不動産売買契約書とは?記載内容やチェックポイント・注意点について解説

不動産の売却・購入時に欠かせないのが不動産売買契約書です。不動産売買契約書は不動産の売買に関する取り決め内容を記した文書であり、後々のトラブルを防止する役割を果たします。

不動産会社が仲介する取引では通常、不動産会社が不動産売買契約書を作成します。売主・買主ともにその内容をよく確認することが重要です。

不動産会社を通さず個人間で売買するケースでは、不動産売買契約書を自ら作るか、専門家に作成を代行してもらうことになります。この場合も記載するべき内容を十分に把握していることが必要です。

当ページでは、不動産売買契約書に記載するべき内容とチェックポイント、不動産売買契約を締結する際の注意点を解説します。この記事を読むことで不動産売買契約書の作り方や読み方を把握できますので、ぜひ参考にしてください。

目次

1.不動産売買契約書とは?

不動産売買契約書とは、不動産売買の契約内容を証明する文書です。

契約自体は本来、当事者間の合意があれば成立します。ただ、口頭のみの約束では、誤解や記憶違いなどで契約後にトラブルに発展するリスクが大きくなります。

高額な金銭のやり取りが生じる不動産売買の場合、「言った」「言わない」で争うことになるリスクが潜んでいることが多くあります。そのようなリスクを回避するため、契約内容を不動産売買契約書として書面に残して明確にすることが重要です。

不動産売買契約書には、取引対象になる物件の所在地や面積といった基本情報のほか、代金の支払方法や支払期限、所有権移転の時期など、売主・買主の行動内容も記載されます。

1-1.土地売買契約書との違いは?

不動産売買契約書と似ている「土地売買契約書」は、不動産のうち土地の売買のみを対象とした契約書です。建物だけを対象とした契約書は「建物売買契約書」であり、土地と建物の両方を対象とするのが不動産売買契約書です。

つまり、土地付きの戸建てを売買する際は不動産売買契約書を作成します。

マンションを売買する場合も不動産売買契約書を作成するのが一般的です。マンションは一見すると建物だけの取引にも見えますが、建物の専有部分のほかにも、敷地権や敷地利用権といった土地を利用する権利も取引するためです。

2.不動産売買契約書に記載する内容とチェックポイント

不動産売買契約書には、売買価格や支払期日といった基本項目のほか、契約違反があった場合についてなど重要なポイントが明記されています。

記載する主な内容は以下のとおりです。

  • 売買価格・手付金・支払期日
  • 売買対象面積、測量、代金精算
  • 所有権の移転・引き渡し時期
  • 付帯設備等の引き渡し
  • 抵当権等の負担の抹消
  • 公租公課等の分担
  • 契約不適合責任
  • 引き渡し完了前の滅失、毀損
  • 契約違反による解除
  • 反社会勢力の排除
  • 融資利用の特約
  • 物件の表示

書くべき内容や、どのような点をチェックするべきかについて、1つずつ解説していきます。

2-1.売買価格・手付金・支払期日

不動産売買契約書には、売主と買主で合意した売買価格について明記し、手付金について記載します。

売買代金については支払の期日を明記したうえで、「現金で支払う」など支払方法も記載しましょう。

手付金については、「契約締結と同時に買主が売主に支払う」として、「売買代金の一部に充当する」旨を、不動産売買契約書に記載するのが一般的です。

手付金の役割の1つは、契約成立を証明することです。また契約を解除する場合に活用することもできます。売主の意思で解約する際は買主に手付金の倍額を支払い、買主が解約する際は支払済みの手付金を放棄することで、それぞれ不動産売買契約を解除できます。

手付金の額は売主と買主が合意すれば自由に設定できますが、売主が宅地建物取引業を営む場合は「売却価格の20%」が上限額です(宅地建物取引業法第39条第1項)。売主が宅建業者以外の場合は売却価格の5〜10%とするのが相場です。

2-2.売買対象面積、測量、代金精算

売買の対象となった土地・建物の面積なども、不動産売買契約書に記載します。

売主は物件を買主に引き渡すときまでに測量士や土地家屋調査士に土地の測量を依頼し、測量図を買主に交付します。隣地との境界を明示して、買主に物件の範囲を確認してもらうことも必要です。

