不動産売買契約の流れや準備・注意点・契約書のチェックポイントを解説

「はじめての不動産取引で契約の流れが分からない…」「売買契約を行う前の確認や準備はどうしたらいいの?」と不安に感じる方も少なくありません。

不動産売買契約は手付金や仲介手数料が発生するタイミングでもあります。契約後のトラブルを未然に防ぐためにも、契約の流れや注意点を事前に把握しておきましょう。

本記事では、不動産売買契約の流れや準備、注意点などを詳しく解説します。最後まで読み進めて、不動産売買契約をスムーズに進められるようにしておきましょう。

目次

1.戸建てやマンションなど不動産の売買契約を含む一連の流れ

不動産売買契約の流れを確認する前に、まずは不動産売買の全体像を確認しておきましょう。

不動産売買の一連の流れは以下のとおりです。

  1. 不動産会社と媒介契約を締結する
  2. 売主・買主で価格や引き渡し条件を交渉する
  3. 不動産売買契約を締結する
  4. 物件引き渡しまでに売主は引っ越しをする
  5. 残金の決済と物件の引き渡しを行う

それぞれ詳しく解説します。

1-1. 不動産会社と媒介契約を締結する

不動産を売却するためには、不動産会社と媒介契約を締結する必要があります。

媒介契約とは、不動産会社に物件の販売を依頼するために結ぶ契約のことで、以下の3種類があります。

 

一般媒介契約

専任媒介契約

専属専任媒介契約

複数社への依頼

1社のみ

1社のみ

自己発見取引

不可

売主への報告義務

なし

2週間に1回以上(休業日を含む)

1週間に1回以上(休業日を含む)

指定流通機構(レインズ)への登録義務

なし

契約締結の日から7日以内(休業日を除く)

契約締結の日から5日以内(休業日を除く)

一般媒介契約は、複数の不動産会社に売却依頼できるため、売却活動における自由度が最も高いのが特徴です。

しかし、不動産会社からすると売買契約まで進まないと仲介手数料が発生しないため、積極的に売却活動をしない可能性があります。

専任媒介契約は1社のみにしか依頼できないですが、媒介契約を結んだ会社としか売買契約が締結しないため、積極的な売却活動が期待できます。

ただし、信頼できる不動産会社でないと「囲い込み」などのリスクもあるため注意が必要です。

1-2. 売主・買主で価格や引き渡し条件を交渉する

購入希望者が見つかると、売主と買主の双方で価格や引き渡しに関する条件を交渉します。

まず購入希望者は、不動産会社を通して売主に買付証明書を提示します。買付証明書とは、売買契約の前段階で、購入希望者から売主に対して「希望価格」や「希望条件」などの意思表示をする書類のことです。

売主が買付証明書を確認し、交渉に入るか選択します。その後は売主・買主それぞれの不動産会社が交渉するか、1社が双方の間を取り持ちます。

お互いの条件を調整しつつ、物件の調査や契約関係の書類作成を行うのが契約直前です。

1-3. 不動産売買契約を締結する

売主・買主の条件調整がまとまると不動産売買契約を締結します。

不動産売買契約では取引価格や引き渡し時期、お互いが取り決めた内容が記載された売買契約書に署名・捺印をして契約締結です。もし契約後にお互いの認識違いやトラブルが発生した場合には、契約書を基に対応します。

確認用の売買契約書を受け取り事前に内容を確認しておくと、当日もスムーズに契約を締結できるでしょう。

1-4. 物件引き渡しまでに売主は引っ越しをする

売買契約締結後は、買主への所有権移転や物件の引き渡し準備を行います。

金融機関の担保である抵当権が設定されている場合は、ローンの全額返済と抵当権抹消手続きをする必要があります。

取引する不動産に抵当権がついている状態では、所有権移転ができないため売却ができません。

不動産売買では、引き渡しまでに各手続きを終えられなければ債務不履行となるため注意が必要です。債務不履行になると違約金を請求される可能性があります。

電気やガスなどの公共料金の精算もする必要があるので、最終的にどこまでを当事者が行うのかを不動産会社に確認して早めに動くようにしましょう。

1-5. 残金の決済と物件の引き渡しを行う

最後は物件の引き渡しと残金決済です。

買主が住宅ローンを組んでいる場合はこのタイミングで融資がおります。残金を支払い、売主が買主へ所有権登記に必要な書類を渡して、司法書士が所有権移転登記を申請します。

