失敗しない売り出し価格の設定方法とは?不動産売却の手順と注意点も解説!

不動産の売却を決めたとき、頭を悩ますことのひとつが売り出し価格をいくらに設定するかです。売り出し価格をいくらにするかで不動産売却の初動は大きく変わってくるため、最初に決めた価格次第で結果が違ってくるかもしれません。

後々もっと高く、または低く売り出し価格を設定しておけばよかったと後悔しないためにも、売り出し価格の決め方を把握しておきましょう。手順や注意点から、不動産会社の選び方まで解説します。

目次

1.不動産の売り出し価格とは?

売り出し価格は、実際に不動産が売りに出されるときの価格です。ほかにも不動産を売却する際は、さまざまな価格を耳にするのではないでしょうか。例えば、査定価格や成約価格などが挙げられるように、状況によって異なる価格の名称があります。ほかにも売主がこの値段で売りたいと思う売却希望価格や、買主が買いたい価格として買付証明書に記載する購入希望価格も不動産に対する価格です。

住宅ローンの残債がある場合や、住み替えの場合などは、最低でもこの値段で売りたいという最低売却価格も使われることがあります。しかし、売り出し価格が査定価格や成約価格と一致するとはかぎりません。ここでは特に混同しやすい売り出し価格と査定価格や成約価格との違いを後述します。

1-1.売り出し価格と査定価格の違いと関係性

家の売却を決めたら、どのくらいの価格で売り出すかを決めなければなりません。まずは、自分がどのくらいで売りたいのか希望売却価格をはっきりさせましょう。売り出し価格自体は、売主が自由に決められます。しかし、あまりにも高い価格にしてしまうと、購入希望者がいつまで経っても現われずに売れない可能性があります。一方で、低く設定しすぎて損をしてしまうことも考えられます。

実際に売り出し価格を決定するとき、目安となるのは不動産会社がいくらで売れそうなのかを示してくれる査定価格です。査定価格は不動産の特徴はもちろん、近隣にある似た物件の成約価格なども参考にして算出されます。現状に沿った価格になっているため、売り出し価格は査定価格を参考にして決めていきます。

1-2.売り出し価格と成約価格の違いと関係性

成約価格は不動産取引で売主と買主が最終的に合意し、売買が成立した価格です。ケースによっては、売主の売却希望価格と買主の購入希望価格がさほど変わらず、売り出し価格と成約価格に差がないこともあります。ただ、購入希望者から値引き交渉が入ることも多く、最終的に成約価格が売り出し価格より下がってしまうことも珍しくありません。

逆に中古物件の需要が高いときなら、販売価格を途中で引き上げ、結果的に売り出し価格よりも成約価格のほうが上回る可能性もあります。公益財団法人 東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2021年)」では、首都圏における2021年の不動産流通市場の動向が公表されています。

中古戸建住宅の売り出し価格や成約価格は過去10年でそれほど大幅な動きはありませんが、2020年から2021年にかけては前年に比べて上昇する動きをみせています。土地の場合も2014年には売り出し価格と成約価格が近い金額でしたが、それ以降は成約価格が下回る傾向です。

一方、中古マンションでは2021年の新規登録物件の価格3,554万円に対し、成約物件の価格は3,869万円です。もともと中古マンションでは売り出し価格に近い価格で売れることが多いうえ、2017年からは新規登録物件の売り出し価格よりも成約物件の価格のほうが上回る傾向が続いています。

※出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2021年) 」

http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2021.pdf

2.不動産の売り出し価格を決める手順とは?

では、実際に不動産を売り出すことになったとき、どう売り出し価格を決めればいいのでしょうか。不動産を売り出したいと考えてから自分でできることや、不動産会社に依頼してやってもらうことなど、売り出し価格決定までの具体的な手順を解説します。

2-1.①情報収集を始める

ある程度の相場をつかんでおくためにも、まずは情報収集から始めましょう。売主が単独でも情報収集できる方法としては、ポータルサイトがあります。ポータルサイトには実際に売り出し中の物件が掲載され、買いたい人も物件の情報を求めてアクセスします。

