き渡しを行います。マンションに住みながら売買を進めていた場合は、引き渡し日までに引っ越しを完了させて室内には何もない状態にしましょう。
売り先行であっても、マンションの引き渡し日と戸建ての入居日を合わせることができれば、仮住まいは不要です。
3-7.戸建ての売買契約
戸建ての購入物件が決まったら売買契約を結びます。締結後に戸建ての住宅ローンの本審査を金融機関に申請します。住宅ローンの本審査には購入物件の売買契約書が必要です。そのため、売買契約が終了してからになります。
戸建てを探す期間が長ければ長いほど仮住まいの費用が増えます。スムーズに戸建てを購入できるように、マンションの売却活動の段階で、めぼしい戸建てを決めましょう。
3-8.引っ越し
戸建ての引き渡しが終了したら仮住まいから引っ越しをします。ここでも、住民票や住所変更を忘れずに行いましょう。以上でマンションから戸建てへの住み替えは終了です。
4.マンション売却と戸建て購入はどちらを先にするべきか?
住み替えにおいて、マンション売却と戸建て購入はどちらを先にするべきか悩むところです。しかし、どちらのほうがいいかどうかは、それぞれの状況次第であるため一概にはいえません。
ここでは、自分に合った住み替えができるように、売り先行と買い先行のメリット・デメリットを解説します。
4-1.売り先行のメリット・デメリット
売り先行とは、マンション売却を先に行い売却後に戸建てを購入することをいいます。
売り先行のメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
|
|
売り先行は、資金面で無理をしたくない方に向いています。資金計画が崩れないようにするためにも、売却活動は計画的に余裕をもって行いましょう。
4-2.買い先行のメリット・デメリット
買い先行とは、戸建てを購入してマンションをあとから売却することをいいます。
買い先行のメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット | デメリット |
|
|
買い先行は、資金に余裕があってじっくり家探しをしたい方に向いています。ダブルローンになった場合は、マンション売却の時間がかかるほどに、ローンの総返済額が高くなってしまうことに注意が必要です。
とはいえ、早く売ろうと焦って買い叩かれないようにしなければなりません。買い先行は仮住まいの必要はありませんが、売り先行よりも住み替えるまでの総額費用が高額になりやすいことを想定しておきましょう。
5.マンションの売却金でローンを完済できない場合
マンションの売却金でローンを完済できない場合は、住み替えローン(買い替えローン)の利用を検討しましょう。住み替えローンとは、旧住宅を売却してもローン残債が残ってしまった場合に、新住宅の購入費用と残債分を合わせて借入れるローンのことです。
住み替えローンの最大のメリットは、新住宅を購入する費用が足りなくても住み替えができることです。また、ダブルローンを組む必要がなくなるというメリットもあります。
一方でデメリットは、一般的な住宅ローンよりも審査のハードルが高いことです。加えて、戸建ての購入価格以上のローンを借入れることになります。つまりオーバーローンとなり月々の返済負担が重くなります。
住み替えローンを利用する際は、日々の生活費や将来必要な費用などを考慮して、綿密な資金計画を立ててからにしましょう。
6.マンションから戸建てへの住み替えで使える税金の特例
マンションから戸建てへ住み替える際に税金の節税ができる「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」という2つの制度があります。
2つの制度の概要を理解して住民税や所得税の節税を行いましょう。
6-1.売却物件:マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは、マンションの売却損失をほかの所得から損益通算または繰越控除ができる制度です。旧住宅を売却して新住宅を購入した場合において、譲渡損失が生じた際に利用できます。
損益通算と繰越控除とは、どちらも課税所得額を減らすことができるため、住民税や所得税などを軽減できます。
- 損益通算:譲渡所得などで生じた損失をほかの所得で相殺すること
- 繰越控除:その年に相殺できなかったマンションの損失を翌年に繰り越して、ほかの所得と相殺すること。最大3年間繰り越すことが可能
この特例を受けるには「自分が住んでいる住宅を譲渡すること」や「所在地が国内で所有期間が5年を超える住宅を譲渡すること」などの一定の要件を満たしていなければなりません。
出典:No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
6-2.購入物件:住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
「住宅借入金等特別控除」とは、ローンを利用して住宅を購入したり増改築したりした場合において、住宅ローンの年末残高に一定の率をかけた金額を控除できる特例です。
この特例は、一般住宅(新築)や認定住宅(省エネ住宅など)であるかどうかにより年末残高限度額や控除期間が異なります。
一般住宅で年末残高限度額や控除期間の一例を挙げると次のとおりです。
居住年 | 年末残高限度額 | 控除率 | 控除期間 |
2022年・2023年 | 3,000万円 | 0.7% | 13年 |
2024年・2025年 | 0万円 (2023年までに建築の確認を受けている住宅は2,000万円) | 10年 |
適用要件には「住宅を取得した日から6ヶ月以内に住み始めて適用を受けていること」「控除を受ける年の合計所得が2,000万円以下であること」などがあります。
出典:No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
7.マンションから戸建てへ住み替えるときに気をつけるポイント
ここからは、マンションから戸建てへ住み替えるときに気をつけるポイントを3つ解説します。
- 家だけでなく周辺環境も重視する
- 通勤・通学のしやすさも考慮する
- リフォーム・修繕の履歴を確認する(中古住宅の場合)
7-1.家だけでなく周辺環境も重視する
