不動産売買を行う際には、手付金を支払うのが一般的です。しかし「手付金の相場や支払うタイミング、細かなルールが分からない」と、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
手付金はトラブルになりやすい項目なので、不動産売買の前にきちんと意味や支払いタイミングを理解しておくことが重要です。
本記事では、不動産売買の手付金に関して、種類や金額、支払いのタイミングなどを解説します。不動産売買を安心・安全に進めるためにも、最後まで読み進めてみてください。
- 1 1.不動産売買における手付金とは
- 2 2.不動産売買における手付金の種類
- 3 3.不動産売買における手付金の相場・上限
- 4 4.不動産売買の手付金を受け取るタイミング
- 5 5.売主が契約を解除できるタイミングと条件
- 6 6.買主が契約を解除できるタイミングと条件
- 7 7.不動産売買に必要なその他の費用
- 8 8.不動産売買の「売却側」における手付金の注意点
- 9 9.不動産売買の「買主側」における手付金の注意点
- 10 10.購入・住み替えの場合は「手付金の保全措置」「一般保証業務」も理解しておこう
- 11 11.不動産売買の手付金に関するよくある疑問
- 12 12.不動産売買の手付金はトラブルになりやすいので注意が必要
- 13 この記事の監修者
1.不動産売買における手付金とは
手付金とは、売買契約の締結時に買主から売主に支払うお金を指します。手付金は支払いが義務付けられているわけではありませんが、不動産売買を円滑に進めるために、売買契約の締結時に支払うのが一般的です。
手付金の目的や各種支払金との違いなどを、詳しく解説します。
1-1.手付金の目的
手付金とは、売買契約時に買主から売主に支払うお金のことです。
手付金の目的は、主に以下の2つです。
- 売買契約が明確に成立していることを表す
- いつでも契約解除ができる状態を防ぐ
手付金の目的の1つは、売主と買主お互いの売買意思の証明です。売買契約書への署名・押印だけではなく、買主が手付金を支払い売主が手付金を受領して、お互いの意思を明確にする役割があります。
また、簡単に契約解除が行われないようにするのも目的の1つです。
不動産は金額が大きく、住居の引っ越しなども関係するので、いつでも契約キャンセルできる状態ではお互いが困ります。そのため、売買契約から不動産の引き渡しまでを円滑に進めるために手付金があります。
そして、手付金は売買代金の先払いではないため、決済時に一度返却が必要です。しかし、契約書に売買代金の一部として充当する旨を盛り込めば、決済時に売買代金から手付金を差し引いた残金を支払う形にできます。
1-2.内金(中間金)との違い
内金とは、売買契約の締結から引き渡し前までに支払うお金です。
手付金は不動産売買代金の一部として支払うわけではありませんが、内金は不動産代金の一部として前払いする趣旨で支払うという違いがあります。
しかし、不動産売買で内金を支払うケースは珍しく、注文住宅の建築の際などにハウスメーカーへ中間金を支払うケースがあります。
1-3.頭金との違い
頭金とは、不動産売買にあてる自己資金のことを指します。不動産売買において売主から頭金の支払いを求められるわけではなく、頭金の支払いを決めるのはあくまでも買主です。
例えば、3,000万円の住宅購入で、2,000万円の住宅ローンを組み、残りの1,000万円は自己資金で払う場合に、自己資金にあたる1,000万円が頭金という考えです。
住宅ローンを借入れる際に頭金を支払うと、借入額が少なくなり住宅ローン完済時の総支払額を抑えられます。
また、住宅ローンによっては物件価格の1割以上の頭金を求められる場合があります。売買価格をすべて住宅ローンでまかなう場合には、頭金は必要ありません。
手付金の支払いは、頭金として用意した資金をあてるのが一般的です。
1-4.申込証拠金との違い
