不動産を売却するときは、事前準備が大切です。不動産取引はまとまった金額のやりとりが行われるため、後悔をしないためにも最低限押さえておくべき知識を身につけておきましょう。
この記事では、不動産の売却を検討している方があらかじめ把握しておいたほうが良い基本的なポイントや注意点を解説します。売却に至るまでの流れを把握することで、納得できる形で売却活動を進めてみましょう。
不動産の売却で押さえたい7つの注意点
ここでは、不動産の売却時に把握しておきたい7つの注意点を解説します。
注意点①売却方法をよく考える
不動産の売却方法は、大きく分けて「一般的な不動産売却」「不動産会社が買い取る方法(買取)」「任意売却」の3つがあります。売却方法の基本的な特徴を理解したうえで自分に合った方法を選ぶことが大切です。
まず一般的な不動産売却とは、仲介による売却のことを指します。不動産会社と媒介契約を結んだうえで、売却活動を進めていきます。売却までにかかる期間は4~6ヶ月程度を見込んでおく必要がありますが、相場に近い価格で売却したい方におすすめの方法です。
次に買取についてですが、仲介よりも早期に売却できるという特徴があります。急な転勤や家族の介護などで住み替えが必要な場合におすすめの方法であり、不動産会社に直接買い取ってもらうことができます。
売却価格は相場の7割ほどとなりますが、仲介手数料がかからないため物件によっては買取が良いケースもあるでしょう。ただし、すべての物件が買取対象となるわけではないため、買取を希望するときは早めに不動産会社に相談をしてみましょう。
そして、任意売却とは住宅ローンの返済が難しくなったときに利用する方法です。住宅ローンを組んでいる金融機関の同意が得られれば、住宅ローンが残っていても売却することができます。
金融機関の承諾を得ること以外は、仲介による売却手順と変わらないため、相場に近い価格で売却できる可能性があります。金融機関の担当者とのやりとりも必要なため、通常の売却よりも多くの時間がかかるため、早めに行動するようにしましょう。
また、少し特殊な方法としてリースバックという選択肢もあります。不動産会社や金融機関などに物件を買い取ってもらい、売却後も賃料を支払うことでそのまま同じ物件に住み続けられる方法です。
一口に売却といっても、さまざまな方法があるため自分に合った売却方法を選んでみましょう。
注意点②不動産価格の相場を調べておく
不動産の売却で損をしないためには、どの程度の価格で売却できるのかを把握しておくことが重要です。不動産会社に査定を依頼すれば大まかな目安は分かりますが、提示された査定額が適正なものであるかを判断する基準を知っておくことも必要だといえます。
インターネットを通じて、自分でも相場を調べる方法があるため、気になるときには事前に調べてみると良いでしょう。調べる方法としては、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」を利用したり、不動産流通機構が運営している「レインズ・マーケット・インフォメーション」を使ったりする方法があります。
どちらのサイトも無料で誰でも利用でき、周辺エリアの類似物件の取引価格や基準地価・公示地価などが分かるため、物件を売却したときの目安を把握することに役立つでしょう。不動産価格には定価というものが存在しないため、実際に取引が行われた価格が相場を考えるうえでの目安となります。
複数のデータを比較してみることで、売却予定の物件価格の相場をきちんと把握できるでしょう。
注意点③売却するために費用がかかる
不動産を売却するときは「いくらで売却できそうか」という点にばかり意識が向いてしまいがちですが、売却を行うにあたって負担しなければならない費用があります。主な費用についてまとめると、次のものが挙げられます。
費用項目 | ポイント | 金額の目安 |
---|---|---|
仲介手数料 | 売買契約が成立したときに、不動産会社に支払う成功報酬 | 取引額×3%+6万円+消費税 |
印紙税 | 売買契約書に貼付する収入印紙の費用 | 契約金額によって異なる |
登録免許税 | 抵当権を抹消するための費用 | 契不動産1個あたり1,000円 |
司法書士に支払う報酬 | 登記手続きを司法書士に依頼したときの費用 | 抵当権抹消登記であれば1~2万円程度。権利関係が複雑になると費用がかさむ |
繰り上げ返済の事務手数料 | 繰り上げ返済の事務手数料 | 金融機関によって異なるものの、3~4万円程度 |
そのほかの費用 | 解体費用・引っ越し代・ハウスクリーニング費用など | 金必要に応じて発生する |
売却にあたってかかる費用は現金でやりとりするものも多く、支払うタイミングもそれぞれ異なります。不動産会社の担当者に質問をして、どの時期にいくらかかるのかを明確にしておきましょう。