付帯設備の保証書・説明書や物件の鍵の受け渡しを行い、不動産会社に残りの仲介手数料を支払い売買契約は完了です。

以上の手続きは残金の支払いがある関係で、一般的には金融機関で行われます。

固定資産税や管理費などは、日割計算をして引き渡し前日までを売主が負担し、引き渡し日から買主が負担するのが基本です。

2.不動産売買契約を締結する前に準備しておきたい項目

不動産売買契約をスムーズに進めるためには、契約書の内容や当日必要な物などを事前に確認しておくのが重要です。

ここでは、不動産売買契約を締結する前に準備しておくべき項目を詳しく解説します。

2-1.不動産売買契約の基本ルールを押さえておく

まずは、不動産売買契約に関する基本ルールを押さえましょう。ルールを押さえておくと契約内容の理解がより深まります。

不動産売買契約の基本ルールとは以下の2つです。

  • 不動産売買契約書の内容は自由
  • 不動産売買契約を締結すると自己責任となる

それぞれ詳しく解説します。

2-1-1.不動産売買契約書の内容は自由

不動産売買契約書の内容は、不動産会社が決めるわけではなく買主と売主の合意のもと自由に作成できます。そのため、決まった型のような契約書はありません。

また、不動産売買では必ず不動産会社を通さないといけないイメージがありますが、不動産会社を通さず個人間で売買も可能です。

ただし、適切な契約書作成には不動産や法律の専門知識を必要とするため、基本的には不動産売買のプロである不動産会社へ依頼します。

そして売買契約書を作成する際は、不動産会社が持つ雛形をもとに買主と交渉をしながら作成するのが一般的です。

内容は自由なので、自分の希望を明確に伝えるのも重要です。

2-1-2.不動産売買契約を締結すると自己責任となる

不動産売買契約は自由に締結できるのが基本ですが、締結後は全て自己責任となるので注意が必要です。

法整備はなされており不動産会社が調整してくれるものの、不動産売買契約書の中身や契約の流れなどは必ず事前に確認し把握しておきましょう。後々トラブルになった際に話し合いの軸になるのは売買契約書です。

一度契約してしまうと、契約不適合責任や損害賠償請求などが発生する恐れもあるので、疑問点や不安点は事前に解決しておきます。

2-2.不動産売買契約に必要なものの把握・準備をしておく

不動産売買契約時には、売主と買主でそれぞれ持参するものがあります。

契約をスムーズに進めるためにも、事前に確認して忘れないようにしましょう。

2-2-1.売主が必要なもの

売主が必要なものは、以下のとおりです。

必要なもの

詳細

実印

・所有権移転の際に必要

・共有名義の場合はそれぞれの実印が必要

印鑑証明書(3ヶ月以内のもの1通)

・実印の照会のため司法書士に提出する

・共有名義の場合は、それぞれの印鑑証明書が必要

収入印紙

・売買契約書に収入印紙を貼り付けると納税したことになる

・売買価格によって必要な印紙代が変わる(※)

本人確認書類

・売主本人か確認するため

・写真付きの公的証明書(マイナンバーカードや運転免許証)

