不動産を売却して売却益が出ると、これに対して譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税はどのように計算し、安く抑える方法などはあるのでしょうか?
今回は、不動産の売却益にかかる譲渡所得税について詳しく解説します。
不動産の売却益とは
不動産の売却益とは、不動産を売って得た利益のことです。
譲渡所得税の計算上、不動産の売却益は次の式で算定します。
- 売却益=収入金額-(取得費+譲渡費用)
ここでは、各計算要素の概要について解説します。
収入金額
収入金額とは、不動産の売買対価のことです。
一般的に、不動産を売ったことによって買主から受け取る金銭がこれにあたります。
この収入金額がわかると、不動産の譲渡益を試算しやすくなります。
しかし、正確な収入金額は不動産の売買契約が成立するまでわかりません。
そこで、不動産を実際に売り出す前に不動産会社から査定を受けることで、収入金額の想定がしやすくなります。
査定とは、不動産会社にその不動産の売却想定額を試算してもらう手続きです。
査定額は不動産会社によって異なることが少なくないため、複数の不動産会社へ査定の依頼をすることをおすすめします。
複数社の査定額を比較することで、その不動産の売却適正額を把握しやすくなるほか、その不動産をより高く売ってくれる不動産会社を見つけやすくなります。
複数の不動産会社への査定依頼には、ぜひ「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルとは、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する不動産一括査定です。
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取得費
取得費とは、売却した不動産の取得に要した費用です。
取得費には、次の費用などが含まれます。
- 売った不動産の購入代金、建築代金、購入手数料、設備費、改良費
- 不動産を取得(購入、贈与、相続など)したときに納めた登録免許税、登記費用、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税
- 借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
- 土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
- 土地の取得に際して支払った土地の測量費
- 所有権などを確保するために要した訴訟費用(相続争いの解決費用を除く)
- 建物付の土地を購入してその後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
- 土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
- 既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金
事業所得や不動産所得などの必要経費に算入されたものは取得費に計上することができません。
なお、建物の取得費は、購入代金や建築代金そのままではなく、そこから所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額となります。
その建物が居住用(事業用以外)であり木造である場合の減価償却費相当額の計算式は、次のとおりです。
- 減価償却費相当額=建物の取得価額×0.9×0.031×経過年数
また、購入時の資料が保管されていないなどその不動産の取得費が不明である場合は、「収入金額×5%」で取得費を算定します。
譲渡費用
譲渡費用とは、不動産を売るために直接要した費用です。
次の費用などが譲渡費用に該当します。
- 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
- 印紙税で売主が負担したもの
- 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
- 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
- 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
一方、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは、譲渡費用に計上することができません。
なぜなら、これらは売却のために直接要した費用とまではいえないためです。
不動産の売却益にかかる譲渡所得税とは
譲渡所得税とは、給与所得や事業所得などと同じく「所得」に対して課される税金です。
譲渡所得税の課税対象は資産の譲渡であり、不動産を売って譲渡益が出た場合は譲渡所得税の対象となります。
ここでは、不動産の売却益にかかる譲渡所得税について解説します。
不動産を売却すると必ず譲渡所得税がかかる?
譲渡所得税は不動産を売却したら必ずかかるものではなく、不動産を売って売却益が出た場合にのみかかります。
たとえば、3,000万円で買った土地を2,800万円で売った場合、譲渡益ではなく譲渡損(損失)が出ています。
このような場合、譲渡所得税は課税されません。
譲渡所得税がかかる場合は確定申告が必要
譲渡所得税は国などから納付書が送られてくるのではなく、自分で計算して申告する必要があります。
不動産を売却して利益が出た場合、その年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告をしなければなりません。
売却益が出る場合は、確定申告を忘れないよう注意してください。
不動産の売却益にかかる譲渡所得税の計算方法
不動産の売却益にかかる譲渡所得税は、次の式で計算します。
- 課税譲渡所得金額=不動産の売却益-特別控除額
- 譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率
ここでは、各計算要素の概要について解説します。
なお、不動産の売却益の計算方法は先ほど解説したとおりです。
参照元:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)(国税庁)
特別控除
特別控除とは、要件を満たすことで適用を受けられる、実際の支出を伴わない控除です。
代表的なものには、マイホームの譲渡で使える「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」が挙げられます。
主な特別控除は後ほど解説します。
税率
譲渡所得税とこれに付随する住民税の税率は、売却年の1月1日時点における不動産の所有期間に応じて次のように二段階になっています。
売却した年の1月1日時点での所有期間 | 税率 | |||
所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 | |
長期譲渡所得(5年超) | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
