不動産売買は個人間でもできるのか、気になっているのではないでしょうか。
不動産仲介会社に依頼するのが面倒に感じていたり、不動産仲介会社に依頼したくない理由があったりする場合、個人間で不動産売買を行いたいと感じることもあるでしょう。
本記事では不動産売買が個人間でも可能であるのか、可能であるとしたら個人間での不動産売買にはどのようなメリット・デメリット、注意点を解説します。
1.不動産売買は個人間でも可能
不動産売買では不動産仲介業者を入れて行うことが一般的ですが、個人間で行うことも可能です。過去にも個人間で不動産売買の取引を行った事例があります。仲介手数料が不要になるなどのメリットから個人間での不動産売買を検討するケースが多くありますが、その反面、リスクも大きくなります。特に、個人同士でのやりとりであり、専門的な知識がないことでトラブルになるケースが多くあるのです。不動産売買を個人間で行う場合はそのようなリスクがあることを事前に理解することが大切です。
2.個人間で不動産を売買するメリット
個人間で不動産を売買するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、個人間で不動産売買するメリットを3つの観点から解説します。
2-1.仲介手数料が不要
不動産仲介会社に仲介を依頼する売買では、売買が成立すると不動産仲介会社に仲介手数料を支払う必要があります。しかし、不動産仲介会社を利用しなければ、仲介手数料を支払う必要はありません。
仮に、4,000万円の物件を売買すれば、仲介手数料は消費税込みで138万6,000円かかります。このように、仲介手数料の負担は大きいため、これを節約できることがメリットだと言えます。
2-2.消費税がかからない
また、不動産仲介会社に仲介を依頼して行った不動産売買には消費税がかかります。しかし、消費税は「事業者」に対してかかるものであり、事業者でない個人間の売買には消費税が発生しません。
仮に2,000万円の物件を売買すれば、200万円の消費税がかかります。仲介手数料以上の、大きな負担がかかってしまうため、これを節約できることも大きなメリットです。
2-3.自由に取引できる
不動産仲介会社を入れた場合の取引では、不動産仲介会社が先導して交渉内容などを決めていくことが多く、不動産仲介会社の意向に反する内容を盛り込むことができない場合もあるでしょう。
しかし、個人間での取引では、当然のことではありますが不動産仲介会社に交渉内容を決められることはなく、自由に取引できます。この点も不動産仲介会社を入れた場合の取引では得られないメリットでしょう。
3.個人間で不動産を売買するデメリット
一方、個人間で不動産を売買することにはデメリットも多く含まれます。
デメリットを理解しないまま個人間で不動産売買を行うと、売買契約締結後にトラブルに発展するケースもあるでしょう。
ここでは、個人間で不動産を売買するデメリットを4つの観点から解説します。
3-1.トラブルになる可能性が高い
1番大きなデメリットは、トラブルになる可能性が高いことです。不動産仲介会社は不動産売買のプロフェッショナルであるため、取引でトラブルが発生しないように細心の注意を払ったうえで交渉を進めてくれます。一方、個人間の取引は素人同士のやりとりになるため、売買価格と相場との乖離や引渡し後の契約不適合などによるトラブルが発生してしまう可能性が高いのです。十分に注意を払っていても、トラブルになってしまうケースもあるため、十分に注意をすることが必要です。
3-2.手間や時間がかかる
また、不動産仲介会社を入れた場合よりも手間や時間がかかる点もデメリットだと言えるでしょう。不動産仲介会社は、契約書などの書類作成を代行してくれるため、あまり手間を掛けずに引き渡しまで進められるケースが多くあります。一方、個人間での取引ではこれらをすべて当事者間で行わなければならないため、手間も時間も多くかかってしまうのです。特に、書類作成等は売主が行う場合が多くなるため、売主に大きな負担がかかってしまうことを知っておくと良いでしょう。
3-3.取引相手がすぐに見つかるとは限らない
不動産仲介会社を介しての取引では、不動産仲介会社がもっているネットワークを使って買い手を探すことができます。しかし、不動産仲介会社を使わなければそのようなネットワークを使えないため、自力で買い手を見つけなければなりません。
買い手が知り合いなどであれば取引相手を探すことが苦になることはありませんが、あてがない場合は取引相手を探すことはとても難しいと言えるでしょう。個人売買の仲介サイトを利用することもできますが、そもそも個人売買の事例が多くないこともあり、あまり利用されておらず、有効に使えない可能性もあるので注意してください。
3-4.住宅ローンを利用できない可能性が高い