境界標が無い場合、売主は土地家屋調査士などに依頼し、境界の明示のため新たに境界標を設置してもらう必要があります。測量の結果、売買代金を算定する基礎となった面積に誤差が生じた場合、差額代金の清算が必要になるケースもあります。

2-3.所有権の移転・引き渡し時期

不動産の所有権を売主から買主に移転し引き渡す時期も、不動産売買契約書に示します。

移転時期の合意がない場合、「売買契約を結んだ時点」で所有権は売主から買主に移転することになります。ただし高額な金銭のやり取りが生じる不動産取引では、買主が売買代金の全額を支払い、売主が受け取った時点で所有権を移転し、物件を引き渡す旨を定めるのが一般的です。

所有権の移転・引き渡しと同時に、登記名義人を売主から買主に変更する「所有権移転登記」の手続きをする必要もあります。所有権移転登記について詳しくは、当ページの「決済・物件の引き渡し」をご参照ください。

2-4.付帯設備等の引き渡し

キッチンや浴室、冷暖房設備など、不動産売買契約の対象になった物件に付帯する設備は「付帯設備表」にその有無を記載し、売主から買主に引き継ぐ設備の範囲を明確にしておくことが重要です。

付帯設備表で「有」と記載した設備は、不動産の引き渡しと同時に売主から買主に引き渡すことを明示しておきます。

売主が個人の場合、契約書に「付帯設備については契約不適合責任を負わない」という条項を加えることができます。「契約不適合責任」とは、契約内容と異なる欠陥などがあった場合に売主が負う責任です。詳しくは当ページの「契約不適合責任」で解説しています。

ただし契約不適合責任を負わないことを明記しても、売主が設備の故障・不具合を知っていながら買主に伝えなかった場合には、保証する責任が生じます。

2-5.抵当権等の負担の抹消

買主の所有権に影響を与える要因となる「抵当権」などについて、物件を買主に引き渡すまでに取り除いておく旨を不動産売買契約書に記載します。

「抵当権」は、金融機関から融資を受ける債務者が返済困難となった場合に備えて不動産に設定する担保権です。抵当権を抹消しておかなければ、買主が適切に物件の所有権を行使できなくなるリスクを残すことになります。

リスク回避のために、抵当権以外の権利が関係しているケースも想定して、「その他買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を消除する」などの文言を記載しておくことも重要です。

2-6.公租公課等の分担

不動産を所有していると、固定資産税や都市計画税などの公租公課、ガス、水道代などの負担が発生します。不動産売買契約書では、これらの負担をいつまで売主が負担し、いつから買主が負担するのか明確にしておくことも重要です。

固定資産税や都市計画税は1月1日時点の所有者に納税義務が発生します。年の途中で売買取引が行われた場合、引き渡し前日までの分を売主が、引き渡し日以降は買主が負担するよう定めておくのが一般的です。

2-7.契約不適合責任

雨漏りや水道管の水漏れなど、不動産の引き渡し完了後に隠れていた欠陥が判明した場合の取り扱いを定めるのが、「契約不適合責任」の項目です。

契約不適合責任では、所有権の移った物件が契約内容に合わないと判断できる場合、買主は売主に対して修理・補修を求めることができます。

2020年4月の民法改正前までは、契約不適合責任とほぼ同義で「瑕疵担保責任」という言葉が使われていましたが、現在では使用しません。

2-8.引き渡し完了前の毀損、滅失

売買契約の対象となった不動産が、契約成立後から引き渡し完了までの間に「毀損・滅失」つまり壊れたり無くなったりした場合の対応を取り決めておきます。

毀損や滅失の原因が「自然災害」など売主・買主のいずれの責任でもない場合、買主は契約を解除できます。売主は、物件を修復して買主に引き渡すこともできますが、修復が難しいときは契約を解除できます。

毀損・滅失が理由で契約が解除された場合、売主が既に受け取っている代金があれば、無利息で返還しなければなりません。

2-9.契約違反による解除

不動産売買契約の売主・買主のどちらかに契約違反があった場合の取り決めを記載します。

契約違反をされた側は履行を催告したうえで契約を解除することができます。このとき、契約違反をした側は契約に定めた違約金を支払って解除するのが基本です。

売主の債務不履行で買主が解除したとき、売主は受け取っている手付金などに違約金を加えて買主に支払う必要があります。

一方、買主の債務不履行で売主が解除した場合は、売主は買主から受け取り済みの金額から違約金分を除いた残額を買主に返します。違約金の額が売主が受領済みの金額を上回る場合、買主は差額を支払う必要があります。