申込証拠金とは、優先的に不動産を購入できる権利を確保するためのお金です。
不動産は一点ものです。そのため、同じような土地の形や同じような間取りの物件があったとしても、完全に同じものは存在しません。
購入を悩んでいる間にほかの人に買われてしまい、後悔することもあります。しかし、不動産は高額なためすぐに結論が出ないという方も多いでしょう。
「購入する意思がきちんとあります」という意味で申し込み証拠金をおさめると、不動産を一定期間押さえたうえで購入を検討できます。金額の相場は、不動産の価格に関わらず5〜10万円程度です。
売買契約に至れば手付金・諸経費として充当され、売買契約前であればキャンセルすると全額返却されます。
2.不動産売買における手付金の種類
一口に手付金といっても、種類によってさまざまな意味合いが含まれます。手付金の種類は以下の3つです。
- 証約手付
- 解約手付
- 違約手付
それぞれ詳しく解説します。
2-1.契約の証拠である「証約手付」
証約手付とは、不動産売買契約の成立を証明するために授受される手付金です。
すべての手付に共通する内容ですが、買主側の購入意思を表します。不動産を確実に購入するために、重要な意味を持つのが証約手付です。
2-2.解約権の保留を意味する「解約手付」
解約手付とは、買主と売主双方に契約締結後でも解約できる権利を与える手付金です。不動産売買において、手付金の多くは解約手付に該当します。
解約手付の授受が行われている場合には、契約成立後であっても「契約の履行に着手する前まで」という条件で、買主・売主いずれかの意思で契約を解除できます。
このような契約の解除を手付解除と呼び、手付解除する際には以下の要件を満たすことが民法第557条第1項で定められています。
【買主の手付解除】
支払っている手付金を全額放棄する
【売主の手付解除】
受け取っている手付金の倍額を返還する
買主による手付金の放棄を「手付損」や「手付流し」と呼び、売主による手付金の倍額の支払いを「手付倍返し」と呼びます。
売買契約において、手付金に機能を持たせるかどうかは売主・買主双方の合意によって決めるのが一般的です。当事者間で手付金の機能を定義していなかった場合には、過去の判例に基づけば「解約手付」と推定されます。
2-3.債務不履行への対策を意味する「違約手付」
違約手付とは、契約内容に関して債務不履行が起こった場合に没収される手付金のことです。債務不履行とは、売買契約時に売主と買主で決めた内容(約束)が守られないことをいいます。
債務不履行の一例は以下のようなケースです。
- 売買金額の支払い期日までに買主がお金を用意できなかった
- 売主の抵当権の抹消が、引き渡し日に間に合わなかった
買主が債務不履行を起こした場合には、支払っている手付金が全額没収され、売主の場合は、手付金の返還とともに手付金と同額を支払う必要があります。
例えば、売買契約後に手付金として買主から売主に対して200万円の手付金を支払った場合に債務不履行が起こると、以下の支払いが発生します。
【買主の債務不履行が原因で契約解除になった場合】
支払った200万円を違約金として、売主に没収される
【売主の債務不履行が原因で契約解除になった場合】
受け取った200万円を返還し、違約金として手付金の同額である200万円を支払う
違約手付の場合は、手付金の放棄や倍額の支払いとは別に、損害賠償も請求される可能性があるので注意が必要です。
3.不動産売買における手付金の相場・上限
不動産売買における手付金の相場は、不動産価格の5%〜10%です。
個人間の売買では手付金の上限と下限は決まっていません。しかし、相場よりも高いと買主が見つかりにくく、低いと買主は見つかりやすくても解約されやすいなどのリスクが増加します。
ただし、手付金の額を必ずしも売買金額の5%〜10%にする必要はなく、あくまでも参考程度に考えるようにしましょう。相場を参考に、買主と売主でお互いが納得できる金額の設定をおすすめします。
