【2023年最新版】日本の不動産価格はどう推移するのか インフレ・地政学リスク・人口動態から検証する

不動産の売買を考えている人にとって、不動産価格の推移は気になるところでしょう。不動産価格は、さまざまな要因によって変動するため売却のタイミングの見極めが重要です。

本記事では、不動産価格指数や地価公示から見る不動産推移や、不動産価格に影響を与えている最近の経済動向などを解説します。

経済動向や金利の動向、インフレの進行状況、再開発の予定などの切り口から、2023年以降の不動産価格の推移についても解説しています。

不動産価格に関連する「2023年問題」や「2025年問題」についても解説していますので「今後の不動産価格の推移を予想したい」方は、ぜひ参考にしてください。

1.不動産価格指数から見る不動産価格の推移

ここからは、国土交通省が毎月発表している「不動産価格指数」を参考に「住宅総合・住宅地・戸建て住宅・マンション」の不動産価格の推移を解説します。

1-1.不動産価格指数とは

出典:国土交通省 Press Release

不動産価格指数とは2012年8月から国土交通省により、毎月公表されている不動産価格を指数化した統計データです。

年間約30万件以上の不動産の取引価格情報をもとに「全国・ブロック別・都市圏別」に不動産価格の動向を指数化し、2010年平均を100として統計化したものです。

もともとは、金融・経済危機を背景にIMF(国際通貨基金)からG20諸国に対して「不動産価格の変動を国際標準の指針に基づいて迅速かつ的確に把握して公表すべき」と勧告されたのが始まりです。

日本ではこの勧告に対して、国土交通省が中心となり2010年度から不動産価格指数の開発に着手して、2012年8月より試験運用から毎月の公表に至っています。

不動産価格指数は、国際指針に従い実際の取引価格情報をもとに、物件の立地や特徴による影響などは除去して作成されています。

2022年9月の住宅における不動産価格指数を見ると、次の通りとなっておりマンションの伸びが著しいです。

 

住宅総合

住宅地

戸建て住宅

マンション

指数

133.3

111.6

117.1

186.7

次の章からは、それぞれ2018年〜2022年の5年間の指数変化を解説します。なお、指数をそろえるためにすべて9月とします。

1-2.住宅総合

住宅総合の不動産価格指数の推移は次の通りです。

 

2018年9月

2019年9月

2020年9月

2021年9月

2022年9月

指数

111.0

113.8

114.7

122.7

132.7

出典:国土交通省 Press Release

住宅総合の不動産価格指数を見ると例年数値は増加しており、2018年〜2022年にかけて、21.7%増加しています。住居系の不動産は全体的に価格が上昇していることがわかります。

1-3.住宅地

住宅地の価格指数の推移は次の通りです。

 

2018年9月

2019年9月

2020年9月

2021年9月

2022年9月

指数

101.1

100.9

100.4

104.5

111.0

出典:国土交通省 Press Release

住宅地の価格指数を見ると、2018年〜2022年にかけて最終的に10%増加しています。住宅地の価格は上昇していることがわかります。2019年〜2021年の増減は新型コロナウィルス感染症の影響によるものでしょう。

1-4.戸建て住宅

戸建て住宅の価格指数の推移は次の通りです。

 

2018年9月

2019年9月

2020年9月

2021年9月

2022年9月

指数

102.5

102.6

101.2

108.3

116.7

出典:国土交通省 Press Release

戸建て住宅の価格指数を見ると、2018年から2022年にかけて14.2%増加しています。戸建て住宅の価格も上昇していることがわかります。

1-5.マンション

マンションの価格指数の推移は次の通りです。

 

2018年

2019年

2020年

2021年

2022年

指数

139.5

147.2

155.1

169.6

184.9

出典:国土交通省 Press Release

マンションの価格指数を見ると、2018年〜2022年にかけて45.4%増加しています。マンションの価格が著しく上昇していることがわかります。

マンションの価格高騰が続いている要因は、建築費や地価公示の高騰、金融緩和制作、高級マンション需要の増加など、さまざまなことが影響していると考えられるでしょう。

2.地価公示から見る不動産価格の推移

ここでは2018年〜2022年の地価公示から見る不動産価格の推移を解説します。地価公示とは最も代表的な土地評価であり、国土交通省の不動産鑑定委員会が毎年3月に公表します。

5年間の地価公示の変動率を参考にして「全国・都市圏・東京都」の不動産価格の推移を見ていきましょう。(単位は%とする)

2-1.全国

全国の地価公示の推移は次の通りです。

 

