不動産を売却したときにかかるのが印紙税や登録免許税などの各種税金です。税金は、売却した不動産の金額や利益によって支払額が変わってきます。この記事では、不動産売却でかかる税金と計算方法について説明します。
【計算シミュレーション付】不動産売却でかならずかかる税金の種類を解説
土地や建物を売却したときに支払う税金は、印紙税・登録免許税・消費税の3つです。それぞれの税金額は、売却した不動産の金額や支払った仲介手数料の費用などによって異なります。3つの税金について、税金額の算出方法や計算シミュレーションをまじえて詳しく解説します。
「かならずかかる税金①印紙税」
印紙税は、土地や建物の売却でかならず支払う必要がある税金の一つです。印紙税とは、金銭がからむ日常の取引で発行される契約書や金銭の支払いを示した受取書や領収書に課税される税金です。
契約書や領収書に収入印紙を貼付して、消印を押してもらうことで支払いを完了した証明となります。収入印紙の貼付が必要なのものは、印紙税法に定められているもののみです。不動産の売却では、第1号文書に制定されている不動産売買契約書に印紙税がかかります。不動産の売買では買主と売主それぞれが不動産売買契約書を保管する場合には、収入印紙も2枚必要です。
売買契約書に貼付する収入印紙の金額は、売却した土地や建物の値段によって変わります。
詳しくは、以下の表をご覧ください。
記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 200百円 |
150万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000千円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
3,000万円の家を売却した場合は、印紙税が1万円であり、契約書は2枚必要なため、2万円かかります。
「かならずかかる税金②登録免許税」
不動産を売却して所有者が変更になった場合は、抵当権抹消、所有権移転のための登記が必要です。抵当権とは、住宅ローンが万が一払えなくなったときに備えて、金融機関が設定するものです。
住宅ローンの支払いが完了していない不動産に関しては、抵当権があると売却ができません。そのため、抵当権抹消のための登記が必要です。抵当権抹消登記で、不動産1件につきかかる登録免許税は1,000円です。また、所有者・抵当権者の氏名・住所が変更となっている場合、住民票、戸籍謄本を用意する必要があります。戸籍謄本は全国統一で450円ですが、住民票は各自治体によって異なります。さらに、抵当権抹消登記を司法書士に依頼する場合、別途依頼費用が必要です。
売却で不動産の所有者が変更になった場合には、所有権移転登記が必要です。所有権移転登記は一般的には買主が支払うものです。しかし、双方が合意すれば売主が支払うこともあります。
所有権移転登記で支払う必要があるのが登録免許税です。中古物件の登録免許税は、固定資産税評価額に2.0%を乗じた金額です。
なお、所有権移転登記にかかる登録免許税は、以下の条件を満たすと2.0%から0.3%に軽減されます。
・床面積が50平方メートル以上あること
・築25年(木造は20年)以内の物件である、あるいは一定の耐震基準を満たしていること
上記条件を満たす物件を3,000万円で売却した場合にかかる費用は以下の計算式で求められます。
3,000万円×0.003=9万円
「かならずかかる税金③消費税」
個人が不動産を売却した場合には、消費税がかかりません。しかし、不動産取引の仲介を依頼する不動産会社に支払う仲介手数料には、消費税が含まれています。仲介手数料の上限は不動産売買の金額で変わり、以下のように3段階に分かれます。
不動産の売買価格 | 仲介手数料の上限額の計算式 |
---|---|
200万円までの部分 | 金額×5%+消費税 |
200万円超~400万円までの部分 | 金額×4%+消費税 |
400万円超の部分 | 金額×3%+消費税 |
たとえば3,000万円の物件を売却した場合の仲介手数料の上限は以下の計算式で求められます。
200万円×0.05+200万円×0.04+(3,000万円-400万円)×0.03=(10万円+8万円+78万円)×1.1=105万6,000円
しかし200万円を超える物件の仲介手数料の上限を求めるには手間がかかります。そのため、以下のような速算式を用いられることが多いです。
不動産の売買価格 | 仲介手数料の上限額の速算式 |
---|---|
200万円超~400万円までの場合 | 金額×4%+2万円+消費税 |
400万円超の場合 | 金額×3%+6万円+消費税 |
同じように3,000万円の物件を購入した場合の計算を上記の速算式にあてはめてみましょう。
(3,000万円×0.03+6万円)×1.1=105万6,000円
【計算シミュレーション付】不動産売却で利益がでたときの税金を解説
不動産を売却したときに得られる所得のことを譲渡所得といいます。譲渡所得とは、不動産を売却したときに発生した利益から、建物を購入したときの金額や仲介手数料などを差し引いたものです。
譲渡所得の金額は、以下の計算で算出できます。
譲渡所得=売却価格(売却額+固定資産税清算金)-(物件取得費-減価償却費+ 譲渡費用)
譲渡所得があった場合には、譲渡所得税、住民税、復興特別所得税の3つの税金がかかります。譲渡所得の計算方法は、ほかの所得とは合算しないで独自に税金額を算出する「分離課税」方式です。
また、給与所得や事業所得でかかる税金とは別に確定申告を行い、納税をする義務が発生します。不動産売却でかかる税金が想定よりも高くかかり、思わぬ出費となることも少なくありません。譲渡所得があった場合の税金のシミュレーションを行い、必要な税金額をチェックしておきましょう。
「譲渡所得がでた場合の税金①住民税」
不動産を売却して譲渡所得がでた場合には住民税の支払いが必要です。譲渡所得による住民税の税率は、売却した物件を何年所有していたかによって異なります。
譲渡所得がある場合の住民税額は以下のように定められています。
