家を売って住み替えるには、売却と購入双方の手続きが必要となります。それぞれ手順が多く、知識が求められることから、手続きの方法や住宅ローンに関する不安を抱く方も多いでしょう。
自宅の売却価格やローン残高、自己資金を整理したうえで、無理のない計画を立てることが何より重要です。
そこで今回は、家を売って住み替える手順を詳しく解説します。費用や税金、後悔しないポイントも紹介するので、住み替えを検討している人はぜひ参考にしてみてください。
- 1 1.家を売って住み替える際に重要なのは「ローン残高」と「売却価格」
- 2 2.家を売って住み替える2つの方法と流れを表で解説
- 3 3.家を「売り先行」で住み替えるメリット・デメリット
- 4 4.家を「売り先行」で住み替えるほうがよいケース
- 5 5.家を「買い先行」で住み替えるメリット・デメリット
- 6 6.家を「買い先行」で住み替えるほうがよいケース
- 7 7.家を売って住み替える資金面の問題を解決する方法
- 8 8.家や土地の売却・購入に共通して必要な費用
- 9 9.家を売る際に必要な費用
- 10 10.家を買う際に必要な費用
- 11 11.家を売って住み替える際に活用できる控除や軽減措置
- 12 12.マイホームの住み替えで後悔しないためのポイント
- 13 13.家を売って住み替える第一歩はマイホームの査定から始める
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1.家を売って住み替える際に重要なのは「ローン残高」と「売却価格」
住み替えの際に重要な「ローン残高」と「売却価格」について解説します。
1-1.ローン残高が残る家の売却は難しい
家を売った資金でローンを完済できない状態を「オーバーローン」と呼びます。家を売っても借入金が残ってしまうため、オーバーローンの状態では、金融機関の担保となる抵当権を抹消することができません。
抵当権が残っていると、債務者の滞納や債務整理のリスクが伴うため、買主を見つけるのが困難になります。
このため、家を売って住み替えるためには、「売却によって得られる資金」や「自己資金」でローンを完済するのが一般的です。ローンを完済すれば抵当権が抹消されるため、新たな買主を見つけるハードルが下がります。
またローンを完済しない場合には、後述する「住み替えローン」や「ダブルローン」などで対応する方法もあります。
1-2.査定価格=売却価格ではない
前述の通り、住み替えにはマイホームの売却価格が重要になります。住み替えを検討している場合には、まずは不動産会社に売却価格を査定してもらいましょう。
査定価格は、3ヶ月程度で売却できると想定される価格が割り出されます。不動産仲介業者が持っているデータや近隣の事例などから算出されるのが一般的です。
注意が必要なのは、必ずしも査定価格で売却できるわけではない点です。不動産の売却には様々な要素が絡みます。不動産会社によっても異なりますし、買主からの値下げ交渉によって変わることも珍しくありません。
査定価格はあくまで基準として、ある程度の価格幅を持たせて売却を目指すことが大切です。
まずは不動産会社に査定を依頼して、今の不動産がどれくらいの売却価格になるか目安を把握しておきましょう。
不動産一括査定サイトのおうちクラベルでは、簡単に無料で複数の不動産会社へ査定を依頼することができます。
2.家を売って住み替える2つの方法と流れを表で解説
家を売却する際のポイントとなる「売り先行」と「買い先行」についてそれぞれの流れを解説します。
2-1.「売り先行」と「買い先行」
「売り先行」とは、今住んでいる家を売ってから新しい家を購入する方法です。一方、「買い先行」はその逆で、新しい家を購入してから今住んでいる家を売る方法を指します。
家の売却と購入のタイミングを合わせて同時進行するのが理想的ですが、実際には「住宅ローンが通らなかった」「新居の建築工事が予定通りに進まない」などのトラブルで前後することも珍しくありません。
初めから「売り先行」「買い先行」のいずれかのつもりで、住み替えを進めるのが良いでしょう。
2-2.売り先行の流れ
売り先行の一般的な流れは以下の通りです。
- 今住んでいる家の査定依頼
