不動産の売却や賃貸にかかる費用のなかでも大きな割合を占めるのが、不動産会社に支払う仲介手数料です。今回は、不動産売買・賃貸を検討する方が疑問を抱きやすい仲介手数料の仕組みや安くするコツについて解説します。
1.そもそも不動産会社に支払う仲介手数料とは?
仲介手数料とは、売買・賃貸の仲介を依頼した不動産会社に支払う成功報酬のことです。不動産取り引きは専門知識や経験がないとトラブルが発生しやすいため、不動産会社が売り主と買い主の間に立ってサポートするのが一般的です。不動産会社に仲介を依頼すると、不動産査定や購入希望者探し、内見同行、契約締結まで幅広いサポートを受けられます。
その仲介手数料ですが、金額はどのように決まるのか気になることもあるのではないでしょうか。仲介手数料は不動産会社が自由に金額設定できますが、上限額は宅地建物取引業法で決められています。
ここからは、仲介手数料の相場や支払うタイミングを解説します。また計算方法や早見表もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
1-1.不動産で発生する仲介手数料の相場
仲介手数料の上限額は、売買価格や家賃に応じて変動します。したがって売買価格や家賃が高い物件ほど仲介手数料は高くなり、安い物件ほど仲介手数料も安くなるのが一般的です。売買価格や家賃の設定は物件それぞれで異なるため、仲介手数料の相場は一概にいくらとはいえません。
売買における仲介手数料の上限額は、売買価格に特定の料率を乗じて算出する仕組みです。詳しい計算方法は後述しますが、売買価格帯によって異なる料率を使用します。
一方で賃貸における上限額は売買と仕組みが異なり、家賃1ヶ月分の1.1倍の金額が上限となります。貸主と借主の両方から仲介手数料を受け取る場合も同様で、金額は1ヶ月分の家賃額の1.1倍以内としなければなりません。
実際の不動産取り引きでは、上限額を満額で請求する不動産会社がほとんどです。しかし、なかには割引を実施している不動産会社もあります。初期費用の大部分を占める仲介手数料が安くなることは、売り主や買い主にとって魅力を感じやすいポイントといえるでしょう。
1-2.仲介手数料を支払うタイミング
仲介手数料の位置づけは、不動産会社による一連のサポート、すなわち仲介業務に対して支払う成功報酬です。売買契約が成立しなかった場合は目的を達成していないので、仲介手数料を支払う必要はありません。
したがって仲介手数料を支払うタイミングは、売買契約締結時以降となります。売買契約締結が終わっていないのにもかかわらず請求することは違法になるので応じないようにしましょう。
支払い方法は不動産会社によって異なりますが、売買契約締結時と物件引き渡し時の2回に分けて半額ずつ支払うことが多いです。そのほかに、物件引き渡し時に一括で支払うケースもあります。
売買契約締結時に一括で支払うことも問題はありませんが、その後もローン審査や決済、物件引き渡しという重要な業務が残っています。できれば、すべての業務が完了するまで半額の支払いを留保しておいたほうが安心です。
1-3.仲介手数料の計算方法
売買における仲介手数料の計算方法は、売買価格を「200万円以下の金額」「200万円を超え400万円以下の金額」「400万円を超える金額」という3つの価格帯に分けて計算した後に合算します。価格帯ごとの料率は次の通りです。
- 200万円以下の金額…5 .5%
- 200万円を超え400万円以下の金額…4.4%
- 400万円を超える金額…3.3%
1,000万円の不動産を売ったケースを事例に、上限額がいくらになるか計算してみましょう。
- 200万円以下の金額…200万円×5.5%=11万円
- 200万円を超え400万円以下の金額…200万円×4.4%=8.8万円
- 400万円を超える金額…600万円×3.3%=19.8万円
11万円+8.8万円+19.8万円=39.6万円
仲介手数料の上限額は消費税込みで39.6万円となりました。しかしこの方法では複数の計算式を立てなければならず大変ですね。
もっと簡単に計算したい場合は、1つの式で完結する速算式が便利です。速算式は次の通りです。
- 売買価格が200万円以下の場合…売買価格×5%+消費税
- 売買価格が200万円超え400万円以下の場合…売買価格×4%+2万円+消費税
- 売買価格が400万円超える場合…売買価格×3%+6万円+消費税
売買価格1,000万円の場合、速算式では次のように計算します。
1,000万円×3%+6万円=36万円
消費税込みの上限額は39.6万円となり、先程の計算結果と同額になりました。
1-4.不動産売買における仲介手数料の早見表
先に仲介手数料の計算式や速算式をご紹介しましたが、おおよその金額をつかみたい場合は早見表を使いましょう。ここでは、売買価格100万円から1億円の仲介手数料を早見表にまとめました。
売買価格 | 仲介手数料(消費税込み) |
---|---|
100万円 | 5万5,000円 |
200万円 | 11万円 |
300万円 | 15万4,000円 |
400万円 | 19万8,000円 |
500万円 | 23万1,000円 |
600万円 | 26万4,000円 |
700万円 | 29万7,000円 |
800万円 | 33万円 |
900万円 | 36万3,000円 |
1,000万円 | 39万6,000円 |
2,000万円 | 72万6,000円 |
3,000万円 | 105万6,000円 |
4,000万円 | 138万6,000円 |
5,000万円 | 171万6,000円 |
6,000万円 | 204万6,000円 |
7,000万円 | 237万6,000円 |
8,000万円 | 270万6,000円 |
9,000万円 | 303万6,000円 |
1億円 | 36万6,000円 |
2.仲介手数料は安く抑えられる?