2-10.反社会勢力の排除

売主・買主いずれも反社会勢力ではないことや、売買対象となった物件を反社会勢力の活動拠点にしないことを明記します。

売主や買主が反社会勢力と関係がある場合は、契約の相手側は催告することなく契約を解除できます。

反社会勢力との関係が原因で契約を解除された側は、相手方に違約金を支払わなければならないうえ、契約解除による損害を請求することができません。

一般的に違約金は「売買代金の20%相当額」とされます。さらに買主が物件を反社会勢力の事務所などの活動拠点に提供したことにより契約解除となる場合は、違約金に加えて「売買代金の80%相当額」の違約罰を買主は売主に支払う必要があります。

2-11.融資利用の特約

不動産の購入代金にあてるために買主が金融機関から融資を受ける場合、「ローン特約」とも呼ばれる融資利用の特約を、不動産売買契約書に記載します。

金融機関から融資を断られると代金を支払えない事態になるため、その場合に備えた特約を記載しておくのです。

買主が万一融資の審査に落ちて代金を支払えなくなった場合、違約金の負担なく手付金が返還されて無条件で契約解除できることをローン特約として記載します。同時に、売買契約を仲介した不動産会社が受け取った報酬も売主と買主に無利息で返還されることも記載するのが一般的です。

2-12.物件の表示

不動産売買契約書には、売買の対象となる物件の「所在地」や「床面積」などの基本情報も記載されます。

物件の正確な情報は、法務局で登記簿謄本を取得して確認します。この際、住所で一般的に使われている住居表示と、登記簿上の地番の記載が異なることがあるので注意してください。

土地は「地番・地目・地積」などを表示し、建物は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」などを記載します。マンションの場合は該当する棟の建物の「所在地・構造」、専有部分の「種類・名称・床面積」などを表示します。

3.不動産売買契約書を作る2つの方法

不動産売買契約の内容を記載する重要な文書である不動産売買契約書を作成するには、以下の2つの方法があります。

  • 自分で作る
  • 不動産会社に作成してもらう

個人間の売買では、インターネットなどで公開されている無料のテンプレート・ひな形を使って自分で不動産売買契約書を作ることができます。自作なら宅地建物取引士や司法書士といった専門家に依頼する費用がかかりません。

一方、不動産会社が売買を仲介する場合は、不動産会社が売買契約書を作成してくれます。専門家が作成してくれる安心感を得られるのはメリットといえるでしょう。

ただし不動産会社が取引の間に入る場合、仲介手数料がかかります。売主と買主が既に決まっている個人間の契約で、不動産会社に仲介手数料を支払うのはもったいないと感じるかもしれません。この場合、不動産会社に「契約書の作成だけ」を依頼することも可能です。

不動産会社を通さず、個人間で不動産売買契約書を作成する方法について詳しくは、以下のページでも記載していますので、ぜひ参考にしてください。

https://realestate-od.jp/realestate/column/article364/

4.不動産売買契約の流れ

不動産会社が仲介して住宅の売却を行う場合、以下の流れで進めていくのが一般的です。

  1. 査定などの事前準備
  2. 媒介契約の締結
  3. 不動産売買契約の締結
  4. 決済・物件の引き渡し

以下よりそれぞれ流れを確認していきましょう。

4-1.査定などの事前準備

不動産の売却にあたって査定など事前準備を進めます。まず必要なのは「住宅ローン残債」の確認です。住宅ローンの残債を売却資金だけで完済できるのか、追加の資金が必要なのかを把握する必要があります。

さらに「登記済権利書」など必要書類も必要に応じて準備しておきましょう。必要書類について詳しくは、当ページの「不動産売買契約書の作成に必要な書類」をご参照ください。

また同じような条件の物件がどのくらいの価格で取引されているのかを確認するため、相場を調べましょう。相場を調べる方法の1つは、無料の不動産一括査定サイトの活用です。

不動産一括査定サイト「おうちクラベル」では、大手から地域密着までさまざまな不動産会社に一括で査定を依頼できます。売買する物件の相場を知りたい方は、ぜひ無料の不動産一括査定をお試しください。