- 不動産会社と契約、仮住まいへの引越し準備
- 売却活動スタート
- 売買契約締結・引渡し、仮住まいへ引越し
- 新しい家を探す
- 購入契約を締結、新居へ引越し
売り先行の場合、新居に引っ越す前に一旦仮住まいへ引っ越す必要があるため、余計な費用が必要になります。
引越しの準備をしながら、今住んでいる家の売却活動を行い、売れた後に新しい家を探すのが一般的な流れです。
2-3.買い先行の流れ
買い先行の一般的な流れは以下の通りです。
- 新しい家を探す
- 購入契約を締結、新居へ引越し
- 前の家の査定依頼
- 不動産会社と契約
- 売却活動スタート
- 売買契約の締結・引渡し
新しい家に引っ越した後に、以前住んでいた家の売却活動を始めるのが一般的な流れです。
買い先行の場合、現在の住宅ローンの残債や自己資金によっては契約が難しいケースがあります。
3.家を「売り先行」で住み替えるメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
売り先行 |
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売り先行の最大のメリットは、売却益をそのまま住み替え費用にできる点です。今住んでいる家の売却価格をまるごと新居の購入費用に充てられるので、余裕資金が無くても住み替えを検討しやすいでしょう。
売却価格に応じた無理のない範囲の新居を検討できるので、資金面のリスクを回避できます。また、売却に時間をかけられるのも魅力な点。売り急ぐ必要がないため、ゆっくりと買主を探すことができます。
一方、仮住まいへ引越しする手間と費用が掛かるのはデメリットです。新しい家を購入するまでは一旦仮住まいに引っ越さなければならないので、余計なコストが発生します。また、売却価格が査定額を下回った場合、当初の計画が崩れる可能性もあるので注意が必要です。
4.家を「売り先行」で住み替えるほうがよいケース
売り先行は、売却益をそのまま住み替え費用に活用できるため、自己資金が少ない人に向いています。新居のためにわざわざ資金を用意する必要がなく、「そもそも資金的に余裕がないけれど住み替えをしたい」と検討している人におすすめの方法です。
ローンを現在も返済しているような場合にも、売り先行を選ぶと良いでしょう。また、時間に余裕がある人も売り先行がおすすめ。特に売り急ぐ必要が無いのであれば、高値で売却するチャンスを待つことができます。
5.家を「買い先行」で住み替えるメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
買い先行 |
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|
買い先行の最大のメリットは、余裕を持って新居探しや引越しができる点です。これから新たに住む家探しに時間をかけられるので、納得のいく住み替えができるでしょう。
売り先行のように、一旦仮住まいに引っ越す必要がなく、まず新居に落ち着いてから以前の家を売却、という手順を踏むことができます。
一方、資金計画が立てづらいのはデメリットといえます。先に新居を探す流れになるので、購入に伴う費用の確保が必要となり、まとまった自己資金がないと契約自体が難しいケースもあります。
以前の家がいくらで売却できるか決まっていない段階で新居を購入することになるので、資金計画が立てづらい側面もあるでしょう。資金が足りない場合にはダブルローンになる可能性もあり、家が思うように売れないリスクもあります。
6.家を「買い先行」で住み替えるほうがよいケース
買い先行は、自己資金に余裕がある人におすすめです。先に新居を購入できるだけの余裕がある人や、ダブルローンのリスクを許容できるような人に向いています。ローンの残債がない場合も新居を購入しやすいでしょう。
また、先に理想の新居を探すことに注力できるため、新居にこだわりがあって時間をかけたい人にもおすすめの方法といえます。
売り先行でも買い先行でも、まずは住宅の売却金額を査定してもらわなければ、今後の計画を立てることができません。家の住み替えとなると、計画を立てるだけでも時間がかかります。