また手付金額に上限はありませんが、例外として売主が不動産会社の場合は「不動産価格の20%」が上限と宅地建物取引業法第39条第1項で決められています。
3-1.手付金は合意があれば自由に設定できる
手付金には相場こそあるものの個人間売買で上限はなく、売主・買主の間で取り決めます。
売主の場合はできるだけ高く設定しておいたほうがリスクヘッジになりますが、高すぎても契約成立に至らない可能性があります。
相場より安く売りに出す場合や人気のエリアに売りに出す場合などは、高めの手付金を設定するなど状況によって金額を検討するとよいでしょう。
最終的には相場を参考にしながら、買主の購入意思やお互い納得できる金額の設定をおすすめします。
4.不動産売買の手付金を受け取るタイミング
不動産売買の手付金を受け取るタイミングは、基本的には売買契約の締結と同時です。そのため契約時には、まとまったお金を用意しておく必要があります。
手付金を受け取るタイミングと受け渡し方法に関して、詳しく解説します。
4-1.売買契約時に受け取る
手付金は、売買契約の締結時に受け渡します。
手付金は本来、物件の引き渡し時に一度返還するお金で、売却代金の一部ではありません。しかし、契約書での取り決めにより、売買代金の残金を支払う決済時に売買代金に充当するのが一般的です。
また、契約を証明するお金でもあるため、売主は仲介手数料などの費用にあてずに、留保しておく必要があります。
4-2.手付金の受け渡し方法
手付金の受け渡しは、原則現金です。
不動産売買価格の5%〜10%と高額になりやすい手付金を現金で受け渡す理由は、不動産会社の倒産や売主と連絡が取れなくなるといったリスクに備えるためです。
現金で預けておくと、売主責任で解約する場合に、手付金が返還されないという事態を避けられます。
また、不動産の契約が土曜日・日曜日・祝日に行われることが多く、銀行が休みのため現金で支払われるというのも理由の1つです。
しかし、不動産売買は高額の取引になるため、現金での準備が不安であれば契約日を平日に調整して小切手や振り込みで支払うケースもあります。
5.売主が契約を解除できるタイミングと条件
売主も買主もお互い契約解除できる権利を持っています。しかし、いつでも解除できる状態であれば一方が損をする可能性が高いです。
そのため、民法では契約解除ができる期日を定めています。売主が売買契約を解除できるタイミングと条件に関して詳しく解説します。
5-1.契約解除は「契約の履行に着手するまで」と決められている
手付金の解除では理由を問わずいつでも契約解除できますが、それでは売主・買主共に不安が残ります。
そのため、契約解除ができる期間として「契約の履行に着手するまで」と、民法五百五十七条(手付)で定められています。
履行の着手とは、買主が「売買金額の残金を支払う」などの場合、売主では「確定測量の実施」や「引き渡し条件の建物解体を実施」した場合などが考えられます。
ただし「契約の履行に着手するまで」では、履行の着手日までに期間が空き、お互い不安な状況が続き好ましくありません。そこで、売買契約書に「手付解除期日」を記載するのが一般的です。
手付解除期日を設定すると、解約可能な期日が明確になり、売主・買主が安心して取引できます。期日の設定では契約から決済までの期間を考慮して決める必要がありますが、契約から1ヶ月くらいが一般的です。
5-2.解約には「手付倍返し」が必要
売主が売買契約を解除する場合には、受け取った手付金と手付金の同額を買主に提供する「手付倍返し」が必要です。売主は返還を申し出るだけではなく、実際に買主に対して支払うことで解約が成立します。
例えば、売買金額3,000万円の契約で手付金として売買金額の5%を取り決めた場合には、買主から売主へ支払う手付金が150万円となります。
そのため、もし売主から手付解除を申し出た場合には、合計300万円を支払わなければ、現実的に契約解除ができないということです。