注意点④売却する土地の名義と状態を確認しておく
売却予定の不動産の名義が、誰になっているのかを事前に確認しておくことが大切です。不動産は名義人でなければ売却できないため、必要な準備を整えてから売却活動を進める必要があります。
相続などで親の不動産を引き継いだときには、相続登記を法務局で行ってスムーズに売却ができるようにしておきましょう。また、再建築不可の物件の場合は更地にしてしまうと新たに建物を建てられなくなるため、あらかじめ物件の状態を調べておきましょう。
注意点⑤相続登記
前述のとおり、相続によって不動産を引き継ぐときは、名義人を売却する本人に変更しておく必要があります。名義人が亡くなった家族や親族のままだと売却できないため、事前に相続登記を行いましょう。
相続人が複数いて権利関係が複雑な場合は、自ら手続きを行うことに負担を感じるものです。そのような場合は司法書士などの専門家に依頼して、スムーズに相続手続きが行えるようにすることが大事です。
注意点⑥住宅ローンが残っているか確認しておく
不動産を売却するときには、抵当権が設定されたままでは売却することができません。物件を買主に引き渡す前までに、住宅ローンを完済して抵当権を外す必要があります。
ただし、完済を行うための資金として物件の売却代金を用いることはできるため、どれくらいの金額で売却できるのかを把握しておくことが重要です。不動産会社に査定依頼を行うことで、売却活動や売却方法の方向性を決めやすくなるでしょう。
住宅ローンの残高は金融機関から送られてくる明細書で確認をするか、直接問い合わせることによって確かめることができます。物件の売却を検討するときは、早めに住宅ローンの残高をチェックしておきましょう。
注意点⑦共有名義
売却予定の不動産が親から相続したものである場合、兄弟姉妹などと共有名義になっていることもあります。共有名義となっているときは、名義人全員の承諾がなければ不動産を売却することができません。
名義人が複数いる場合には話し合いに時間がかかることもあるため、早めに行動するほうが良いでしょう。ほかの名義人の持分を買い取ったり、売却した代金をどのように分割したりするかなど、後からトラブルが起こらないように対応するのが重要です。
不動産の売却は2つの流れに分けられる
不動産を売却するまでの流れとしては、売り出し前と売り出し後の2つに分けることができます。それぞれの流れについて、ポイントとなる部分を解説します。
売り出し前の流れ
売り出し前の流れとしては、相場調査・査定依頼・不動産会社の選定・不動産会社との契約が挙げられます。どのような点に気をつけるべきかをみていきましょう。
相場調査
不動産の売却を検討するときは、事前にどの程度の金額で売却できるのかを把握しておくことで、不動産会社から提示される査定額や売り出し価格の妥当性を判断できます。インターネットを通じて自分で調べてみることで、相場よりも低い金額で売却してしまうのを防げるでしょう。
査定依頼
同じ物件であっても、不動産会社によって査定額が異なる部分があります。できるだけ多くの会社に査定を依頼して、適正な相場感覚を身につけるようにしましょう。
また、不動産会社から送られてくる査定書には、査定額だけでなくさまざまな情報が記載されています。類似した物件の取引事例や売り出し価格の目安、査定額の根拠などが記されているため、気になる点は遠慮をせずに質問してみましょう。
不動産会社の選定
一口に不動産会社といっても、マンションの売買を得意とする会社だったり、戸建ての売買を強みとしている会社だったりとさまざまです。できるだけ高く売却したいときには、会社の成約実績や担当者の対応などをみて決めるようにしましょう。
不動産会社との契約
仲介での売却を依頼する場合には、不動産会社と媒介契約を結ぶ必要があります。媒介契約は大きく分けて3種類あり、自分の希望に一番合っている契約形態を選んでみましょう。3つの契約方法の詳細については後述します。
注意すべき点としては、担当者から勧められるままに契約を結ばないことです。納得していない状態のまま契約を結んでしまうと、いつまでも物件が売れない状態が続いてしまい、後から悔やむ可能性があるからです。
売り出し後の流れ
売り出し後の流れとしては、内覧対応・売買契約の締結・確定申告が挙げられます。各手続きの注意点を解説します。
内覧対応
物件の購入を検討する方に対して、売主として内覧対応を行う必要があります。住みながらでも内覧に応じることはできるので、内覧日に備えて部屋をきれいにしておきましょう。
きちんと掃除を行い、不用品を片付けるなどしておけば、物件に対する印象を良くすることにつながります。早期の売却につなげるためにも、買主の立場に立って準備を整えておくことが大切です。
