物やサービスの売買では、一般的に10%の消費税がかかります。
では、土地や建物など不動産の売却にも、消費税はかかるのでしょうか?
不動産の売却では消費税がかからないことが多いものの、中には例外的に消費税がかかるケースもあります。
今回は、不動産の売却に消費税がかかるケースについて詳しく解説します。
消費税とは
消費税とは、商品やサービスの購入に対して課される税金です。
消費税の課税対象者は、商品などを売る店ではなく、商品などを買う消費者です。
しかし、それぞれの消費者が個々で消費税を計算して納税することは現実的ではなく、そのような仕組みとすると社会が混乱してしまいかねません。
そこで、消費者が商品などを買う際に商品の購入対価と併せて消費税を店に支払い、店がまとめて納税する仕組みとなっています。
その仕組みを、非常に簡素化した例で解説すると次のようになります。
定価100円の商品を買う場合、消費者は店に110円(=100円+消費税10円)を支払います。
その店でこの商品が1年間に100個売れたとすると、店は1,000円(=10円×100個)の消費税を預かっていることとなります。
しかし、店がこの1,000円をそのまま納税するわけではありません。
なぜなら、店もこの商品を仕入れたり店の電気代などの経費を支払ったりする際に、消費税を負担しているためです。
店がその1年間に支払った消費税が600円であるとすると、店が納める消費税は400円(=1,000円-600円)となります。
これが、消費税の基本的な仕組みです。
なお、「消費税は10%」と説明されることが多いものの、厳密には消費税率は7.8%であり、地方消費税率2.2%と合わせて10%となります。
また、一部の商品では軽減税率が適用されます。
ただし、ここまでを踏まえると複雑となるため、この記事では原則として消費税を10%として解説しています。
参照元:消費税のしくみ(国税庁)
不動産の売却で消費税はかかる?
不動産を売却する場合、消費税はかかるのでしょうか?
消費税がかかるかどうかは売却をした不動産の種類によって異なっており、それぞれ次のとおりです。
- 土地:かからない
- 自宅建物・別荘:かからない
- 事業用建物・投資用建物:かかることがある
土地:かからない
不動産のうち、土地の売却には消費税はかかりません。
自宅建物・別荘:かからない
不動産のうち、建物の売却はその用途によって消費税がかかるかどうかが異なります。
自宅の建物や別荘など、私用の建物の売却に消費税は課されません。
事業用建物・投資用建物:かかることがある
建物が事業用や投資用である場合、売却をした者の区分によって消費税がかかることがあります。
それぞれ次のとおりです。
売主が消費税の免税事業者である場合
売主が消費税の免税事業者である場合、事業用建物や投資用建物を売っても消費税はかかりません。
免税事業者とは、「基準期間」における課税売上高が1,000万円以下の事業者です。
基準期間とは、それぞれ次の期間です。
- 個人事業者の場合:前々年
- 法人の場合:原則として前々事業年度
ただし、次の「特定期間」の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間から課税事業者となります。
なお、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額により判定することも認められています。
- 個人事業者の場合:その年の前年の1月1日から6月30日までの期間
- 法人の場合:その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間
つまり、元々その建物を売却した期間に消費税を納める必要がなかった者(個人や法人)は、事業用建物や投資用建物を売ったからといって、消費税がかかるわけではないということです。
ただし、その事業用建物や投資用建物の売却価格が1,000万円を超えている場合は、これを理由に近い将来消費税の免税事業者から外れる可能性があります。
そのため、継続的に事業所得や不動産所得を得ている場合は、事業用建物や投資用建物を売却する際にあらかじめ税理士へ相談しておくことをおすすめします。
売主が消費税の課税事業者である場合
売主が消費税の課税事業者である場合は、事業用建物や投資用建物の売却に対して消費税がかかります。
事業用建物や投資用建物の売却だけに消費税が課されるわけではなく、他の事業上の収入などと併せて消費税が課税されます。
個人・法人別の不動産の売却でかかる消費税
売主の区分別の消費税の納税義務をまとめると、次のとおりとなります。
土地の売却 | 自宅建物の売却 | 事業用建物や投資用建物の売却 | ||
一般個人 | 非課税 (自宅の土地などは課税対象外) | 課税対象外 | - | |
個人事業者 | 免税事業者 | 免税 | ||
課税事業者 | 課税 | |||
法人 | 免税事業者 | - | 免税 | |
課税事業者 | 課税 |
なお、それぞれ次のとおり用語を使い分けています。
- 課税対象外:消費税は「国内において事業者が事業として対価を得て行う取引」が課税対象であるところ、これに該当しないことによって消費税がかからない取引
