売り時を見極める!不動産価格の推移、調べ方を解説

マンションや戸建ての不動産価格は、市場などさまざまな要因に影響され、毎年変動します。そのため、不動産価格の動向や推移は売却を検討するうえで重要な判断材料となり、売り時を見極めることが重要です。この記事では、不動産価格の推移や調べ方をわかりやすく解説します。

1.不動産価格の直近の状況

不動産を売却するうえで、価格がどうなるのかは気になるものです。不動産価格には、さまざまな要因が影響するため、日々変動する動向に注目して、売却のタイミングを見極めることが大切です。

特に近年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、経済状況は大きく変化していることから、コロナ禍が不動産売却にもかかわっているのか気になる方も多いでしょう。

まずは、不動産価格の直近の状況についてみていきましょう。不動産価格の状況を判断する指数にはいくつかありますが、ここでは「不動産価格指数」でみていきます。

不動産価格指数とは、国土交通省が毎月発表する不動産取引の価格情報をもとにした不動産価格の動向のことをいいます。

この不動産価格指数の遷移をみると、2013年以降、長らく上昇傾向にありましたが、2020年6月に一転し下落。これは、間違いなく新型コロナウイルス感染症の影響といわれていますが、下落は一時的なもので、2020年8月以降には回復し、価格は今も上昇傾向にあります。

2021年7月時点では、住宅全体の価格は前月比1.2%増、マンションだけをみても前月比1.4%という結果が出ています。戸建てよりもマンションの上昇率が高く、特に東京都ではマンションが前月比2.6%と価格も大きく上昇しているのが特徴です。

このように経済に大きな影響をもたらした新型コロナウイルス感染症ですが、不動産価格への影響はそれほど大きなものではありませんでした。しかし、コロナ禍はまだ終息にはいたらず、今後もこの上昇傾向が続くとは限りません。常に市場の動きを注視しておくことが大切です。

また、不動産価格の動向は次のような指標でも調べることができます。

  • 公示地価
  • 都道府県基準地価
  • 相続税路線価
  • 民間調査機関

それぞれ以下で詳しく紹介していくので参考にしてください。

2.公示地価を調べる

公示地価とは、国土交通省が発表する土地取引の目安ともなる価格のことです。全国約26,000の標準地の価格を、毎年3月下旬ごろに発表しています。

公示地価は、標準地1平方メートルあたりを不動産鑑定士2名以上で評価し、価格を定めています。この場合、更地の状態を仮定して算定しており、建物が建っている場合は建っていないものとして算出されます。公示地価は、一般的な土地取引だけでなく公共事業での土地取引などでも目安となる価格です。

公示地価は、国土交通省のサイトから調べられます。国土交通省サイトの「地価公示・都道府県地価調査」から対象地域や条件で確認できるので、対象物件に一番近い物件の価格を参考にするとよいでしょう。また、「全国地価マップ」でも確認可能です。

>国土交通省「地価公示・都道府県地価調査」
https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=0&TYP=0

>一般財団法人 資産評価システム研究センター「全国地価マップ」
https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

・公示地価近況

  2020年 2021年
全用途変動率 1.4 -0.5
住宅地変動率 0.8 -0.4
商業地変動率 3.1 -0.8
三大都市圏(住宅地) 1.1 -0.6

公示地価は、毎年1月1日時点を基準日として3月下旬に発表されるため、2020年では新型コロナウイルス感染症による影響はあまり受けず、上昇傾向が続いていました。

しかし、2021年の公示地価は、全国平均で前年比マイナス0.5%と6年ぶりの下落となりました。住宅地では5年ぶり、商業地でも7年ぶりに下落し、これは新型コロナウイルス感染症の影響による下落といわれています。三大都市圏は、いずれもそれまでの上昇から下落に転じ、特に商業地での下落幅が大きいものとなりました。これは、店舗やホテルなどでの需要が縮小したことが大きな要因ともいわれています。

しかし、在宅ワークの普及により、価格の上昇がみられる住宅地や郊外の住宅地もあります。なかには10%も上昇した地域もあるなど、生活の変化にともない、都心を離れてあえて自然豊かな郊外に住んだり、移住したりして仕事を続ける、新しいニーズが発生していることが地価に影響を及ぼしているのです。

