不動産を相続したとき知っておくべき手続きの流れや相続税を解説

将来的に不動産の相続が発生することを予想していても、実際に相続しなければならないときにどのようにすればよいのか、わからないという方は多いものです。相続の手続きは、一度行うとやり直すことができません。この記事では、不動産相続の流れや財産分与の方法、相続時の税金などについて詳しくご紹介します。いざ不動産を相続することになったとき困らないように、しっかりと理解しておきましょう。

1.不動産を相続するときの流れ

一般的に不動産の相続は、親や親族が亡くなったときに発生します。相続人が1人の場合もあれば、複数の場合もあります。まずは、不動産を相続するときの基本的な流れを確認しましょう。

  1. 相続財産/相続人の確認
  2. 必要書類の準備
  3. 遺産分割協議
  4. 相続財産の名義変更
  5. 相続税の申告

1-1.相続財産・相続人の確認

死亡などの事由により相続が発生したときは、はじめに遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合は、基本的に遺言書の通りに相続人が決定することになり、法定相続人よりも優先されます。遺言書の内容に従い手続きが進められることになりますが、トラブル回避のために弁護士など第三者に依頼して手続きを進めてもらうとよいでしょう。

遺言書がない場合、あるいは見つからなかった場合は、法定相続人に優先順位があります。法定相続人は主に次のような親族です。順位も確認しましょう。

順位 詳細
常に相続人 配偶者
第一順位 死亡した人の子、または代襲相続人となる孫、ひ孫
第二順位 死亡した人の直系尊属(父母、祖父母)
第三順位 死亡した人の兄弟姉妹、または代襲相続人となる甥、姪

常に相続人となる配偶者から順に、子、直系尊属、兄弟姉妹などに続きます。親(2人)と子供2人の家族で親(1人)が亡くなった場合、法定相続人は常に相続人になる配偶者と第一順位の子です。第二順位は、第一順位がいない場合に相続人になります。また第三順位は第一順位、第二順位がいない場合に相続人になります。

代襲相続人とは、法定相続人がすでに亡くなっている場合に、代わりに相続権が得られる人です。被相続人の子がすでに故人なら、その子の子供、つまり被相続人からは孫にあたる人が代襲相続人になります。

相続人を知るには、戸籍や住民票を提出することにより「相続人一覧図」で確認できます。

1-2.必要書類の準備

上述の段階で、遺言書の有無を確認しますが、ほかに相続となる財産についての書類などをそろえます。不動産の場合なら、権利証や登記簿など所有者や権利者などがわかる書類が必要です。手続き上で必要な書類は次の通りです。

  • 相続人たちの戸籍謄本
  • 相続人たちの印鑑証明
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 遺言書(ある場合)
  • 遺産分割協議書
  • 不動産の登記簿
  • 相続人たちの住民票
  • 固定資産評価証明書

1-2.遺産分割協議

遺言書がある場合は、遺産分割も内容に沿うように進めます。遺言書がない場合は、相続人が受け取る遺産の分配を記載する「遺産分割協議書」を作成します。書面には相続人全員の署名・捺印が必要ですが、郵送でのやり取りも可能です。

遺産分割協議では主に4つの分割の方法がありますが、こちらについては、後述で詳しくご紹介します。

遺産分割協議では、参加する全員が納得するよう進めることが大事です。きちんと話し合いの場を設けてスムーズに進められるようにしましょう。家族のみで進めることが不安な場合は、弁護士や司法書士など専門家に相談することも検討しましょう。

1-3.相続財産の名義変更

不動産の相続では、所有者の名義変更が必要です。名義変更は、法務局で「所有権移転登記」をすることにより行います。手続きは個人でも手順を踏めばできるかもしれませんが、一般的には司法書士に依頼することが多いでしょう。

相続による所有権移転登記を司法書士に依頼する場合、費用が10万円前後かかります。また、自分で申請する場合でも印紙代が必要です。

1-4.相続税の申告

不動産の相続後は、相続税の申告が必要です。税額などについては後述で詳しくご紹介しますが、相続したからといって必ず相続税がかかるわけではありません。基礎控除などがあるため、結果的に相続税がかからなかったというケースもあります。どのくらい相続税が発生しそうなのか、事前に把握しておくと安心です。

2.相続財産の遺産分割協議の進め方

不動産相続をスムーズに進めるための重要なポイントが「遺産分割協議」です。主に「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つの方法があります。不動産は現金と異なり分割することが困難なため、それぞれの分割方法の仕組みをしっかりと理解しましょう。

2-1.現物分割

現物分割は、不動産を相続人の数に分割して相続するものです。土地、住宅とも現物分割となるわけですが、住宅は現実的に分割して利用できない可能性が高いため、ある程度の面積がある土地などで用いられるのが一般的です。

2-2.代償分割

代償分割は、不動産を分割せずにある一部の相続人が相続して、本来分割で得られる部分に相当する現金を、不動産を相続しなかった相続人に対して支払うものです。不動産を分割することが困難な場合などに検討される方法です。

2-3.換価分割

換価分割は、相続した不動産を売却し、その売却代金を相続人で分割するものです。実家の相続など不動産として所有し続けることが困難な場合もあります。維持するだけでも費用がかかるため、売却して現金として分けることも相続する方法のひとつです。

2-4.共有分割

共有分割は、不動産を複数の相続人で共有名義にするものです。不動産を処分することなく、また、現金などで代償することなくそのまま共有します。大きな手続きが必要になるものではありませんが、不動産を売却するときは共有している全員の同意が必要となります。