自分の家と条件が似たような物件が、どのくらいの価格で売りに出されているのかを知っておくことが大事です。後に不動産会社に査定を依頼したとき、査定価格が妥当かどうかを判断する基準になるのはもちろん、売り出し価格を決定する際の参考にもなるでしょう。

同時に、査定を依頼する不動産会社の比較検討も進めておく必要があります。住宅ローンを完済していない場合は、残債の確認もしておいてください。

2-2.②不動産の査定を依頼する

売り出し価格を決定するために、相場は正確でなくてはなりません。ある程度、ポータルサイトなどを使って自分で一般的な相場を把握したら、次は不動産会社に査定を依頼しましょう。不動産会社の査定では市場の状況などを踏まえるのはもちろん、売主の家そのものにターゲットを絞って査定価格を算出します。

不動産会社しか閲覧できないレインズ(不動産流通標準情報システム)では成約価格も掲載されており、現実的な取引価格の参照も可能です。当然ポータルサイトで調べた近隣の類似物件よりも、正確な相場が把握できるでしょう。不動産会社が行う査定方法は、大きく分けて机上査定と訪問査定の2種類あります。訪問査定は現地を確認しますが、机上査定は現地を訪れることなく査定する方法です。

机上査定と訪問査定にかかる期間や流れなどの詳細は以下の段落で後述しますが、不動産会社の査定では、机上査定だけでもポータルサイトよりも正確な情報が手に入ります。不動産会社は売買契約が成立した際に報酬として仲介手数料を得ており、一般的に集客の一環として行っている査定は無料です。

2-2-1.机上査定とは?

机上査定は現地を訪れることなく、住所や土地・建物の面積、築年数や間取りなどの情報、立地条件や周辺の取引事例、路線価などのデータを参考にして査定価格を出す方法です。簡易査定と呼ばれることもあり、最近ではAI技術を活用したAI査定を取り入れているところもあります。

机上査定は不動産会社や不動産一括査定サイトに情報を提供するだけで済むため、結果が出るのは早ければ当日、遅くても3日程度です。遠方にある物件の査定価格を知りたいときや、とりあえず目安を知っておきたい人、忙しい人にも手軽に査定価格を把握できるメリットがあります。

劣化具合など家の状態やリフォームの有無など、実物を見るわけではありません。訪問しなければわからない情報が加味されないため、実際に売れる価格と査定価格に多少のズレが出る可能性があります。

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2-2-2.訪問査定とは?

訪問査定は机上査定でも使った土地や建物の住所、面積、築年数などの情報に加え、実際に不動産のプロが現地調査をして査定価格を算出します。実際に現地を訪れて土地や建物を確認してみないと、劣化や損傷、シロアリの被害など建物の維持管理状態、日当たりや騒音など近隣の環境は分かりません。

机上査定はデータだけを根拠としているため、査定価格はおおよその結果です。一方で、訪問査定では個別の詳細な事情が反映されることで、査定価格の精度は高くなります。売却について聞きたいことや不安なことがあれば、不動産会社の人に直接相談できるのもメリットです。

ただ、実際に訪問して査定してもらうため、日程を合わせる必要があり、結果が出るまでに数日から1週間程度かかります。

2-3.③不動産の売却に必要な書類を集める

書類名

取得できる場所

費用

期間

土地・建物の登記済証または登記識別情報

本人所有

紛失した場合は事前通知で問い合わせるか、公証人・司法書士に依頼

事前通知は費用がかからない

公証人の場合は数千円の認証手数料

司法書士の場合は数万円程度

事前通知は登録完了まで時間がかかる

公証人・司法書士は登記申請と同時に手続きが完了

固定資産税納税通知書・都市計画税納税通知書

不動産の所有者に送付されている

 

――

――

固定資産税評価証明書

市区町村の役所

1筆または1棟200~400円程度

窓口で交付

地積測量図

地積測量図が作成されていたら管轄の法務局またはオンラインで請求

1筆につき450円

オンライン申請の場合、窓口での受け取りは1筆430円、郵送は450円

法務局で取得する場合は窓口で交付

オンライン請求は郵送または指定の窓口で受け取り

境界確認書

測量した会社など

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――

建築確認済証または検査済証

手元になければ管轄の役所に代替になる書類を申請

数百円程度

窓口申請や電子申請

建物の図面や間取り図

手元になければハウスメーカーや管理会社に問い合わせ

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――

管理規約や使用細則など(マンションの場合)