今すぐ売却する予定はない場合でも、一旦査定を受けて今住んでいる家の売却相場を把握しておくことがおすすめです。おうちクラベルの一括査定なら、簡単に今住んでいる家の査定価格を把握できます。
7.家を売って住み替える資金面の問題を解決する方法
住み替えに関して資金面で様々な不安を抱える人も多いことでしょう。ここでは、そんな住み替えに関する資金面での問題を解決する方法を紹介します。
7-1.売却後にローンが残る場合は「住み替えローン」を利用する
「住み替えローン」とは、今住んでいる家のローンの残債と新居の購入費用をまとめて借りることができるローンのことです。
前述の通り、ローンの残債があると抵当権が抹消されないため一般的に売却することが難しいですが、住み替えローンを利用すればその問題を解決できます。なお、住み替えローンは売却してもローンが残る場合にのみ利用が可能です。
例えば、今住んでいる家を売ったときのローンの残債が1,000万円で、新居の購入価格が3,000万円だとしましょう。住み替えローンは、ローンの残債分と購入費用をまとめて借りる仕組みなので、合わせて4,000万円のローンに借り換えたことになります。
7-1-1.住み替えローンの注意点
住み替えローンは、残債分と購入費用をまとめて借りる仕組みで、残債があっても住み替えができる手段の一つです。手元資金を使わなくて済む点が魅力ですが、ローンとしては新居の購入費用がそのまま現在の残債に上乗せされる形になります。
このため、金融機関の審査が厳しくなることは覚悟しなくてはなりません。これまで支払の滞納が無いことや、今後安定した収入が期待できる属性などが重要視されます。また、月々の返済負担額はこれまで以上に膨らむことになるため、無理のない資金計画を立てることが重要です。
7-2.期間に余裕を持って売却・購入したい場合は「ダブルローン」を利用する
「ダブルローン」とは、住み替えにあたり、今住んでいる家のローンと新たに住む家のローンを二重で組むことをいいます。2つのローンを同時並行で返済していくため、当然負担は大きくなりますが、住み替えの際に活用できる選択肢の一つです。
新居の購入費用を今住んでいる家の売却価格に頼らなくて良いため、売却や購入のタイミングを気にしなくてよくなります。また、仮住まいへ引っ越す必要もなくなるので、余計な手間やコストもカットできるでしょう。
7-2-1.ダブルローンの注意点
ダブルローンは、両方のローンを返済することになるため、資金計画が重要になります。特に自己資金に余裕がない場合は、早期売却を迫られることになるでしょう。
金融機関が定めた期間内に売却先が決まらない場合、先に組んだ住宅ローンが「フリーローン」に切り替えられる可能性もあります。フリーローンとは、用途が限られていない代わりに金利が高いローンなので、返済額が増えることになります。
また、ダブルローンを扱う金融機関がそもそも少ないので、利用を検討している場合には事前に銀行へ確認するようにしましょう。審査も厳しいため早めに確認して資金計画を立てるのが理想です。
7-3.住宅購入の諸経費が足りない場合は「つなぎ融資」を利用する
「つなぎ融資」とは、住宅購入に必要な諸経費をまかなうことを目的としたローンのことで、住宅の購入にあたって一時的に借り入れるのが一般的です。注文住宅など建築前の状態で契約する場合には、完成するまでの間に「土地代金」「着工金」「上棟金」などの諸経費が発生します。
しかし住宅ローンは、完成した不動産が「売主から買主に引き渡される際」に融資がなされるため、諸経費の支払いを自己資金で賄う必要があります。こうしたあらゆる費用を自己資金でまかなえないときに、利用するのがつなぎ融資というわけです。
7-3-1.つなぎ融資の注意点
つなぎ融資は、一般的な住宅ローンに比べると割高に設定されているのが普通です。建物の引渡しまでに、どのタイミングでどれくらいの費用がかかるのか、借入条件も含め事前に確認しておき、資金計画を立てるようにしましょう。
また、つなぎ融資は住宅ローンの融資実行時に完済しなくてはなりません。一般的にはつなぎ融資の完済分も含めて住宅ローンの融資を通すので心配ありませんが、住宅の完成が長引いてしまうと利息が増えてしまう点には注意が必要です。
8.家や土地の売却・購入に共通して必要な費用