登記済証(権利証)または登記識別情報通知

・不動産の所有者を証明する書類

・不動産を購入した際に受け取っている

・2005年以降に不動産を取得した場合は「登記識別情報通知」で、2005年以前では「登記済証」を受け取っている

仲介手数料の半金

・売買契約の成立後に仲介会社に支払うお金

・売買価格によって仲介手数料は変わる

固定資産税納税通知書

・不動産の評価額や納税すべき額などが記載されたもの

・固定資産税の精算を行うため

不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁

上記以外にも、不動産によっては「建築確認通知書・検査済証」や「設備表」「管理規約・管理組合総会議事録」などが必要な場合もあります。

2-2-2.買主が必要なもの

買主が契約当日に準備しておくものは、以下のとおりです。

  • 本人確認書類
  • 実印
  • 手付金
  • 仲介手数料の半金
  • 収入印紙

不動産売買では多くの資金が動き犯罪のターゲットになりやすいため、本人確認書類が必須です。本人確認書類には、運転免許証やマイナンバーなどの顔写真がついたものを準備しておきましょう。

住宅ローンを組む場合、抵当権の設定に実印が必要になるので忘れないように準備しておきます。

2-2-3.買主の代理人が契約を行う場合に追加で必要なもの

買主が遠方に住んでいるなどの事情で代理人を立てる際は、買主の「委任状」と「印鑑証明書」、代理人の「実印」「印鑑証明書」「本人確認書類」が必要です。

委任状とは、売買契約の締結を「本人に代わって行います」という委任を証明する書類です。印鑑証明書は、委任状に押印されている印鑑が本人のものであるか証明します。

代理人の実印や印鑑証明書、本人確認書類は契約時に必要となるので忘れずに準備しておきましょう。

3.不動産売買契約を行う当日の流れ

不動産売買契約を行う当日の流れは以下のとおりです。

  1. 売主・買主の顔合わせ
  2. 不動産会社による重要事項の説明
  3. 売買契約書の確認・読み合わせ
  4. 売買契約書への署名・捺印
  5. 手付金の受領・支払い
  6. 仲介手数料の支払い
  7. 決済・引き渡しまでの流れを確認

それぞれ詳しく解説します。

3-1.売主・買主の顔合わせ

まずは契約当日に売主と買主で顔合わせを行います。

内見時に会っている場合は2回目になりますが、売買契約時は売主・買主が顔を合わせて挨拶をするのが一般的です。

不動産売買において売買契約は重要な項目であるため、夫婦など家族揃っての参加をおすすめします。契約後に家族から物件や契約への要望がでても、契約条件の変更や契約取消ができないからです。

3-2.不動産会社による重要事項の説明

顔合わせが終わると、不動産会社が買主に対して重要事項説明を行います。

重要事項説明は宅地建物取引士の資格を持つ人だけが行えて、説明の前には取引士証の提示が義務付けられています。

売主は重要事項の説明を受ける義務はありませんが、認識のズレによるトラブルを回避するためにも同席するのがおすすめです。

重要事項説明の前には、一度退席を促されるかもしれませんが「買主と一緒に重要事項説明の内容を聞きたい」旨を伝えるようにしましょう。

3-3.売買契約書の確認・読み合わせ

重要事項説明後は売買契約書の内容に間違いがないか、売主・買主で読み合わせを行います。

当日の読み合わせのみで冷静に判断するのは難しいため、事前にメールや郵送で売買契約書の写しを送ってもらい確認しておくと理解が深まるでしょう。

また事前に確認しておくと疑問点が浮かびやすく、契約当日に不動産会社の担当者に確認できます。

3-4.売買契約書への署名・捺印

売買契約書の読み合わせを終えて、内容に問題なければ関係書類に署名・押印をして契約を締結します。

このタイミングで収入印紙を貼り付けるので忘れないように準備しておきましょう。売買契約書は課税文書ですので、印紙税の支払いが義務付けられています。売買価格に合わせた収入印紙を契約書に貼り付けて納税になります。