2018年

2019年

2020年

2021年

2022年

全用途平均

+0.7%

+1.2%

+1.4%

−0.5%

+0.6%

住宅地

+0.3%

+0.6%

+0.8%

−0.4%

+0.5%

商業地

+1.9%

+2.8%

+3.1%

−0.8%

+0.4%

工業地

+0.8%

+1.3%

+1.8%

+0.8%

+2.0%

出典:国土交通省 令和4年地価公示の概要

出典:国土交通省 地価・不動産鑑定 これまでの発表資料

全国平均の地価公示の変動率は「全用途平均・住宅地・商業地」のいずれも2年ぶりに上昇しました。工業地は6年連続の上昇で、上昇率も拡大しています。2021年の住宅地と商業地の変動率は、新型コロナウィルスの影響で一時的に下落したと考えられるでしょう。

国土交通省によると「住宅地・商業地」の地価公示の動向について、次のように記載しています。

  • 住宅地:景況感(企業や消費者が景気に感じている印象)の改善や、住宅取得支援対策、低金利環境の継続などの効果により、全国的に住宅地の重要が回復し地価公示が上昇した
  • 商業地:都心近郊部においては、景況感の改善により店舗やマンション用の土地の需要が高まり上昇した

工業地に関しては、インターネット通販の拡大に伴って、物流施設の適地であるため地価公示が上昇していると考えられます。

2021年〜2022年の「住宅地・商業」の地価公示がプラスに転じたのは、新型コロナウィルス感染症の影響が徐々に緩和されてきているためであると考えられます。

2-2.都市圏(首都圏・大阪圏・名古屋圏)

都市圏の地価公示の推移は次の通りです。

 

2018年

2019年

2020年

2021年

2022年

全用途平均

+1.5%

+2.0%

+2.1%

−0.7%

+0.7%

住宅地

+0.7%

+1.0%

+1.1%

−0.6%

+0.5%

商業地

+3.9%

+5.1%

+5.4%

−1.3%

+0.7%

工業地

+1.5%

+1.9%

+2.4%

+1.0%

+2.7%

出典:国土交通省 令和4年地価公示の概要

出典:国土交通省 地価・不動産鑑定 これまでの発表資料

3大都市圏平均では「全用途平均・住宅地・商業地」のいずれも2年ぶりに上昇しており、工業地は8年連続の上昇で、上昇率も2.7%まで拡大しています。

都市圏の地価公示が上昇している理由は、交通の利便性や住環境に優れた住宅地や商業地が存在するためであると考えられます。

いずれにしても新型コロナウィルス感染症の影響が緩和されてきていることは、地価公示の上昇に関連していると予想できるでしょう。

工業地に関しては、前述と同様でインターネット通販の拡大に伴って、物流施設の適地であるため地価公示が上昇していると考えられます。

2-3.東京都

東京都の地価公示の推移は次の通りです。

 

2018年

2019年

2020年

2021年

2022年

全用途平均

+1.7%

+2.2%

+2.1%

−0.5%

+0.8%

住宅地

+1.0%

+1.3%

+1.4%

−0.5%

+0.6%

商業地

+3.7%

+4.7%

+5.2%

−1.0%

+0.7%

工業地

+2.3%

+2.4%

+3.0%

+2.0%

+3.3%

出典:国土交通省 令和4年地価公示の概要

出典:国土交通省 地価・不動産鑑定 これまでの発表資料

東京都全体でも「全用途平均・住宅地・商業地」がプラスに転じて、工業地は9年連続でプラスを維持しています。

住宅地の地価公示が上昇した理由は、新型コロナウィルス感染症による影響が緩和されてきたことや、テレワークの普及などであると予想できます。つまり、住宅環境が見直されて需要が拡大して地価公示もプラスに転じたと考えられるでしょう。

商業地の繁華街やオフィス街が多い都心では、新型コロナウィルスの影響が続いています。しかし、交通の利便性が高い地域は、商業拠点の需要があるため地価公示はプラスに転じたのでしょう。

こちらも前述と同様で、工業地に関してはインターネット通販の拡大に伴って、物流施設の適地であるため地価公示が上昇していると考えられるでしょう。

一方で都心3区の商業地が下落しており、下落率が最も大きかったのは-1.3%の中央区で、-1.2%の千代田区、-0.3%の港区が続いています

3.最近の動向と不動産価格の推移

不動産価格はあらゆる経済動向や金融政策などにより変動します。ここから「世界経済・日本経済・地政学リスク・新型コロナウィルスの感染状況」など不動産価格に影響を与えていることがらについて解説します。

3-1.世界経済・日本経済

一般的に不動産市況は経済動向に強く影響を受けます。つまり、第1章で紹介した不動産指数の伸びは日本経済の伸びと関連しており、経済活動が活発なときは不動産の需要も高まります。