売買契約の締結
買主が現れたら、条件面や金額などをすり合わせたうえで、売買契約を締結します。売買契約書は不動産会社が作成してくれますが、契約書に盛り込まれた内容に沿ってその後の手続きが進められるため、内容については細かくチェックをしましょう。
物件に何か不具合がみつかれば、民法に定められた契約不適合責任によって、買主は売主に対して修繕や返金を求めることができます。後のトラブルを招いてしまわないためにも、事前にきちんと説明を行い、売買契約書にどの範囲までの補償を行うのかを明記しておきましょう。
確定申告
物件を売却した翌年の2月中旬から3月中旬にかけて、確定申告を行う必要があります。売却したことで利益が出たときはもちろん、売却損となってしまったときであっても、税金の特例制度によって税負担の軽減につなげられる場合があるでしょう。
申告期限を過ぎてしまうと、加算税や延滞税などのペナルティを課せられる場合があるため、期限内にきちんと確定申告を行うのが重要です。
余裕を持った行動が必要
不動産の売却は一般的に早くても4~6ヶ月程度はかかるといわれています。売却予定の不動産に対するニーズがあまりない場合には、思った以上に時間がかかることもあるため、できるだけ早めに売却活動をスタートして売却後のスケジュールに影響が出ないようにしましょう。
マイホームを売却するときは先に引っ越しを済ませておけば、ハウスクリーニングを行ったり不具合のある箇所の修繕を進めやすくなったりするため、早めに売却できる可能性が高まります。一方で、売却できるまでは新たに移り住んだ物件の家賃がかかるため、売却時期の目途や引っ越しのタイミングを細かくチェックしておきましょう。
売却前に決めておくべきこと
売却前に先に決めておくべきことを整理すれば、スムーズに売却活動を進められるでしょう。どのような点に気をつけるべきかを解説します。
財産配分
不動産を売却した後に離婚することが決まっているケースでは、財産分与の取り決めを行うだけでなく、住宅ローンの残債をどのように負担するかを決めておきましょう。
配偶者との認識にズレが生じないように、きちんと話し合いを行ったうえで書面に残しておくことが大切です。不動産を売却してからでは話し合いの機会を作ること自体が大変な場合もあるため、しっかり向き合ってみましょう。
資金管理
不動産を売却した後に住み替えを決めているのであれば、居住中の住宅を先に売る(売り先行)のか、新居を先に購入する(買い先行)のかを決めておくのが大切です。売り先行の場合は売却代金を先に確保してから新居選びを行えるため、資金繰りに関する負担を軽減できます。
一方、買い先行の場合は新居選びに十分な時間をかけられますが、売却代金を得る前に新居を購入しなければならないため、資金繰りに悩んでしまうことがあるでしょう。売却を希望する時期やその後のライフプランニングを踏まえて、どちらにすべきかを考えてみてください。
リノベーション
古い家を売却するときには、少しでも売却しやすくするためにリノベーションや家の解体に取り組む場合もあります。気をつけておきたい点としては、リノベーションや解体にかかった費用を売り出し価格にそのまま転嫁できるわけではない点です。
リノベーションによって間取りの変更を行ったとしても、必ずしも購入希望者が気に入ってくれるとはかぎりません。むしろ、売り出し価格を下げる原資としてその分の費用を充てるほうが、スムーズな売却につながることもあるでしょう。
まずはそのままの状態で売り出し、しばらく経っても反応がみられない場合にリノベーションや家の解体を検討してみましょう。不動産会社の担当者の意見も交えながら決めてみてください。
不動産会社の選び方と契約時の注意点
不動産売却を成功に導くには、不動産会社選びが重要だといえます。不動産会社を上手に選ぶポイントや優秀な担当者を見極めるコツ、媒介契約の種類などを解説します。
後悔しない不動産会社を選ぶポイント
不動産会社選びで大事なポイントになる部分は、成約実績や得意ジャンル、企業規模などが挙げられます。できるだけ高く不動産を売却したいと考えるならば、売却予定の物件と類似した成約実績のある会社を選んでみましょう。
また、会社によって得意とする物件の種別は違ってくるため、戸建ての売却を希望するなら戸建ての取引に強みを持った会社に依頼をしてみてください。そして、企業規模については大手企業であれば全国に支店があるため、大きなネットワークのなかから買主をみつけてくれる可能性が高くなります。
一方、地域密着型の会社であれば地域の事情に詳しい面があるため、独自のネットワークを駆使して買主を探してくれるはずです。それぞれに良さがあるため、自分にどちらが合っているかを見極めるためにも複数の会社を比較してみましょう。
