不動産会社を通さず個人間で不動産売買を行う場合のハードルとなるのが、不動産売買契約書の作成です。
ポイントを押さえた適切な契約書を作成しなければトラブルに発展する可能性もあり、作成にあたっては慎重に内容を検討する必要があります。
当ページでは、個人間で売買を行う際の不動産売買契約書をどのように作成すればよいのかを解説。自分で作る場合と専門家に代行を依頼する場合の両方についても説明します。自分で契約書を作る場合のメリット・デメリットや、専門家に代行を依頼するメリットなどを把握できる内容です。
- 1 1.不動産の売買は個人間でも可能?
- 2 2.個人間でも不動産売買契約書は必要?
- 3 3.個人間の売買で不動産売買契約書を作成する2つの方法
- 4 4.自分で不動産売買契約書を作成するメリット
- 5 5.自分で不動産売買契約書を作成するデメリット
- 6 6.個人間で不動産売買契約書を作成する手順
- 7 7.個人間の不動産売買契約書の記載内容
- 8 8.個人間で不動産売買をする際の注意点
- 9 9.不動産売買契約書の作成を代行できる専門家の種類
- 10 10.不動産会社に仲介してもらうメリット
- 11 11.個人間の不動産売買契約書作成についてよくある疑問
- 12 12.個人間の不動産契約書作成でも専門家のサポートが重要
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1.不動産の売買は個人間でも可能?
土地や建物の売買は、不動産会社が売主と買主を仲介して行われるのが一般的ですが、売主と買主が直接個人間で売買することも可能です。
売却を不動産会社に依頼すると買主探しを代行してくれるので便利ですが、親族や知り合いなど「すでに買主が決まっている場合」は仲介を依頼しなくてもよいと感じるかもしれません。
個人間で売買するメリットは、不動産会社に支払う「仲介手数料」がかからないことです。
仲介手数料は次の式で計算されます。(売買価格が400万円を超える場合)
仲介手数料 = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
売買価格が高くなればなるほど、仲介手数料も大きくなるため、個人間売買のメリットは大きくなるといえます。ただし、ほかにも以下の費用が必要です。
- 契約書の作成費用(専門家への依頼費用)
- 登記にかかる費用(司法書士への依頼費用や登録免許税)
- 各種税金(印紙税・譲渡所得税・住民税)
上記のうち契約書の作成費用は、自分で作成することで節約できます。自分で契約書を作る方法について詳しくは、次から解説していきます。
2.個人間でも不動産売買契約書は必要?
そもそも「契約」は一方が締結を申し入れて相手方が承諾すれば成立するため、個人間の不動産売買で契約書の作成は必須ではありません。しかし、契約後のトラブルを防止するためには、不動産売買契約書を作成しておくことが重要です。
親戚や知人など信頼している相手との売買でも、トラブルのリスクがないとはいいきれません。例えば代金の支払が遅れた場合、契約解除を申し出る時期を契約書であらかじめ決めておかなければ、時間だけが過ぎて必要な対応を進められなくなる可能性もあります。
また引き渡しをする前に自然災害で修復が必要になった場合、負担は売主と買主のどちらがどれほど負うのかで争いになることもあり得るでしょう。
売買代金の支払期限や、違約金の額、引き渡し前の修理の取り決めなどを、不動産売買契約書に明確に記載しておくことで、トラブルに発展するリスクを抑えられます。
3.個人間の売買で不動産売買契約書を作成する2つの方法
個人間で売買する際に不動産売買契約書を作成するには、次の2つの方法があります。
- 専門家に代行してもらう
- 個人で(自分で)作成する
1つずつ解説します。
3-1.専門家に代行してもらう
個人間売買で不動産売買契約書を作成する1つの方法は、専門家に依頼して作成を代行してもらうことです。
代行手数料はかかりますが、すでに売買する相手が決まっているため、不動産会社に支払う仲介手数料が不要で、一般的な不動産売買よりコストが安く済みます。
ただし不動産売買で必要なのは契約書の作成だけではないことに注意が必要です。ほかにも抵当権の抹消や所有権移転といった登記手続きや、不動産の売却で利益(譲渡所得)が生じた場合に必要となる確定申告など、さまざまな手続きが発生します。
