不動産の瑕疵担保責任とは何か、疑問に思っている方も多いでしょう。
瑕疵担保責任とは「物件引き渡し後に判明した瑕疵に対し売主が負う責任」を意味します。よって、特にこれから不動産の売却や購入を考えている方は、瑕疵担保に含まれる内容や期間を知っておくことが重要です。
また、2020年4月の民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に名称が変わり、主に2つの点が変更されました。 そこで本記事では瑕疵担保責任の基礎知識や、民法改正による変更点について、詳しく解説します。
瑕疵担保責任(現名称:契約不適合責任)
契約不適合責任に名称が変わりましたが、本質的な内容は変わっていないため、基本的な内容を以下に説明します。
不動産における瑕疵とは?
「瑕疵」とは売主が買主に引き渡した目的物の欠陥です。不動産取引における瑕疵とは、建物の欠陥を意味しています。
瑕疵はその性質により、以下の3つに大別されます。
- 物理的瑕疵:建物の構造や設備の欠陥により本来の機能が果たせていない状態
- 心理的瑕疵:建物の利用者が心理的に抵抗を抱きやすい環境にある状態
- 法律的瑕疵:建物に関係する法律の条件を満たしていない状態
また、物理的瑕疵のなかには、実際に目に見える瑕疵だけではなく、建物内の目に見えない部分も「隠れた瑕疵」として瑕疵とみなされます。
瑕疵に含まれる内容
不動産における瑕疵には、具体的にどんなものがあるか、考えていきましょう。前述した3種類の瑕疵の代表的な事例を以下にまとめます。
【物理的瑕疵】
- 外壁や屋根からの雨漏り
- シロアリなどの虫食い
- 地中埋設物の存在や土壌汚染
【心理的瑕疵】
- 物件内で過去に自殺・殺人などの事件が起こっている
- 物件の周辺で自殺・殺人などの事件が起こっている
- 物件の周辺に廃棄物処理場、火葬場などの嫌悪施設がある
【法律的瑕疵】
- 建築基準法で定められた容積率・建ぺい率を満たしていない
- 消防法で定められた消防設備(防火扉、スプリンクラーなど)の設置義務を満たしていない
- 都市計画法で定められた区域区分の規定を満たしていない
瑕疵担保責任の期間
瑕疵担保責任を追及できる期間は、民法では「買主が瑕疵を発見してから1年以内」と定められています。しかし、この規定をそのまま適用すると、売主にとってあまりに重い負担となるため、契約上で特約を結ぶのが一般的です。
宅建業法により責任義務期間は「物件の引き渡し日から2年以上」とすると定められているため、不動産会社による売買では、瑕疵担保責任の期間を引き渡しから2年以内として売買契約を結ぶケースが多くなっています。
さらに新築の物件は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって、基本構造部分に関わる瑕疵担保責任は10年と定められているのも覚えておく必要があります。
なお、宅建業法の制約を受けない個人間売買においては、これより短い期間である3ヶ月とするのが一般的です。
瑕疵担保責任を問われた場合
瑕疵担保責任には、損害賠償、補修・減額、契約解除の3つのケースが考えられます。それぞれの特徴や利用できる条件をよく掴んでおきましょう、
損害賠償請求
買主が売主に請求できる損害賠償の内容としては、契約を締結するまでに支払っていた登記費用、引越し費用などの諸費用、購入した不動産を転売して得る利益などがあげられます。
補修・減額請求
建物に瑕疵があり修繕が必要な場合は、補修費用の請求ができます。また、修繕できない欠陥があった場合は、物件の購入費用の一部を減額請求できるようになっています。
契約解除
売主が上記の請求に応じない場合は契約解除できます。契約解除を行う場合、基本的には事前勧告する必要がありますが、状況によっては勧告なしで契約の解除が行われることもあります。
ただし、新法(契約不適合)においては、補修や減額請求も損害賠償請求や契約解除と合わせて請求できるようになっていることを把握しておきましょう。
民法改正(2020年4月)による変更点
民法改正による変更では、基本的には買主をより強く保護する内容になっているため、不動産売却を考えている売主は、大きな失敗をしないためにも、よく理解しておく必要があります。
瑕疵担保から契約不適合へ名称変更
まず瑕疵担保責任の名称が契約不適合責任へ変更になりました。前提となる考え方としては、以下のような変更があります。
- 瑕疵担保責任:売買時点の「隠れた瑕疵」に対して責任を追及できる
- 契約不適合責任:「売買契約書に書かれていなかった瑕疵」に対して責任を追求できる
買主が請求できる権利
契約不適合責任では買主が請求できる権利が増えています。従来の瑕疵担保責任では、買主が売主に請求できるのは「損害賠償」と「契約解除」の2つのみでした。対して、契約不適合責任では新たに「追完請求」と「代金減額請求」の2つが加わります。
瑕疵担保責任の改正後の変更点をしっかりと把握しておきましょう
不動産を売却する方も購入する方も、瑕疵担保の内容や民法改正による変更点を把握しておくのは非常に重要です。不動産取引では一度に大きな金額が動く場合が多いため、取引後に瑕疵担保を巡るトラブルが発生すると、訴訟にまで発展する可能性も考えられます。
こうしたトラブルを防止するためには、売主と買主の双方が瑕疵担保の内容について理解を深めておくことが大切です。
特に物件の売却を検討中の方は、民法改正によって売主側が以前より厳しい責任を負う状況になったことを、よく理解してから売却活動を行いましょう。
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Q.瑕疵って何ですか?瑕疵担保責任とはどんな責任を意味していますか?
A.「瑕疵」とは売主が買主に引き渡した目的物に生じていた欠陥・不具合のことで、「瑕疵担保責任」とは瑕疵に対して売主が責任をもつことを意味しています。
Q.2020年の民法改正の影響って何があるんですか?
A.「瑕疵担保責任」の名称が「契約不適合責任」へ変更になりました。従来は売買時点の「隠れた瑕疵」に対して責任を追及できるというものでしたが、契約不適合責任では「その瑕疵が売買契約書に書かれていたかどうか」が焦点となります。