収入印紙を貼付しなかった場合、過怠税を徴収される恐れがあるので忘れずに準備しておきます。

3-5.手付金の受領・支払い

手付金は、不動産売買契約時に買主から売主に対して一度預けるお金です。手付金の相場は売買代金の10%程度が一般的で、現金または小切手で支払います。

手付金には契約が成立したという証明の意味と解約手付としての意味があり、売主と買主双方に適用されます。

もし売主が解約を申し出た場合には、手付金の返還および手付金と同額を支払い契約解除できます。買主が解約を申し出た場合には、預けている手付金を放棄して契約解除が可能です。

3-6.仲介手数料の支払い

仲介手数料は不動産売買が成立した際に仲介会社へ支払う成功報酬です。売買契約の締結日と決済日に半金ずつに分けて支払うのが多いです。

まとめて支払っても問題ありませんが、契約の締結後も手続きがあるため半金ずつのほうが安心でしょう。

仲介手数料も手付金と同じで基本は現金での支払いです。仲介手数料は売買価格によって変わりますが、高額になりやすいため前もってお金を準備しておきましょう。

3-7.決済・引き渡しまでの流れを確認

契約と支払い関係を終えた後は、決済日・引き渡し日の調整とスケジュールの確認を行います。

買主が住宅ローンを利用する場合、決済日は平日になるため仕事関係のスケジュール調整なども重要です。

売主は引き渡しまでに物件のクリーニングや引っ越し準備など、引き渡せる状態にしておきます。また、住宅ローンが残っている場合には、完済して抵当権を抹消しておく必要があります。

4.不動産売買契約書の基本的な項目・チェックポイント

不動産売買契約を行う前には、必ず契約書の内容をチェックするようにします。

なぜなら、不動産は金額も大きく法律も絡んでくるため、契約後に売買契約書の内容が原因で法的責任を問われる可能性があるからです。

不動産売買契約書の基本的な項目やチェックポイントを解説します。

4-1.不動産売買契約書は不動産会社が作成する

売買契約書の作成は、媒介契約を結んでいる不動産会社が基本的に作成します。

買主にも不動産会社がつくため、もしお互いの会社が異なる場合にはどちらかの不動産会社が作成し、もう一方が確認するのが一般的です。

売買契約作成用のフォーマットに決まりはないですが、全国宅地建物取引業保証協会が定めた書式の使用が多いです。

仲介会社へ依頼せずに個人間で不動産売買を行う場合は、契約後のトラブル防止のためにも仲介役として司法書士などの専門家への作成依頼をおすすめします。

4-2.不動産売買契約書の基本的な項目と内容

不動産売買契約書の内容は原則自由ですが、以下の項目は必ず記載します。

項目

内容

売買物件の表示

物件の表示や面積、権利者などの情報を登記簿に基づいて記載

売買価格・手付金額・支払日

売買代金の詳細、手付の種類や金額の詳細

所有権の移転・引き渡し日

所有権の移転と引き渡し日の明記

公租公課の精算

都市計画税や固定資産税などの公租公課や管理費などを日払い計算した結果

反社会的勢力の排除

反社会的勢力に対して、不動産取引に関わらせないための明記

ローン特約

住宅ローン審査が通過しなかった場合に、無条件で契約を解除できる内容

負担の消除

所有権移転までに抵当権などの担保権・賃借権などの一切の負担消除を約束する内容

付帯設備等の引き渡し

・照明やエアコンなどの付帯設備をそのままの状態で物件を引き渡すこと

・故障等の確認は必須

手付解除

契約キャンセル時の手付金と解除の要件

引き渡し前の物件の滅失・毀損

引き渡し前に災害などで物件に損害が起こった場合の取り決め

契約違反による解除

契約内容に違反した時に解除になること、またはその際のペナルティ

契約不適合責任

売主が責任を負う範囲や期間を定めた内容

特約事項

その他、法的な順守義務のある項目以外に売主買主で決めた独自の項目

契約後にトラブルに巻き込まれるリスクを回避するためにも、ここで紹介した項目は売買契約書に含まれているか確認しておきましょう。

4-3.不動産売買契約書をチェックする際のポイント

売買契約書のチェックでは、以下の項目を重点的に行います。

  • 売買物件の表示に誤りがないか
  • 売買代金や手付金、支払日は正確か
  • 所有権の移転や引き渡し日は問題ないか
  • 手付解除の期間を決めているか
  • 特約事項に記入漏れはないか な