これら不動産の売買に必要な手続き・書類の作成をトータルで相談できる専門家に依頼することがポイントです。依頼する専門家の選び方について詳しくは、当ページの「不動産売買契約書の作成を代行できる専門家の種類」で解説します。
3-2.個人で(自分で)作成する
不動産売買契約書を作成するもう1つの方法は、個人で(自分で)作成することです。
契約書の作成に特別な資格は必要ありません。インターネット上には無料のテンプレート・ひな形が紹介されているので、これらを参考にしながら契約書を作成できます。
不動産の売買では代金や違約金など大きな金銭のやり取りが生じます。後々大きなトラブルを招かないよう、支払期日や違約金が発生する条件など、必要な内容を漏れなく記載するよう細心の注意が必要です。
一方で個人で契約書を作成する際は、買主が金融機関の住宅ローンを利用できないなど、いくつかのデメリットもあります。契約書を個人で作成するメリットとデメリットについて、詳しくは次項から解説していきます。
4.自分で不動産売買契約書を作成するメリット
自分で不動産売買契約書を作成するメリットは費用を抑えられることです。
不動産売買契約書の作成を専門家に依頼すると、「1万〜5万円」ほどの費用がかかります。「重要事項説明書の作成」や「物件調査」などの付帯サービスも付けると10万円を超えることもあります。
不動産の売買では、「印紙税」や「登録免許税」などさまざまな費用がかかりますが、そのうち不動産売買契約書の作成にかかる費用のみを節約できる点がメリットです。
5.自分で不動産売買契約書を作成するデメリット
自分で不動産売買契約書を作成するデメリットは次のとおりです。
- トラブルになりやすい
- 作成の手間がかかる
- 銀行の住宅ローンが利用できない
- 登記手続きについても調べる必要がある
1つずつ解説します。
5-1.トラブルになりやすい
自分で不動産売買契約書を作成するデメリットの1つは、トラブルになりやすいことです。
契約書はトラブル防止や早期解決のために作成するものですが、自分で作成した契約書では、必要な内容が書かれていないなどの原因で問題が大きくなるリスクがあります。
例えば、次のようなトラブルが考えられます。
- 約束した期日を過ぎても売主が引っ越さず、引き渡しが完了しない
- マンション売買後、上階の生活音に悩まされた買主が防音工事を施し、その工事負担について売主と争いになる
このようなトラブルの発生時に備えて、契約解除や違約金、工事負担割合をどうするかなどの対応方法を契約書に記載しておくことが重要です。
専門知識のない個人では、契約書に必要な項目を漏れなく記載するのは難しい場合があります。専門家に契約書の作成を代行してもらえば、必要な項目の抜けによるトラブルが起こりにくく、安心感のある売買が可能です。
5-2.作成の手間がかかる
手間がかかることも不動産売買契約書を自分で作るデメリットです。テンプレートを使って作成する場合でも、それぞれの取引の事情に合わせて内容を調整する手間が必要です。
契約書の文言や各条項の意味を理解し、内容の細部にまで時間をかけてチェックする手間もかかります。
民法や都市計画法、建築基準法など、不動産取引に関連する法律の改正があった場合、その変更点も調べて把握しなければなりません。
仕事などで忙しくて時間を確保できない場合、契約書の作成まで手が回らない可能性もあります。専門家に依頼すれば、手間や時間を短縮でき、忙しい中でも不動産の売買を進めることができます。
5-3.銀行の住宅ローンが利用できない
不動産売買契約書を自分で作成する場合、基本的に買主は銀行の住宅ローンを利用できません。
買主が住宅ローンを利用して物件を購入する際、金融機関への借入申し込み時に「重要事項説明書」を提出する必要があります。その発行には宅地建物取引士の資格が必要です。
重要事項説明書には、不動産の取引条件に関する事項が詳細に記載されています。対象となる取引や物件についての詳細情報を、専門家の作成した書類によって確認できなければ、金融機関は基本的にお金を貸すことができません。
不動産投資ローンなど住宅ローン以外なら利用できる場合もありますが、住宅ローンよりも金利が高くなることが多い点に注意が必要です。
住宅ローンを利用するには、不動産会社を通すか、宅地建物取引士の有資格者に書類の作成を依頼する必要があります。
5-4.登記手続きについても調べる必要がある
個人で不動産売買契約書を作成する場合、「登記」の手続きについても知っておく必要があります。
不動産の登記とは、物件の所在地や面積などの基本的な事項や、所有権、抵当権といった権利関係に関する情報を登記簿に記録する手続きです。登記をすることで、その不動産を所有していることを第三者に主張できるようになります。