家や土地の売却や購入にあたってかかる諸経費を把握しておくことはとても重要です。ここでは、売却・購入それぞれに必要な項目と金額を解説していきます。まずは、売却・購入に共通して必要な項目から見ていきましょう。
8-1.仲介手数料
仲介手数料とは、家や土地の売買金額に応じて不動産会社に支払う手数料のことで、成功報酬とも言われます。契約が成立した場合にのみ支払えば良いもので、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限額は法律で規定されています。なお、特別な広告など通常の仲介業務の範囲外の費用については別途支払う必要があるので注意が必要です。
以下は、仲介手数料の速算表です。
売買金額 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下 | 5%+消費税 |
200万円超400万円以下 | 4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 3%+6万円+消費税 |
例えば、1,000万円の土地を売買した場合、1,000万円×3%+6万円で、36万円と消費税が不動産会社に支払う仲介手数料ということになります。
8-2.印紙税
印紙税とは、契約書や領収書などに課税される税金で、不動産売買にあたり作成される契約書にも発生します。
不動産売買契約書をはじめ、土地の賃貸借契約書などにもかかりますが、建物賃貸借契約書や不動産媒介契約書は課税文書に該当しません。不動産の契約代金1万円以上から、金額に応じて以下の印紙税がかかります。なお、印紙税額は2024年3月31日まで、軽減措置の適用対象です。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
500万円超1千万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1千万円超5千万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5千万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
9.家を売る際に必要な費用
家を売る際に必要な費用は、前述した仲介手数料、印紙税を含めて「売却額の5~7%」程度が一般的です。売却価格がまるごと手元に入るわけではないことを理解しておきましょう。ここでは、家を売る際に必要な費用についてそれぞれの項目を解説します。
9-1.抵当権の抹消費用
抵当権とは、住宅ローンを借りる際に金融機関などが設定する権利のことで、いわゆる担保のことです。抵当権を持つ金融機関は住宅ローンの回収ができなくなると、家や土地を競売にかけて資金を回収することができます。
住宅ローンを完済して家を売る際には、この抵当権を抹消するために費用が掛かります。抵当権抹消費用としては、不動産の数(家と土地は別カウント)×1,000円の登録免許税と、司法書士への手数料として15,000~20,000円前後が必要です。
9-2.住宅ローンの返済手数料
住宅ローンの返済手数料は、繰り上げ返済をする際に発生します。繰り上げ返済とは、毎月の決められた返済とは別にまとまった額を返済することをいい、家を売る際に残りのローンを完済する場合にも行うのが一般的です。
返済手数料は、店頭、電話(テレビ電話)、インターネットなど手続き方法によって異なります。インターネットでの手続きが最も安く設定されていることがほとんどです。金融機関によっては返済手数料無料のところもあります。
手続き方法 | 手数料の相場 |
店頭 | 11,000~55,000円 |
電話 | 11,000~33,000円 |
インターネット | 5,500~16,500円 |
9-3.譲渡所得税・住民税
譲渡所得税・住民税は、譲渡所得が発生した場合にかかる税金です。譲渡所得は、「収入金額ー取得費ー譲渡費用」で算出できます。収入金額とは、不動産を売った時に得たお金全てのことで、取得費とは、その不動産を買ったときにかかったお金のことです。
譲渡費用とは、不動産を売った時にかかった費用のこと。つまり、買ったときよりも高く売れたかどうか、が譲渡所得のポイントになります。