手元になければマンションの管理会社に問い合わせ

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――

本人確認書類

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――

実印および印鑑証明書

市区町村の役所

200~300円程度(コンビニ交付などでは少し安くなることがある)

窓口またはコンビニなどで交付

住民票(現住所と登記上の住所が異なる場合)

市区町村の役所

200~300円程度(コンビニ交付などでは少し安くなることがある)

窓口でまたはコンビニなどで交付

土地や建物の登記が完了した時点で、以前は法務局から登記済証が発行されていました。2005年以降は法改正によって12桁の符号で表される登記識別情報に代わりましたが、登記済証と同様に登記が完了した時点で発行されています。紛失しても再発行はされないため、登記申請をしたい場合は事前通知の手続きを取るか、公証人や司法書士などに依頼して本人確認情報の制度を利用しなければなりません。

固定資産税や都市計画税の納税通知書は、不動産を所有している人に毎年市区町村から送付されているはずです。固定資産税評価証明書が必要な場合は、市区町村の窓口で申請すれば交付されます。

地積測量図や境界確認書、建築確認済証または検査済証、建物の図面や間取り図などは、家を新築したときや購入したときに入手しているはずです。手元にない場合、地積測量図は作成されていれば法務局やインターネットでの請求で取得できます。境界確認書は当時測量した会社が所有していることが考えられるため、問い合わせてみてください。建築確認済証または検査済証を紛失した場合、代替になる建築計画概要書や建築確認台帳記載事項証明書を市区町村で発行してもらいます。

管理規約や使用細則も手元になければ、マンションの管理会社に問い合わせてみてください。免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類、実印などのほか、不動産売却の手続きが進むと印鑑証明書なども必要になります。さまざまな書類が必要になるため、本格的に不動産の査定を始める段階になったら、同時進行で行うのが一般的です。

2-4.④不動産の売却をサポートしてもらう不動産会社を選び契約を結ぶ

本格的に家を売却することが決定したら、査定を受けた不動産会社のなかからサポートしてもらうところを絞り込みましょう。不動産会社に仲介を依頼する際に結ぶのが媒介契約です。

媒介契約には1社しか契約できないタイプや、複数の会社に依頼できるタイプがあります。詳細は後述しますが、契約方法の違いを知って自分に合うところを選ぶことが大切です。複数契約できる場合でも多すぎるのはNGです。できるだけ1~2社程度に絞って契約を結びましょう。

2-4-1.媒介契約と代理契約の違いとは?

売主本人が買主を探すことは可能ですが、不動産を適切に取引するためには専門知識が必要になるうえ、実際に自分で買主を見つけるのもそう簡単ではありません。一般的には不動産会社に依頼して、買主を探してもらいます。不動産会社に間に入ってもらう方法には、媒介契約と代理契約の2種類があります。

媒介契約は売主と買主の間を取り持ってもらい、売買の契約成立に尽力してもらう方法です。仲介とも呼ばれ、不動産会社は売主と買主の間に入るだけで、売買契約自体は売主と買主の間で取り交わされます。

一方、代理契約は不動産会社が売主から契約締結の権限を与えられ、代理人として取引を行う方法です。媒介契約も代理契約も、売主の家を売却するために協力する点では共通しています。しかし、代理契約では代理人である不動産会社が、買主との間で契約の締結を行う権限を持っているのが媒介契約とは異なる点です。売買代金の受け取りや所有権の移転など、契約の効果は売却を依頼した売主に帰属します。

遠隔地の不動産を売却するケースなど、売主が契約などの手続きに出向くことが難しい際に代理契約の方法がとられることがあります。ただ、マイホームの売却では、媒介契約が一般的です。

2-4-2.専属専任媒介契約と専任媒介契約、一般媒介契約の違いとは?

