不動産鑑定は何に使える?査定との違いから鑑定の流れや選び方を徹底解説

「不動産鑑定って査定と一体何が違うの?」
このような疑問をお持ちの方に向けて、この記事では「不動産鑑定はどんな場面で使うのか」を中心に、依頼した場合の流れや費用について解説しています。
読み進めると「不動産にまつわる相続問題」などの解決に役立ちます。
では「不動産鑑定では何をするのか?」から順にみていいきましょう。

不動産鑑定では何をするのか?

不動産鑑定は「不動産鑑定士」の国家資格を持つ方のみが従事できる業務です。不動産鑑定士は以下の業務を行っています。

  • 不動産の経済的価値の評価・判定業務
  • コンサルティング

不動産鑑定では、その土地が持つ経済的価値を評価、判定を行い、土地価格などを算出します。さらに、評価結果を基に「不動産鑑定評価書」の作成をします。不動産鑑定評価書の作成は、不動産鑑定士のみが行える独占業務です。

公示地価や固定資産税評価なども不動産鑑定から算出されており、不動産鑑定で不動産の正しい価値を知れます。

不動産査定との違いとは?

では不動産鑑定と、不動産査定は一体何が違うのでしょうか?

まず1つ目に利用料金が違います。基本的に不動産査定は無料ですが、不動産鑑定は相場でいったとしても20万円程度かかります。不動産鑑定は主に裁判や、公的な証明書として使用でき、相続や贈与の場面でも有効です。一方の不動産査定は、不動産のおおよその売値を知るために行われ、公的な証明としては使えません。

不動産鑑定が必要なタイミングは?

不動産鑑定が必要なタイミングは「相続」「不動産売買」「会計処理」など、公的機関や企業などが関係する手続きが必要になったときです。さらに、不動産を担保とする際に鑑定を依頼するケースもあります。鑑定を行うことで、融資の判断ができるためです。

また、個人として最も多い理由は「不動産を売買する際の適正価格を知りたい」といったものです。不動産を遺産として相続する場合、正確な金額を把握し権利調整ができます。不動産鑑定を行うことで相続税・寄与税の申告時に証明書として提出ができます。

不動産鑑定の方法

不動産鑑定評価には3つの手法が用いられます。大まかに説明すると以下のようになります。

手法 特徴 何に使われるのか
原価法 経年劣化を加味し評価を行う 戸建てなど建物の評価
収益還元法 将来的な収益予測から、適正な不動産価格を設定する 賃貸マンションや投資用マンションの判断材料
取引事例比較法 取引事例を基に鑑定を行う 不動産売却時の適正価格の算出など

それぞれ、何を評価するのかによって使う手法が違います。ここからはそれぞれの手法について詳しく解説していきます。

原価法

不動産鑑定方法1つ目は「原価法」です。原価法は、対象となる不動産を再調達した際、再調達価格がどの程度になるのか計算し、経年劣化などの価値低下を加味したうえで、評価額を算出する方法です。

再調達価格を修正する要因は、以下のものとなります。

  • 物理的要因:老朽化や破損
  • 機能的要因:付帯設備の陳腐化など
  • 経済的要因:周辺の環境変化やマーケット状況
  • 土地の減価:土地の価値低下

これらの要因を考慮し、戸建てなどの建物を評価する際に用いられる手法です。

収益還元法

不動産鑑定方法2つ目は「収益還元法」です。収益還元法は、対象となる物件を賃貸にした場合に想定される収益などに着目し、適正な評価額(収益価格)を算出する際に用いられています。

収益還元法において収益価格を算出する方法として用いられているのが「直接還元法」と「DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)」です。

直接還元法は、純収益が将来的に続くことを想定して算出し、DCF法は物件を保有している期間内の純利益を算出するといった違いがあります。

収益還元法は、不動産投資の投資判断する際に用いられる手法です。

取引事例比較法

不動産鑑定方法3つ目は「取引事例比較法」です。取引事例比較法は、評価対象となる不動産に近い条件で、過去に取引された価格を基に鑑定する方法になります。さらに対象となる物件に、地域ならではの要因(固有要因)や市場状況などを考慮し、補正する手法です。

取引事例比較法は、類似事例がなければ用いることは難しく、主に土地の評価やマンションの鑑定時に使われています。また、取引事例比較法を用いて算出された試算価格を「比準価格」といいます。

不動産鑑定項目3つの要因とは

不動産鑑定で価格を作る要因 (価格形成要因)が3つあります。価格形成要因となる要因3つを以下でまとめています。

要因

主な要因

一般要因

不動産のあり方や、価格の水準に影響する要因

・自然的要因:地質、地盤などの状態など

・社会的要因:人口や生活様式などの状態など

・経済的要因:財政や金融の状態など

・行政的要因:土地利用に関する計画や規制の状態など

地域要因

地域の特性を形成、その地域の不動産価格に影響をあたえる要因

・宅地地域(住宅地域/商業地域/工業地域):商業施設の配置など

・農地地域:洪水、地すべりなどの災害の発生の危険性など

・林地地域:労働力確保の難易など

個別的要因

不動産に個別性を生じさせ、価格が個別的に形成される要因

・土地に関する個別的要因

・建物に関する個別的要因

・建物と敷地に関する個別的要因

※参照元:『国土交通省(不動産鑑定評価基準)』を基に作成

これら3つの要因は常に変動するため、鑑定時には無視できない要因となっており、相互関係を分析し鑑定が行われます。

不動産鑑定の流れ

不動産鑑定を実際に行う場合、どのような流れで進むかについて解説していきましょう。
不動産鑑定は以下の流れで行います。

  1. 不動産鑑定士事務所選定
  2. 契約
  3. 鑑定・評価の実施
  4. 鑑定評価書の作成・受領

事務所を探す場合は、複数事務所にて見積もりをもらい、実際に事務所を訪れましょう。また、中間報告の有無などを調べておくことが、不動産鑑定事務所を選ぶうえで、チェックしておきたいポイントです。

