不動産売却は、さまざまな法律が絡む難易度の高い取引です。売却を成功させるためには、事前にトラブルを回避しながら進めなければなりません。不動産売却を行う方に向けて、16のトラブルと対処法についてご紹介します。
- 1 不動産売却の16のトラブル事例
- 1.1 トラブル①査定時にしつこく営業される
- 1.2 トラブル②価格設定時に査定額が他社より1割以上高い
- 1.3 トラブル③媒介契約時に広告費を請求される
- 1.4 トラブル④媒介契約時に囲い込みをされ、自分の物件の売却活動を進めてくれない
- 1.5 トラブル⑤口頭の約束と売買契約書の内容が違う
- 1.6 トラブル⑥売却活動の内覧中に購入希望者から値下げ交渉され、値下げしてしまった
- 1.7 トラブル⑦売買契約時に購入予定者が契約日当日にキャンセル
- 1.8 トラブル⑧売買契約後、買主が住宅ローンに通らなかった
- 1.9 トラブル⑨不動産引き渡し後に、欠陥が発覚した
- 1.10 トラブル⑩土地の境界線を正確に伝えられていなかった
- 1.11 トラブル⑪仲介手数料を多く取られてしまった
- 1.12 トラブル⑫土地の地下埋蔵物が埋まったまま
- 1.13 トラブル⑬エアコンなどの家具が置かれたまま
- 1.14 トラブル⑭設備が故障していた
- 1.15 トラブル⑮騒音被害に苛まれる
- 1.16 トラブル⑯ペットを飼えると思ったのに、ペットを飼えなかった
- 2 トラブルに遭わないためにできること
- 3 信頼できる不動産会社を選ぶことでトラブルを防止できる
不動産売却の16のトラブル事例
不動産売却は、大きな金額が動く取引です。たとえ小さなミスでも、後々大きなトラブルに発展する恐れがあります。また法律にしたがいながら進める場面では、基本的にミスは許されません。
ここからは、不動産売却における16のトラブル事例と対処法を紹介します。ポイントを押さえておけば、未然にトラブルを防ぐことができるでしょう。
トラブル①査定時にしつこく営業される
不動産売却で最初に行うステップは、査定です。査定とは、売却する不動産がどのくらいで売れるのか不動産会社などの見積もりを取ることを指します。査定でトラブルになりやすいのは、不動産会社によるしつこい営業です。
もちろん、すべての不動産会社がしつこい営業をするわけではありません。しかし不動産会社にとって仲介手数料は貴重な収入源であるため、営業に力が入ってしまうのも事実です。なかには、頻繁に電話をかけてきたり高すぎる査定額を提示してきたり、という強引な営業スタイルの不動産会社もいます。あまりにもしつこい場合は、毅然とした態度で断ることも重要です。
また1社だけに査定を依頼するのではなく、複数の不動産会社に依頼するのもポイントです。おうちクラベルでは、複数の不動産会社に一括査定を依頼できるため、手間がかかりません。複数の査定結果を比較すると、不動産の適正価格が見えてくるでしょう。
トラブル②価格設定時に査定額が他社より1割以上高い
査定が完了したらその結果を踏まえて、価格設定を行います。価格は売主が自由に決められますが、売却を成功させるためには不動産の適正価格を見極めなければなりません。高値で売れるのが理想的ですが、価格設定が高すぎるとなかなか売れないというリスクもあります。
とくに、他社よりも1割以上高い査定額を出してくる不動産会社には注意しなければなりません。不動産の価格は高額であるため、1割の差が百万円単位になることもあります。単純に一番高い査定結果を採用するのではなく、どのような根拠でその査定額を出しているのか細かく確認しましょう。
トラブル③媒介契約時に広告費を請求される
不動産会社のなかには、仲介手数料とは別に広告費を請求してくるところもあります。宅建業法上、広告費は仲介手数料に含まれているのが一般的です。しかし、売主からの依頼により、新聞広告など多額の費用がかかる特別な広告を掲載する場合は、仲介手数料とは別に広告費を請求される可能性があります。こちらから依頼していないのに広告費を別途請求してくる場合は、宅建業法違反の可能性もあるため注意しましょう。
広告の掲載は、媒介契約締結後に行うのが鉄則です。しかし媒介契約を結ぶ前に、広告を掲載し広告費を請求してくる不動産会社もいます。不動産の広告は、希望価格や売却時期など売主と不動産会社の間で入念にすり合わせたうえで掲載する流れです。