新型コロナウイルス感染症はまだ予断を許さない状況が続き、不動産価格の下落も懸念されますが、2021年に価格が下落するまでは上昇傾向にあり、特に商業圏の上昇過熱は懸念されていたほどでした。また、リーマンショックや東日本大震災時では2.6~4.6%も下落したのに対して、コロナ禍による下落率は0.5%。比較的小さな落ち込みですんだといえるでしょう。

地価の動向は、今後もしばらくは新型コロナウイルス感染症に左右されることが予測されます。それがどうなるのかは、まだ不透明な状況です。

3.都道府県基準地価を調べる

都道府県基準地価とは、都道府県が毎年9月下旬ごろに公表する土地の価格のことをいいます。公示地価同様、土地取引の目安として利用される公的な価格です。

公示地価とは、次のような違いがあります。

  公示地価 基準地価
発表主体 国土交通省 都道府県
基準日 1月1日 7月1日
発表日 3月下旬ごろ 9月下旬ごろ
基準地 全国約26,000地点(令和3年時点) 全国22,000地点以上(令和3年時点)
対象地 都市計画区域内 都市計画区域外も含む

公示地価の対象が土地計画区域内を中心としているのに対し、基準地価は都市計画区域外も含むため、より特定した地域の価格を調べることが可能です。

また、公示地価が3月、基準地価が9月に発表されることから、半年ごとの価格の動向をみる場合や、公示地価の補完として基準地価が利用される場合もあります。

基準地価も公示地価同様、国土交通省のサイトや「全国マップ」で確認が可能です。対象地域や条件で検索すれば価格がわかるので、対象となる不動産にもっとも近い不動産の価格を参考にするとよいでしょう。

>国土交通省「地価公示・都道府県地価調査」
https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=0&TYP=0

>一般財団法人 資産評価システム研究センター「全国地価マップ」
https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

・基準地価近況

2020年2021年全用途変動率-0.6-0.4住宅地変動率-0.7-0.5商業地変動率-0.3-0.5三大都市圏(住宅地)-0.30.0

2021年の基準地価は、全国・全用途での平均が0.4%下落しています。

基準地価は、毎年7月1日を基準日として9月下旬に発表されるため、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、2017年からの上昇から3年ぶりの下落となりました。そのため、2年連続の下落となりましたが、前年比では下落率は縮小傾向にありますが、土地の用途別にみると下落率に幅があるのがわかります。

たとえば、住宅地が0.5%下落(前年比0.2%増)に対し、商業地が0.5%下落(前年比0.2%減)と、公示地価同様、商業地での下落が大きい傾向にあります。また、三大都市圏では、横ばいにとどまり、前年比では上昇傾向にあるなど、都市中心部の希少性の高い住宅地では上昇が継続している傾向もみられます。

なお、交通利便性が優れた郊外でも価格の上昇がみられ、新しいニーズによる需要が高まっている傾向にあるといえるでしょう。

4.相続税路線価を調べる

相続税路線価とは、国税庁により発表される道路に面する1平方メートルあたりの価格です。毎年1月1日を基準日とし毎年7月初旬ごろに公表され、相続税や贈与税の課税額を算出するための公的な価格となります。

相続税路線価は、公示価格の8割ほどが価格の水準となり、国税庁のサイトで確認できます。国税庁の「路線価図・評価倍率表」から対象地域や条件で絞り込むことで価格を確認できるので、対象の土地が面している道路の路線価を確認し、面積をもとに算出してみましょう。

また、相続税路線価は「全国地価マップ」でも確認できます。

相続税路線価の動向によって、相続に影響が出る可能性もあるので、将来不動産を相続する、あるいは相続させる場合には、その変動に注目しておくとよいでしょう。

>国税庁「路線価図・評価倍率表」
https://www.rosenka.nta.go.jp/

>一般財団法人 資産評価システム研究センター「全国地価マップ」
https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

路線価近況

相続税路線価も、2021年ではそれまでの上昇から転じて6年ぶりの前年比マイナスとなりました。2020年の全国平均が1.6%増に対し、2021年では前年比-0.5%。これ、新型コロナウイルス感染症の拡大が大きな要因と考えられています。都道府県別では、東京都や大阪府では8年ぶりの下落となり、全国47都道府県中39もの地域で減少しています。2020年は21の都道府県が上昇したのに対し、上昇した都市が大幅に減少しているのです。