物件をなるべく早く売却したい売主側が契約の解除を申し出るのは少ないですが、さらに高額な購入者が現れた際に手付金を倍返しして契約解除するケースがあります。
5-3.履行の着手・手付解除期日以降は違約金が発生する
履行の着手後や手付解除期日以降に契約を解消したいと申し出た場合には、違約金が発生します。
不動産売買契約書では、債務不履行の取り決めとして契約解除に違約金を請求できると定めるのが一般的です。
例えば、買主による債務不履行(住宅ローンの審査を行っていなかった、残金の未払いなど)が起こった場合には、売主は契約の解除と違約金の両方が請求可能です。
一方で、売主による債務不履行(自己都合により不動産の引き渡しができなくなる、など)の場合には、買主から契約解除の申し出と手付金の返還、違約金を求められます。
違約金の金額相場は、売買金額の10%〜20%です。売主が宅地建物取引業者の場合は20%が上限です。違約金の金額が手付金を上回る場合は差額分を支払います。
6.買主が契約を解除できるタイミングと条件
売主と買主の契約解除のタイミングは、基本的には同じです。しかし、手付解除での条件などが異なります。
買主が契約を解除できるタイミングと条件に関して、詳しく解説します。
6-1.解除のタイミングは基本的に売主と同じ
不動産の売買契約を解除できるタイミングは、売主と同じく「履行の着手」や「手付解除期日」までが一般的です。
買主の「履行の着手」の例では「引き渡しに向け引っ越しの準備をした」「内金、中間金を支払った」などが挙げられます。
買主が住宅ローンを利用する場合は、売買契約書に住宅ローン特約を定めるのが一般的です。住宅ローン特約とは、住宅ローン審査に落ちてしまった場合の取り決めです。
住宅ローンの本審査に通るか通らないかは誰にもわかりません。そのため、住宅ローン審査の結果は買主の責任ではありません。売主責任ではないのに、手付金の放棄や違約金を請求されるのはあまりにも酷です。
そのため、融資未承認という結果がでた場合の契約解除を住宅ローン特約として定めておくと、万が一の場合に無条件で解約ができます。
ただし、売買契約後に自己都合で本審査に必要な書類を提出しなかった場合などは、特約の適用外になるので注意が必要です。
6-2.解約には「手付金の放棄」が必要
売買契約の締結後、買主が契約を解除するには売主に支払った手付金を放棄する必要があります。
手付金は高額になりやすいため、手付放棄すると今後の不動産購入に支障が出ることも考えられます。買主側から解除の可能性がないか、契約前に家族間での話し合いなどを通してしっかり考え、リスクをなくすことが重要です。
そのためには急いで契約するのではなく、双方納得した上で契約に進みましょう。
6-3.手付解除期日を過ぎると違約金が発生する
不動産売買では、手付解除期日を過ぎると一方的な契約解除はできません。
契約解除する場合は債務不履行となるため、契約書に準じて違約金の支払いが必要となります。違約金が手付金を上回る場合は、差額を支払います。
違約金の額は、物件代金の5〜20%で設定されることが多いです。違約金の額に下限と上限はありませんが、買主と売主双方が合意することで違約金の額を設定できます。
7.不動産売買に必要なその他の費用
不動産売買では手付金以外にも多くの費用がかかり、支払い時期も異なります。
お金の準備などもあるので、事前に費用内容と相場、支払い時期を確認しておきましょう。不動産の売却時と購入時にわけて、必要な費用を解説します。
7-1.不動産売却時の主な費用
不動産売却の際に必要な主な費用は、以下のとおりです。
費用項目 | 費用相場 | 支払い時期 |
仲介手数料 | 売買金額が400万円超えの場合:(売却額×3%+6万円)+消費税 | 売買契約時に半金、決済後に残りの金額 |
印紙税 | 売買金額に応じて、1,000円〜6万円程度 | 売買契約時 |
抵当権抹消費用 | 1,000円(司法書士に依頼するとおよそ1万〜5万円) | 所有権の移転登記の際 |