特に売買代金や手付金、支払日などお金に関する内容は、ミスがあると大きな揉めごとにつながるのでしっかり確認しましょう。契約書内の金額は基本的に数字のみで記載されるので1円単位まで確認しておきます。

所有権移転や引き渡し日は、残っている住宅ローンの完済や引っ越しのスケジュール調整に影響する内容が多いです。

手付解除の期間が定まっていない場合は、民法第557条により「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して契約の解除をすることができる。」とあります。

そのため、売主・買主の一方がすでに履行の着手をしていると、違約解除になり違約金を求められる可能性があります。

このように、売買契約書は売主と買主を守るための書類なので、必ず内容を確認しておきましょう。

5.不動産売買契約で特に注意したい項目

不動産売買契約の中でも特に注意したい項目は、以下の2つです。

  • 不動産売買契約の解除や手付金
  • 契約不適合責任

それぞれ詳しく解説します。

5-1.不動産売買契約の解除や手付金

売買契約の解除と手付金に関して解説します。

売買契約のキャンセルは条件つきで可能です。契約解除のパターンによって解除条件が異なるので詳しく解説します。

5-1-1.不動産売買契約を解除するパターン

売買契約を解除するパターンは以下の6つです。

契約解除のパターン

詳細

解除条件

手付解除

どちらか一方が自らの意思でキャンセルする方法

売主は手付金の倍返しをして、買主は手付金を放棄する

危険負担による解除

契約後に起きた天災などで不動産が損失を受けた場合の解除

売主は無条件で解除可能

契約違反による解除

一方が契約に違反した場合に行われる強制契約解除

売買契約時に手付金以外で別途定めている違約金を求められる

契約不適合責任による解除

契約の内容に合致しない場合の解除

買主が追完請求に応じない場合、もしくは契約の目的を達しないときに解除可能

ローン特約による解除

・買主が住宅ローン審査に通らなかった場合、売買契約を解除できる特約

・ローン特約には解除可能期間が定められている

買主は無条件で契約解除

※故意に必要書類を提出しなかったなどは、ローン特約による解除は適用されない可能性が高い

合意による解除

売主・買主の話し合いの上で行われる契約解除

お互い無条件で解除可能

5-2.契約不適合責任

契約不適合責任は不動産売買契約の中で注意しておきたい項目の1つです。

お互いの約束ごととして売買契約書を取り交わしますが、約束が守られない場合もあります。特に不動産を購入する買主が不利になる可能性が高いため、買主を守るためにあるのが契約不適合責任です。

契約不適合責任に関して詳しく解説します。

5-2-1.契約不適合責任とは?

2020年4月1日の民法改正によって、「瑕疵担保責任」の内容が変更され「契約不適合責任」が施行されました。

契約不適合責任とは、契約の内容に適合せず債務不履行という状況になった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。