契約時に必要となる書類は、以下「不動産鑑定に必要となるもの」で紹介します。

鑑定から評価の実施は一般的に10日程度~数週間で鑑定評価書の作成が行われます。できた鑑定評価書は以下の内容を確認しましょう。

  • 対象不動産の表示
  • 依頼目的と鑑定評価の条件
  • 鑑定評価額の決定および鑑定の基準となった日付
  • 不動産鑑定評価額を決定した理由
  • 関与不動産鑑定士および業者に係る利害関係など

これら一連の流れが不動産鑑定の流れとなります。

不動産鑑定士の選び方

不動産鑑定を行ってもらうには、まとまった費用もかかるため、ここでは失敗しない不動産鑑定士選びのポイントを3つ紹介します。

まずは、前提条件として「不動産売買に関する取引を行ったことがあるか」を確認してください。不動産鑑定士によって得意・不得意な分野があります。そのため、不動産売買や相続関係などの依頼内容を過去に行ったことがあるかの確認は重要になります。

つぎに、不動産鑑定をしてもらう地域に強いかどうかです。不動産は相場や地域性があり、地域の実情に詳しければ、より地域性を加味した鑑定書ができます。依頼時に過去に鑑定地域を鑑定した経験があるかを聞きましょう。

また、公的な評価のみを行っていて、一般的な鑑定に弱い可能性もあります。ホームページがあれば、実績を確認して、どのような実務経験がどれくらいあるかを確認しましょう。実務経験が豊富であれば、よりさまざまな情報を基に鑑定を行ってくれる可能性が上がります。

鑑定士を選ぶポイントは複数ありますが、上記で紹介した3つのポイントは押さえておいてください。

不動産鑑定に必要となるもの

不動産鑑定を行う際に必要となる書類と、費用について解説していきます。

不動産鑑定で必要となる書類は多岐にわたるため、準備が大変です。場合によっては、鑑定士に取得してもらえる書類もあるため、事前に相談しておきましょう。

必要書類は以下のとおりです。

書類名 記載内容
不動産鑑定評価業務依頼書 契約書となる書類
固定資産税(都市計画税)納税通知書 土地番号や建物家屋番号など、鑑定するために必要な事項が記載されている
登記事項証明書 床面積や権利などが記載している(全部事項証明書)
住宅地図 鑑定する不動産の場所を把握するため
公図 宅地の位置や形状を表す図面
地積測量図 土地の面積の数量や、面積の求め方が記載されている
建物図面・各階平面図
(建物がある場合)
建物の形や床面積の算出法などが記載されている
道路台帳 鑑定する土地が面している道路を区別するため
上水道配管図 上下水道管の配置を示した図面
公共下水道台帳 公共下水道の整備状況がわかる図面
ガス配管図 都市ガス管の口径や配置状況位が示されている図面

正しく鑑定するための情報を準備する必要があるため、書類は多岐にわたるものとなります。

不動産鑑定では、依頼する内容によって金額が異なり、土地のみや建物のみの不動産鑑定証明書であれば20万円前後となります。賃貸物件の鑑定では+10万円程度が相場となるでしょう。

不動産鑑定事務所によって設定金額が異なるため、依頼する不動産鑑定事務所に確認してください。

以下の価格は鑑定料金の目安となります。

対象 規模 価格
土地のみ 戸建住宅が1棟建築できる程度 198,000円~
建物のみ 戸建住宅 198,000円~
土地建物 戸建住宅 220,000円~
マンション 専有一部屋 275,000円~
賃料 家賃 330,000円~

正確な価格を知りたい場合には不動産鑑定を利用しよう

不動産鑑定は、不動産の価格をより正確に知るために行われるものです。鑑定を行う理由はさまざまですが、売却時や相続時に鑑定を行っておくことで、不動産本来の価格がわかるだけでなく、公的な書類として保管できます。

将来的に相続しようと思っていたり、売却したりする可能性がある方は不動産鑑定を行っておくとよいでしょう。さらに売却時にはこの鑑定結果を基に、査定を行ってみてください。そうすることで、鑑定に近い額を提示した不動産業者は目利きが確かな不動産会社といった判断材料にもなります。

不動産売却では一括査定がおすすめです。自分で複数不動産会社に連絡する必要がなくなり、売却までの時間が短縮できます。おすすめは「おうちクラベル」です。AIを使った「AI査定価格」で、その場で相場価格がわかる点もおすすめポイントの一つです。

不動産売却では鑑定で正しい価値・価格を知り、その鑑定結果を基に不動産業者を選ぶようにしましょう。

Q:不動産鑑定士は国家資格とのことですが、全国にどのくらいの方がいるのでしょうか?
A:少し古い統計にはなりますが、平成29年1月1日時点で、全国で8,268人の方が業務にあたっています。

Q:市場予測や需要予測も鑑定士に行ってもらえるのでしょうか?
A:市場予測や需要予測も不動産鑑定士の業務の一部です。しかし、実際に業務を実施している業者は全体の2割程度との調査結果もあるため、業者選定時に予測を行ってもらえるか聞いておく必要があります。

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