短期譲渡所得(所有期間5年以下):住民税率=9%
長期譲渡所得(所有期間5年超):住民税率=5%
譲渡所得の住民税の計算式はこちら。
所有して5年未満:売却金額-(物件購入時の価格-減価償却費+譲渡費用)×0.09
所有して5年以上:売却金額-(物件購入時の価格-減価償却費+譲渡費用)×0.05
築3年3,000万円の木造物件を4,000万円で売却して仲介手数料や測量費などで200万円がかかった場合、住民税は以下の計算式で求められます。
4,000万円 -(3,000万-減価償却費251万1,000円+200万)×0.09=94万5,990円
「譲渡所得がでた場合の税金②譲渡所得税」
譲渡所得がでた場合は、譲渡所得税の支払いも必要です。譲渡所得税も、住民税と同じように売却した物件を何年間所有していたかにより税率が変わってきます。
短期譲渡所得(所有期間5年以下):所得税率=30%
長期譲渡所得(所有期間5年超):所得税率=15%
譲渡所得の所得税の計算式はこちら。
所有して5年未満:売却金額-(物件購入時の価格-減価償却費+譲渡費用)×0.30
所有して5年以上:売却金額-(物件購入時の価格-減価償却費+譲渡費用)×0.15
築15年、4,000万円のマンションを売却して売却価格が5,000万円、譲渡費用に500万円かかった場合の所得税は以下の計算で求められます。
この場合の所得税は以下の通りです。
5,000万円-(4,000万円-減価償却費810万円+500万円)×0.15=196万5,000円
「譲渡所得がでた場合の税金③復興特別所得税」
譲渡所得があった場合の税金3つめは、復興特別所得税です。復興特別所得税は、2011年に発生した東日本大震災の復興のために特別措置法で創設されました。平成25年から令和19年まで個人で所得税を納める必要がある方は、復興特別所得税も納めなくてはなりません。
復興特別所得税額は、以下の計算式で算出できます。
復興特別所得税額=基準所得税額×2.1%
譲渡所得税額が200万円だった場合の復興特別所得税額は以下の通りです。
200万円×0.021=4万2,000円
【計算シミュレーション付】不動産売却で活用できる税金控除を解説
不動産を売却すると、住民税や所得税、印紙税などさまざまな税金が思いがけないほどの高額でかかってくることがあります。売却して利益がでたとはいえ、高額の税金に心配になってしまうかもしれません。
不動産売却では、3,000万円控除やマイホーム特別控除などさまざまな控除制度があります。それぞれの控除に適用される条件や控除申請に必要な書類などを事前に確認して税金対策を進めておきましょう。
「不動産売却時の特別控除①3,000万円控除」
「3,000万円の特別控除」が適用されれば、譲渡所得から3,000万円までを控除してもらえます。譲渡所得が3,000万円以上だった場合は、3,000万円を超えた部分にのみ、住民税や譲渡所得税がかかります。
3,000万円の特別控除の適用には、以下の条件を満たさなくてはなりません。
- 自分が住んでいる物件を売却、あるいは敷地や借地権を売却すること。
※以前住んでいた家を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日がある年の12月31日までに売却する必要があります。また、物件を取り壊した場合は、以下の2点の条件が必要です。 - 敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に結ばれていること、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日がある年の12月31日までに売却すること。
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を結ぶまでに駐車場などに使用していないこと。
- 物件を売却したの前年及び前々年に3,000万円控除あるいは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例を適用された経験がないこと。
- 物件を売却した年、その前年及び前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例を適用されていないこと。
- 売却した土地や家屋に収用等の場合の特別控除など、ほかの特例を適用されていないこと。
- 災害によって滅失した家屋の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日がある年の12月31日までに売却が完了していること。
- 売主と買主が、親子や夫婦、内縁関係、同族会社など特別な関係でないこと。
上記とあわせて、住宅の建設や、住みかえのためだけに購入した仮住まい物件や別荘など趣味に利用するセカンドハウスなどには、3,000万円の特別控除は適用されないため、注意が必要です。
「不動産売却時の特別控除②所有期間が10年超の不動産を売ったときの特例」
所有期間が10年を超えている場合に利用できるのが「所有期間が10年超の不動産を売ったときの特例」です。所有期間が10年超の場合、長期譲渡所得を通常よりも低い税率で算出できます。
所有期間が10年超の不動産を売ったときの特例の税額は以下の計算式で求められます。
課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下:課税長期譲渡所得金額×0.10
課税長期譲渡所得金額が6,000万円超:(課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×0.15+600万円
課税長期譲渡所得金額とは売却金額から物件購入時の価格、減価償却費、譲渡費用、特別控除をひいたものです。
特例を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 日本国内にある自分が住んでいる物件を売却すること。以前住んでいた家を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日がある年の12月31日までに売却する必要があります。