改正前の瑕疵担保責任では、通常確認が難しい屋根の雨漏りや壁の中にある柱の欠陥など、「隠れた瑕疵」といわれる部分が該当していました。

しかし、隠れた瑕疵だと判断が難しい場合もあり、契約不適合責任では「種類や数量または品質に関して契約の内容に適合しない」と変更されています。

そのため、売主は契約書に「種類、数量、品質」の内容の細かな明記が重要です。

また、契約不適合責任には「不適合の内容を知ったときから1年以内に通知すること」と期限が決められています。

5-2-2.契約不適合責任で買主に認められている権利

契約不適合責任となった場合の買主に認められている権利は以下の4つです。

認められている権利

内容

追完請求権

・目的物の種類・品質・数量が契約と適合しない場合に、欠陥のない完全な目的物をあらためて請求できる権利

・数量において不動産は基本的に1点ものなので、補修請求になる

代金減額請求

・追完請求を催告したにもかかわらず、売主が対応しなかったり拒否したりした場合に、不適合の内容に応じて売買代金の減額を請求できる権利

損害賠償請求権

・追完請求や代金減額請求と合わせて、損害賠償請求ができる権利

契約の解除

・追完請求を催告したにもかかわらず、契約の目的が達成できない場合において契約の解除ができる権利

6.不動産売買契約から引き渡しまでに行うこと

契約を締結したからといって、不動産売買は終わりではありません。

引き渡しまでの準備が整っていないと、約束した日に決済や物件の引き渡しを行えず債務不履行に該当する可能性があります。

契約から引き渡しまでの間に行うべき内容を買主・売主それぞれで解説するので、しっかり確認しておきましょう。

6-1.買主がやるべきこと

買主がやるべきことは以下の2つです。

  • 不動産購入に利用する住宅ローンの申し込みを行う
  • 引き渡しに必要な資金を準備する

それぞれ詳しく解説します。

6-1-1.不動産購入に利用する住宅ローンの申し込み

買主は売買契約締結後に、住宅ローンの正式申し込みを行います。

住宅ローンの借入には仮審査と本審査の両方を通過する必要があり、本審査に通過しないと融資がおりません。

本審査には不動産売買契約書の写しを提出するため、売買契約後にはなるべく早く必要書類を揃えて申し込みを済ませましょう。

本審査の結果が出るまでに通常1〜2週間、長ければ3〜4週間かかる場合もあります。

万が一、住宅ローンの本審査に落ちてしまったときのためにローン特約があります。ローン特約には解除期間が定められているので注意が必要です。

6-1-2.引き渡しに必要な資金を準備する

買主は、引き渡し日に残金の決済を行います。

決済時に必要な資金は、以下のとおりです。

  • 売買金額から手付金を除いた残金(住宅ローンの場合は借入金)
  • 仲介手数料の半金
  • 登記費用(司法書士費用や登録免許税)
  • 固定資産税、都市計画税、管理費用などの日割り精算金

売買代金を住宅ローンで借入する場合でも、仲介手数料や登記費用、各種精算金は当日現金払いの可能性があるので、事前に金額を確認して準備しておきましょう。

6-2.売主がやるべきこと

売主がやるべきことは以下の3つです。

  • 引き渡しに必要な書類を準備しておく
  • 住宅ローン借入先の金融機関に連絡しておく(借入の残債がある場合)
  • 住み替え先や探しや引っ越し先を見つけておく