不動産売買にかかる仲介手数料は、数十万円~数百万円程度と負担が大きい費用です。できるだけ出費を減らしたいと考える方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、不動産会社との交渉次第では値引きしてもらうことが可能です。現状は上限額で設定している不動産会社がほとんどですが、値引きする戦略をとっている不動産会社も数多く存在します。
それでは、なぜ仲介手数料を削ることができる不動産会社があるのでしょうか。その理由をまとめました。
2-1.仲介手数料は値引き可能
仲介手数料の金額を安くしてもらうことは可能です。宅地建物業法で定められているのはあくまで上限額のみで、下限額について定めはありません。したがって上限額を超えない範囲で、自由に金額を設定できるので、場合によっては値引き交渉をする余地もあるのです。
もちろん交渉成立には両者の合意が不可欠です。交渉を持ちかけても不動産会社が合意しなければ、値引きは成立しません。仲介手数料は不動産会社の貴重な収入源なので、そもそも値引きすることにメリットを感じにくいのが現実です。なかには値引き交渉を一切受け付けない不動産会社もあります。
「値引きしてほしい」とただ単に求めるのではなく、タイミングや話し方の戦略が必要です。たとえば「専属専任媒介契約で依頼する代わりに仲介手数料を値引きしてほしい」など、不動産会社側のメリットを交渉材料にすると良いでしょう。
3.仲介手数料を値引きする際の注意点
仲介手数料を値引きすることは可能ですが、注意点もあります。大切なのは「不動産会社にとって仲介手数料はどのような位置づけか」という点や「値引きすると不動産会社にどのような影響があるのか」という点まで理解した上で、値引き交渉を行うことです。
一方的に値引きを求めた結果、不動産会社のなかでの物件の優先順位が下がり仲介業務の質が低下してしまうケースもあるようです。
ここからは、仲介手数料の値引き交渉をするときに押さえたい注意点をまとめました。
3-1.仲介手数料の値引きは不動産会社の利益減に繋がる
不動産会社に対して値引き交渉をするかしないかの選択は、個人の自由です。しかし不動産会社にとって仲介手数料は大切な収入であるため、安くすると会社の利益減に直結することを理解しましょう。とくに仲介業務をメインのビジネスとして行っている不動産会社であれば、仲介手数料の値引きによる影響はさらに大きくなります。
また仲介手数料には、不動産会社の利益だけでなく仲介業務にかかる人件費や広告費などの経費も含まれています。仲介手数料を強引にカットしてしまうと、本当に必要な経費まで削られてしまうリスクがあることに留意しましょう。
たとえば広告費を削られると、チラシやインターネットの広告が作成できないことがあります。購入希望者に物件を認知してもらうために必要な広告が打てないのは、不動産取り引きにとって大きな痛手です。
3-2.仲介手数料は成果報酬であることを理解する
冒頭でもご説明しましたが、仲介手数料は不動産会社の仲介業務に対する成功報酬であることを理解する必要があります。
1件の不動産を売り出してから契約締結するまでに、不動産会社は多くの時間と労力をかけなければなりません。また不動産会社では複数物件の仲介業務を同時並行で進めているケースがほとんどです。時間と労力は限られているので、仲介手数料の高い物件は自ずと優先順位が高くなります。反対に仲介手数料が安い物件は、不動産会社の優先順位やモチベーションが下がってしまう恐れがあるのです。
不動産会社の優先順位やモチベーションは、物件が売れるか売れないかに大きな影響を及ぼします。仲介手数料を値下げしたことが原因で、買い手がつかなくなってしまっては本末転倒です。
4.仲介手数料の値引き交渉に応じてくれるケースや不動産会社の特徴
仲介手数料は不動産会社にとって大切な収入源であることをご説明しましたが、場合によっては仲介手数料に快く応じてくれるケースもあります。