2-5.相続放棄

相続と聞くと財産を受け取るというイメージがありますが、借入金なども含まれます。マイナスの部分はできる限り受け取りたくないのが一般的でしょう。家庭裁判所に申し立てを行うと相続放棄が可能になります。しかし、相続放棄は相続の権利があとの順位の人に移ることになるため、トラブルにならないように、安易に相続放棄することは避けましょう。

3.相続時にかかる税金

相続で気になるのは、相続にかかる税金がどのくらいかという点でしょう。相続時にかかる税金には、「相続税」のほか、名義変更に必要な「登録免許税」があります。

3-1.相続税について

相続税は、取得金額に応じて税率が定められています。相続する金額が大きいほど税額は高くなりますが、それぞれに基礎控除額が適用されます。平成27年以降の相続税は次の通りです。控除額は下記の計算式により計算されますが、ここでは速算表で確認しましょう。

計算式:相続税の基礎控除額=3,000万円+相続人の数×600万円

法定相続分に応ずる取得金額 税額 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 12,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超え 55% 7,200万円

3-2.相続税の計算方法

不動産の相続税の計算は土地と建物で異なります。土地の場合は「路線価方式」か「倍率方式」で評価方法を算出します。路線価、倍率とも市場の売買価格よりも低くなっています。

建物の場合は、固定資産税の納税通知書に記載されている「固定資産税評価額」で算出します。また、基礎控除額は、法定相続人の数により計算されます。

相続税の計算の手順は次の通りです。

  1. 各相続人の課税価格の合計額から基礎控除を差し引いて課税遺産総額を算出
    (基礎控除額=3,000万円+法定相続人の数×600万円)
  2. 課税遺産総額を法定相続人で按分
  3. 按分後の金額に相続税率をかけて相続税を算出
  4. 相続税の総額を実際に相続した割合に按分
  5. ④で算出された金額から贈与税控除や配偶者税額軽減措置分などを差し引いて納税額を算出

相続税の計算は、納税額を算出するまでに少し複雑な手順になっています。自分で計算するのが不安な場合は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。

3-3.控除特例

上述でも触れましたが、相続税にはさまざまな控除があります。代表的なものは誰にでも適用される基礎控除ですが、このほかにも配偶者控除、贈与税控除など6つの控除があります。

3-4.配偶者控除

配偶者が得られる法定相続分と1億6,000万円のいずれか多いほうの金額まで控除できるものです。控除要件としては、亡くなった方の法律上で配偶者であること、申告期限までに遺産分割が確定していることなどが定められています。

3-5.贈与税額控除

贈与税額控除は、相続や遺贈で財産を取得した人で、亡くなる前の3年間に贈与があり、贈与税を納めている人が控除できるものです。贈与税を納めた人となっていますので、贈与を受けても税金を支払っていなければ対象になりません。

3-6.未成年者控除

未成年の相続人がいる場合に、その未成年者からは一定の金額を控除できるものです。就学児童など養育費が必要な年齢であることに配慮されています。控除額の計算は満20歳になるまでの年数に10万円をかけて算出します。

参考:満20歳になるまでの年数×10万円

3-7.障害者控除

相続人が障害者の場合に、一定額を控除できるものです。死亡した日時点で85歳未満の障害者が対象です。障害者の生活を保護するために設けられています。

3-8.相次相続控除

今の相続が発生する10年以内に、亡くなった人が相続税を支払っていた場合に、一定額を控除できるものです。例えば、高齢の方が相続された場合に適用されるなど、短期間のうちに複数の相続税が発生する負担を軽減するために設けられています。

3-9.外国税額控除

亡くなった人の財産が外国にある場合で、外国で相続税がかかったときは一定額を控除できるものです。不動産の相続は国内だけとは限りません。国外にセカンドハウスなどを所有しているケースもあります。このような場合に、国内と外国と重複して課税されるのを避けるために設けられています。

なお、それぞれの相続税の控除は、該当すれば複数適用される場合もあります。該当する控除をすべて計算する前に「ゼロ」になった場合は、課税分がないとして相続税はかかりません。反面、控除額が多いといっても税額を支払ってはいないので、還付になるわけではありません。

4.まとめ:相続が発生する前に理解を深めよう!

今回は、不動産の相続について相続の手続きの流れや遺産分割の方法、相続税の計算や控除の種類などについてお伝えしました。

親が高齢になっていればいつ相続が発生しても不思議ではありません。もしものときに備えて、相続人は誰になるか、相続される不動産はいくつあるか、どのような遺産分割が最適なのかなど、あらかじめシミュレーションしておくことも大切です。

また、控除の種類なども把握しておくことで、いざ相続を進めるときにも役立ちます。相続の手続きを完了してからではやり直すことはできないため、事前にしっかりと理解しておきましょう。

Q.相続人はどうやって決まりますか?教えてください!
A.遺言書がある場合は、遺言書の通り相続人が決定します。遺言書がない場合、あるいは見つからない場合は、法定相続人が被相続人の遺産を相続します。法定相続人を決めるうえで優先順位があり、常に相続人となる配偶者から順に、子、直系尊属、兄弟姉妹などに続きます。

Q.相続時に必要な書類とは何ですか?教えてください!
A.相続の手続きをするうえで、「相続人たちの戸籍謄本」「相続人たちの印鑑証明」「被相続人の戸籍謄本」「被相続人の住民票の除票」「遺言書(ある場合)」「遺産分割協議書」「不動産の登記簿」「相続人たちの住民票」「固定資産評価証明書」が必要です。

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