「公示価格」とは、国土交通省が公表している標準地の価格です。土地取引の目安となる価格で、「公示地価」とも呼ばれています。公示価格は、土地取引の指標となるものですが、マンションの価格の参考にもなるものなので、売却を検討している方は、押さえておくとよいでしょう。
本記事では公示価格について概要をお伝えすると共に、そのほかの公的指標である「路線価」や「実勢価格」との違いなどを解説します。
1.公示地価とは?
公示地価とは、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年発表する土地の価格のことです。毎年1月1日時点の全国約26,000(令和3年度時点)の標準地1平方メートルの価格のことであり、3月下旬ごろに発表されます。
不動産の価格は、「一物五価」とも呼ばれ、1つの不動産に対し次の5つの価格があります。
- 公示地価
- 実勢価格
- 基準地価
- 相続税路線価
- 固定資産税評価額
不動産取引は動く価格が大きく、またさまざまな税金も関わってくるため、ある程度基準となる価格が必要になります。その基準となる価格が上記の5つであり、それぞれ目的に応じた価格を利用することができます。
公示地価も、この基準となる価格の1つで、土地取引の目安となる公的な評価額になります。
2.公示地価と実勢価格の違い
不動産取引するうえでは、「公示地価」や「実勢価格」が大きな項目となりますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか?ここでは、公示地価と実勢価格との違いについてみていきましょう。
公示地価と実勢価格の大きな違いは次の通りです。
- 公示地価…土地取引の目安となる公的な価格
- 実勢価格…実際の売買契約成立時の価格
どちらも一物五価の価格ではありますが、両者は異なる価格のため、それぞれの違いを理解して適切に使い分ける必要があります。
2-1.公示地価は取引の指標とするため定められる
公示地価は、土地取引の指標として定められる価格のことです。基準地点に対して、更地の状態を想定した価格になります。建物がある場合は建物がない状態、土地の利用に制限がある場合は制限がない状態というように、「更地だとしたら」を仮定して算出された価格です。
土地の価格は、立地や面積だけでなく当事者の事象などのさまざまな要因で決まってきます。
しかし、それだけでは土地の価格の乱高下につながり、経済への悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
また、税金の関わる公共事業では、価格が高すぎれば税金の無駄使いに、価格が低すぎれば所有者の損失につながります。
こうした問題を解決するために、適切な取引価格の基準となる価格として「公示地価」があり、一般の土地取引だけでなく、公共事業用地取引などの際に使用されるのです。
2-2.実勢価格は実際の取引価格
実勢価格とは、実際に行われた不動産取引の価格のことをいい、「時価」とも呼ばれます。
取引での最終的な価格は、買主・売主の合意で決まるため、将来の正確な実勢価格は予測できないものです。基本的には、過去の取引の価格や周辺の類似取引の価格を元に、目安の価格が算出されます。
実際の不動産取引では、不動産の価値だけでなく、買主や売主の事情も考慮されるものです。「早く売りたい」「すぐに入居したい」といった事情も価格に影響するため、不動産の価値よりも高い・低いということもめずらしくありません。
そのほかにも同じ地域や面積であっても、不動産はそれぞれ条件が異なります。実勢価格では、そのような不動産固有の条件や事情を加えて決定されます。また、取引のたびに価格が更新されるため、日々変動するという特徴もあるのです。
一物五価のうち、ほかの4つは公的な価格であり、日々では変動しないのに対し、実勢価格のみ日々変動する市場での価格という違いがあります。
2-3.一物五価について知っておこう
先述した通り、不動産の価値は「一物五価」と呼ばれ、5つの価格があります。それぞれの大きな違いは次の通りです。
実勢価格 | 公示地価 | 基準地価 | 相続税路線価 | 固定資産税評価額 | |
---|---|---|---|---|---|
目的 | 不動産取引 | 土地取引 | 土地取引 | 相続税・贈与税 | 固定資産税 |
発表主体 | なし | 国土交通省 | 都道府県 | 国税庁 | 都道府県 |
基準日 | 売買契約後 | 1月1日 | 7月1日 | 1月1日 | 1月1日(3年毎) |