反対に金利や物価の上昇などによって経済の動きが停滞すると、不動産の需要も低下してしまいます。

例えば、次に挙げた項目を参考に、経済動向が不動産価格にどう影響するのかを見てみましょう。

  • 金利の上昇
  • 世界的インフレと円安による物価上昇
  • 日経平均株価の変動

基本的に金利が上昇すると不動産の需要は下がります。住宅ローンの金利が上昇して月々の返済額が増えるためです。そして、住宅を購入する人が少なくなり、不動産の需要が下がるのです。

2022年の世界的なインフレにともない主要各国の金利が上昇しています。アメリカでは1月時点で0.25%であった金利を10月時点で3.0%〜3.25%まで引き上げています。それにつられて日本の長期金利も上昇しており、連動性の高い「フラット35」の金利が上昇傾向です。

一方で、短期金利と連動性の高い変動型の住宅ローンの金利は上昇していません。これは、日本銀行が金融緩和政策を維持すると明言しているためです。この金融緩和により、現在の不動産価格は高止まりしています。

新型コロナウィルス感染症やロシアによるウクライナ軍事侵攻により、建築資材やエネルギー関連の価格が高騰しています。つまり、従来よりも建築作業や建築の資材に費用がかかるため、住居系の不動産価格が上昇してしまうのです。

株価は不動産価格の先行指標となっており、株価が上がれば遅れて不動産価格も上昇します。下がったときも同様で遅れて不動産価格が下落します。

日経平均の株価は2021年がピークと言われています。つまり、不動産価格は2022年、2023年と遅れてピークを迎える可能性があるでしょう。

3-2.地政学リスク

地政学リスクとは、ある特定の地域の「経済的・政治的・軍事的」な緊張の高まりが、地理的な位置関係により、その地域の経済または世界経済全体の先行きを不透明にするリスクのことを言います。

例えば、紛争やテロ、パンデミックなどにより、エネルギー関連の価格が高騰してしまい、国内および世界的に経済が停滞することです。近年で最も目立つ地政学リスクは、2022年のロシアによるウクライナ軍事侵攻と中国のロックダウンでしょう。

これにより、グローバルサプライチェーン(製品の原料調達から販売活動までの一連の流れを海外拠点も含めて行う仕組み)の寸断やエネルギー需給の不安定性が生じてしまい、天然ガス・原油・小麦などの価格が高騰しました。その影響もあって住宅資材が高騰し、不動産価格の上昇の要因となったのです。

一方、地政学リスクが高い地域は不動産価格が下落するのが原則です。日本の周辺においても、北朝鮮によるミサイル発射や核実験、中国による台湾軍事侵攻の懸念など地政学リスクが高まっており、日本の不動産への国際的な投資の減少が懸念されています。

とはいえ、地政学リスクは、新型コロナウィルス感染症やウクライナ情勢など、さまざまな要因が複雑にからみあっています。そのため、地政学リスクがどのように不動産価格へ影響を与えているかを断定するのは難しいでしょう。

3-3.新型コロナウィルスの感染状況

新型コロナウィルス感染症の拡大で一時的に株価は大きく変動しましたが、不動産価格(特に住居系)は大きく変動しませんでした。

また、今後も2020年ごろのような行動制限などが起きるとは考えにくく、不動産業界においても「来店数の減少・内見数の減少・営業時間の短縮」などが起きる可能性は少ないと考えられます。

基本的に、新型コロナウィルス感染症が今後不動産価格に及ぼす影響は小さいと考えられています。その理由は次の通りです。

  • 住居費は生活費に組み込まれることが多い
  • 不動産価格への影響は経済指標に遅れてくる

居住系不動産の購入費用や賃貸住宅の家賃などの住居費は、「衣食住」の生活基盤の費用です。そのため、新型コロナウィルス感染症の拡大により、給与の引き下げやリストラ、株価暴落などの経済混乱が生じ、家庭の生活費が圧迫されたとしても、住居費は低下しにくいと言えます。

また、一般的に不動産価格の変動は、平均株価などの経済指標に遅れて現れます。そのため、仮に新型コロナウィルス感染症拡大がマイナスの影響を与えるとしても、不動産の価格変動は、もっと遅れて出ると考えられるでしょう。

4.今後の不動産価格推移の予想

2023年以降の不動産価格はどのように推移していくのでしょうか。

ここからは、次の5つの切り口から今後の不動産価格推移を予想していきます。

  • 経済動向
  • インフレの進行状況
  • 金利の動向
  • 再開発の予定
  • 人口動態

4-1.経済動向

長らく経済が絶好調だったアメリカが利上げに踏み切り、2023年には不況突入という見方があります。アメリカの不動産の需要も新型コロナウィルス感染症によるリモートワーク普及により高まっていましたが、2022年3月ごろから急激に下落し始めました。