 

専属専任媒介契約

専任媒介契約

一般媒介契約

他社への同時依頼

1社のみ

1社のみ

複数社可能

自己発見取引

×

売主への報告義務

1週間に1回以上

2週間に1回以上

なし

契約期間

3ヶ月

3ヶ月

なし

レインズへの登録義務

5日以内に登録

7日以内に登録

なし

媒介契約には専属専任媒介契約と専任媒介契約、一般媒介契約の3種類があります。専属専任媒介契約と専任媒介契約は媒介を依頼する不動産会社が1社だけであるため、不動産会社も売却するために一生懸命営業活動を行ってくれるメリットがあります。

一方で、一般媒介契約は複数の不動産会社と契約を結んでもかまいません。ただ、力を入れて営業活動をしても、ほかの不動産会社が契約を決めてしまうことも考えられるため、積極的に営業活動をしてもらえない可能性もあります。

一般媒介契約では売主への報告義務やレインズへの登録義務はありませんが、専属専任媒介契約は1週間に1回以上、専任媒介契約2週間に1回以上の報告義務があります。レインズへの登録義務は専属専任媒介契約が5日以内、専任媒介契約は7日以内です。契約期間は専属専任媒介契約と専任媒介契約は3ヶ月ですが、一般媒介契約では特に定めはありません。

専属専任媒介契約と専任媒介契約で大きく異なるのは、自己発見取引が可能かどうかです。専属専任媒介契約では自分で見つけた相手であっても契約は禁止されているため注意してください。

一般媒介契約は自由度が高く、広く買主候補に物件の情報が行きわたるメリット、専属専任媒介契約と専任媒介契約は1社が集中的に営業活動してくれるメリットがあります。どの媒介契約が自分のニーズに合っているかどうかを考えて選ぶことが大切です。

2-5.⑤売却戦略を練る

売却をサポートしてもらう不動産会社が決まったら、担当者と相談しながら売却戦略を立てていきます。具体的にはどのくらいの期間で売却をしたいのか、最低売却価格はいくらに設定しておくのかなどです。

スムーズに買主が見つかって契約ができれば問題ありませんが、なかなか契約にまで至らない状況が続けば値段を下げる検討もしなければならなくなります。ある程度の期間を決めておかないと、値段を下げるタイミングも図りかねるでしょう。どの程度まで値段を下げてもいいのか、最低売却希望額なども詰めておく必要があります。

また、急いで売却したいのか、時間をかけてもいいのかなど、売主の希望によって売却戦略も違ってきます。価格設定にも影響があるため、状況に合った戦略を練ることもポイントです。

2-6.⑥売り出し価格を決定する

売り出し価格は査定価格や相場、売却戦略をもとにしつつ、売主の事情も考慮して決定します。売主によっては売買代金を住宅ローンの残債に充てたい人や、買い換えのための新居を購入する頭金にしたい人もいるでしょう。

査定価格と売主の希望売却価格にそれほど違いがなければスムーズに売却できる可能性が高いですが、開きがあるとそもそも売れないリスクもあります。売り出し価格は希望売却価格などの売主の事情、査定価格や近隣の相場など、さまざまな判断材料をもとに決めることが大切です。

3.売り出し価格の決め方のコツとは?

少しでも早く売りたいのか、時間をかけてもいいと考えているのかで戦略は異なります。それでもできるかぎり高く、または早く売却できるに越したことはありません。次に売り出し価格を設定するうえで知っておきたいコツを紹介します。

3-1.売却希望価格と最低売却価格を決めておこう!

売り出し価格を決める際は売却希望価格を考慮するとともに、最低売却価格もあらかじめ決めておくことも大切です。スムーズに交渉を進められるよう、いくらで売れるのが理想なのか、いくらまでなら値引きに応じられるのか、ラインを決めておきましょう。

売り出し価格のまま売却できるケースもありますが、必ずといっていいほど値下げ交渉が行われます。値引き交渉が入ることを想定して、ここまでなら値引きをしても大丈夫という最低売却価格を決め、値引き分を見越して売り出し価格を設定することが大事です。

売却のチャンスを逃すまいとして大幅な値下げをしてしまっては、以後の資金計画に支障をきたしかねません。特に住宅ローンの残債がある場合は、売買代金で十分完済できるよう、最低売却価格は住宅ローンの残債を参考に決めるのが一般的です。

3-2.売却を急いでいないならチャレンジ価格を設定してみよう!

