不動産は、単独ではなく複数人での共有名義となっていることがあります。
では、共有名義となっている不動産を売却することはできるでしょうか?
また、共有名義の不動産を売却するにはどのような方法があるでしょうか?
今回は、共有名義の不動産を売却する方法や流れなどについて詳しく解説します。
共有名義の不動産とは
共有名義の不動産とは、1人が単独で所有しているのではなく、複数人で共有している不動産のことです。
共有名義の不動産が生まれる原因はさまざまですが、たとえば複数人でお金を出し合って不動産を購入することや、相続などが原因となることが多いといえます。
勘違いをしている人も少なくありませんが、共有名義の不動産はそれぞれが一定面積分の権利を持っているわけではありません。
たとえば、200㎡の土地をA氏とB氏が1/2ずつの割合で共有している場合、A氏とB氏がそれぞれ100㎡分の権利を持っているわけではないということです。
この場合、A氏とB氏はそれぞれこの土地の全体である200㎡を使うことができます。
ただし、使用できる割合は持分に応じることとなるため、たとえば1年のうち半年ずつ使用することとしたり、一方がずっと土地を使用する代わりにもう一方の共有者に対価を支払ったりするなどの対応を検討することとなります。
共有名義の不動産の共有者ができること
共有名義の不動産の共有者は、それぞれ次のことをすることができます。
各共有者が単独でできること
不動産の「保存行為」は、各共有者が単独で行うことが可能です。
保存行為には、たとえば不動産の状態を維持するための修繕や、不法占拠者を追い出す行為などが該当します。
共有持分の過半数でできること
不動産の「管理行為」は、共有持分の過半数で行います。
管理行為には、たとえば短期(土地:5年以下、建物:3年以下)の賃貸借の設定や、形状や効用の著しい変更を伴わないリフォームなどが該当します。
共有者全員の同意が必要となること
不動産の「変更行為」には、共有者全員の同意が必要です。
管理行為に該当しない賃貸借の設定や、形状や効用の著しい変更を伴うリフォームなどが該当します。
また、共有となっている不動産の全体を売却する際にも共有者全員の協力が必要です。
共有名義となっている不動産を売却する際は、ぜひ「おうちクラベル」をご利用ください。
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共有名義の不動産を売却する5つの方法
共有名義となっている不動産の売却は、次の方法で行うことができます。
- 自分の共有持分だけを売却する
- 共有者全員で協力して不動産全体を売却する
- 他の共有者の持分を買い取って不動産全体を売却する
- 自分の共有持分を他の共有者に売却する
- 土地を分筆して売却する
ここでは、A氏、B氏、C氏が1/3ずつの割合で不動産を共有していることを前提に解説します。
自分の共有持分だけを売却する
1つ目は、自分の共有持分だけを売却する方法です。
不動産は、自分の共有持分だけを売却することが可能です。
たとえば、A氏が自分の有する1/3の持分だけを売却できるということです。
また、この場合はB氏やC氏の同意を得る必要はありません。
ただし、この場合は売却価格が非常に低くなる傾向にあります。
なぜなら、A氏の共有持分のみを買った人はその後B氏やC氏とこの不動産を共有することになり、自由な活用が制限されるためです。
このような不動産を積極的に買う人はほとんどおらず、購入者は共有不動産を専門的に取り扱う不動産会社となることが多いといえます。
共有者全員で協力して不動産全体を売却する
2つ目は、共有者全員で協力して不動産全体を売却する方法です。
共有者全員で協力できると不動産の全体を売ることができるため、よりよい条件で不動産を売れる可能性が高くなります。
とはいえ、不動産がいくらで売れるのかがわからないと共有者も賛同するかどうかを決めることが困難です。