住宅ローンを借りる際「重要事項説明書」が必要になります。不動産仲介会社を介していれば不動産仲介会社が作成してくれるため問題はありません。しかし、不動産仲介会社を利用しなければ個人間取引で重要事項説明書を作成することになりますが、宅地建物取引士でないと重要事項説明書を作成できません。そのため、宅地建物取引士でない個人が個人間取引を行う場合、重要事項説明書を作成できないため、住宅ローンを借りることができません。もっとも、個人売買の社会的信頼度が高くないため、個人売買で重要事項説明書を作成できたとしても、住宅ローンの審査に通らない可能性が高いため、住宅ローンの利用を検討している場合は注意が必要です。
4.個人間で不動産売買を行う流れ
個人間で不動産売買を行う際、どのような流れに沿って売買契約を結ぶのでしょうか。
ここでは、個人間で不動産売買を行う流れについて、8つのステップで解説します。
4-1.①権利関係を明らかにする
まず、不動産に関する権利関係を明らかにすることから始めます。不動産の所有者や住宅ローンの残債など、不動産売買の前提となる情報を必ず確認してください。この際、所有権以外の情報も確認することが大切です。もしあなたが購入しようとした不動産に抵当権を設定されていた場合、場合によっては不動産の利用が制限されてしまう可能性もあるため、必ず確認してください。
4-2.②買主が内覧する
権利関係が明らかになったあと、買主が売買する不動産の内覧をします。不動産を事前に内覧しないまま売買契約を結んでしまうと、不動産が想像と異なる形をしていたなどでトラブルに発展するケースも考えられます。そのため、売買する不動産を買主が内覧することで、契約後にトラブルが起きてしまうことを防げるため、可能であれば実施するようにしてください。
4-3.③売買金額を決める
続いて、売買金額を売主と買主との間で決めます。売出価格は売主によって決められますが、最終的な形は売主と買主との間の合意により決まります。しかし、どのくらいの金額が妥当かわからない場合もあるでしょう。その際は、国土交通省の「土地総合情報システム」を参考にするのがおすすめです。実際に行われた不動産取引価格や標準地、基準値の価格が記載されている地価公示・都道府県地価調査の結果も閲覧できます。「土地総合情報システム」に記載されている金額を元にして価格設定をすることで、売主・買主ともに納得しやすい価格設定ができるでしょう。
4-4.④必要書類を準備する
価格が決まったら、不動産売買の手続きで必要な書類を準備します。不動産売買に必要な書類は売主・買主ともに複数あります。必要書類は書類によって、売買契約時、登記手続き、引き渡しまでなど、必要になるタイミングが異なります。そのため、遅滞なく取引を進められるように、早い段階で必要になる書類から準備するように心がけてください。売主・買主がどのような書類を準備すればよいのかは後ほど説明します。
4-5.⑤売買契約を締結する
書類が準備できたら、いよいよ売買契約を締結します。売買契約の締結では「売買契約書」と「重要事項説明書」の2種類の契約書を締結することになります。このうち「重要事項説明書」は、個人間での不動産売買では必須ではありません。ただし、住宅ローンを借りる際には「重要事項説明書」が必要になるため、作っておくことがおすすめです。しかし、「重要事項説明書」は宅地建物取引士しか作ることができません。そのため、宅地建物取引士に「重要事項説明書」の作成を依頼して売買するのがおすすめです。
4-6.⑥買主が決済資金を準備する
売買契約を締結できたら、決済の準備をするために決済資金を準備します。一括で売買代金を支払うのであればその準備が必要ですし、重要事項説明書を作成した上で住宅ローンを組むのであれば、その準備が必要です。決済日までは2〜3ヶ月になることが多いため、その間に決済資金の準備をしておきましょう。
4-7.⑦物件の引き渡し・決済
続いて、物件の引き渡しと決済を行います。決済日=引き渡し日になることが多く、買主から売主へのお金の支払いと、売主からの物件の引き渡しは同日に行われます。
入金はオンラインか銀行振込で行われることが多く、着金確認ができたら不動産を引き渡します。ただし、利用する金融機関によっては送金に時間がかかるケースもあり、振込票を確認することで入金確認としてしまう場合もあることを覚えておきましょう。
4-8.⑧不動産登記の手続きを行う
引き渡し・決済が完了したら所有権移転の登記を行います。登記は自ら行うこともできますが、手間がかかるため司法書士を探して依頼することが一般的です。司法書士に依頼する場合は引き渡し・決済の場にも司法書士が同席し、引き渡しが完了した段階で登記書類を預け、そのまま登記手続きを行ってもらいます。登記を引き渡しや決済と別の日に行おうとすると、予定が合わなかったりそもそも忘れてしまったりするため、当日その場で依頼することがおすすめです。