売却をいつまでに終えなければならないという期限がなく、時間的に余裕があるケースにおすすめなのがチャレンジ価格を設定する方法です。営業活動を開始しても、すぐに買主候補となる人たちに情報が行きわたるとはかぎりません。一般的には市場で周知されるまでに、2~3カ月程度はかかります。

チャレンジ価格は最初に査定価格より1~2割高めの価格を設定しておき、様子を見ながら徐々に価格を下げていく方法です。売り出し当初はなかなか売れないかもしれませんが、逆にニーズがあれば、もともとの希望売却価格より高く売れる可能性もあります。ただし、いくらチャレンジ価格とはいっても、相場とあまりにもかけ離れていては結局売れない可能性が高まります。価格は不動産会社の意見を聞きながら設定するようにしましょう。

3-3.売却を急いでいるなら売り出し価格を低めに設定しよう!

なんらかの事情で売却を急ぎたい場合は、査定価格より売り出し価格を下げて設定する必要も出てきます。一般的に不動産を売却するのにかかる期間は3ヶ月程度とされ、適正価格も3ヶ月で売れる価格が目安です。

一般的に急いで売りたい場合は、時間に余裕があるときのように売り出し価格を高めに設定し、段階的に下げていくようなことはしません。高めの価格ですぐに買主が見つかることがないとはいえませんが、見つからなければ販売期間が延びるだけです。

できるだけ早く売りたいのなら、最初から売れる価格で売り出すようにしましょう。時間的に余裕がないと売却では不利になりやすいため、極力余裕を持ったスケジュールを組むように工夫してみてください。

3-4.価格アップにつながる証明書を取得しよう!

不動産の売却で必要な書類については先述しましたが、以下のような証明書があれば価格アップにつながります。具体的には既存住宅に係る建設住宅性能評価書や、耐震診断結果報告書、瑕疵担保保険の保険付保証明書、インスペクションの結果報告書などが挙げられます。

既存住宅に係る建設住宅性能評価書は評価員が現地に行ってひび割れや傾き、漏水のあとなど、劣化状況を検査したうえで作成します。売主や買主の希望によって、さらに6分野21項目の個別性能評価も受けることが可能です。地震国といわれる日本では、耐震基準を満たしているかどうかも、買主には気になるところでしょう。耐震診断結果報告書もあれば安心につながります。

中古住宅を購入するときは、欠陥がないかどうかも不安材料になります。瑕疵担保保険に加入していれば補修費用が保険でカバーされるため、保険付証明書を用意しておいてください。また、ホームインスペクター(住宅診断士)が中古住宅の劣化状況や欠陥の有無などを調査したインスペクションの結果報告書も、物件の状態を把握するのに役立ちます。

以上のような価格アップにつながる証明書があれば買主の安心につながるため、高く売れやすくなります。売却後のトラブル防止にも役立つため、積極的に取得して活用しましょう。

4.売却価格の設定でよくある失敗事例と失敗しない秘訣

よく家は一生に一度の大きな買い物といわれますが、売るのもそう頻繁にあることではなく、失敗はしたくはないでしょう。大きなお金が動く不動産の売却について、特に売り出し価格の設定でよくある失敗事例を紹介し、失敗しないための秘訣を解説します。

4-1.売り出し価格を高く設定しすぎて売却に時間がかかりすぎた!

よくみられる失敗事例のひとつが、売り出し価格の設定が高すぎて初期に反響がほとんどないケースです。先述したように余裕があるなら値引き交渉が入ることを想定し、最初は高めのチャレンジ価格にしておくことで高く売れる可能性もあります。相場よりも高く売ろうとするなら、売り出し価格を高めに設定するのも戦略です。

しかし、基本的には売りたい価格ではなく、売れる価格にしなければ、買主候補の人の目にはとまりません。あまりに相場の範囲を逸脱した高さにしてしまうと、買主の目には割高に映るでしょう。価格に見合う魅力があるなら別ですが、ほかの物件とそう違いがないのならば敬遠されてしまいます。相場よりも少し高い程度ならば選択肢として残るかもしれませんが、あまりに高すぎるといつまでも売れない可能性が高くなります。

中古住宅の平均販売期間は3ヶ月程度とされています。売り出してから3ヶ月以上経っても売れないようなら、価格設定や販売戦略が間違っている可能性も考えられるため、一度価格の見直しをしてみましょう。

4-2.売り急いでしまったことで成約価格が相場よりも大幅に低くなった!