- 非課税:本来は消費税の課税対象であるものの、課税の対象としてなじまないことなどを理由に課税対象から外されていることによって消費税がかからない取引
- 免税:本来は消費税の課税対象であるものの、事業者が免税事業者であることを理由の納税を免除されること
不動産の売却に消費税がかかる場合の注意点
不動産の売却に消費税がかかる場合は、次の点に注意が必要です。
- 消費税分を加味して売却価格を決める必要がある
- 確定申告が必要となる
- 納税資金を残しておく
消費税分を加味して売却価格を決める必要がある
最大の注意点は、消費税分を加味して売却価格を決める必要があることです。
不動産売却に消費税がかかる場合、買主から受け取った売却対価から消費税を納めなければなりません。
消費税を加味することなく売出価格を決めてしまうと、手元に残る金額が消費税分だけ少なくなってしまいます。
そのため、不動産の売却に消費税がかかる場合は、これを見越して売出価格を定める必要があります。
不動産の売却をご検討の際は、ぜひ「おうちクラベル」をご利用ください。
おうちクラベルとは、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する不動産一括査定です。
査定依頼フォームへ1度入力するだけで複数の不動産会社へ査定の依頼をすることができ、複数社による査定額を比較することで、その不動産の売却に強い不動産会社を見つけやすくなります。
不動産の売却に消費税がかかる場合は、この点も含めて不動産会社の担当者へ相談のうえ売出価格を検討するようにしてください。
確定申告が必要となる
不動産の売却に消費税がかかる場合は、翌年1月1日から3月31日までの間に個人消費税の確定申告が必要です。
所得税の確定申告と個人消費税の確定申告は別々の申告になるので、それぞれの確定申告を忘れないように注意が必要です。
なお、法人の場合の申告期限は、事業年度終了日の翌日から2か月以内です。
納税資金を残しておく
不動産の売却に消費税がかかる場合は、納めるべき消費税が高額となってしまいがちです。
そのため、買主から受け取った売買代金は本体価格と消費税とに区分したうえで、消費税分は手元に残しておいてください。
消費税分まで他の用途に使ってしまうと、消費税の納税に苦慮することとなりかねないためです。
不動産の売却でかかる費用に消費税はかかる?
不動産の売却には、さまざまな費用がかかります。
では、これらの費用には消費税がかかるのでしょうか?
仲介手数料など民間事業者へ支払う費用には消費税がかかる
不動産の売却でかかる費用のうち、特に金額が大きくなりがちなものは、不動産会社に支払う仲介手数料です。
そのほかに、ハウスクリーニング費用や家の解体費用などがかかることがあります。
このような民間の事業者へ支払う費用は、原則として消費税の課税対象です。
そのうち、仲介手数料には法令で上限額が定められており、それぞれ次のとおりです。
この上限額も、消費税の支払いを前提として設定されています。
売却価格 | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 売却価格の5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の部分 | 売却価格の4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 売却価格の3%+消費税 |
仲介手数料は高額となることが多いものの、よい不動産会社に不動産の売却の依頼をすることが成功へのカギとなります。
その不動産の売却に強い不動産会社をお探しの際は、ぜひ「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルの査定依頼先の不動産会社は実績豊富な優良企業ばかりであり、よい不動産会社と出会いやすくなります。
税金には消費税はかからない
後ほど解説しますが、不動産の売却にはさまざまな税金がかかります。
このような税金には、消費税はかかりません。
税金にさらに消費税がかかるとなると、二重課税となってしまうためです。
不動産の売却でかかるその他の税金
不動産の売却では、消費税以外にもさまざまな税金がかかります。
対象となる主な税金は次のとおりです。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
印紙税
印紙税とは、契約書や領収証などにかかる税金です。
不動産の売買契約書も印紙税の課税対象であり、税額分の収入印紙を貼って納税しなければなりません。
収入印紙は切手サイズの証紙であり、郵便局や市区町村役場、法務局などで購入できます。
不動産の売買契約書にかかる印紙税は、その契約書に記載する契約金額(不動産の売買価格)に応じてそれぞれ次のとおりです。
2024年3月31日までに作成する契約書には軽減税率が適用されます。
契約金額 | 印紙税額 (2024年年3月31日までの軽減税率) |
---|---|
50万円以下 | 200円 |
100万円以下 | 500円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
1億円以下 | 30,000円 |