トラブル④媒介契約時に囲い込みをされ、自分の物件の売却活動を進めてくれない
媒介契約時の囲い込みも大きな問題になっています。囲い込みとは、売主から仲介を依頼された不動産会社が物件を独占して他社に紹介しない行為です。
なぜ囲い込みを行う不動産会社が存在するのでしょうか。不動産会社は、売主と買主両方の仲介を成立させれば、「両手仲介」といって2倍の仲介手数料を受け取ることができます。ほかの不動産会社に物件を紹介しないのは、自社で両手仲介を獲得するためという身勝手な理由です。
囲い込みをされると、相場より安く売られてしまうリスクもあります。ほかの不動産会社からの情報が一切入ってこないため、安く売られているという事実に売主も気づくことができません。囲い込みが行われやすいのは、専属専任媒介契約もしくは専任媒介契約を締結したときです。信頼できない不動産会社とは契約を結ばないように注意しましょう。
トラブル⑤口頭の約束と売買契約書の内容が違う
不動産会社から口頭で説明されていた内容と、契約書の内容が異なるというトラブルも発生しています。契約書のほうが売主に不利な内容になっていると、大きな損失につながりかねません。後で揉めるのを避けるために、不動産会社とのやりとりは必ず書面に残しておきましょう。
また契約書や重要事項説明書には、不動産会社から直接説明を受けていない内容が記載されている可能性があります。契約書に捺印してしまうと、「こんな契約内容になっているなんて知らなかった」「一言も聞いていない」では済まされません。細部まで、しっかりと読み込むことが大切です。
また、契約書と重要事項説明書には特約条項が追記されていることがあります。売主と買主の間で取り決めたことなどが記載されているため、忘れずにチェックしましょう。
トラブル⑥売却活動の内覧中に購入希望者から値下げ交渉され、値下げしてしまった
売却活動の一つである内覧は、購入希望者に物件を直接みてもらい、魅力を伝える絶好の機会です。一般的に売主とその仲介会社、購入希望者とその仲介会社が一堂に会して内覧が行われます。当日は物件に関する質問がほとんどですが、稀に値下げ交渉など踏み込んだ質問が飛んでくることもあるため、事前に準備しておきましょう。
内覧中に購入希望者から値下げ交渉をされ、勢いにのまれて値下げしてしまったというケースもあります。その場では値下げを承諾してしまったものの、後で値下げを断ってトラブルになることも少なくありません。「内覧中の値下げ交渉は避ける」「値下げ交渉は不動産会社を通してもらう」など、内覧前に不動産会社とすり合わせておくと安心です。
トラブル⑦売買契約時に購入予定者が契約日当日にキャンセル
契約を結ぶ当日になって、購入予定者からキャンセルを言い渡されたという事例もあります。本来であれば売主と買主双方が契約書や重要事項説明書、管理規約などを理解したうえで、契約当日を迎えなければなりません。しかし購入予定者が内容を読み込まないまま契約当日を迎えてしまうと、重要事項説明の際に「思っていた内容と違うから契約を白紙に戻したい」という事態に陥ってしまうのです。
このようなトラブルを防ぐためには、不動産会社を通して購入予定者と丁寧にコミュニケーションを取ることが重要になります。物件に関する情報を早めに展開したり、買主に書面の確認を依頼したりするなどの対策が必要です。
トラブル⑧売買契約後、買主が住宅ローンに通らなかった
買主が住宅ローンの審査に通らず、一度締結した契約が白紙になるというトラブルもあります。多くの買主は住宅ローンを利用して売買代金を支払うため、このようなトラブルは珍しくありません。トラブルが起きる原因は、金融機関による住宅ローンの本審査が売買契約締結後に行われるためです。
住宅ローンが借りられない状態で売買代金を支払うことは、買主にとって大きな負担です。このような問題を防ぐために、多くの売買契約では住宅ローン特約がつけられています。これは、ローンを借りれなかった場合は契約を解除できるという約定です。住宅ローン特約があると、違約金や手付金の返還を請求することは難しいです。まずは住宅ローン特約の有無を確認しましょう。