しかし、福岡や沖縄など再開発が進む地域は、このコロナ禍でも路線価が昨年を上回るという結果も出ています。また、路線価の下落は繁華街や観光地では大きいものの、住宅地への影響はそこまで大きくありません。

公示地価同様、アクセスのよい郊外などでは路線価が上昇している傾向もあり、一部の住宅街への人気が集まっているともいえるのです。

路線価は、通常1月1日の評価額を通年で利用しますが、2020年は3月ごろからの新型コロナウイルスによる大幅な地価下落を理由に、期間修正が行われました。2021年ではすでに新型コロナウイルス感染症の影響下での発表のため修正の可能性は少ないですが、その動向を注目しておくとよいでしょう。

5.民間の調査機関を利用する

不動産価格の動向は、民間の調査機関を利用することでも確認できます。民間の調査機関としては、次のような機関があります。

  • 東京カンテイ
  • 不動産経済研究所

5-1.東京カンテイ

民間の不動産データバンクともいえるのが「東京カンテイ」です。東京カンテイでは、全国の不動産の価格情報だけでなく、図面や売買事例なども配信されています。

図面や取引価格などの具体的なデータ閲覧は会員制となり、一般の人はみることはできません。しかし、戸建て価格推移や価格天気図・70平方メートル換算価格推移などの市況レポートはサイトで閲覧できるので確認するとよいでしょう。

>東京カンテイ
https://www.kantei.ne.jp/

・中古マンション70平方メートル換算価格推移近況

2021年11月に発表された、中古マンションの「70平方メートル換算価格推移」では、2021年10月の首都圏における中古マンション70平方メートル換算価格が前月比+1.3%の4,360万円という結果が出ています。これは6カ月連続での上昇であり、特に東京都では16カ月連続上昇の5,914万円という高い価格で推移していることがわかります。

また、中古マンションの価格動向を天気マークで表現した「価格天気図」なら、直感的に価格の動向がわかるので、価格の参考にしやすいでしょう。ちなみに、2021年11月発表の価格天気図では、10月の「晴」地点が25地点から26地点に増加。「雨」が2地域から1地域に減少しています。三大都市圏は好調を維持し、地方も上昇に転じており、全国的にも中古マンション価格は上昇傾向にあるといえるでしょう。

5-2.不動産経済研究所

新築分譲マンションの市場動向をメインに調査する不動産経済研究所でも、不動産価格動向を確認できます。毎月、マンション供給戸数や契約率などのデータを公表しているので、価格の参考にするとよいでしょう。

>不動産経済研究所
https://www.fudousankeizai.co.jp/

・首都圏新築分譲マンション市場動向

2021年に発表された10月の首都圏新築分譲マンション市場動向では、販売戸数が2カ月連続の減少という結果が出ています。

ただし、契約率は前月比+1.0%、平均価格も前月比+10.1%の6,750万円と、価格は上昇傾向にあります。特に東京23区では、平均価格が前年比+11.8%の8,455万円と、大きく上昇しています。

6.まとめ:さまざまな指標を理解して適切な売却のタイミングを見極めよう!

今回は、不動産価格動向の近況や調べ方についてお伝えしました。不動産価格動向をみる方法としては、次のような指標があります。

  • 不動産価格指数
  • 公示価格、基準地価、路線価
  • 民間の調査機関

さまざまな指標があるので、総合的に判断するとよいでしょう。

新型コロナウイルス感染症の影響により、不動産価格への影響が心配されています。2020年、2021年は一時期落ち込んだものの現在は回復し、利便性のよい都市部や郊外などでは地価が上昇する傾向がみられます。

しかし、今後も新型コロナウイルス感染症の影響がどのように現れるのか予測は難しいものです。これから不動産の売却を検討されている方は、市場動向に注目し、タイミングを見極められるようにしましょう。

Q.不動産の価格動向はどうやって調べることができますか?教えてください!
A.「不動産価格指数」をみることで、不動産価格の状況や価格推移を確認することができます。加えて、「公示地価」「都道府県基準地価」「相続税路線価」「民間調査機関」を確認して、総合的に判断するのが重要です。

Q.民間のサイトで不動産データを取得できますか?教えてください!
A.「東京カンテイ」「不動産経済研究所」といった民間の調査機関のサイトで市況レポートやデータを閲覧することができます。

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