発表日 | 売買契約後 | 3月下旬ごろ | 9月下旬ごろ | 7月1日 | 4月~6月ごろ(自治体による) |
国では調べられない地点は都道府県が調べて基準地価を算出したり、実勢価格よりも税金評価額が低くなるように路線価が配慮されるなど、それぞれが補完し合っています。
これらの価格は、みる人によって必要な価格が異なるため、目的に応じて必要な価格を使い分けなければなりません。「相続税を知りたいなら相続税路線価」「売買取引の目安を知りたいなら実勢価格」というように、調べる価格が異なるので注意が必要です。そのため、不動産の適切な価格を知るうえでは、それぞれの違いや用途を理解することが大切といえるでしょう。
3.公示地価の決まり方
ここでは、公示地価の決まり方について具体的にみていきましょう。
3-1.公示地価の基準日と公表日
公示地価の基準日は毎年1月1日、公表日は毎年3月下旬ごろです。2021年は、3月23日に発表されています。
基準日と公表日は、公示地価などの種類によって異なり、基準日と公表日にも数カ月ほど差があるので注意しなければなりません。例えば、路線価の場合は、公示地価同様、1月1日を基準日としていますが、公表日は7月上旬ごろと大きく異なります。そのため、コロナ渦などの急激な地価の変動は現れずに、現状と異なる場合があるのです。
また、それぞれの価格も異なってきます。例えば、2021年の公示地価では、商業地としてもっとも高かったのは、銀座4丁目の山野楽器のある土地で、その価格は53,600,000/1平方メートルという結果が出ています。それに対し、路線価の全国1位は、銀座5丁目の鳩居堂前で42,720,000/1平方メートルと公示されました。
3-2.公示地価の調査主体
公示地価は、国土交通省の土地鑑定委員会が地価調査を行い公示しています。ちなみに、公示地価と似たような価格で「基準地価」というのを耳にしたことがある方もいるでしょう。基準地価は、都道府県が発表する基準値の価格のことをいいます。
それぞれの違いは、次の通りです。
公示地価 | 基準地価 | |
---|---|---|
発表主体 | 国土交通省 | 都道府県 |
基準日 | 1月1日 | 7月1日 |
公表日 | 3月下旬ごろ | 9月下旬ごろ |
基準地 | 全国約26,000地点 | 全国約22,000地点 |
基準対象 | 都市計画区域内 | 都市計画区域外も含む |
公示地価が3月下旬ごろに発表されるのに対し、基準地価は9月下旬ごろに発表されるという違いもあります。基準地価は、半年ごとの土地価格の推移をみる場合や、公示地価の補完的という役割も担っているのです。
3-3.公示地価の調査方法
公示地価は、全国の約26,000地点(2021年)の基準地について、地価公示法に基づき評価して価格を算出します。1つの標準地につき、2名以上の不動産鑑定士による評価鑑定を行い、その結果を調整して価格が定められるのです。
標準値とは、その地域でとても良い土地でも悪い土地でもなく「標準的」な土地のことを指し、国土交通省の土地鑑定委員会が選定します。基本的には、都市計画区域内を中心として定められており、毎年同じ地点が標準値として選定されるので、土地の価格変動がわかりやすいという特徴もあるのです。
一方、基準地価では、都市計画区域内だけでなく区域外も基準地として定めているので、公示地価の補完としてより特定の地域の価格をみるのに適しています。
4.公示地価の調べ方
ここでは、公示地価の調べ方についてみてきましょう。公示地価は、次の手順で調べられます。
- 国土交通省のサイトを開く
- 確認したいエリアや条件を入力する
- 公示地価を確認する
4-1.国土交通省のサイトを開く
公示地価は、国土交通省のサイトで調べられます。国土交通省の「土地総合情報システム」から、「地価公示・都道府県地価調査」へアクセスしましょう。
>国土交通省「地価公示・都道府県地価調査」
https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0
4-2.確認したいエリアや条件を入力する
「検索地域選択」画面から確認したいエリアを絞り込むことが可能です。地図上で対象エリアをクリックしていくと絞り込めます。エリアを絞り込んだら、調査年や用途区分・地価など検索条件を指定して価格を確認します。
検索では、都道府県単位や複数の検索地を選択することも可能なので、目的に応じて検索していくとよいでしょう。
4-3.公示地価を確認する
地価の一覧が表示されたら、調べたい土地から一番近い標準地を選び、価格を確認します。その価格を元に、対象地の土地の形や広さなどから調整を行うと、おおよその目安となる価格を把握できるでしょう。