売却した不動産が相続によって引き継いだものである場合、亡くなった人(「被相続人」といいます)の所有期間を引き継ぐことが可能です。
不動産の売却益にかかる譲渡所得税で使える主な特例
不動産の売却益にかかる譲渡所得税には、さまざまな特例が設けられています。
特例の活用を受けることで、結果的に譲渡所得税がゼロとなることも少なくありません。
ただし、税額がゼロになる場合でも、特別控除の適用を受けるためには所得税の確定申告が必要です。
主な特例には次のものがあります。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除
- 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの特別控除
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
なお、ここで解説するのは概要のみであり、実際はさらに細かな要件が定められています。
特例の適用を受けたい場合は、税理士などの専門家へご相談ください。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」とは、売却した不動産がマイホームである場合に、最大3,000万円の控除が受けられる特例です。
自宅を売る際は、この特例の適用を検討することをおすすめします。
控除額が大きいため、特例の活用を受けることで譲渡所得税がゼロとなることが少なくありません。
参照元:No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁)
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」とは、被相続人が亡くなったことで空き家となった被相続人の元自宅を売却した場合に、最大3,000万円の控除が受けられる特例です。
相続した実家を売る際は、この特例の適用を検討するとよいでしょう。
参照元:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
「平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」とは、平成21年(2009年)1月1日から平成22年(2010年)12月31日までの間に取得した土地を売却する場合、最大1,000万円の控除が受けられる特例です。
参照元:No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除(国税庁)
低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除
「低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除」とは、都市計画区域内にある一定の「低未利用土地等」を500万円以下で売って一定の要件を満たす場合に、最大100万円の特別控除が受けられる特例です。
「低未利用土地等」とは、居住の用や事業の用などに供されていないなど、有効利用ができてない土地などを指します。
参照元:No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(国税庁)
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」とは、その年1月1日における所有期間が10年超であることなど一定の要件を満たすマイホームを売る際に、税率が軽減される特例です。
この特例の適用を受ける場合、譲渡所得税の税率は次のとおりです。
復興特別所得税が加算されます。
課税長期譲渡所得金額(=A) | 所得税額(復興特別所得税を含む) |
---|---|
6,000万円以下 | A×10.21%(別途住民税A×4%) |
6,000万円超 | A×15.315%-306.3万円(別途住民税A×5%-60万円) |
参照元:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(国税庁)
譲渡所得税の計算例
譲渡所得税の計算は、どのように行うのでしょうか?
ここでは、売却益が500万円と2,000万円のケースそれぞれについて計算例を紹介します。
なお、いずれも長期譲渡所得に該当するものとします。
譲渡所得税は高額になることもあるため、不動産の査定額がわかったら試算しておくようにしてください。
不動産の査定には、ぜひ「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルは、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する不動産一括査定です。
査定依頼フォームへ1度入力するだけで、複数の不動産会社に査定の依頼ができるため、複数社による査定額を比較することで不動産の売却適正額を把握しやすくなります。
不動産の売却益が500万円である場合
不動産の売却益が500万円である場合、譲渡所得税と復興特別所得税、住民税の合計額は101万5,750円となります。
計算過程は次のとおりです。
- 不動産の売却益(課税譲渡所得金額):500万円
- 譲渡所得税額(復興特別所得税を含む):500万円×15.315%=76万5,750円
- 住民税:500万円×5%=25万円
- 合計:76万5,750円+25万円=101万5,750円
なお、このケースで「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」の適用が受けられるとすると、税額はゼロとなります。
計算過程は次のとおりです。
- 不動産の売却益(課税譲渡所得金額):500万円
- 特別控除額:3,000万円
- 課税譲渡所得金額:500万円-3,000万円=△2,500万円≦0円 ∴0円
課税譲渡所得金額がゼロとなるため、税金は発生しません。
不動産の売却益が2,000万円である場合
不動産の売却益が2,000万円である場合、譲渡所得税と復興特別所得税、住民税の合計額は406万3,000円となります。
計算過程は次のとおりです。
- 不動産の売却益(課税譲渡所得金額):2,000万円
- 譲渡所得税額(復興特別所得税を含む):2,000万円×15.315%=306万3,000円
- 住民税:2,000万円×5%=100万円
- 合計:306万3,000円+100万円=406万3,000円
こちらも「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」の適用が受けられるとすると、税額はゼロとなります。
計算過程は次のとおりです。
- 不動産の売却益(課税譲渡所得金額):2,000万円
- 特別控除額:3,000万円
- 課税譲渡所得金額:2,000万円-3,000万円=△1,000万円≦0円 ∴0円
課税譲渡所得金額がゼロとなるため、税金は発生しません。
不動産の売却益にかかる譲渡所得税の節税方法
不動産の売却益にかかる譲渡所得税を抑えるには、どのような点に注意すればよいでしょうか?