急いで売らなければならない理由があるのなら仕方ないかもしれせんが、売り急ぐと成約価格が相場よりもかなり低くなってしまうデメリットがあります。もちろん事情があって相場よりも売り出し価格をあえて低く設定し、短期間で売却する戦略を立てることもあるでしょう。しかし、相場より10%以上低くなるケースもあり、あまり売り急がないことが大事です。

家の売却は査定をしてもらったり、必要書類を集めたりなど、なにかと時間がかかります。媒介を依頼する不動産会社選びや戦略を練る時間を含め、実際に販売活動を行う前の準備段階でも1ヶ月程度はかかるでしょう。中古住宅は売りに出してからでも、買主候補の人たちに知られるようになるまでさらに時間がかかります。

契約を結んでから引き渡しまでも1~2ヶ月間あるため、一般的には売却を決めてから実際に売却できるまで、トータルでは半年程度の期間が必要です。特別な事情がないかぎり、売り急がなくていいような計画を立て、戦略を練るようにしましょう。

4-3.売却前にリフォームを行ったが、期待したほどの効果がなかった!

ある程度の築年数が経過している家を売る場合、売却前にリフォームをするケースがあります。確かにリフォームすればきれいになるため、売れやすいのではないかと思うかもしれません。

しかし、実際にはリフォームにかかった費用を売り出し価格に反映できないことも多く、費用の回収ができないばかりか、思ったほど反響が増えないという失敗事例も存在します。リフォーム費用を上乗せして売り出した場合、価格が相場よりも高くなってしまい、買主候補の人たちの選択肢に入らないこともあります。

最初からリフォーム済み物件の購入を考えている人もいるため、リフォームしていることで差別化できることもあるでしょう。ただ、中古住宅を買ったあとに自分たちの好みに合わせてリフォームやリノベーションをしたいと考えている人もいます。その場合は価格が低いことのほうが優先されやすいのです。

家を売るとき原則リフォームは必要ないといわれていますが、あまりにも傷みがひどかったり、劣化している印象を強く感じたりする場合、簡易的なリフォーム程度は検討してもいいかもしれません。売却前にリフォームを行う場合は、一度不動産会社に相談してみてください。

4-4.パートナー選びを間違った!

不動産会社といっても、それぞれ得意分野や強みが違うため、間違った不動産会社をパートナーに選んでしまったために失敗するケースも少なくありません。家を売りたいときは、中古住宅の仲介に実績のある不動産会社を選ぶ必要があります。大手だからといって必ず大丈夫というわけでもなく、実績をしっかり確認して依頼することが大事です。

また、査定価格が高いからといって、よい不動産会社だともかぎりません。複数の不動産会社が参加する不動産一括査定サイトでは、自社が媒介契約を結べるように、あえて高めの査定価格を出すケースもあります。

また、あまり積極的に販売活動をしてくれないなど、熱量が感じられなかったり、担当者との相性が合わなかったりしたことが失敗につながるケースもあります。大事な自分の家を売ってもらう不動産会社は査定価格などだけで判断せず、後述するポイントを押さえて選ぶようにしてください。

5.不動産会社選びのコツとは?

家の売却にはパートナーとして、不動産会社の存在が欠かせません。ただ、どんな不動産会社に売却を依頼すればいいのか、なかなか見極めが難しいと感じることもあるでしょう。ここからは不動産会社選びのコツを紹介します。

5-1.エリアに強い不動産会社を選ぼう!

家を売るときは、そのエリアをよく知っている不動産会社に依頼するようにしましょう。大手のほうが信頼できる、なんとなく安心だと思ってしまいがちですが、大手だからといって全国どこのエリアにも強いとはかぎりません。むしろ地域密着の不動産会社のほうが地域の事情をよく把握し、独自のネットワークを築いていることもあります。

不動産会社によって得意とするエリアは異なるため、地域の不動産会社にも査定を依頼してみるといいでしょう。地域に根づいた営業をしている不動産会社は、土地の歴史や街の雰囲気、住民の気質など、ほかの地域の人にはわかりにくい情報まで熟知していることも珍しくありません。エリアを絞った戦略も立てやすくなるため、売りたいエリアに強い不動産会社を選ぶのがおすすめです。

5-2.実績のある不動産会社を選ぼう!