そのような際は、ぜひ不動産一括査定である「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルを活用して不動産の売却適正額を把握することで、各共有者が売却に賛同するかどうかを判断しやすくなります。
他の共有者の持分を買い取って不動産全体を売却する
3つ目は、一部の共有者が他の共有者の持分を買い取って不動産全体を売却する方法です。
たとえば、A氏があらかじめB氏とC氏の共有持分を買い取り不動産をAの単独所有にしたうえで不動産を売り出す場合などが挙げられます。
この場合、A氏が不動産を買い取った後は不動産がA氏の単独所有になるため、その後はA氏の好きなタイミングで不動産を売却することが可能です。
自分の共有持分を他の共有者に売却する
4つ目は、自分の共有持分を他の共有者に売却する方法です。
たとえば、A氏が自身の共有持分をB氏やC氏に売却する場合などがこれに該当します。
土地を分筆して売却する
5つ目は、共有となっている土地を分筆して売却する方法です。
分筆とは、1筆の土地を複数の土地に分けることを指します。
共有となっている不動産が比較的広い土地であり、分筆しても各土地の効率的な利用が妨げられない場合は、これが選択肢の1つとなります。
たとえば、共有している土地が600㎡の更地である場合、200㎡ずつの3筆に分けてこれをA氏、B氏、C氏が単独所有することなどが該当します。
単独所有となった後は、これをそのまま所有するか売却するかについて各自が自由に決めることが可能です。
共有名義の不動産を共有者全員で売却する流れ
共有名義の不動産を共有者全員の協力で売却する場合、どのような流れとなるでしょうか?
一般的な流れは次のとおりです。
- 不動産の共有者を確認する
- 共有者全員で売却へ向けて相談する
- 売却手続きを代表して進める者を決める
- 不動産会社に査定の依頼をする
- 売却を依頼する不動産会社を決める
- 不動産会社と媒介契約を締結する
- 不動産を売りに出す
- 必要に応じて内見や問い合わせに対応する
- 売買契約を締結する
- 不動産を引き渡す
不動産の共有者を確認する
共有名義の不動産を売却する際は、はじめに不動産の共有者を確認します。
不動産の共有者は、原則として法務局から全部事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せることで確認できます。
ただし、中には住所が変わっても登記を変更していないケースや相続が起きても故人名義のままとしているケースも散見されます。
そのため、登記上の共有者全員と連絡がとれることを確認する必要があります。
共有者全員で売却へ向けて相談する
共有者がわかったら、共有者全員で売却に向けて相談します。
協議がまとまらない場合や、共有者の中に連絡が取れない人がいる場合は、弁護士などの専門家へ相談するようにしてください。
なお、売却想定額がわからないと売却するかどうかの決断をすることが難しいと主張する共有者がいる場合は、この段階で先に査定の依頼をすることも1つの手です。
査定にはぜひ、「おうちクラベル」をご活用ください。
売却手続きを代表して進める者を決める
共有名義となっている不動産を売却する方向に決まったら、売却の手続きを代表して行う者を決めます。
共有者が2人など少数である場合は、常に一緒に手続きを進めることも1つの方法であるものの、共有者が多い場合はその都度全員で手続きをしていては非常に煩雑です。
そのため、代表者を1人定め、その者が代表して売却手続きを進めることがよく行われています。
不動産会社に査定の依頼をする
売却手続きを代表する者が決まったら、その者から不動産会社へ査定の依頼をします。
査定とは、不動産会社にその不動産の売却適正額を算定してもらう手続きです。
査定は1社だけではなく、複数の不動産会社へ依頼することをおすすめします。
なぜなら、不動産会社によって査定額が異なることは珍しくなく、複数社へ依頼することで売却適正額が把握しやすくなるためです。
また、査定額や不動産会社の対応などを比較することで、その不動産の売却に強い不動産会社を見つけやすくなる効果も期待できます。