欧州・日本も追随する可能性が否定できません。すでに株価は天井をつけ、下落局面に入っているかに見えます。これらは不動産価格を下押しする要因となるでしょう。

消費者の不動産に対する意識も変化しており、全国宅地建物取引業協会連合会の不動産の⽇アンケート」住居の居住志向及び購買等に関する意識調査(※)によると「不動産を買い時だと思う」が10.5%となり、2015年〜2021年の間で過去最低水準となっています。

一方で「買い時だと思わない」の理由で最も多かったのが「不動産価格が下落しそうだから」28.8%という結果になっています。このように、消費者が買い控えていることも不動産価格の下落につながる可能性があるでしょう。

※出典:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会 「不動産の⽇アンケート」 住居の居住志向及び購買等に関する意識調査 2022年2月

一方、国際不動産投資市場において、日本の不動産は従来から相対的に安いとされてきましたが、円安によりさらにその傾向が強まりました。アジアの機関投資家によって、日本のホテルやマンション、不動産投資信託の購入の動きが活発になっています。

加えて、日本は新型コロナウィルス感染症による患者数が少なかったため、国際不動産投資市場において存在感を示しています。東京などの都心部の「商業系・住居系」の不動産においては、海外から資金が入り価格が上昇することが予想されています。

4-2.インフレの進行状況

アメリカやヨーロッパはアフターコロナ状況でインフレを迎えました。日本でも40年ぶりに消費者物価指数(消費者の購入する財・サービスの価格変動を示す値)が上昇しています。

不動産関係における代表的なインフレは、輸入木材価格の高騰であり「ウッドショック」と呼ばれています。ウッドショックの原因は、新型コロナウィルス感染症により世界的にリモートワークが普及したためです。

リモートワークの普及により、アメリカや中国では感染の懸念がある都心部を避けて、郊外に住宅を建築する動きが見られました。

加えて、もともと虫害や山火事などによる原料の不足、新型コロナウィルス感染症により製材所の休業などがあったなかで、住宅建築の需要が伸びた結果、木材価格の高騰に至ったのです。

アメリカや中国の住宅需要の増加により、世界的にも木材需要が高まり価格が上昇しています。これにより、日本でも2021年から住宅建築に必要である木材の価格上昇により、住居系の不動産価格が上昇する原因となりました。

国内産の木材を使用すべきという意見も見られていますが、日本では林業の労働者不足により、構造的に国産の木材を供給することが難しいのが実情です。

さらにウクライナ情勢によるエネルギーコストの上昇や円安などにより、今後はさらに建築資材の高騰が予想され、住宅不動産の価格に影響すると考えられます。

4-3.金利の動向

2022年12月、日本銀行は長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げる「イールドカーブ・コントロールの柔軟化」を実施しました。これは事実上の利上げと言われており、住宅ローンの金利にも影響する金融政策です。

この利上げはインフレを抑えるために行われていますが、今後も物価の上昇が懸念されているため、さらなる金利の上昇の可能性があります。

実際に、住宅ローンの固定金利がわずかながら上昇しています。影響はまだ少ないですが、今後は金利が上昇していくと住宅ローンの固定金利も連動して上昇するでしょう。

住宅ローンが上昇すれば住宅の購入を積極的に行いづらくなり、住宅需要を冷やすことになります。そして、不動産価格を下落させる要因となるでしょう。

つまり、このままインフレが続けば日本銀行も利上げを行わざるをえない可能性があります。そして、今後は低金利が約束されるわけではないため、不動産の需要は低下すると予想できます。

4-4.再開発の予定

ここしばらく続いている東京の再開発事業はまだまだ続く模様です。2027年竣工予定の「Tokyo Torch」(大手町エリア)では、あべのハルカスを抜いて高さ390mの「Torch Tower 」が建設される予定です。