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4-2.媒介契約の締結

査定結果や売却方針など希望に沿う不動産会社があれば、仲介を依頼して「媒介契約」を結びます。媒介契約は、不動産売買に必要な営業活動を不動産会社に依頼する契約のことで、以下の3種類があります。

  • 一般媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 専属専任媒介契約

売主が複数の不動産会社に仲介を依頼することができるのが「一般媒介契約」、1つの不動産会社にしか仲介を依頼できないのが「専任媒介契約」です。

一般媒介契約は、売主がさまざまな不動産会社に働きかけることができ、できるだけ良い条件での物件売却がしやすくなるメリットがあります。

一方で専任媒介契約は不動産会社にとって自社の利益となる可能性が高く、より積極的な営業活動などのサポートを期待できるのが利点です。ただし専任媒介契約は1つの不動産会社に売却を依存することになるため、慎重な不動産会社選びが欠かせません。

「専属専任媒介契約」は、専任媒介契約のうち、売主が自分で見つけた買主と売買契約を締結できない契約です。

4-3.不動産売買契約の締結

購入希望者が見つかり、条件が合えば不動産売買契約の締結に進みます。

不動産会社が不動産売買契約書を作成してくれる場合は、契約書の内容説明を受け、重要事項説明書も内容をしっかり確認しましょう。重要事項説明書について詳しくは、当ページの「重要事項説明書の内容をよく確認する」を参照してください。

契約書や重要事項説明書には、契約後のトラブルを防ぐための重要な内容が書かれています。書類は契約日前に受け取れるので、事前に内容を確認しておきましょう。

売買代金や手付金の額は正しく表示されているか、代金の支払期日や所有権移転、引き渡し時期は妥当か、判明していなかった欠陥があった場合の扱いは適切かなど、慎重にチェックしてください。

問題なければ契約書に署名・捺印して契約を結びます。手付金は契約日に支払われるのが一般的です。

4-4.決済・物件の引き渡し

不動産売買契約を締結した後は、手付金を引いた残代金の決済と物件の引き渡しに移ります。

物件の引き渡しは「鍵の受け渡し」をもって行い、引き渡しを確認した司法書士が法務局で「抵当権抹消登記」や「所有権移転登記」を行います。

抵当権抹消登記とは、売主の住宅ローン契約などの際に設定された抵当権を、不動産登記簿から抹消する手続きです。

所有権移転登記は、不動産の所有権を移転したときに、その旨を登記することです。登記簿の権利を表示する項目に、権利が移転した日付や権利者の名義などを記載します。所有権移転登記は義務ではありませんが、登記をすることで自身の所有権を第三者に主張できるようになります。

これらの登記手続きと決済・物件の引き渡しは、同じ日に行うのが一般的です。

5.不動産売買契約書の作成に必要な書類

不動産売買契約を締結する際は、契約書以外にもさまざまな書類が必要となります。マンション、戸建てなど物件によって異なりますが、不動産売買契約時に必要となる主な書類は以下のとおりです。

<不動産売買契約で必要になる主な書類>

書類の種類 説明
登記簿謄本または登記事項証明書 不動産の登記事項が記載された書類。法務局で取得できる
登記済権利書または登記識別情報 物件が登記済みであることを示す書類や番号
土地測量図・境界確認書 土地の面積や隣接地との境界を示す書類
固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書 自治体から送られてくる固定資産税額や評価額を示す書類
売却不動産の間取り図などの図面や設備の仕様書 建物の間取りや設備の概要を示す書類
建築確認済証または検査済証 建築基準法にそって建物が建てられていることを証明する書類
建築設計図書または工事記録書(任意) 物件の設計や工事記録を示す書類
マンションの管理規約(マンションは必須) マンションの維持管理や居住の約束事が記載されている文書
耐震診断報告書またはアスベスト使用調査報告書(任意) 住宅の耐震性やアスベスト使用の有無を確認するための書類

不動産の売却で必要になる書類にはさまざまなものがありますが、売買をスムーズに進めるには、事前に重要書類を整理しておくことが大切です。日ごろから一般の書類とは別に管理しておくとよいでしょう。