不動産売買で必要になる登記には、「抵当権抹消登記」と「所有権移転登記」があります。自分で行うこともできますが、必要書類をそろえて法務局を訪れたり、住宅ローンがあれば金融機関とのやり取りが生じたりなど、難易度の高い手続きです。
登記手続きを代行してもらう場合は司法書士に依頼します。付き合いがある司法書士がいない場合は、信頼できる司法書士を探さなければなりません。不動産会社に依頼すれば、司法書士を紹介してもらうことも可能です。
6.個人間で不動産売買契約書を作成する手順
不動産売買契約書の作成・締結は、基本的に以下の手順で進めます。自分で作る場合も、専門家に代行してもらう場合も、基本的な流れは同じです。
- 基本事項の確認・話し合い
- 相場の調査・価格の決定
- 必要書類の準備
- 重要事項説明書の発行
- 不動産売買契約書の作成・締結
- 物件の引き渡し・代金の支払
- 抵当権抹消・所有権移転の登記
それぞれの詳しい方法を、以下に解説します。
6-1.基本事項の確認・話し合い
不動産売買契約書を作成するには、まず不動産の名義人、隣地との境界線、付属する設備の状態などの基本情報を正確に確認しておくことが重要です。
手付金や違約金をはじめ、契約の意図や内容についても事前に十分に当事者間で話し合っておくことが、後々のトラブル防止につながります。
必要な情報を収集した後、だれが契約書の作成を担当するかについて、関係者の間で合意しておきましょう。作成を専門家に代行してもらう場合には、その費用の負担割合についても決めておきます。
契約書に記載する内容について詳しくは、当ページの「個人間の不動産売買契約書の記載内容」を参照してください。
6-2.相場の調査・価格の決定
不動産売買契約で価格設定をする際は、相場を調べて適正な価格にすることが重要です。
相場をふまえないで価格設定すると、売主が「買いたたかれた」と感じたり、買主が「相場より高い」と感じたりなど、親しい間柄だとしても関係性に影響する懸念があります。
不動産会社が売買を仲介すれば、プロの視点から査定してもらうことができ、適正な価格で売買できます。複数の不動産会社の査定額を簡単に比較するには、不動産一括査定サイトの利用が便利です。
ソニーグループのSREホールディングスが運営する「おうちクラベル」の不動産一括査定なら、登録している実績豊富な優良企業に一括で査定を依頼できます。信頼できるプロに査定を依頼して、円滑な取引につなげましょう。
6-3.必要書類の準備
不動産売買契約をスムーズに進めるには、事前に必要書類を準備しておくことが大切です。必要書類は物件によって異なりますが、主な必要書類は以下のとおりです。
- 登記簿謄本または登記事項証明書
- 登記済権利書または登記識別情報
- 土地測量図・境界確認書
- 固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書
- 売却不動産の間取り図などの図面や設備の仕様書
- 建築確認済証または検査済証
- 建築設計図書または工事記録書(任意)
- マンションの管理規約(マンションは必須)
- 耐震診断報告書またはアスベスト使用調査報告書(任意)
契約書を自分で作る場合、必要書類の種類や取り寄せ方法を自分で調べるなどの対応が必要です。専門家に契約書の作成を代行してもらう場合は、必要書類の準備についてもサポートが受けられます。
不動産売買契約の必要書類について詳しくは、以下のページでも解説しています。
不動産売却での必要書類は全部で11個!チェックリストや準備タイミングについても解説
6-4.重要事項説明書を発行してもらう
個人間売買では重要事項説明書を作成する義務はありません。しかし買主が住宅ローンを利用する場合は、金融機関に重要事項説明書の提出を求められるため、不動産会社に依頼して発行してもらう必要があります。
住宅ローンを使わない場合でも、重要事項説明書は売主・買主の双方が契約内容を正しく把握するために役立ちます。契約締結前に作成し、その内容をよく確認しておくことが、トラブル防止などのために重要です。
6-5.不動産売買契約書の作成・締結
次に不動産売買契約書を作成し、売主・買主がそれぞれ記名・捺印することで締結します。
紙の不動産売買契約書には印紙税がかかるため、必要な枚数の収入印紙を貼る必要があります。必要な金額分の収入印紙を貼り付けたら、文書と印紙の彩紋とにかけて押印する「消印」をします。必要な印紙税の金額については「個人間の契約でも収入印紙は必要?」で解説しています。