また、2025年の大阪万博開催にあわせて、大阪駅周辺も「うめきた2期」の再開発が行われています。これらの再開発は不動産価格を上昇させる要因となります。

なぜこれらの再開発が不動産価格を上昇させる要因となるのか、その理由は次の通りです。

  • 商業施設が充実する
  • 住みたい人が増える
  • ブランド価値が高まる

商業施設が充実すると利便性が高まり、将来的にその地域の価値が高まることが期待できます。

実際に再開発予定である東京の「Torch Tower 」と大阪の「うめきた2期」では、次のような商業施設が導入される予定です。

Torch Tower

日本一高い東京の新たなるシンボルタワーとして「ショップ・レストラン・オフィス・ホテル・展望施設」などが導入される予定

うめきた2期

世界をリードする都市空間をとして「都市公園・オフィス・ホテル・ショップ・中枢機能」などあらゆる施設が導入される予定

商業施設が充実して利便性が高まれば、その地域に住みたい人も増えます。住みたい人が増えれば、その地域の価値が高まり不動産価格を上昇させるでしょう。

そして、その地域の価値が高まれば高級住宅の建設が検討されます。高級住宅が建設されていけば「憧れの住宅街」「高くても住みたい街」などのブランド価値も高まり、ますます不動産価格を押し上げる要因となるでしょう。

大規模な再開発は「利便性の向上」「需要の拡大」「ブランド価値の向上」などその地域の価値が高まるため、不動産価格の上昇に繋がるのです。

4-5.人口動態

人口減少時代を迎えている日本では、需給悪化から不動産価格が下落する局面も予想されます。しかし、これは日本全体の不動産価格で言えることではなく、人口が少ない地域と人口が多い地域で二極化していくと予想できます。

つまり、人口が増える地域では不動産の需要が高まり価格が上昇して、反対に人口が減少している地域では不動産の需要が低下して価格も下落します。

また、不動産価格と人口動態は必ずしも連動しているわけではありません。前述したとおり、コロナ禍を除けば地価公示などは上昇傾向で、工業地帯に至っては上昇率が拡大傾向です。

4-5-1.2023年問題

人口減少が進んでいる日本ですが「単独・夫婦のみ・ひとり親と子」などの割合が増加している背景に世帯数は増加していました。

住居系の不動産の需要において人口動態も重要ですが、住宅に住むのは世帯であるため世帯数のほうが重要視されています。

しかし、国立社会保障・人口問題研究所が2018年に発表した「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」を参考にすると、2023年に日本の総世帯数が5,419万世帯でピークを迎え、その後は減少に転じ2040年には5,076万世帯まで減少していくと予想されています。

これを不動産における「2023年問題」と言い、今後は世帯数の減少にともない住宅の需要も減少して、不動産価格は下落する可能性があります。加えて、住宅ストックや空き家問題がより一層顕在化されていくでしょう。

一方で、東京都の統計によると東京の世帯数は2025年に718万世帯、2030年に723万世帯、2035年に724万世帯でピークを迎えると予想されています。

不動産における「2023年問題」は全国の不動産価格に影響すると考えられますが、都市圏では限定的もしくは緩やかに減少すると予想ができます。

いずれにしても、人口の減少と世帯数の減少は不動産価格の下落に影響があると考えられるでしょう。

出典:国立社会保障・人口問題研究所 日本の世帯数の将来推計(全国推計)

出典:予想結果の概要 東京都の統計

4-5-2.2025年問題

「2025年問題」とは、団塊の世代が後期高齢者(75歳)の年齢に達して、医療や介護などの社会保障費の急増が懸念される問題です。2025年には、後期高齢者人口が約2,200万人に膨れ上がり、国民の4人に1人が75歳以上になる計算です。

この「2025年問題」が不動産価格に与える影響は、住宅需要の高い30〜40代の子育て世帯が減少することでしょう。住宅需要の高い30〜40代の世帯が減少すれば、住居系の不動産を購入する人たちが減るため、不動産価格が下落してしまうのです。

加えて、住宅相続が増加することで結果として空き家の増加も予想されます。つまり、住宅を購入する人が減少する一方で空き家が増加してしまい、住宅の需要と供給のバランスが崩れるのです。

これにより不動産価格の下落が懸念されます。この傾向は特に高齢者が多く若者が減少している地方ではっきりと現れる可能性があります。

都市圏のマンション需要の堅調とは裏腹に、地方では住宅需要の低下がみられ、都市圏と地方での二極化が際立っていくでしょう。

5.まとめ

基本的な不動産価格の推移として、需要と供給の悪化から不動産価格が崩れていく地域と利便性の高さから堅調な地域への二極化は避けられません。住居系の不動産はしばらく堅調な推移が予想されますが、波乱も予想されます。

今後、後悔しない不動産売買を行うためには、自分なりに価格相場を捉えておくことが重要です。まずは、今回紹介したような不動産価格指数や地価公示などを確認してみましょう。

その上で局所的に相場価格を調べておくことも大切です。例えば、主要駅近辺や商業施設地域、再開発地域、工業地域など、エリアごとに自分なりに調べて相場価格を把握しておくと参考になるでしょう。

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