査定にはぜひ、「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルでは、査定依頼フォームへ1度入力するだけで複数の不動産会社に査定の依頼ができるため、自分で1社1社不動産会社を回る必要はありません。
売却を依頼する不動産会社を決める
査定額が出揃ったら、不動産の売却を依頼する不動産会社を決めます。
不動産会社は査定額の高さのみで決めるのではなく、査定額への説明の明確さや担当者の誠実さなどを総合的に踏まえて決めることをおすすめします。
なぜなら、査定額はあくまでもその不動産会社が考える売却予想額でしかなく、必ずしもその価格で不動産を売却する保証ではないためです。
不動産会社と媒介契約を締結する
不動産を売却する不動産会社が決まったら、不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社に買主を探してもらったり、買主との売買契約を仲介してもらったりするために締結する契約です。
媒介契約には次の3種類があります。
状況や希望に合った契約を選択してください。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
他の不動産会社へ重ねての依頼 | 不可 | 不可 | 可 |
自己発見取引 (自分で買主を見つけて売却すること) | 不可 | 可 | 可 |
指定流通機構(レインズ)への登録義務 | 5営業日以内 | 7営業日以内 | 義務なし |
報告頻度 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 指定なし |
不動産を売りに出す
不動産会社と媒介契約を締結したら、「売出価格」を決めて不動産を売りに出します。
売出価格とは、売主の希望売却価格です。
査定額をベースに決めることが多いものの、高めに設定することでより高く不動産が売れる可能性が高くなります。
ただし、あまり高くしすぎると不動産が一向に売れない事態となりかねません。
そのため、売出価格は不動産会社の担当者や他の共有者と相談したうえで慎重に決めるようにしてください。
必要に応じて内見や問い合わせに対応する
不動産を売りに出すと、購入希望者から問い合わせが入ります。
問い合わせには原則として不動産会社が対応してくれるため、直接対応する必要はありません。
ただし、内見には可能な限り売主も立ち会うとよいでしょう。
売主が内見に立ち会い丁寧に対応することで、購入希望者が安心して不動産を購入しやすくなるためです。
売買契約を締結する
購入希望者が不動産の購入を決めたら、売買契約を締結します。
売買契約は共有者全員が一堂に会して行う場合もあるものの、代表者が他の共有者から委任状の交付を受けて行うことも少なくありません。
委任状の様式は不動産会社に用意があることが多いため、不動産会社へ相談するとよいでしょう。
売買契約を締結すると、買主から売主に対して売買代金の5%から10%程度の手付金が交付されることが一般的です。
その後、相手方が履行に着手するまでの間に契約を解除するには、次の対応が必要となります。
- 売主からの解除:手付金の倍額返し
- 買主からの解除:手付金の放棄
不動産を引き渡す
あらかじめ取り決めた日に、不動産を引き渡します。
この日のことを、決済といいます。
決済日には次のことが同時に行われることが一般的です。
- 買主のローンの実行
- 買主から売主への売買代金全額の支払い
- 売主から買主へ不動産の名義を変えるための書類への署名押印
- 売主から買主へ家の鍵などの引き渡し
なお、共有名義となっている不動産を売却する場合、決済には代表者のみが立ち会う場合もあります。
ただし、万が一本人の意思に背いて不動産の名義を変えてしまうと一大事となるため、決済の場に立ち会わない共有者については、司法書士が本人確認と売却意思の確認を別途行うことが一般的です。
共有名義の不動産売却で起こりうるトラブル
共有名義の不動産売却にまつわるトラブルには、どのようなものが想定されるでしょうか?