複数の会社を比べる際は、不動産の一括査定サービスを利用すると便利であり、物件情報などを入力すれば一度に複数の会社に査定依頼を行えます。「おうちクラベル」なら、AI査定ですぐに査定額を知ることができますし、不動産会社から送られてくる査定結果と比較できるので相場を把握するときに役立つはずです。
優秀な担当者の特徴
不動産会社自体の評判は良かったとしても、実際に売却活動を進めてくれるのは担当者です。そのため、売却活動について熱心な提案をしてくれたり、積極的な対応をしてくれたりする担当者を選んだほうが、納得のいく形で売却できるでしょう。
優秀な担当者を見極めるポイントとしては、迅速に対応してくれることや丁寧に質問に答えてくれることなどです。不動産の売却は4~6ヶ月程度はかかるため、しっかりとコミュニケーションが取れる担当者をみつけてみましょう。
専門用語をあまり使わず、費用のかかる部分については根拠を示して説明してくれるかなどもチェックしてみてください。
不動産売却後に必要な手続き
買主に物件を引き渡せば、売却活動自体は終わりますが、売主はその後に確定申告を行う必要があります。確定申告に必要な準備や納税額の計算方法を押さえておきましょう。
確定申告の準備を始めておく
確定申告は物件を売却した翌年の2月中旬から3月中旬にかけて行う必要があります。売却益が出たときは当然ながら行う必要があり、税金の計算方法も押さえておくことが重要です。
確定申告に必要な書類としては、次のものが挙げられます。
- 確定申告書B様式
- 確定申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書のコピー
- 土地や建物の登記事項証明書
物件を売却したときは確定申告がまだ先のように感じていても、いざ申告期限が近づいてくると準備に手間取ることもめずらしくありません。慌てて申告の準備をして損をしてしまわないためにも、余裕のあるうちに確定申告に必要な書類を集め、手順を把握しておきましょう。
納税額を把握しておく
確定申告を行うときに気になるのは、どれくらいの税金を負担することになるのかという点でしょう。事前に確定申告の準備を行っておけば、納税額の大まかな目安を把握できます。
不動産の売却で課せられる譲渡所得税は、物件の所有期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分けられており、それぞれ税率が異なります。短期譲渡所得は物件の所有期間が5年以下となっており、税率は39.63%(所得税・復興特別所得税30.63%+住民税9%)です。
一方、物件の所有期間が5年を超えると長期譲渡所得となり、税率は20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)です。物件の所有期間によって税率が大きく異なるため、売却のタイミングも含めてよく検討しておきましょう。
譲渡所得税の具体的な計算方法としては、次のとおりです。
譲渡所得税=売却代金(譲渡価格)-購入にかかった費用(取得費)-売却にかかった費用(譲渡費用)×税率
売却益がプラスとなった場合でも、確定申告を行うことで税金の特例制度を利用できる場合があります。3,000万円の特別控除を利用すれば、最大で3,000万円までの譲渡所得が非課税となります。
また、売却損となったときでも確定申告を行うことで、給与所得などほかの所得と合算できる特例制度も設けられているので結果として税負担を軽減できる場合があるでしょう。
不動産売却の基本を押さえて、注意点を理解しておこう
不動産を売却するときには、売却に至るまでの全体的な流れや費用、注意点などをきちんと把握しておく必要があります。インターネットを通じて、自分でも相場を把握することが重要であり、できるだけ高値で売却するために複数の会社を比較してみましょう。
「おうちクラベル」を利用すれば、AI査定と不動産会社の査定結果を比較しながら、相場の把握や自分に合った会社選びに役立ちます。まずは査定額を把握するためにも、気軽におうちクラベルを活用してみましょう。
Q.不動産売却までにはどれぐらいの期間が必要ですか?
A.平均的には4~6ヶ月とされていますが、買主がみつからなければ長期化する可能性もあるため、余裕を持った行動を心がける必要があります。
Q.少しでも高く売却するために、何かできることはありますか?
A.信頼できる不動産会社と契約し、内覧時には購入希望者が購入後をイメージしやすい環境作り(ハウスクリーニングなど)を行うことが大事です。購入希望者へ良い印象を与えることができるでしょう。また、値下げ交渉を意識して、最初から少し高めの価格設定をしておく方法もあります。