また公示地価は、一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」 などでも確認できます。
>一般財団法人資産評価システム研究センター「全国地下マップ」
https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216
5.実勢価格の調べ方
ここでは、実勢価格の調べ方についてみていきましょう。これから取引する土地の実勢価格は、取引が完了するまでわからないもののため、過去の取引や類似物件の価格を目安とします。
5-1.売却価格と成約価格の違い
不動産の取引価格を調べるうえで、よく「売却価格」と「成約価格」という言葉を耳にします。この2つは異なる価格のため、注意が必要です。
売却価格とは、売主が設定する売り出したときの価格であり「売り出し価格」とも呼ばれます。不動産は、いくらで売り出すのかは売主が自由に決められるものです。相場よりも高くても問題なく、売主が希望する価格が売却価格となります。
それに対し、実際に売買取引された価格が成約価格となり、この価格が実勢価格に反映されます。
実際の不動産取引では、買主による値引き交渉があったり、売却できないために値引きしたりするなど、売却価格と成約価格は異なるケースが多いものです。基本的には、売却価格よりも成約価格が安くなる場合が多いでしょう。
5-2.売却価格の調べ方
売約価格は、今売り出されている価格であるため、不動産情報サイトや近隣の不動産会社に掲示されている価格で調べられます。
サイトなどから似たような条件の物件を探して、価格の目安にするとよいでしょう。
5-3.成約価格の調べ方
成約価格は、国土交通省のサイトで調べられます。国土交通省のサイトで「不動産取引価格情報検索」から、対象の地域を選択すると、取引総額や坪単価・面積などが確認できます。
>国土交通省「不動産取引価格情報検索」
https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
そのほかにも成約価格は、レインズでも確認できます。レインズとは、「不動産流標準情報システム」とも呼ばれ、不動産流通機構が運営しているネットワークシステムのことをいいます。全国の不動産会社が登録しており、売り出している不動産や成約状況など、さまざまな不動産情報をみることが可能です。
不動産取引では、専任媒介契約と専属専任媒介契約を結んだ際には、このレインズへの物件掲載義務があり、基本的に加入している不動産会社でしか閲覧できません。そのため、レインズで成約価格を知りたい場合は、不動産会社に依頼して調査してもらうことが必要です。リアルタイムな成約状況は一般の人では閲覧できませんが、市場動向などの定期的な情報は閲覧できるので参考にしてみるとよいでしょう。
また、一般の人でも相場価格を確認できるように開発された、「レインズ・マーケット・インフォメーション」というシステムもあります。このシステムでは、レインズの情報を元に成約情報なども提供されており、不動産会社でなくでも閲覧できます。
ただし、個別の不動産を特定できないように、築年数や面積・成約時期などの詳細な情報は確認できないので注意しましょう。
6.まとめ:公示価格と実勢価格の違いを理解して適切な使い分けを!
公示価格について、実勢価格との違いや調べ方などをご紹介しました。土地取引の目安となる公的な価格である公示価格に対し、実勢価格とは、実際の取引の成約価格のことをいいます。また、1つの不動産には、利用する目的によって異なる種類の価格があるため、適切な価格を調べることが必要です。この記事を参考に、公示価格と実勢価格の違いを理解して、適切に使い分けるようにしましょう。
Q.公示価格とは何ですか?教えてください!
A.国土交通省が公表している標準地の価格です。土地取引を行う際の、適正な価格の目安になります。公示価格のほかにも実務価格があり、実務価格は実際に行われた不動産取引の価格のことを意味します。両方とも不動産の価格ですが、使用目的も異なるので確認が必要です。
Q.公示価格はどうやって調べることができますか?教えてください!
A.国土交通省のウェブサイト「土地総合情報システム」で調べることができます。地図上で対象エリアを絞り込んだ後に、地価情報、地価調査年などで検索条件を指定して、価格を確認します。また一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」などでも確認できます。