「仲介手数料が減ると、不動産会社の利益や経費が削られてしまうのではないか」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
不動産会社のなかには仲介手数料の金額にこだわりすぎず、早期成約して顧客を増やすことを優先している会社も存在します。
ここからは、仲介手数料の値引きに応じてくれるケースや不動産会社の特徴を解説します。
4-1.特徴①両手仲介を行っている不動産会社
不動産売買を行うとき、売り主と買い主は仲介を依頼した不動産会社にそれぞれ仲介手数料を支払わなければなりません。なかには1社の不動産会社が売り主と買い主の双方の仲介を行うことがあり、これを両手仲介といいます。売り主が仲介を依頼した不動産会社が、直接買い主を見つけてきたケースを想像していただくと、わかりやすいでしょう。
両手仲介の仲介手数料は片手仲介と比べてほぼ倍になり、経費を加味しても十分な利益をあげられます。そのため両手仲介を行う不動産会社は、片方から仲介手数料をもらう代わりに、もう片方の仲介手数料を値引きして早期成約を目指すことがあるのです。
たとえば買い主が不動産買取業者の物件では、売り主の仲介手数料が安くなる可能性があります。また売り主が「一刻も早く売りたい」と考えている場合は、買い主側の仲介手数料を値引きしてもらいやすくなるでしょう。
4-2.特徴②仲介手数料の安さを強みにしている不動産会社
不動産会社の得意分野や強みは、会社によって千差万別です。なかには仲介手数料の安さを強みにしている不動産会社もあります。
金額の大きい仲介手数料が安くなることに魅力を感じる方はたくさんいます。浮いた仲介手数料をほかの費用に充てたいと考える方も多いでしょう。このように仲介手数料の値引きを顧客獲得のチャンスととらえ、積極的に値引きを実施している会社も存在します。
一方で、仲介手数料を値引きしないと契約を得にくい不動産会社が含まれているのも事実です。安さ基準で選ぶと、適切な仲介業務を行ってもらえないリスクがあるので注意しましょう。
不動産会社を選ぶときは、「仲介実績が豊富か」「信頼できる会社かどうか」などの視点で慎重に見極めることが重要です。
4-3.特徴③不動産の成約がすぐに決まった場合
すぐに成約した場合も、値引き交渉に成功しやすいでしょう。成約するまでの期間は広告掲載費用や内見の交通費などの経費を支払い続けなければなりません。したがって仲介業務は期間が長引けば長引くほど、経費が高くなっていくのが一般的です。
多くの不動産会社では、想定される業務期間をベースに経費を見積もった上で仲介手数料を決めています。もし想定される期間よりも短い期間で成約した場合は、経費も節約できている可能性が高いでしょう。その場合、不動産会社の利益率が増えるため、値引き交渉に応じてもらいやすくなります。
ただし、この交渉方法は成約まで時間がかかる物件には効果がありません。需要が高い物件を売却したいと考えている方に向いています。
5.まとめ:仲介手数料は不動産会社に支払う成功報酬
不動産の売買や賃貸で、仲介手数料の値引き交渉をすることは可能です。
ただし仲介手数料を値引きすると、不動産会社の利益や経費も削られ、物件の優先順位が下がったり仲介業務の質が低下したりするリスクもあります。仲介手数料の金額だけにとらわれず、取り引き全体にとって何が最適かを見極めることが大切です。
不動産会社によっても仲介手数料の値引きに対する考え方は異なります。「おうちクラベル」では複数の不動産会社の査定結果を見ることが可能です。査定申し込みは無料なので、ぜひ一度お試しください。
Q:仲介手数料ってどのような費用ですか?
A:不動産売買や賃貸の取り引きが成功したときに不動産会社に支払う報酬です。仲介手数料には不動産会社の利益や仲介業務にかかる経費などが含まれています。
Q:仲介手数料は値引き可能でしょうか?
A:仲介手数料は上限額しか定められていないため、値引きすることは可能です。ただし、不動産会社によって値引きの可否判断は分かれます。会社の特徴や取り引きの状況を踏まえて、値引き交渉をするかどうか決めましょう。