そのほかの対処方法として、住宅ローンの事前審査の結果などを共有してもらい、突然の契約キャンセルを防ぐことも重要です。
トラブル⑨不動産引き渡し後に、欠陥が発覚した
不動産を引き渡した後に、土地や建物の欠陥が発覚しトラブルになるケースもあります。売主は、買主に不動産を引き渡す義務があり、不動産の種類や品質、数量は契約内容に適合していなければなりません。もし契約内容に記載のない欠陥などが発覚した場合、売主は買主から修理や損害賠償、代金減額などを請求される可能性があります。
契約不適合のトラブルとして多いのが、水道配管の経年劣化による水漏れやシロアリ被害など、普段は目に見えない場所の欠陥です。気になることがあるのにも関わらず、「大きな欠陥ではない」と自己判断することはやめましょう。些細なことでも不動産会社に相談し、契約書などに書き残しておくことが肝心です。
トラブル⑩土地の境界線を正確に伝えられていなかった
不動産売却において、土地の境界が問題になるケースも多いです。境界問題の多くは、登記簿上の公簿面積と、測量による実測面積が異なることで発覚します。境界が曖昧なまま売却してしまうと、新しい買主が隣地所有者から土地の返還を請求されるなどのトラブルになりかねません。売主は土地の境界線を明らかにしてから、不動産売却を進めましょう。
境界が明らかであることを証明する書類が、境界確認書です。現地で隣地所有者と土地家屋調査士とともに、境界の位置を確認し双方合意したうえで境界確認書を作成します。既にトラブルが深刻化し、隣地所有者の話し合いも難しい場合は訴訟を起こす方法がありますが、時間とお金がかかります。早期解決を目指す場合は、一方の土地所有者だけで申請できる「筆界特定制度」もあるため、活用してみるのも手です。
トラブル⑪仲介手数料を多く取られてしまった
不動産会社に成功報酬として支払う仲介手数料は、法律によって上限額が決められています。しかし不動産会社から請求されるままに上限額を超える仲介手数料を支払ってしまい、トラブルになった事例は少なくありません。
被害を避けるためには、仲介手数料の仕組みを理解しておく必要があります。仲介手数料の上限額は売買価格に応じて計算式が異なり、速算式は次の通りです。
売買価格 | 仲介手数料(税別) |
---|---|
200万円以下 | 売買価格×5% |
200万円超400万円以下 | 売買価格×4%+2万円 |
400万円超 | 売買価格×3%+6万円 |
仲介手数料は、この上限額を超えない範囲で売主と不動産会社の双方が合意した金額に設定します。
トラブル⑫土地の地下埋蔵物が埋まったまま
売却後に地中から埋設物が見つかり、処分を巡ってトラブルになる可能性もあります。地中埋蔵物は、コンクリートガラや杭、井戸、浄化槽、地下室などです。主な原因としては、以前建っていた建物の解体工事で出た廃棄物を適切に処分しなかったことが考えられます。地中埋設物の存在を売買契約前に発見するのは難しく、引き渡し後の解体工事や新築工事で発覚するケースがほとんどです。
地中埋設物が見つかると売主の契約不適合責任を問われ、損害賠償や地中埋設物の撤去費用を請求されることもあります。その土地に以前何が建てられていたか調べたり、地中埋設物が出た場合の費用負担を決めておいたり、事前に対策を打っておくと良いでしょう。
トラブル⑬エアコンなどの家具が置かれたまま
家具・什器・設備などの撤去や残置を巡って、トラブルになることもあります。売却する不動産に残置するものは、あらかじめ売主と買主の双方で話し合いのうえ決定します。話し合いとは異なる状態で引き渡した場合、買主から撤去費用などを請求されることがあるため注意しましょう。
トラブルを防ぐためには、引き渡し予定の家具・什器・設備の一覧表を作成し、撤去するものと残置するものを分類する方法があります。一覧表をみれば引き渡すものが一目瞭然になるため、売主と買主の間での認識共有に役立つでしょう。
トラブル⑭設備が故障していた
不動産売却でトラブルになりやすいのが、引き渡し後の設備不良です。買主から新品への交換費用や修理費用を支払うよう求められる可能性があります。