契約書は、買主用と売主用の2通を作成し、それぞれ保管するのが一般的です。通常は契約締結の段階で「手付金」の受け渡しをします。
6-6.物件の引き渡し・代金の支払
不動産の引き渡しは、建物なら通常は「鍵を渡すこと」によって行われます。土地の場合、例えば建物付きの土地を更地で引き渡すケースでは、建物を解体して埋蔵物がないか確認したうえで、建物の滅失を登記するなどの手続きが必要です。
通常は売却代金が全額支払われるのと同時に引き渡しが行われます。買主が銀行から融資を受けて物件を購入する場合は、司法書士の立会いのもと、銀行の一室で引き渡しを行うのが一般的です。
売主に住宅ローンの残債がある場合、売却代金をそのまま融資先の銀行へ振り込み、完済手続きを進めます。完済すると銀行から抵当権抹消登記に必要な書類を発行してもらうことができます。
6-7.抵当権抹消・所有権移転の登記をする
引き渡しが済んだら司法書士に抵当権抹消と所有権移転の登記手続きをしてもらいます。引き渡しと登記は同じ日に行われるのが一般的です。
抵当権抹消とは、住宅ローンなどの債務がある場合に物件に設定された担保権などを抹消することです。売主の債務に基づく抵当権がある場合は、引き渡しと同時に抹消登記をします。
所有権移転登記は、不動産の所有権が移転したことを明示するために行う登記です。所有権が移った日付や所有権を得た人の氏名などを登記簿に記載します。所有権移転登記は義務ではありませんが、登記がなければ所有権を第三者に主張(対抗)できません。
登記手続きを自分で行えば司法書士に支払う手数料を節約できます。ただし「登録免許税」は、自分で行う場合でも必要です。抵当権抹消の登録免許税は、1つの不動産につき1,000円です。所有権移転の登録免許税は、売買代金に応じた税率をかけて計算されます。
抵当権抹消を自分で行う方法について詳しくは、下記ページでも解説しています。
7.個人間の不動産売買契約書の記載内容
個人間の不動産売買契約書も、記載する内容は不動産会社が仲介する場合と基本的には同じです。主な記載内容を、下記の表にまとめました。
<不動産売買契約書に記載する内容>
項目 | 内容 |
売買価格・手付金・支払期日 | 合意した売買価格と手付金、支払期日 |
売買対象面積、測量、代金精算 | 代金の基礎となった面積と測量結果の面積が異なる場合の代金精算の方法 |
所有権の移転・引き渡し時期 | 売主から買主に所有権を移転し、引き渡す時期 |
付帯設備等の引き渡し | 売買の対象物件に付帯する設備の扱い |
抵当権等の負担の抹消 | 買主の所有権を制限する負担を抹消する取り決め |
公租公課等の分担 | 固定資産税や都市計画税などの精算方法 |
契約不適合責任 | 引き渡し後に契約内容と相違があった場合の売主の責任 |
引き渡し完了前の滅失、毀損 | 引き渡し完了までの間に物件が滅失または毀損した場合の扱い |
契約違反による解除 | 違反があり契約を解除する場合の違約金などの扱い |
反社会勢力の排除 | 反社会勢力との関係が認められた場合の契約解除規定 |
融資利用の特約 | 買主が融資の審査に通らなかった場合の扱い |
物件の表示 | 物件の所在地や床面積などの基本情報 |
特に「売買代金の支払期日」「契約解除」「違約金」に関する取り決めは、親しい間柄だとしても明確に定めておくことが、後々のトラブルを避けるため重要です。
契約書の記載内容について詳しくは、下記ページにて説明していますので、ぜひ参考にしてください。
不動産売買契約書とは?記載内容やチェックポイント・注意点について解説
8.個人間で不動産売買をする際の注意点
個人間で不動産売買をする場合の注意点として、以下の3つが挙げられます。
- 贈与税について把握しておく
- 確定申告が必要になる場合がある
- 細かい点も遠慮せず丁寧に交渉する
各注意点について、以下に詳しく解説します。取引を終えた後でトラブルにならないよう、しっかり確認しておきましょう。
8-1.贈与税について把握しておく
個人間の不動産売買で把握しておかなければならないことの1つは、「贈与税」が課される可能性です。
贈与税は、個人からの贈与で取得した財産に課税される税金です。その年の1月1日から12月31日までの間に贈与を受けた財産を合計し、基礎控除額の「110万円」を超える部分に税率をかけて税額が計算されます。
原則は無償で取得した財産に課税されるのが贈与税ですが、著しく低い価格で不動産を購入した場合、実質的な贈与にあたる「みなし贈与」として課税されることがあります。