譲渡所得に対しては、決められた税率をかけて税額を決定します。所有期間によって税率が異なり、5年超と長く保有している不動産は税率が安くなります。
種類 | 所有期間 | 税率 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
なお、後述しますが、3,000万円特別控除を適用する場合には、3,000万円以下の譲渡所得であれば税金はかかりません。
9-4.その他費用
抵当権の抹消費用、住宅ローンの返済手数料、譲渡所得税以外にも様々な費用が必要になることがあります。家を売る際の状態や規模によっても金額が異なるので、状況に応じて予め見込んでおく必要があります。
種類 | 概要 | 費用の相場 |
ハウスクリーニング代 | 売却に向け家をきれいに掃除しておきたい場合に必要。相場は間取りによる。 | 数万円~数十万円程度 |
測量費用 | 隣地との境界が定まっていない不動産を売却する場合に必要。 | 50~100万円程度 |
解体費用 | 更地にして売却する場合に必要。 | 坪単価25,000~70,000円程度 |
10.家を買う際に必要な費用
家を購入する際に必要な費用は、前述した仲介手数料、印紙税を含めて「売却額の5~8%」程度かかります。購入価格に加えてこれらのコストを考慮しておく必要があるでしょう。ここでは、家を買う際に必要な費用についてそれぞれの項目を解説します。
10-1.住宅ローンに関する費用
住宅ローンに関する費用として、融資に伴う費用や物件調査手数料などが挙げられます。住宅ローンの融資事務手数料は、「借入金額×2.2%(税込)」が一般的ですが、金融機関によって異なるので事前に確認しておきましょう。
事務手数料が安い場合でも、保証料が必要となるケースもあるので、合わせて金額を把握しておくことが大切です。物件調査手数料は、融資基準への適合を調査する際の手数料のことで、4~8万円程度が相場になっています。
10-2.保険料に関する費用
家を買う際には、火災保険料や団体信用生命保険などに加入する必要があるため、保険料の支払いが発生します。火災保険には、火災や水災などで補償される基本的なものに加え、落下や水濡れも補償の対象となるものなど種類が様々あり、不動産の価値によっても保険料が異なるのが普通です。
年払いや一括払いなども選択できます。また、地震保険も付帯させる場合はさらに保険料が高くなるので、自身が補償したい内容を確認しましょう。
団体信用生命保険は、契約者に万が一のことがあった際に、その後のローンの返済がなくなる仕組みを持つ保険で、住宅ローンの金利に含まれるのが一般的です。
10-3.不動産取得税
不動産取得税は、文字通り、土地や建物を購入した時に必要な税金です。「固定資産税評価額×標準税率」で算出されます。
固定資産税評価額は、実際に不動産を購入した価格とは異なるので注意が必要です。一般的には、販売価格の7割程度といわれています。不動産取得税の標準税率は原則4%で、一定の要件を満たす不動産は軽減税率や軽減措置が適用されます。
10-4.登記に関する費用
登記とは、不動産の所有者であることを記録する行為を指します。表示の登記は義務で、権利の登記は任意ですが、不動産売買の際にまとめて行うのが一般的です。
登記をする際には、登録免許税が必要になります。登録免許税の費用は、登記の種類などによっても異なりますが、「固定資産税評価額×0.1~2%」が目安です。また登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士への報酬も支払わなくてはなりません。司法書士の報酬は登記の種類によっても差があり、「1~13万円前後」が相場となっています。
10-5.その他費用
住宅ローンの手数料、保険料、不動産取得税、登記費用以外でも、家を買うとかかる費用は多くあります。代表的なのは「引っ越し費用」と「固定資産税」です。
引っ越し費用は物量や規模によっても異なりますが、それなりの金額になることもあるので、家を買う際の資金計画にきちんと入れておきましょう。固定資産税は基本的には毎年支払わなくてはならない税金の一つです。