このようなトラブルを未然に防止するためには、付帯設備表に故障や不具合に関するチェック項目を設け、販売前に不動産会社と一緒に一つずつ動作確認をする方法が有効です。また引き渡し前には買主にも立ち会ってもらい、最終的な動作確認を行いましょう。
トラブル⑮騒音被害に苛まれる
物件を引き渡した後、買主が騒音被害を訴えることもあります。線路・道路の周辺エリアや店舗と隣接している不動産を売却するときは、騒音の可能性に留意すべきです。売主にとっては気にならなかった騒音も、買主にとってはストレスに感じることもあるでしょう。また、引き渡し後に買主が隣地住民から「子どもの声がうるさい」などと苦情をいわれ、居住継続が難しくなることもあります。
このように不動産本体には問題がないものの周辺環境に問題があることを「環境的瑕疵」といいます。環境的瑕疵は騒音や眺望阻害などさまざまです。環境的瑕疵がある場合は、買主への報告と契約書への記載を忘れないようにしましょう。
トラブル⑯ペットを飼えると思ったのに、ペットを飼えなかった
マンション売却では「ペットを飼えると思っていたのに、飼えないといわれた」というペット飼育可否に関するトラブルもあります。売主自身がペットを飼っていないと忘れがちなポイントですが、ペットと暮らす買主にとっては重大な問題です。
このような問題のほとんどは、ペットの飼育ルールについての説明不足が原因になっています。契約前にマンションにおけるペット飼育ルールを確認し、購入検討者に説明しなければなりません。ペット飼育ルールは、マンションの管理規約や使用細則などに記載されています。飼育できるペットの種類や大きさ、飼育方法など細かく規定されていることがあるため、しっかりと確認しておきましょう。
トラブルに遭わないためにできること
ここまで、不動産売却で発生しうる16のトラブルと対処法をご紹介しました。ご覧いただくとわかるように、不動産を売却する際はトラブルがつきものです。小さなトラブルがこじれて訴訟に発展し、時間やお金を費やすのは避けたいですよね。
そもそもトラブルに遭遇しないようにするためには、どうすれば良いのでしょうか。最も有効な手段は、「信頼できる不動産会社を選ぶこと」と「契約不適合責任の知識を深めること」の2つです。ひとつずつ詳しくみていきましょう。
信頼できる不動産会社を選ぶ
不動産売却の成否は、どの不動産会社に仲介を依頼しどの担当者を選ぶかで決まります。担当者が優秀であるほど、ミスをなくしトラブルを防ぐことができるでしょう。反対に経験や実績が少ない担当者では、些細なミスが大きなトラブルに発展する恐れがあります。
優秀な担当者を見極めるポイントは、次の5つです。
- 連絡が小まめで丁寧
- 売主と買主の橋渡しが上手
- 先を予測する能力が高い
- 売買仲介の知識と実績が豊富
- 提案力が高い
大切な不動産の売却を任せることになるため、人柄なども含めて信頼できる担当者を選びましょう。
契約不適合責任の知識を深める
売主と買主の間でトラブルになりやすいのが、引き渡した不動産の欠陥や不具合です。不動産会社からもサポートを受けられますが、欠陥や不具合の詳細については売主しか知りません。
したがって、売主は契約不適合責任に関する知識を深めておく必要があります。事前に準備しておけば、引き渡し後のトラブルを減らせるでしょう。
信頼できる不動産会社を選ぶことでトラブルを防止できる
不動産売却の一連の流れのなかで、不動産会社や売主とのトラブルが発生しないよう注意しなければなりません。今回ご紹介した16のトラブルを共通して防止できるのは、適切な不動産会社選びと契約不適合責任の理解です。おうちクラベルでは、複数の不動産会社に一括査定を依頼できます。信頼できる不動産会社を見つけることができるでしょう。
Q.信頼できる不動産会社はどうやって見つけるの?
A.結論、「おうちクラベル」で一括査定依頼をしてみましょう。おうちクラベルを利用すると、いろいろな業者を知ることができ、選ぶ目を養えます。いくつかの不動産会社に相談し、比較してみましょう。
Q.不動産売却でトラブルにあったときにだれかに相談したい!
A.結論、相談できる窓口はいくつもあります。列挙すると、契約した不動産会社の責任者はもちろん、不動産会社が所属する団体相談窓口や都道府県庁の相談窓口、国土交通省各地方整備局や国民生活センターに相談できます。