住宅ローンの返済手数料 | およそ5,000円〜3万円 | ローン返済時 |
譲渡所得税 | 短期譲渡所得(所有期間5年以内)=売却額×30.63%
長期譲渡所得(所有期間5年以上)=売却額×15.315% | 確定申告後 |
測量費用 | およそ50〜80万円 | 測量実施後 |
例えば、30年所有した土地と一軒家を3,000万円で売却した場合には、以下の費用が必要です。
【仲介手数料】
仲介手数料は、不動産会社への成功報酬として契約時に半金、決済後に残りの半金を支払います。売買金額によって限度額が決められています。
3,000万円×3%+6万円=96万円
96万円+消費税(96,000円)=105万6千円
【印紙税】
不動産の売買契約書のように、課税文書にかけられる税金です。売買契約書に必要な金額の収入印紙を貼り付けると納税したことになります。取引した金額によって収入印紙額が変わるので、国税庁の公式ホームページをご覧ください。
売買金額が3,000万円の場合は、1万円の収入印紙を用意します。
【抵当権抹消費用】
抵当権抹消費用は住宅ローンが残っている場合に必要です。不動産に対して銀行が抵当権を設定しており、抵当権を外さないと売却できません。そのため、司法書士に依頼して抵当権を抹消します。
費用は2万円と仮定します。
【住宅ローン返済手数料】
住宅ローンを一括返済する場合にかかる手数料です。手数料は銀行によって異なります。
費用はおよそ3万円程度です。
【譲渡所得税】
譲渡所得税は、所有している不動産の売却益が発生した際に支払う税金です。ただし、自己所有の居住用財産を売却した際には、最高で3,000万円までの控除が受けられます。
そのため今回の例では譲渡所得税はかかりません。
【測量費】
測量費は宅地の大きさ・形を正確に計る作業です。土地家屋調査士に依頼して測量してもらいます。
費用はおよそ50万円です。
これらを合計すると、161万6千円が必要となります。売買金額のおよそ5%です。
その他、家の解体費用や引っ越し費用、ハウスクリーニング代が必要になる場合もあります。
7-2.不動産購入時の主な費用
不動産購入時の主な費用は、以下のとおりです。
費用項目 | 支払い相場 | 支払い時期 |
仲介手数料 | 売買金額が400万円超えの場合:(売却額×3%+6万円)+消費税 | 売買契約時に半金、決済後に残りの金額 |
印紙税 | 売買金額に応じて、1,000〜60,000円 | 売買契約時 |
登録免許税 | 課税標準(固定資産課税台帳)×税率 | 登記時 |
司法書士への報酬 | 4万〜20万円 | 登記時 |
住宅ローン | 融資手数料3万円ほど | 融資実行時 |
火災保険料 | 5年間でおよそ50万円 | 物件引き渡し時に一括、または毎月払い |
不動産取得税 | 固定資産税評価額×3% | 後日請求 |
消費税 | 建物価格×10%(土地には消費税がかからない) | 引き渡し時 |
水道加入負担金 | 10万〜30万円 | 初回の水道利用時 |
修繕積立金(マンション購入の場合) | 毎月1万円ほど | 毎月 |
買主は、売主よりも多くの費用を必要とします。また、諸費用の多くは住宅ローンに組み込めず引き渡し日までに現金で払うのが一般的なため、早めに不動産会社から見積もりをもらうようにしましょう。
8.不動産売買の「売却側」における手付金の注意点
不動産売却の「売却側」における手付金の注意点は、以下の4つです。
- 個人間の不動産売買に収入印紙は必要ない
- 手付金は妥当な金額にする
- 手付解除期日は双方納得できるものにする
- 信頼できる不動産会社に契約書を作成してもらう
それぞれ詳しく解説します。
8-1.個人間の不動産売買に収入印紙は必要ない
印紙税とは、取引に伴い契約書や領収書などの文書を作成した際に、印紙税法に基づき課税される税金のことです。(※印紙税の手引き|国税庁)