住み替えにおいて家の選定はもちろん大切ですが、周辺環境が住みやすい環境であるかも重視しなければなりません。周辺環境を十分に調査していないと、理想の家は見つかったが「近所に買い物できるところがなくて不便」「夜間に騒音がありストレス」などが起きる可能性があるためです。
周辺環境を重視する際は次のポイントを参考にしてください。
- 騒音が無く静かな住宅街
- 歩道が整備されておりきれいな街並み
- スーパーが近く生活が便利
- 子どもに通わせたい学校の学区内
理想の生活を送るためにも、住みたいと思っている街の生活利便性や嫌悪施設の有無などの周辺環境を十分に調査しましょう。
7-2.通勤・通学のしやすさも考慮する
通勤や通学など、交通利便性の不便がないかを考慮しておくことは重要です。
交通利便性で考慮すべきポイントは次のとおりです。
- 自宅から駅やバス停へのアクセスしやすさ
- 電車やバスは何本通っているのか
- 通勤・通学の往復時間はどれくらいか
電車やバスに関しては、日中は便利であっても夜間帯に本数が減る場合があります。夜間の本数が減ると帰りが遅くなる方にとって不便であり、人によっては日常生活も不便になります。
日々の生活の中で決まった時間に必要な場所へ不便なく行けるように、交通利便性も十分に調査しましょう。
7-3.リフォーム・修繕の履歴を確認する(中古住宅の場合)
中古住宅の場合は、リフォーム・修繕の履歴を確認しておく必要があります。リフォームされている中古住宅の場合、見た目よりも劣化が進んでいる可能性があるためです。残念ながら、見た目だけきれいで欠陥を含んだ中古住宅も存在するため気をつけましょう。
加えて、過去の修繕履歴を確認して、戸建ての壊れやすい場所や問題点はないかなどを把握しておく必要があります。そして、今後どれくらいの費用が必要となってくるかを想定して修繕計画を立てましょう。
可能であれば、住宅の劣化状況などを調査するインスペクションを行うことをおすすめします。
8.マンションから戸建てへの住み替えを検討する時期
ここでは、マンションから戸建てに住み替えを検討する時期について次の4つの切り口から解説します。
- 生活に変化がある
- 年収が上がった
- 住宅ローンの金利が安い
- 築浅のうちに
8-1.生活に変化がある
「家族が増える」「夫の転勤が決まる」「子どもが進学をする」など、生活が変わるタイミングは住み替える時期に最適です。家族のライフスタイルの変化に適した環境へ住み替えるのは、日々の生活の質を高められるためです。
次のようなポイントを押さえれば、生活の変化に適した環境へ住み替えられるでしょう。
- 家族構成にあった住宅環境
- 子育てしやすい生活利便性
- 通勤・通学しやすい交通利便性
転勤や出産のタイミングを想定するのは難しいかもしれませんが、進学などの場合は時期が決まっているため、住み替えの計画が立てやすいでしょう。
8-2.年収が上がった
年収が上がると住宅ローンの借入可能額も増えます。戸建てはマンションよりも住宅ローンが高額になるケースもあるため、年収が上がれば戸建てに住み替えるという選択肢が出てくるでしょう。
また、住み替えで住宅ローンが高額になる場合、マンション購入時よりも審査が厳しくなる可能性があります。しかし、年収が上がれば審査がとおりやすくなるため住み替えのタイミングに適しているでしょう。
一般的にどれくらいの年収で住み替えているのか気になるところです。国土交通省の令和3年度住宅市場動向調査報告書を参考にすると、住み替えを行っている世帯の平均年収や年間返済額は次のとおりです。
住宅の種類 | 平均年収 | 年間返済額 | 返済負担率 |
注文住宅(全国) | 941万円 | 140万円 | 18.1% |
注文住宅(三大都市圏) | 1170万円 | – | – |
分譲戸建住宅(三大都市圏) | 845万円 | 126万円 | 19.8% |
中古戸建住宅(三大都市圏) | 895万円 | 100万円 | 16.8% |
以上はあくまでも参考です。年収が上がったとしても、日々の生活が苦しくならないように、月々の返済は余裕をもってできるように資金計画を立てましょう。
8-3.住宅ローンの金利が安い
住宅ローンを利用する場合は、金利が安いほうが月々の負担や支払総額を抑えられます。しかし、金利の推移は経済状況により上下するため予想するのは難しく、金融機関によっても異なります。
金利が下がったタイミングで、いつでも住み替えの計画が進められるようにしておくといいでしょう。また、金利の安さだけでなく、手数料や保険内容などを考慮して借入れるようにしてください。
8-4.築浅のうちに
マンションは年数が経過するごとに価値が下がっていくため、築浅のほうが高値で売却できる可能性が高くなります。
次の、東日本不動産流通機構の築年数から見た首都圏の不動産流通市場を参考にすると、築浅のマンションは価値が高く成約率も高いのが分かります。
築年数 | 中古マンション価格 | 成約率(2021年) |
築5年以下 | 約6,100万円 | 30.5% |
築6年〜10年 | 約5,500万円 | 40.7% |
築11年〜15年 | 約4,900万円 | 35.3% |
築16年〜20年 | 約4,700万円 | 34.9% |
築21年〜25年 | 約3,700万円 | 28.3% |
築26年〜30年 | 約2,300万円 | 14.1% |
築31年〜 | 約2,000万円 | 12.5% |
出典:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)|公益財団法人 東日本不動産流通機構
マンションを高値で売却するためにも、住み替え予定があるなら早めに行動をしたほうがいいでしょう。
9.マンションから戸建てへの住み替えはスムーズに
マンションから戸建てに住み替えるには、綿密な資金計画とスケジュール調整が必要です。特にマンションのローン残債や月々の支払い額を想定しておかないと、住み替え後に生活が苦しくなってしまう可能性があります。
堅実な資金計画を立てるには、まずは適正価格でマンション売却を成功させる必要があります。そのためには、複数の不動産会社へ査定依頼をして、価格相場を把握することが重要です。
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