必要書類について詳しくは下記ページでも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

不動産売却での必要書類は全部で11個!チェックリストや準備タイミングについても解説

6.不動産売買契約で確認しておきたいポイント・注意点

不動産売買契約で確認しておきたいポイントや注意点は以下の3つです。

  • 重要事項説明書の内容をよく確認する
  • かかる諸費用・税金を把握しておく
  • 売却後は確定申告をする

それぞれ以下に詳しく解説していきます。

6-1.重要事項説明書の内容をよく確認する

不動産会社から交付される「重要事項説明書」に目を通して、内容を把握しておくことが重要です。

宅地建物取引業法(宅建業法)では、不動産会社(宅地建物取引業者)が取引当事者に契約上重要な事項を説明する「重要事項説明」を行うことが定められています。「重要事項説明書」は、重要事項説明にあたり取引相手に交付しなければならない書面です。

重要事項説明書には主に「物件に関する事項」や「取引条件に関する事項」が記載されています。

「物件に関する事項」は、登記された権利の内容や法令上の制限、接する道路との関係などについての項目です。抵当権や所有権など権利関係の情報のほか、都市計画法や建築基準法などで定められた物件についての規制などが記載されています。

「取引条件に関する事項」では、契約解除の方法や期限、損害賠償や違約金などの条件について確認できます。

6-2.かかる諸費用・税金を把握しておく

不動産売買契約を進めるにあたっては、不動産売買に必要な費用の全体を把握しておくことが重要です。主な費用を以下の表にまとめました。

<不動産売買契約にかかる主な費用>

費用 金額の目安
仲介手数料 売買代金 × 3% + 6万円 + 消費税
印紙税 200円~60万円(売買代金により異なる)
抵当権抹消費用(登録免許税) 1不動産あたり1,000円
所有権移転費用(登録免許税) 土地:売買代金の2%

建物:売買代金の2%(新築住宅は0.4%)

司法書士への依頼費用 1万5,000円~2万円程度
住宅ローン返済手数料 5,000円~3万円程度(金融機関により異なる)

不動産を売却する際にかかる手数料で特に金額が大きくなるのは、不動産会社に支払う仲介手数料です。売主と買主の取引を媒介する報酬であり、売買代金が400万円超の場合、宅建業法によって上限は「売買代金 × 3% + 6万円」までと定められています。

例えば5,000万円の不動産の売買契約では、不動産会社に支払う仲介手数料は以下のようになります。

「仲介手数料=5,000万円 × 3% + 6万円 + 消費税(10%)=171万6,000円」

印紙税は不動産会社を通さない売買契約でも必要です。詳しい金額は当ページの「不動産売買契約にかかる印紙税の金額」を参照してください。

土地の所有権移転登記の登録免許税には軽減措置もあり、2023年3月31日までの間に登記を行う場合は1.5%まで軽減されます。

建物の所有権移転登記についても、個人が2024年3月31日までの間に自分が居住するために中古住宅を取得した場合は0.3%に軽減されます。(新築住宅は0.15%)

6-3 売却後は確定申告をする

不動産を売却して利益(譲渡所得)を得た場合、所得税や住民税の納税額を確定するため確定申告が必要になります。譲渡所得は譲渡金額から取得費と譲渡にかかった費用を控除した金額です。

「譲渡所得 = 譲渡金額 -(取得費 + 譲渡費用)」

「取得費」には、土地・建物の購入代金や建築代金、購入手数料だけでなく、設備費や修繕・改良費なども該当します。

「譲渡費用」は、不動産会社に支払った仲介手数料や印紙税のほか、貸家を売るために賃借人に部屋を明け渡してもらう場合にかかる立退料や、土地を売るため建物を取り壊したときの費用なども含まれます。

これらの費用を譲渡金額から差し引くとマイナスになり「損失」が発生した場合、確定申告は原則不要です。

またマイホーム売却の場合、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる居住用財産の「特別控除」を利用できます。ただしこの制度を適用することで納税額がゼロとなる場合でも、確定申告は必要になるので注意してください。

確定申告は不動産を売却した年の翌年に行います。申告時期は毎年2月16日から3月15日までとなっているので、忘れずに申告しましょう。

7.不動産売買契約にかかる印紙税の金額

不動産売買契約にかかる印紙税の額は以下のとおりです。なお、2024年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書で、契約書に記載された契約金額が10万円を超えるものは、税が軽減されます。