例えば、ある人が市場価格2,000万円の土地を知人に500万円で売却した場合、差額の1,500万円は贈与とみなされる可能性があります。
贈与税は贈与を受けた側が負担します。売主側が「家族だから」「お金はいらないから」などの理由で著しく低い価格で売却を決めても、買主側に予想外の税負担金が発生することになりかねません。個人間で不動産売買を行う際には適正価格を調べることが重要です。
8-2.確定申告が必要になる場合がある
不動産を売却した場合、たとえ個人間の売買でも「譲渡所得」が発生した場合は、所得税や住民税を納付するために「確定申告」が必要になることがあります。
「譲渡所得」は、以下の式で計算されます。
譲渡所得 = 譲渡金額 – (取得費 + 譲渡費用)
- 譲渡金額:不動産の売買代金の金額
- 取得費 :土地・建物の購入代金や建築代金、購入手数料など
- 譲渡費用:不動産会社に支払った仲介手数料や印紙税など
譲渡所得を計算するとマイナスになる場合は「譲渡損失」が発生したことになり、確定申告は原則不要です。逆にプラスになる場合は「譲渡所得」を得たことになり、確定申告が必要になることがあります。
確定申告について詳しくは下記ページでも解説しています。
不動産売却と確定申告の関係って?必要書類と書き方を徹底解説!
8-3.細かい点も遠慮せず丁寧に交渉する
個人間で不動産を売買するケースでは、細かい点でも遠慮せず丁寧に交渉することが重要です。
親戚や知人など普段から付き合いがある間柄で取引をする場合、「良好な関係を保ちたい」「嫌われたくない」といった気持ちが優先されて、細かい内容の交渉を怠ってしまうことがあります。
しかし大きなお金のやり取りが発生する不動産売買契約では、細かい点が大きなトラブルにつながりかねません。例えば以下のようなトラブルが考えられます。
- 期限までにお金を用意できなくなった
- 家庭の事情で契約を解除したくなった
- 知らなかった重大な不具合を発見した
親しい間柄だからといって、このようなトラブルが発生しないとはかぎりません。争いを回避するためにも、細かい点に注意を払って交渉を進め、その内容を契約書に記載しておくことが重要です。
9.不動産売買契約書の作成を代行できる専門家の種類
不動産売買契約書の作成を代行できる専門家としては以下の5つが挙げられます。
- 宅地建物取引士
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 税理士
いずれも契約実務の専門家ですが、不動産売買契約書の作成については「宅地建物取引士」がいる不動産会社がおすすめです。宅地建物取引士は、適正価格の決定から契約締結、引き渡しまで、不動産売買についての幅広いサポートができます。
不動産売買契約書の狙いは、売買代金の受け渡しや、契約内容と相違した場合の取り扱いをめぐるトラブルを防ぐことでもあります。不動産取引に精通した不動産会社なら、安心して契約書の作成を依頼できます。
また重要事項説明書の作成・発行は宅地建物取引士しかできません。不動産売買契約書の作成以外について、業務ごとに対応できる専門家は以下の表のとおりです。
<不動産売買に関する専門業務>
業務 | 対応できる資格 |
適正価格の助言 | 宅地建物取引士、税理士 |
不動産売買仲介 | 宅地建物取引士 |
物件の調査 | 宅地建物取引士 |
権利関係の調査 | 宅地建物取引士 弁護士 司法書士 行政書士 税理士 |
重要事項説明書の発行 | 宅地建物取引士 |
売買契約書の作成 | 宅地建物取引士 弁護士 司法書士 行政書士 税理士 |
登記手続き | 司法書士 |
税務上の助言 | 税理士 |
表から、宅地建物取引士が幅広い業務をカバーしていることが分かります。
登記の手続きは「司法書士」の専門分野ですが、不動産会社に依頼すれば多くの場合、司法書士の紹介を受けられます。
10.不動産会社に仲介してもらうメリット
不動産会社には契約書の作成だけでなく、不動産売買の仲介を依頼することもできます。
仲介とは、物件の売主と買主の間に立って契約を成立させることです。売却物件の買い手を探す営業活動、契約条件の調整、契約から引き渡しまでの手続きなどを行います。
個人間売買で買主が決まっている場合も不動産会社に仲介してもらうことにはいくつかのメリットがあります。主な3つのメリットについて解説します。
10-1.売買価格を決めやすい
個人間売買でも不動産会社に仲介してもらうメリットの1つに、売買価格を決めやすいことがあります。