5.【売主】不動産売買に必要な準備物
売主が不動産売買において準備すべきものは、以下の10種類のものです。
- 登記済権利証(登記識別情報)
- 登記簿謄本
- 公図
- 実印
- 印鑑証明書
- 建築確認通知書と建築確認済証
- 固定資産税納付書
- 本人確認書類
- 印紙代
- 領収書
それぞれどのようなものか、どのような場面で必要になるのか、どこで発行できるのかについて解説します。
5-1.①登記済権利証(登記識別情報)
登記済権利証(登記識別情報)とは、不動産の名義が変更された際、新たな名義人に登記所から通知される書類です。12桁の数字が書かれているもので、手続きにおける確認として使われるだけでなく、なりすまし防止の役割も果たしています。登記手続きの際に必要となるため、それまでには準備をしておきましょう。
5-2.②登記簿謄本
登記簿謄本は土地と建物の両方を準備してください。不動産を管轄している法務局で取得できます。申請書は法務局に備えてあるので、取得するために必要なものはありません。申請書には住所・氏名、ほしい土地・建物の情報を記載します。記載する情報についても法務局に備えてある地図で確認できるため、心配する必要はありません。
5-3.③公図
公図は土地の位置や形状を確定するための法的な地図です。公図も不動産を管轄している法務局で取得できるため、事前に準備しておきましょう。公図の申請も法務局に備えてある申請書を提出するだけです。申請書には一般的な住所表記とは異なる地番を入力する必要がありますが、地番は法務局に備えてある地図で確認できるため、こちらも心配は必要ありません。
5-4.④実印
不動産売買には実印が必要となります。所有権移転登記でも実印は必須となるため、必ず準備しておくようにしましょう。もっとも実印の押印が法的に要請されているわけではありません。不動産売買は諾成契約であるため、そもそも印鑑の押印は必須要件ではありません。しかし、高額な取引である不動産売買において、後々トラブルになることを防ぐことは重要です。そのため、実印が必須になるのです。
5-5.⑤印鑑証明書
実印とともに印鑑証明書も必要になります。印鑑証明書があることで、実印が本物であることの証明になります。実印も印鑑証明書も所有権移転登記の際に必要となるためそれまでには準備をしておきましょう。
5-6.⑥建築確認通知書と建築確認済証
建築確認通知書と建築確認済証は、売りに出す物件が法的に適合しているかを明らかにするために必要な書類です。なお、建築確認通知書と建築確認済証は再発行が原則としてできません。代替となる証明書を発行できる場合もありますが、建築確認通知書と建築確認済証を失くさないように気をつけてください。
5-7.⑦固定資産税納付書
固定資産税納付書は、固定資産税の支払いを証明する書類です。固定資産税納付書があることで、その不動産を所有していることの証明になります。なお、1年の途中で不動産を売買した場合、固定資産税の支払いは売主になることを覚えておきましょう。
5-8.⑧本人確認書類
契約締結時には本人確認書類も必要です。本人確認書類は売買契約の締結時に必要です。本人確認書類の具体例としては、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどが挙げられます。一般的には、先ほど挙げたような顔写真が付いている公的なものが本人確認書類として利用できます。
5-9.⑨印紙代
不動産売買では印紙税を支払う必要があるため、そのための印紙代も用意する必要があります。印紙税は不動産売買の売買金額によって異なります。印紙税は売主と買主で平等に負担することを理解しておきましょう。
なお、印紙税についての詳細は後述いたします。そこで、詳しい印紙税の金額を確認してください。
5-10.⑩領収書
最後に、決済金額の領収書も必要です。不動産仲介会社に仲介を依頼すれば不動産仲介会社が作成してくれますが、個人間取引では自分で作成するしかありません。領収書の作成も雛形を使えば簡単に作成できるため、必ず作成し決済時に持っていくようにしてください。
6.【買主】不動産売買に必要な準備物
買主が不動産売買において準備すべきものは、以下の6種類のものです。
- 住民票
- 実印
- 印鑑証明
- 手付金
- 本人確認書類
- 印紙代
それぞれどのようなものか、どのような場面で必要になるのか、どこで発行できるのかについて解説します。
6-1.①住民票
住民票の写しが必要です。契約の際の住所確認と所有権移転登記を行うために必要です。本籍地やマイナンバーは隠すものの、自身だけの妙本ではなく家族全員分の記載があるものが必要になります。一般的には金融機関用と登記用の2枚が必要になるため、必要枚数を準備しておきましょう。