譲渡所得税の主な節税方法は次のとおりです。
- 取得費がわかる資料を保存しておく
- 特例を漏れなく活用する
- 5年以下での売却を避ける
取得費がわかる資料を保存しておく
1つ目は、取得費のわかる資料を保存しておくことです。
取得費のわかる資料がない場合、取得費は「収入金額×5%」として計上します。
しかし、実際の取得費が「収入金額×5%」より少ないことは稀であり、取得費がわからないと損をしてしまう可能性が高いでしょう。
取得費のわかる資料はしっかりと保存しておくようにしてください。
特例を漏れなく活用する
2つ目は、要件を満たす特例を漏れなく活用することです。
譲渡所得税にはさまざまな特例が設けられています。
特例の適用を受けることで、譲渡所得税額がゼロとなることも少なくありません。
不動産を売却する際は、税理士などの専門家へ相談し、特例の適用が受けられるかどうかについて確認しておくようにしてください。
5年以下での売却を避ける
3つ目は、売却年の1月1日時点での所有期間が5年以下となるタイミングでの売却を避けることです。
譲渡所得税の税率は、所有期間に応じて二段階となっています。
短期譲渡所得に該当すると税率が高くなってしまうため、該当しないよう注意が必要です。
ただし、そもそもその不動産の売却で益が出ない場合は譲渡所得税が発生しないため、所有期間を気にする必要はありません。
不動産の売却益を大きくするポイント
不動産を売却して手元に残る金額を増やすには、売却益を大きくすることを目指しましょう。
では、不動産の売却益を大きくするにはどのような点に注意すればよいでしょうか?
主なポイントは次のとおりです。
- 査定を複数の不動産会社に依頼する
- その不動産の売却に強い不動産会社に売却を依頼する
- 不動産の売却を急がない
- 売出価格を高めに設定する
査定を複数の不動産会社に依頼する
より高く不動産を売るには、複数の不動産会社に査定の依頼をしてください。
複数の不動産会社に査定の依頼をすることで、その不動産の売却適正額を把握しやすくなるためです。
また、不動産会社同士が売却の依頼を得ることを目指して競い合い、その不動産のアピールポイントを探すことで、査定額が高くなることも期待できます。
しかし、自分で複数の不動産会社を回って査定の依頼をするには、膨大な手間と時間を要します。
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その不動産の売却に強い不動産会社に売却を依頼する
不動産会社には、それぞれ得意なエリアや物件種別があることが少なくありません。
数多ある不動産会社の中からその不動産の売却に強い不動産会社を見つけることで、売却益をより大きくできる可能性が高くなります。
しかし、どの不動産会社がその不動産の売却に強いのかわからないことも少なくないでしょう。
そのような際は、ぜひ「おうちクラベル」をご利用ください。
査定依頼先の不動産会社は実績豊富な優良企業ばかりであり、安心してご利用いただけます。
複数社の査定額や説明、対応などを比較することで、その不動産の売却に強い不動産会社を見つけやすくなります。
不動産の売却を急がない
不動産の売却益を大きくするには、不動産の売却を急がないことが重要です。
売却を急ぐと、買い手から足元を見られて買い叩かれてしまう可能性があるためです。
売却を急がない場合、無理な値下げ要求を断り、次の買い手が現れるのを待つことができる一方で、売却を急ぐと「これを断ったら期限までに売れないのでは」との思いから、要求を飲まざるを得ないかもしれません。
売出価格を高めに設定する
売出価格とは、売り手側の希望販売価格です。
売出価格は査定額をベースに決めることが一般的であるものの、査定額どおりにしなければいけないわけではありません。
売出価格を多少高めに設定することで、不動産の売却益が大きくできる可能性があります。
まとめ
不動産を売って売却益が出ると、これに対して譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は、自分で計算をして納税しなければなりません。
そのため、申告期限や計算方法を理解しておく必要があります。
また、不動産の売却益にかかる譲渡所得税は高額となる可能性もあります。
一方で、特例の適用が受けられる場合は譲渡所得税がゼロとなることも少なくありません。
譲渡所得税の額によっては資金計画に影響が及ぶ可能性があるため、不動産の査定額がわかった時点で譲渡所得税を試算しておくようにしてください。
不動産の査定には、ぜひ「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルは、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する不動産一括査定です。
おうちクラベルでは、査定依頼フォームへ1度入力するだけで複数の不動産会社に査定の依頼をすることができます。
複数社の査定額を比較することで、その不動産の売却益がどの程度出るのか想定しやすくなるほか、その不動産の売却に強い不動産会社を見つけやすくなります。