不動産売買契約書や手付金の領収書は印紙税法に適用されますが、営業に関する場合にかぎります。例えば、不動産会社が売主で領収書を交付する場合です。個人の売主が不動産を売却して領収書を交付する際には収入印紙は必要ありません。
8-2.手付金は妥当な金額にする
個人が不動産を売却する際の手付金は自由に設定できますが、あまりにも高いと買主が見つかりづらくなり、安過ぎると気軽にキャンセルできてしまいます。
契約ができて、かつキャンセルされない金額を設定するのが重要です。もし買主から手付金の値引き交渉があったときは、キャンセルのリスクが高まるので慎重に検討しましょう。
手付金の額に関しては、不動産会社に相談しながら決めることをおすすめします。
8-3.手付解除期日は双方納得できるものにする
売主としては、キャンセルのリスクを回避するために手付解除期日を短く設定したいと考えてしまいます。しかし、短すぎると買主に不安を与え、契約が成立しないリスクがあるので注意が必要です。
そのため、手付の解除期日はお互いが合意できる期日に設定するのが大切です。受け渡しまでのスケジュールにもよりますが、一般的な手付金解除期日は「契約日から1ヶ月前後」に設定します。
8-4.信頼できる不動産会社に契約書を作成してもらう
手付金に関するトラブルの可能性を少なくするためには、信頼できる不動産会社に契約書の作成を依頼するのが大切です。
なぜなら、不動産売買では抜け漏れのない売買契約書を作成することがトラブル防止につながり、契約締結後に問題が起こると契約書の内容に注目が集まるからです。
不動産売買契約書に決まった形式はなく、買主・売主それぞれが納得できるものを作成できます。しかし、契約書作成には不動産に関する専門的な知識が必要なため、不動産会社と相談しながら進めるようにしましょう。
また、信頼できる不動産会社を選ぶには、複数の不動産会社を比較して決めるのがおすすめです。
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不動産の売却を検討している方は、信頼できる不動産会社を見つけるために、ぜひ利用してみてください。
9.不動産売買の「買主側」における手付金の注意点
不動産売買のときに「売主側」における注意点は以下の2つです。
- 住宅ローン特約が適用されないケースがある
- 任意売却物件には高額な手付金を支払わない
それぞれ詳しく解説します。
9-1.住宅ローン特約が適用されないケースがある
住宅ローンの本審査に落ちてしまった場合に、手付金が返還されて違約金なども請求されないのが住宅ローン特約です。
しかし、住宅ローン特約が適用されないケースもあります。
例えば、特約を付けて売買契約を締結したにもかかわらず住宅ローンの手続きを進めなかったり、書類等の不備で審査に通らなかったりした場合です。
住宅ローンの本審査では必要な書類が多く、審査結果が出るまでに時間もかかるので早めの申し込みをおすすめします。
9-2.任意売却物件には高額な手付金を支払わない
任意売却物件とは、住宅ローンの支払いが困難になった所有者が、売却してもローンの完済ができない場合に金融機関など債権者の合意を得て売却する物件のことです。
任意売却の場合は売主に経済的な余裕がないため、手付金の支払いには慎重になり高額な手付金の支払いは避けるようにしましょう。
例えば、売主が預かった手付金を使ったうえに売却を拒否したり、行方をくらましたりといったリスクがあります。手付金の額を極力低くするよう交渉し、後述する手付金の保証、保全などを検討しましょう。
10.購入・住み替えの場合は「手付金の保全措置」「一般保証業務」も理解しておこう
買主が払う手付金は高額になるケースが多く、売主に預けることに対して不安を感じる方もいるのではないでしょうか。そこで、不動産会社から物件を購入する際に活用できる制度として「手付金の保全措置」と「一般保証業務」の2つがあります。
それぞれ詳しく解説します。
10-1.手付金の保全措置とは?