前述のとおり「親族だから」といった理由で価格を相場より低くしすぎると、買主が贈与税を負担することになるケースもあるため注意が必要です。
逆に地価が急落している中で市場価格より高値で売買してしまう可能性もあり、価格設定をめぐり当事者間でトラブルに発展するリスクもあります。
不動産会社は、過去にあった類似物件の取引事例などを参考にしながら売買価格を設定します。個人の感覚で決めるよりも適正価格での売買しやすい点がメリットです。
10-2.トラブル発生時に相談できる
トラブルが発生したときに相談できる点も、不動産会社に仲介してもらうことのメリットです。
売主・買主の間でトラブルが発生した場合、個人間で契約した場合は自己責任で対応する必要があります。一方、不動産会社が仲介した契約の場合は、不動産会社に相談することが可能です。
不動産取引に精通した専門家のサポートのもと、トラブル解決に向けた対応がしやすくなります。
10-3.買主の候補者を増やせる
不動産会社に仲介してもらうと、買主を探す活動を代行してもらえます。個人で買主を決めている場合でも、もっと良い条件を出してくれる買い手を探したいと考えているなら、不動産会社に仲介を依頼するのがおすすめです。
レインズ(REINS)と呼ばれる不動産会社のネットワークを利用して物件の情報を発信したり、不動産情報のポータルサイトに掲載したり、自社顧客に紹介したりと、不動産会社はさまざまな方法で買主を探してくれます。
不動産会社が自ら買主となって購入してくれる場合もあり、仲介よりも早期に売却できる可能性もあります。買取について詳しくは下記ページをご参照ください。
不動産買取とは?買取と仲介の違いやメリット・デメリットを解説
11.個人間の不動産売買契約書作成についてよくある疑問
11-1.テンプレートはどこで見つかる?
個人間の不動産売買契約書のテンプレート(ひな形)は、インターネットで無料配布されているものを活用できます。
インターネットで「不動産売買契約書 テンプレート」と検索すると、無料テンプレートを配布するWebサイトがいくつか見つかります。
ただし、インターネット上には必要事項が網羅されていないテンプレートもあります。ダウンロードして活用する場合は弁護士や宅地建物取引士などの専門家が作成したものを選びましょう。
テンプレートの内容は不十分な可能性もあります。トラブルを防ぐため、そのまま転用するのではなく必要に応じて調整し、取引内容に応じた内容にするよう十分注意してください。
11-2.個人間の契約でも収入印紙は必要?
個人で作成した不動産売買契約書にも収入印紙は必要です。売主用と買主用に契約書を2通作成する場合、両方に収入印紙を貼る必要があります。
印紙税の額は以下の表のとおり、不動産の価格によって異なります。
<不動産売買契約にかかる印紙税>
記載された契約金額 | 税額 | 軽減後の税額 |
1万円未満 | 非課税 | – |
10万円以下 | 200円 | – |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
金額の記載のないもの | 200円 | – |
引用元:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
表の「軽減後の税額」は、2024年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書で、契約書に記載された契約金額が10万円を超えるものが対象です。
11-3.収入印紙はどこで購入する?
印紙税の納税に必要となる収入印紙は、郵便局や法務局で購入できます。不動産会社が契約書を作成する場合は不動産会社が用意してくれます。
収入印紙はコンビニでも購入可能です。ただしコンビニでは基本的に「200円」の収入印紙しか置いていない場合が多いため、高額な印紙が必要な場合は郵便局や法務局を利用しましょう。
12.個人間の不動産契約書作成でも専門家のサポートが重要
不動産売買契約書は個人間の売買でも必要です。無料テンプレートなどを使って自分で契約書を作成することは可能ですが、トラブル防止のためには、専門家に依頼して契約書の作成を代行してもらうことが重要です。
売買価格を決める際にも、専門家によるサポートが役立ちます。専門家の査定価格を基準に売買を行うことで、贈与税の発生などのトラブルを避けることができます。
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