6-2.②実印
売主同様、実印も必要になります。売主の場合と同じで、実印の押印が法的に要請されているわけではありませんが、高額な取引である不動産売買において、後々トラブルになることを防ぐことは重要です。そのため、実印が必須になるのです。
6-3.③印鑑証明
同様に、印鑑証明も必要です。売買契約の締結時に、実印とともに必要になります。実印だけ持っていっても、それが実印であるかの証明ができないため、印鑑証明も忘れないように気をつけてください。
6-4.④手付金
手付金とは売買契約の締結時に支払うお金です。手付金は単なる売買金額の先払いではなく、買主が手付を放棄すること、もしくは売主が手付の倍額を返還することで契約を解除できる性質を持ったものです。手付金の相場は売買金額の5~10%ですが、明確な決まりがあるわけではありません。そのため、不動産売買を個人間で行う場合は当事者同士で話し合えば問題ないでしょう。
6-5.⑤本人確認書類
売主同様、本人確認書類も必要です。本人確認書類は売買契約の締結時に必要です。運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどを準備しておきましょう。
6-6.⑥印紙代
売主の項目でも説明したように、印紙税の支払いが必要になります。そのため、印紙代を用意する必要があるのです。印紙税は不動産売買の売買金額によって異なります。印紙税は売主と買主で平等に負担することを理解しておきましょう。なお、印紙税についての詳細は後述いたします。そこで、詳しい印紙税の金額を確認してください。
7.不動産の個人売買でかかる費用・税金
不動産の個人売買では、以下の費用や税金がかかります。
- 測量費用
- 司法書士費用
- 譲渡所得税・住民税
- 印紙税
- 登録免許税
必要な費用や税金を把握しておかないと、取引を行う段階で思わぬ出費が発生する可能性があるので、どのような費用や税金がかかるのか1つずつ確認しましょう。
7-1.①測量費用
不動産売買において、登記簿の面積と実際の面積が異なる場合があり、後々売却価格への影響などでトラブルになる可能性が考えられます。そのようなトラブルを防ぐためにも、売買前に測量しておくのがおすすめです。なお、不動産仲介会社を介した不動産売買でも「確定測量」までは行われるため、可能であれば測量を行いましょう。
なお、測量費用は確定測量まで行う場合、40~50万円が相場です。また、道路など役所の人が立ち会わなければいけない場合は、50〜80万円が相場です。これより金額を抑えた現況測量や境界測量という方法もありますが、不動産売買で行う測量としては効果が薄いため、確定測量までを行うことがおすすめです。
7-2.②司法書士費用
所有権移転登記を司法書士に依頼する際にかかる費用です。売買による所有権移転登記を司法書士に依頼する際の費用相場は、22,000〜150,000円です。なお、相続による所有点移転登記や所有権保存登記、抵当権設定登記などは売買による所有権移転登記よりも費用が安くなる傾向にあります。
費用が高いと感じられる方もいるでしょうが、多少高い費用を支払ってでも司法書士に依頼することがおすすめです。所有権移転登記は自分でやることもできますが、手続きが難しいため苦戦してしまうでしょう。それならば、司法書士に依頼して円滑に進めてもらうことがおすすめです。
7-3.③譲渡所得税・住民税
不動産を売却した時に収入があった場合、所得税(譲渡所得税)の対象となります。所得税は「収入金額 -( 取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額」を基準に計算することになります。課税譲渡所得金額に掛け合わせる税率は、以下のとおりです。
- 長期譲渡所得(不動産を5年を超えて保有):20.315%(所得税15%+住民税5%+復興所得税0.315%)
- 短期譲渡所得(不動産の保有が5年以内):39.63%(所得税30%+住民税9%+復興所得税0.63%)
7-4.④印紙税
印紙税額は契約金額ごとに異なります。2014年4月1日から2024年3月31日までの間に作成され契約書については、軽減措置があります。軽減措置後の印紙税の税額は以下のとおりです。
契約金額 | 印紙税の税額 |
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 5千円 |
1千万円を超え5選万円以下 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
※参照:国税庁|No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
7-5.⑤登録免許税