「固定資産税評価額」をもとに求められ、標準税率は1.4%なので少なくない負担といえます。また、新築マンションであれば修繕積立基金、新築一戸建てであれば上下水道を引き込むための水道負担金が必要となる場合があるので、事前に確認しておきましょう。
11.家を売って住み替える際に活用できる控除や軽減措置
住み替えにおける費用や税金は、意外にも少なくない負担です。新居の購入費用以外にもコストがかかることは念頭に置いておく必要がありますが、なるべく安く抑えることも重要といえます。
ここでは、そういった費用の負担を軽減できたり、税金の先延ばしができたりする有用な制度を紹介します。
11-1.居住用財産3,000万円特別控除
前述の通り、家を買ったときよりも高い価格で売れた場合、売却益から譲渡費用を差し引いた譲渡所得に対して税金がかかります。
3,000万円特別控除は、一定の要件を満たすことで、譲渡所得から3,000万円を差し引くことができる制度です。つまり、譲渡所得が3,000万円以下であれば、譲渡所得税・住民税はかからないということになります。
3,000万円特別控除の適用要件は以下の通りです。
下記のいずれかを満たすマイホームであること
- 現に住んでいる自宅である
- 転居している場合、転居後3年目の年末までの売却である
- かつ、土地の売却契約締結が解体から1年以内で、その土地を賃貸していない
- 単身赴任の場合、配偶者が住んでいる建物である
- 物件の買主が、親族など特殊な関係でないこと
- 売却した年の前年、前々年に、3,000万円特別控除または損益通算及び損失の繰り越し控除の特例を受けていないこと
- 売却した年、その前年及び前々年に、マイホームの買い換えや交換の特例を受けていないこと
- 売却した不動産に関して、収用等の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
- 災害によって売却する場合、住まなくなった日の3年後の年末までの売却であること
控除を受ける場合、上記の6つの条件をすべて満たす必要があります。詳しくは、国税庁のホームページで確認してみてください。
11-2.マイホーム買い換え時の税金特例
マイホーム買い換え時の税金特例とは、以前住んでいた家を売った時に売却益が生じ、譲渡所得を納めなくてはならない場合でも、すぐには納めずに、新居の譲渡時まで繰延できる仕組みです。
買い換え時にかかる負担を一旦後回しにできるので、上手く活用すれば自己資金を切り崩したり余計な融資を受けたりする必要がなくなります。
ただし、税金そのものが安くなるわけではなく先延ばしするだけなので、先々のライフプランまで考慮して利用する必要があるでしょう。
買い換え時の税金特例を利用するためには、売却する家と買い換える家のそれぞれに要件があります。まず、売却する家の適用要件は以下の通りです。
なお、詳しくは国税庁のホームページで確認するようにしてください。
- 自分自身が住んでいた国内の家であること
- 居住しなくなってから3年以内の売却であること
- 売却した年の前年、前々年に、3,000万円特別控除または損益通算及び損失の繰り越し控除の特例を受けていないこと
- 売却金額が1億円以下であること
- 居住期間が10年以上あること
- 物件の買主が、親族など特殊な関係でないこと
一方、買い換える家の適用要件は以下の通りです。こちらも詳しくは国税庁のホームページで確認するようにしてください。
- 国内にある新耐震基準を満たしている物件であること
- 建物の床面積50平米以上、土地の面積500平米以下であること
- 売却の前年から翌年までの3年間で買い換えをしていること
- 耐火建築物の中古住宅の場合、取得日から25年以内に建築され、新耐震基準を満たすもの
- 耐火建築物以外の中古住宅の場合、建築後年数が25年以内である、あるいは新耐震基準に適合しているもの
11-3.マイホーム買い替えの損失の繰越控除
家を売った時に必ずしも売却益が発生するわけではなく、当然買ったときよりも安くなることがあります。買い替えの損失の繰越控除は、こうした譲渡損失が生じた場合に、給与所得や事業所得から控除し、それでも差し引けない分を最長3年間繰り越すことができる仕組みです。