<不動産売買契約にかかる印紙税>

記載された契約金額 税額 軽減後の税額
1万円未満 非課税
10万円以下 200円
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
5億円超10億円以下 20万円 16万円
10億円超50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円
金額の記載のないもの 200円

引用元:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁

印紙税は、印紙税法に定められた文書に対して課税される税金で、不動産売買契約書も対象です。税額は文書の種類や記載された契約金額に応じて異なります。

印紙税は売買契約書に貼る「収入印紙」を購入することで納税します。収入印紙はコンビニエンスストアや郵便局、法務局で購入可能です。不動産会社が契約書を作成する場合は不動産会社が用意してくれます。

売主と買主でそれぞれ1通ずつ計2通の不動産売買契約書を作成した場合、収入印紙は両方に貼る必要があります。

8.不動産売買契約書についてよくある疑問

8-1.諸費用は売主・買主のどちらが負担する?

不動産売買契約における諸費用を売主と買主のどちらが負担するかについては、両者の関係性にもよりますが、以下の表のような考え方が一般的です。

<不動産売買契約における諸費用の負担者>

費用 負担者
仲介手数料 売主と買主
契約書の作成費用 売主と買主
印紙税 売主と買主
抵当権抹消登記 売主
所有権移転登記 買主

基本的に両者の折半とすることが多いですが、登記費用では抵当権抹消は売主が、所有権移転は買主が負担するのが基本です。

8-2 印紙税が不要な契約方法はある?

紙の契約書を作成しないPDFなど、電子データの契約書を使う「電子契約」なら印紙税はかかりません。

社会のデジタル化を進める「デジタル改革関連法」の施行により、宅地建物取引業法も改正され、2022年5月から不動産売買契約も電子化できるようになりました。不動産売買契約書のほかに、重要事項説明書や賃貸借契約書も電子化できます。

電子契約を活用すると、印紙税を削減できるだけでなく、対面取引の削減や契約後の書類管理などの面で大幅な効率化を図ることができます。

ただし、電子契約に紙の契約書が持つものと同じ効力を持たせるには、「電子署名」や「タイムスタンプ」の付与が必要です。そのため、電子契約には電子署名とタイムスタンプに対応した「有料の電子契約サービス」を利用するのが一般的です。

普段から電子契約サービスを使っていない方は、電子契約に対応してくれる不動産会社を通して契約するのがスムーズでしょう。

8-3.不動産売買契約書を作成するために資格は必要?

不動産売買契約書を作成するのに資格は必要ありません。宅地建物取引士や司法書士などの専門家に依頼しなくても作成できます。

ただし、個人で契約書を作成する際はいくつかのデメリットがあります。1つは記載内容の漏れにより契約後にトラブルとなる可能性があることです。

物件の状態や違約金などの扱いをめぐり問題が生じた場合、取引に慣れた不動産会社などが作成する契約書でなければ責任の所在が不明確となり、もめごとに発展する可能性があります。

さらに、契約書を個人で作成する場合は金融機関から住宅ローンが借りられないというデメリットがあります。金融機関は住宅ローン審査を行う際、重要事項説明書の提出を求めるのが一般的です。重要事項説明書は不動産会社が作成するもので、個人では作成できません。

資格のない個人でも不動産売買契約書を作成することは可能ですが、このようなデメリットもあることをふまえておきましょう。

8-4.個人間で売買する場合は売主・買主のどちらが作成する?

個人間で不動産を売買する場合、契約書は売主・買主のどちらが作成するかの決まりはなく、話し合いで決めることになります。

不動産会社が取引を仲介する場合は、不動産会社が契約書を作成します。売主・買主が別々の不動産会社に依頼する場合、どちら側の不動産会社が契約書を作成するかのルールはありません。この場合も双方の話し合いで作成者を決めることになります。

9.不動産売買契約書の作成は不動産会社への依頼がおすすめ

不動産売買契約書は、記載するべき内容をしっかり押さえておけば個人でも作成できます。しかし、契約後にトラブルとなるリスクを避けるには、取引経験が豊富な専門家にサポートしてもらうのが現実的です。

さらに個人間の不動産取引では、売買価格をどのように決めるかが課題になります。不動産会社に依頼することで、不動産売買契約書の作成だけでなく、売買価格の決定もスムーズに進めることができます。

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