5億円以下 | 60,000円 |
10億円以下 | 160,000円 |
50円以下 | 320,000円 |
50億円超 | 480,000円 |
印紙税は契約ごとではなく、作成した契約書の通数分必要です。
一般的に不動産の売買契約書は2通作成して売主と買主がそれぞれ保管するため、2通分の印紙税がかかります。
印紙税は、売主と買主がそれぞれ保管する契約書に貼付すべき分を負担することが一般的です。
登録免許税
登録免許税とは、登記などに対してかかる税金です。
不動産を売買して名義を変える際の登記にも登録免許税はかかるものの、買主が負担することが一般的です。
一方、売却する不動産に抵当権が付いている場合、遅くとも引き渡しの時までに抵当権を抹消する必要があります。
この抵当権抹消登記にかかる費用は売主が負担します。
抵当権とは、ローンの返済が滞った際に、金融機関などの債権者がその不動産を競売(けいばい)にかけてローン残債を回収するための権利のことです。
抵当権の抹消には、次の費用がかかります。
- 登録免許税:抵当権を消す不動産の数×1,000円
また、抵当権の抹消手続きを司法書士へ依頼する場合、別途1万円から2万円程度の報酬がかかります。
この司法書士報酬は税金ではないため、消費税がかかります。
譲渡所得税
不動産を売却して利益が出ると、その利益に対して譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は納付書が送られてくるのではなく、消費税などと同じく自分で計算して申告しなければなりません。
譲渡所得税の申告期限は、売却の翌年2月16日から3月15日までです。
不動産の売却にかかる譲渡所得税は、次の式で算定します。
- 課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
- 譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率
計算要素の概要は、それぞれ次のとおりです。
計算要素 | 概要 |
---|---|
収入金額 | 不動産の売却によって買主から得る対価 |
取得費 | 不動産の取得に要した購入代金、建築代金、仲介手数料、登記費用など。 不明な場合は「収入金額×5%」で計算する |
譲渡費用 | 不動産を売るために直接かかった費用。 仲介手数料、印紙税、土地を売るために支払った建物の解体費用など |
特別控除 | 要件を満たすことで受けられる特別な控除。 代表的なものは次のとおり ・居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除 ・被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特別控除 ・平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除 ・低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除 |
税率 | 売却した不動産の所有期間に応じて15%(長期)または30%(短期)。 なお、別途住民税と復興特別所得税が必要 |
譲渡所得税の計算は複雑であり、注意点が少なくありません。
特別控除の適用を受けることで譲渡所得税がゼロとなることも多いものの、特別控除にはそれぞれ細かな要件が定められておりこれをすべて満たす必要があります。
そのため、不動産の査定額がわかったら税理士などの専門家へ相談のうえ、譲渡所得税額を試算してもらうことをおすすめします。
特別控除の適用が受けられない場合は譲渡所得税が高額となる可能性があり、試算してもらうことで資金計画が立てやすくなるためです。
不動産の査定には、ぜひ「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルでは、査定依頼フォームへ1度入力するだけで複数の不動産会社へ査定の依頼をすることができ、不動産の売却適正額を把握しやすくなります。
まとめ
不動産の売却には、原則として消費税はかかりません。
ただし、売主が消費税の課税事業者である場合、事業用建物や投資用建物の売却には消費税がかかります。
不動産の売却に消費税がかかる場合は、これを加味して売出価格を設定する必要があります。
なぜなら、消費税を考慮せずに売出価格を決めてしまうと納付すべき消費税の分だけ手元に残る金額が少なくなり、資金計画に支障をきたす可能性があるためです。
そのため、消費税がかかる不動産の売却では、特に慎重に売出価格を決めるようにしてください。
売出価格を適切に設定するには、査定が非常に重要となります。
売出価格は査定額をベースとして決めることが一般的であるためです。
不動産の売却をご検討の際は、ぜひ「おうちクラベル」を活用ください。
おうちクラベルは、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する不動産一括査定です。
査定依頼フォームへ1度入力するだけで複数の不動産会社へ査定の依頼をすることができるため、査定額などを比較することでその家の売却に強い不動産会社を見つけやすくなります。