手付金の保全措置とは、正式には「手付金等保管制度」といい、宅地建物取引業保証協会が万が一のときに備えて保証金を預かる制度です。
例えば、不動産会社が契約後に倒産してしまった場合などです。このような売主の都合によって不動産が引き渡せない事態になると、手付金の返還もされない可能性があります。
手付金の保全措置があることで買主のリスクを軽減できるため、宅地建物取引業法(第41条|手付金の保全)で義務付けられています。
2種類の保全措置の対応方法を解説します。
保全措置の種類 | 内容 |
銀行等による保証 | 手付金の返済義務について、銀行や信託銀行と連帯して保証する契約 |
保険事業者による保証保険 | 保険事業者へ保険料を支払い、手付金の返済義務に備える契約 |
10-2.手付金の保全措置の要件
手付金の保全措置は、すべての不動産売買で行われるわけではなく「手付金が一定額を超えた場合のみ」対象となります。
金額の基準は、不動産の工事が完了しているか否かで異なります。
時期 | 金額 |
工事完了前 | 手付金などの合計額が、売買代金の5%を超えるとき、または手付金が1,000万円を超えるとき |
工事完了後 | 手付金などの合計額が、売買代金の10%を超えるとき、または手付金が1,000万円を超えるとき |
しかし、以下の場合には手付金の保全措置は義務付けられていません。
- 売主が宅地建物業者でない個人間取引
- 不動産会社同士の取引
- 買主が対象不動産の登記を終えている
10-3.一般保証業務とは?
一般保証業務とは、上記で解説した手付金の保全措置の金額に満たない場合に活用する方法です。小額の手付金に対しても返還を保証する制度で、公益社団法人 不動産保証協会が行います。
利用するには保証協会と会員(不動産会社)との一般保証委託契約が必要なので、購入を検討する際は不動産会社に確認しましょう。
保証料は無料です。
10-4.保証の内容
保証の内容としては、手付金の返還だけではなく、中間金や前払金、ローンが通らず解除になった場合に支払った仲介手数料なども対象です。
11.不動産売買の手付金に関するよくある疑問
不動産売買の手付金に関してよくある質問をまとめました。
これから不動産の売買をする予定のある方は事前に確認してみてください。
11-1.手付金がなしでも契約はできる?
手付金なしでも不動産売買はできます。法律的な取り決めもありません。
しかし、手付金の授受がないと手付解約ができなくなります。手付解約ができないということは、契約後は何が起こっても買主は物件を購入しなければならないですし、売主も必ず物件を手放さなければなりません。
手付金の授受を行っていない状態は、売主・買主双方にリスクを伴うので、売買契約には手付金を取り入れることをおすすめします。
11-2.自分が履行に着手している場合も解除できない?
民法557条では、当事者の一方が履行に着手した際には契約解除できないとあります。しかし、判例では自分が履行して相手が履行していなかった場合には解約が可能です。
11-3.手付金を契約前に請求されたら支払ってもよい?
手付金は売買契約の締結時に支払うのが原則です。
契約前の支払いはリスクが高いため、基本的には断るほうがよいでしょう。例えば、手付金を預けた後に売主と連絡が取れなくなるといったケースが考えられます。
売買契約がないともしものときに支払いを立証できない可能性があるので、基本的には売買契約を締結した後に支払うようにしましょう。
12.不動産売買の手付金はトラブルになりやすいので注意が必要
今回は不動産売買時に支払う手付金に関して解説しました。
手付金は売買代金の10〜20%が相場で高額になることも多いです。また、きちんと理解しておかないと契約後に大きなトラブルに発展してしまいます。
トラブルを避けるためには手付金の理解が大切ですが、信頼できる不動産会社に依頼することが何より重要です。
そのためには、複数の不動産会社を比較したうえで自分に合う会社を選択するようにしましょう。
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