不動産会社を選ぶ際は、実績も確認することがポイントです。不動産会社がどのくらい営業しているのか、不動産会社の事務所などに掲げられている宅地建物取引業者票の免許証番号を見ればわかります。不動産会社の免許は5年ごとに更新する必要があり、更新するごとに免許証番号とともに記載されている( )でくくられた数字が増えます。

例えば(1)ならば免許を取得して5年以内、(2)ならば免許取得後6~10年以内など、数字が大きいほど長く営業していることがわかります。開業して日が浅いからといって営業能力がないとはいえませんが、営業期間が長いほど信頼性も高い可能性があります。営業年数などの企業情報に加え、住宅新報が発表している不動産売買仲介実績ランキングなども客観的な情報として参考になります。

5-3.不動産会社の得意不得意を理解して不動産会社を選ぼう!

同じ不動産会社といっても得意不得意があり、どこでも中古住宅の仲介に強いとはかぎりません。例えばマンションの仲介には実績があっても、戸建住宅はあまり取り扱っていない不動産会社もあります。中古住宅を扱っていても仲介ではなく、買取を中心としているところもあり、営業方針もさまざまです。

また、中古住宅の売買と賃貸の両方をやっていても、実は賃貸の仲介がメインで売買の仲介はあまり強くないなど、不動産会社によって得意な分野は異なります。実績のある不動産会社を選ぼうと先述しましたが、自分が売りたいタイプの不動産の実績でなければ意味がありません。不動産会社の得意不得意を見極めて、自分の家を売るのに頼りになる不動産会社を選ぶことが大切です。

5-4.保証・検査サービスの有無を確認しておこう!

中古住宅の売買でトラブルになりやすいのは、不具合や欠陥などがあった場合です。従来は瑕疵担保責任によって、売主は買主から瑕疵に対する補修を求められたり、損害賠償を請求されたりすることがありました。2020年の民法改正で瑕疵担保責任は廃止されましたが、代わりに契約不適合責任の制度が始まっています。契約不適合責任では、契約の内容に適合しない不具合や欠陥があった場合、売主は責任を負うこととされています。

売主・買主がともに安心できる取り組みとして、中古住宅に対する保証・検査サービスを提供している不動産会社が増えました。後々のトラブルを防ぐためにも、売却に付随する保証やサポートがどのくらい受けられるのかも不動産会社選びでは大切です。

5-5.相性のよい担当者がいる不動産会社を選ぼう!

専門にしているのが同じ分野の不動産会社だったとしても、担当者のスキルや人柄には違いもあります。人によって営業力や交渉力などのスキルに差があるのは仕方ありませんが、担当者に対しては能力や実績だけではなく、人柄や相性が合うかどうかもチェックしてください。

なによりも信頼できると感じられない人に家の売却を任せるのは心配ではないでしょうか。丁寧な対応をしてくれるのはもちろん、わかりやすく説明してくれるかどうか、耳障りのよい言葉ばかりではなく、現実的な意見も聞かせてくれるかどうかなどを気にしてみてください。家を売却するのには少なくとも数ヶ月はかかります。パートナーとして相性がよく、スムーズにコミュニケーションが取れる担当者のいる不動産会社を選びましょう。

6.まずは不動産一括査定サイトを利用して売却価格の相場を把握しよう!

不動産を売却するためには、最初の売り出し価格の設定が大事になります。適正な売り出し価格を決めるためには、正確な査定価格を把握し、市場の動向を知っておくことが大切です。不動産の売却には、パートナーとなる不動産会社の存在も欠かせません。正確な査定を出してくれるのはもちろん、売主にも寄り添って個別の事情に配慮しつつ、的確なアドバイスをくれるところなら安心です。

まずは無料の不動産一括査定サイトを利用して、相場を知ることから始めてみましょう。「おうちクラベル」では60秒で複数の不動産会社への査定ができるほか、AI査定による高精度な査定価格も無料で確認できます。査定結果をもとに、売却の依頼をする不動産会社も検討することが可能です。家の売却を検討しているのなら、まずはおうちクラベルから一括査定してみてください。

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