- 物件を取り壊した場合は、以下の条件が必須です。
家屋が取り壊された日がある年の1月1日において所有期間が10年を超えること。
譲渡契約が取り壊した日から1年以内に結ばれて、住まなくなった日から3年を経過する日がある年の12月31日までに売却すること。 - 売却した年の1月1日付で売却した建物と土地の所有期間がともに10年を超えていること。
- 売却の前年、前々年に「所有期間が10年超の居住用不動産を売却したときの軽減税率特例を受けていないこと。
- 建物や土地に対してマイホームの買換えなど、ほかの特例を受けていないこと。
- 売主と買主が、親子や夫婦、内縁関係、同族会社など特別な関係でないこと。
「不動産売却時の特別控除③譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、令和3年12月31日までに物件を売却して新たに物件を購入したときに譲渡損失が生じた場合に、譲渡損失を給与所得や事業所得から控除できる制度です。控除しきれなかった分は3年間の繰り越しができます。
特例が適用されるには以下の条件を満たす必要があります。
- 自分が住んでいる物件を売却すること。
※以前住んでいた家を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日がある年の12月31日までに売却する必要があります。 - 売却した年の1月1日で所有期間が5年を超える物件であること。
- 災害によって滅失した場合は、災害があった日から3年を経過する日がある年の12月31日までに売却すること。
- 購入した住居は、床面積が50平米以上であること。
- 物件を買換えた場合、取得した年の翌年12月31日までの間に居住し、10年以上の住宅ローンを組むこと。
- 物件を取り壊した場合は、以下の2点の条件が必要です。
- 敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に結ばれていること、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日がある年の12月31日までに売却すること
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を結ぶまでに駐車場などに使用していないこと。
「不動産売却時の特別控除④平成21・22年に買った土地を売ったときの特例」
「平成21・22年に買った土地を売ったときの特例」は、リーマンショックにより低迷した不動産取引の対策として導入されたものです。以下の条件を満たした場合に、1,000万円の特別控除が受けられます。
- 平成21年1月1日から平成22年12月31日までに購入した土地であること
- 購入から5年を経過してから売却すること
- 売主と買主が、親子や夫婦、内縁関係、同族会社など特別な関係でないこと
- 相続や贈与などで取得した土地ではないこと
- 収用等の特別控除などの特例を受けていないこと
「譲渡所得の特別控除に必要な書類」
譲渡所得の特別控除は、前述の適用条件を満たしているだけでなく、申告書と必要書類の提出が必要です。譲渡所得の適用に必要な書類について説明します。
3,000万円の特別控除 | 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書) 売却した物件所在地の市区町村長から交付を受けた 住民票(除票)の写し |
所有期間が10年超の不動産を売ったときの特例 | 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書) 売却した物件所在地の市区町村長から交付を受けた 住民票(除票)の写し 売却した物件の登記事項証明書 |
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表) 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書 売却した物件と買換えた物件それぞれの登記事項証明書、売買契約書の写し 売却した物件所在地の市区町村長から交付を受けた 住民票(除票)の写し 購入した物件の住宅借入金等の残高証明書 購入した物件の所在地の市区町村長から交付を受けた住民票の写し |
平成21・22年に買った土地を売ったときの特例 | 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書) 土地等の登記事項証明書や土地等を取得したときの売買契約書の写しなど、土地の取得が平成21年か22年にあったことを示す書類 |
不動産の売却にかかる税金を計算して税金の支払いに備えよう
不動産を売却したときには、利益の有無にかかわらず課税される消費税や印紙税、譲渡所得があった場合に課せられる譲渡所得税や住民税などの税金がかかります。譲渡所得にかかる税金は、3,000万円特別控除などの特例を活用すれば節税ができます。上記で解説した計算シミュレーションを利用して、譲渡所得や譲渡所得税額などを確認しておきましょう。
税金額を事前に知るためには、物件がいくらで売れるかを査定して算出する必要があります。査定を行うなら、複数の不動産会社とAIでW査定ができる「おうちクラベル」の一括査定を利用しましょう。査定金額から譲渡所得額がわかれば、税金がいくらかかるかのシミュレーションもスムーズです。
Q.減価償却費の計算方法をおしえてください。
A.減価償却費は、物件の購入金額×0.9×償却率×物件の経過年数で算出できます。 なお、居住用の法定耐用年数は、木造で33年、鉄筋で70年です。
Q.譲渡所得の住民税はいつ支払う必要がありますか
A.住民税は、確定申告のあとに住民税納付書が送られてくるため、指定の金融機関で支払います。各自治体により異なりますが、4回にわけての納付や一括での納付が選択できます。