登録免許税は、所有権移転登記の際に発生する税金のことです。売買による所有権移転登記がなされた場合の登録免許税は不動産の価額の2%です。ただし、土地の売買において、令和5年3月31日までの間に登記を受ける場合、土地の売買においては価額の1.5%に軽減され、建物の売買においては0.3%に軽減されます。
なお、個人で土地を売買したケースにおいて、不動産価額が100万円以下である場合は、登録免許税は不要です。この措置は令和7年3月31日までが対象であるため、対象となりうる場合は覚えておくと良いでしょう。
8.【買主】個人間で不動産売買を行う時の注意点
ここでは、買主が個人間で不動産売買を行うときの注意点を解説します。
個人間での不動産売買では、大きな責任とリスクを負うことになるため、2つの注意点をよく理解した上で個人間の不動産売買を行うようにしましょう。
8-1.売買価格は必ず相場を参考にする
売買価格は必ず相場を参考にするようにしましょう。相場がわからなければ、売主から提示された金額が高いのか低いのかもわかりません。場合によっては、相場よりもかなり高い値段で提示されている可能性があり、確認せずに承諾をしてしまうと大きな損失に繋がる恐れもあります。
国土交通省の「土地総合情報システム」を利用すれば、おおよその相場を把握できます。「不動産取引価格情報検索」や「地価公示・都道府県地価調査」を参照することで、相場がどのくらいであるのかを知っておくことが望ましいでしょう。くれぐれも売主の言い値で決めるのではなく、交渉した上でお互いが納得できる金額を探ることをおすすめします。
8-2.親族間で相場より低すぎる売却は贈与税が発生する可能性も
通常、不動産売買には贈与税がかかりません。ただし、親族間で不動産売買を行う際、相場と比べて低すぎる価格で売却を行うと贈与とみなされてしまう可能性があります。これを「みなし贈与」といい、相場から売買金額を差し引いた額に対して贈与税がかかってしまいます。贈与税を支払うのは、資産を譲り受けた側、すなわち買主になるため、相場と乖離しすぎていないかを確認してから行うようにしてください。
9.【売主】個人間で不動産売買を行う時の注意点
ここでは、売主が個人間で不動産売買を行うときの注意点を解説します。
買主のみならず売主にも注意点があるため、ここで紹介する3つの注意点をよく理解した上で個人間の不動産売買を行うようにしましょう。
9-1.適切な売買契約書を用意する
適切な売買契約書を用意することが大切です。個人間での不動産取引には専門家がいません。その状態で売買契約書を作らなければならないため、多くの手間がかかるでしょう。売買契約書の作成には雛形を探す必要がありますし、そもそも売買契約書を用意することが困難でもあります。ただし、個人間での取引を選択した以上、売買契約書を作成しなければならないため、それが可能であるのかを判断した上で、個人間での売買を行うのかどうかを決めると良いでしょう。
9-2.契約不適合責任に問われる可能性がある
売買した不動産に瑕疵があると、契約不適合責任に問われる可能性があります。契約不適合責任とは、引渡した物件が種類・品質・数量などの契約内容と適合していない場合に、売主が買主に対し負うべき責任のことを指します。不動産仲介会社に仲介を依頼すれば、建物のチェックなども入念に行ってくれるため、トラブルに発展するケースは稀です。一方、個人間での取引では住宅に瑕疵があるのかを確認する人がいないため、自分で確認することになります。とはいえ、不動産の専門家でない限り不動産の瑕疵を見つけるのは難しいことです。そのため、契約不適合責任に問われないように、前もって住宅診断をするのがおすすめです。
9-3.売主は知り合いに限定するのが吉
個人間での不動産売買は、知り合いに限定するのが良いでしょう。サイト等で見つけた買主の場合、すなわち会ったこともない人が買主である場合、不動産仲介業者による仲介がない分、理不尽な敵対的な責任追及をされる恐れがあります。知り合いであれば、そのような態度を取られる可能性も低いため、売主はなるべく知り合いにするのが良いでしょう。
10.まとめ
不動産売買は個人間でもできますが、リスクが大きいことは本記事をお読みの方であれば理解していただけたのではないでしょうか。ただし、リスクが大きいとはいえ、事例がないわけではありません。不動産売買を個人間で行っている人もいるため、下準備を入念に行えば問題なく取引できる場合も多くあるでしょう。
とはいえ、個人間売買を行っている方がいることと個人間売買が簡単であるかどうかは別の話です。個人間売買でトラブルになる可能性は仲介会社を利用したときよりも高いことは明らかです。また、手続き等が面倒だと感じてしまう可能性もあります。不動産売買を個人間で行いたい場合は、このようなデメリットやリスクを理解しておくことが大切です。