なお、マイホーム買い替えの損失の繰越控除は、住宅ローン控除との併用が可能とされています。
例えば、給与所得が400万円で、譲渡損失が1,000万円の場合、その年は1,000万円の損失から400万円分を利用し、所得が0円になるので所得税・住民税はかかりません。
さらに翌年も残る600万円分の損失を繰り越しているので、給与所得400万円なら同じく税金はゼロ。3年目には200万円分の損失が繰り越されているので、給与所得400万円から差し引いて課税所得を200万円にすることができます。
12.マイホームの住み替えで後悔しないためのポイント
住み替えはライフプランに直結する大きな出来事であるため、後悔しないようにしたいもの。できるだけ今住んでいる家を高く売却し、より良い新居を見つけるのが重要です。
ここでは住み替えを成功させるためのポイントを紹介します。
12-1.住み替えのスケジュールには余裕を持たせる
買い替えの際は、売り先行にしても買い先行にしても、スケジュールに余裕を持たせて進めることが重要です。急ぐことを優先してしまうと、「納得できない価格での売却」や「不満が残る不動産の購入」などにつながります。
後悔しないために、スケジュールには余裕を持たせ、落ち着いて売却活動を行いましょう。特により良い新居を手に入れるためには、売却価格が何より重要といっても過言ではありません。
時間をかけて満足のいく価格で売却することが、後悔しないポイントといえます。一般的な売却期間である4~6ヶ月を目安に計画を組んでおきましょう。
12-2.確定申告は必ず行う
不動産の売却、購入いずれの場合でも、確定申告が必要になります。正しく行わないと、売却時に各控除の特例が適用されず、損をする可能性があるので注意しましょう。
購入時は住宅ローン控除を適用するために必要です。会社員でも最初の1年目は自分で確定申告を行います。
売却した時に譲渡損失が発生しており、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を適用しない場合のみ確定申告は必要ありません。
12-3.転勤や子供の進学なら賃貸も検討する
転勤や子供の進学などで住み替えを検討する場合は、今後のライフステージもよく考える必要があります。
将来的にさらに住み替えが必要になることも考えて、購入ではなく賃貸も検討してみましょう。一度家を購入すると気軽に引越しができなくなるため、家族でよく話し合うことが重要です。
賃貸なら、ライフステージに合わせて住まいを移しやすいですし、いざというときの理想の新居に備えて貯金をすることができます。理想のライフプランなども考慮しながら幅広く検討しましょう。
12-4.不動産の売却はネットの一括査定を利用する
家を売って住み替える際の選択肢を広げるためには、できるだけ高く売却することが重要です。信頼できる不動産会社を見つけるために複数の不動産会社を比較して、積極的な売却活動を行う必要があります。
とはいえ、複数の不動産会社に交渉を持ちかけるのは、時間と手間がかかるでしょう。
そこで、不動産一括査定サイトがおすすめです。不動産一括査定サイトを利用すると、簡単な情報をフォームに入力するだけで複数の不動産会社から見積もりを取ることができます。
おうちクラベルは、ソニーグループのSREホールディングスが運営する安心の不動産一括査定サイトです。無料で大手企業から地域密着の不動産会社まで査定を依頼できます。さらに高精度なAIによる査定結果をすぐに確認できるので、目安となる査定価格を早く知りたい方にもおすすめです。
13.家を売って住み替える第一歩はマイホームの査定から始める
今住んでいる家を売って理想の新居に住み替える際には、様々な費用が掛かります。住み替えローンなどお金に余裕が無くても取れる選択肢はありますが、重要なのは今住んでいる家をいかに高く売るかといえます。
そのためには必要な費用を把握して資金計画をきちんと行い、スケジュールに余裕を持っておくことが大切です。まずは今住んでいる家がどれくらいの価値を持っているのか知っておきましょう。
近い将来住み替えを検討している方はもちろん、「いつかは家を住み替えたい」「自宅の価値を把握しておきたい」という方も、「おうちクラベルの一括査定」を利用してみてはいかがでしょうか。