考えられる主なトラブルは次のとおりです。
- 売却について意見がまとまらない
- 一部の共有者と連絡が取れない
売却について意見がまとまらない
1つ目は、共有者全員の協力で不動産を共有しようにも、売却について意見がまとまらないトラブルです。
たとえば、共有者の一部が「売却(換金)を急ぎたいので2,000万円なら売ってもよい」と考えている一方で、他の共有者が「2,300万円以上でないと売りたくない」と考えている場合などが挙げられます。
このように、共有者同士で売却に関する意見が調整できず、売却の話が頓挫する可能性があります。
一部の共有者と連絡が取れない
2つ目は、一部の共有者と連絡が取れないトラブルです。
特に共有者が多い場合、共有者の一部の行方がわからなくなり、売却に関する話し合いができなくなる可能性があります。
この場合は、不動産法務に詳しい弁護士へ相談することで解決できる可能性があるため、あらかじめ相談して解決を図るとよいでしょう。
共有名義の不動産売却ならではの注意点
売却する不動産が共有名義である場合に特有の注意点は次のとおりです。
- 共有者をあらかじめ入念に確認する
- かかる費用や税金は持分に応じて配分される
共有者をあらかじめ入念に確認する
共有名義となっている不動産の全体を売却しようとする際は、あらかじめ共有者を入念に確認しておく必要があります。
特に相続が繰り返されて共有者が多くなっている場合は、共有者を確定し連絡を取るだけで手間と時間がかかるかもしれません。
また、共有者の中に1人でも故人がいる場合は、そのままでは売却を進めることができず、売却に先立って相続登記(故人から生存している相続人などへと名義を変える手続き)が必要です。
誰が現在の共有者であるのか判断することが難しい場合は、あらかじめ司法書士などの専門家へ相談するようにしてください。
かかる費用や税金は持分に応じて配分される
不動産の売却には、さまざまな費用や税金がかかります。
売却でかかる費用や税金は、原則としてそれぞれの共有者がその持分に応じて負担します。
あらかじめ共有者間でかかる費用や税金などの情報を共有し、手元に残る金額について誤解が生じないようにしておくとよいでしょう。
共有名義の不動産の売却で必要となる主な書類
共有名義の不動産全体を売却するにあたっては、次の書類などが必要となります。
- 共有者全員の実印、印鑑証明書
- 権利証または登記識別情報
- 土地測量図と境界確認書
共有者全員の実印、印鑑証明書
共有名義となっている不動産の全体を売却する際は、共有者全員の実印と印鑑証明書が必要となります。
代表者のみの実印や印鑑証明書のみで共有不動産の全体を売却することはできません。
権利証または登記識別情報
共有名義となっている不動産を売却する際は、その不動産の権利証または登記識別情報が必要となります。
権利証と登記識別情報通知は、いずれもその不動産を取得して登記をする際に法務局から発行される書類です。
以前は権利証が発行されていたものの、2004年に不動産登記法が改正されたことによって権利証に代わって登記識別情報通知が発行されることとなりました。
改正法への対応時期は登記所によって異なるものの、その不動産の取得時期が2006年頃より前であるか後であるかが1つの目安となります。
なお、権利書は不動産が共有名義であっても、1通のみ発行されることが原則です。
ただし、たとえばもともと父と母が共有していた不動産についてその後父が亡くなり父の共有持分を長男が相続した場合など、1つの不動産について有効な権利証が複数ある場合もあります。
一方、登記識別情報は共有者全員にそれぞれ発行されることが原則です。
ただし、こちらは不発行を選択するケースもあり、例外的に登記識別情報を持っていない共有者がいる可能性もあります。
権利書や登記識別情報が見当たらない場合は、再発行を受けることはできず、司法書士が別途本人確認手続を踏むこととなります。
そのため、紛失している場合は、あらかじめ売却を依頼している不動産会社の担当者へ相談しておくようにしてください。
土地測量図と境界確認書
土地の境界が確定していることの確認資料として、土地測量図と境界確認書が必要です。
境界が確定されていない場合は、売却に先立って測量を依頼する必要が生じます。
まとめ
共有名義の不動産であっても、売却することは可能です。
ただし、自分の共有持分のみを売却する場合は売却価格が非常に安くなる可能性が高くなります。
そのため、共有名義となっている不動産を売却する際は共有者全員で協力して売却するか、他の共有者の持分を買い取って不動産全体での売却を目指すとよいでしょう。
共有名義の不動産の売却をご検討の際は、ぜひ「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルは、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する不動産一括査定です。
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