それぞれ詳しく解説します。

6-2-1.引き渡しに必要な書類を準備する

売主が物件の引き渡しまでに、以下のものを準備します。

書類

詳細

扱い方

実印

実印登録されている印鑑

登記関係の書類に押印する際に必要

印鑑証明書

実印登録されていることを証明する書類

司法書士へ提出

登記済証・登記識別情報

・不動産の所有者の証明をする書類

・2005年以降に不動産を取得した場合は「登記識別情報通知」で、2005年以前では「登記済証」を受け取っている

司法書士へ提出

固定資産税納付書

不動産にかかる固定資産税が明記されている書類

税金精算のため

公共料金の領収書

自宅に届く電気・ガス・水道料金などの明細

引き渡し日で日割計算するため

管理規約・物件購入時のパンフレット・物件の取り扱い説明書・建築確認通知書など

物件のルールや利用方法を確認するため

買主へ渡すため

売主は準備しておく書類も多く役所で取得する書類もあるため、早めに集めておきましょう。

6-2-2.住宅ローン借入先の金融機関に連絡する

住宅ローンを借りている場合は、物件の引き渡しまでにローンを完済する必要があります。融資を受けている銀行に連絡し、一括返済する場合の残金を確認し支払います。

住宅ローンが残っていると、物件に対して抵当権が設定されたままの状態になっており所有権の移転ができません。

そのため、引き渡しまでに必ず融資先の金融機関に住宅ローンを完済し、司法書士に抵当権の抹消を依頼します。

抵当権抹消登記に必要な書類を作成するには2週間ほどかかります。決済日をもとに金利計算を行うので、スケジュールを確認したうえで逆算して動きましょう。

決済日に抵当権抹消登記が間に合わない場合は所有権移転ができないため、債務不履行に該当し違約金の対象になる可能性があります。

6-2-3.住み替え先探しや引っ越し

居住用不動産を売却する際には、住み替え先の物件を探す必要があります。

売買契約から引き渡しまでに住み替え先を購入する人もいますが、契約から引き渡しまでは期間も短く理想の新居が見つからない場合があります。

そこで、仮住まいを避けたい場合には、引き渡し猶予の特約を売買契約書に記載できるか交渉しておくとよいでしょう。

住み替え先が決まると決済日までに引っ越しを済ませ、残しておくように取り決めた家具や家電以外はすべて撤去しておきます。

引っ越しはなるべく早めに準備すべきですが、買主の本審査が通ってから取り掛かるほうが安全です。

7.不動産売買契約で後悔しないための注意点

不動産売買契約を無事締結しても、その後契約解除になったり引き渡し後に契約不適合責任を追求されたりと不安は残るものです。

そこで、買主・売主それぞれの視点で、不動産売買契約で後悔しないための注意点を解説します。

7-1.買主の注意点

買主の注意点は主に、「土地に関すること」と「建物に関すること」です。

土地に関して注意することは、主に以下の内容です。

  • 権利
  • 境界線
  • 境界合意
  • 給排水管
  • 再建築や増改築が可能か など

土地の権利や境界に関しては、隣接地の住民ともトラブルになりやすいので不動産会社から字図・地積測量図・土地謄本を見せてもらい確認しておきましょう。

また、給排水管が他人の敷地を通過している場合や、購入する土地に他人の旧排水管が入り込んでいないか確認します。このように所有物が隣接地に入り込んでいる状態を「越境」といい、注意が必要です。

再建築や増改築が可能かとは、土地によっては都市計画法や建築基準法の影響によって、新しく家を建て替えたり部屋を増やしたりできない場合があります。

建物に関することでは主に以下の2つに注意します。

  • 床下や天井裏などを目視で確認する
  • ホームインスペクションを実施する など

建物はパッと見て確認しただけではキズや欠陥が分からない場合も多くあります。床下や天井裏など、住宅内部を目視で確認しておきましょう。

可能であればホームインスペクションを実施します。ホームインスペクションとは住宅診断のことで、プロの住宅診断士が建物の経年劣化を客観的に調査し、補修をしたほうがいい箇所などを教えてくれます。

7-2.売主の注意点

売主の注意点は、「権利に関すること」と「お金に関すること」です。

不動産の権利に関することでは、抵当権や共有名義人の承諾、本人確認書類等の有無などを確認しておきます。

抵当権が残っていると所有権の移転ができませんし、共有名義人に許可を取らず独断で売却を決めても売買はできません。

お金に関することでは、手付金の金額や受け取り方法、手付解除期限、仲介手数料の金額などに注意します。

売主は売買契約や引き渡しまでにやるべきことが多く、不安に感じる人も多いです。滞りなく安全に不動産売却を終えるには、信頼できる不動産会社を選ぶ必要があります。信頼できる不動産会社を選ぶには、複数の不動産会社を比較できる不動産一括査定サイトを活用するのがおすすめです。

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8.不動産売買契約は流れを把握して慎重に行う

本記事では、不動産売買契約の流れに関して詳しく解説しました。事前に契約の流れを把握しておくと契約を円滑に進められます。

また、売買契約を無事に締結するためには、安心して売却や購入を任せられる不動産会社選びも重要です。売買契約の内容がもとでトラブルにならないためにも、不動産会社選びも慎重に行いましょう。

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