{"id":401,"date":"2023-03-16T17:41:50","date_gmt":"2023-03-16T08:41:50","guid":{"rendered":"http:\/\/column.ouchi-kurabel.com\/article282\/"},"modified":"2023-11-18T11:54:53","modified_gmt":"2023-11-18T02:54:53","slug":"post_210","status":"publish","type":"post","link":"https:\/\/column.ouchi-kurabel.com\/land\/column\/article401\/","title":{"rendered":"立ち退き料の相場はどれくらい?貸主と借主どちらも納得するために知っておきたいこと"},"content":{"rendered":"\n
賃借人に貸している建物が古くなって取り壊したい場合などには、賃借人に立ち退きをお願いをしなければなりません。立ち退きをお願いする場合には、賃借人の損害を補填する目的で、立ち退き料の支払いが必要となるケースがあります。\n\n\n\n
適正な立ち退き料を設定するためにも相場を知っておくことが大切です。記事では、貸主、借主の双方が納得できる立ち退きを実現させるために知っておくべきことを解説します。\n\n\n\n
立ち退き料とは立ち退きをお願いするときの料金です。なぜ立ち退きをお願いする場合に立ち退き料が必要なのか、その理由について詳しく紹介していきます。\n\n\n\n 借地借家法では、基本的に賃借人が望めば賃貸契約は更新され、賃借人は住宅に住み続けられることを保証しています。もし、賃貸人が立ち退きを求める場合には「正当事由」が必要と借地借家法28条で定めています。\n\n\n\n 正当な事由とは、下記のような要件を総合して判断されます。\n\n\n\n 正当事由は総合的に判断されるため、必ずしも全ての要件が必要というわけではありません。これらのうち「財産上を給付する旨の申し出(立ち退き料の提案)」は、ほかの正当事由の要件の説得力が弱いときに補完的に追加されることが多くあります。\n\n\n\n 立ち退きには「正当事由」が必要で、正当事由として立ち退き料の提案がなされることもありますが、これは賃借人が賃貸人に対して必ずしも請求できるものではありません。\n\n\n\n 立ち退き料はあくまでも賃貸人からの自主的な提案です。賃借人に立ち退き料の請求権はありません。\n\n\n\n また、下記のような場合などは特に立ち退き料を請求できないといえます。\n\n\n\n 立ち退き料は立ち退きを要請する事情によって変動するため、相場がないといわれています。\n\n\n\n 賃貸人から提示された正当事由の説得性が強ければ立ち退き料が不要なケースもあります。反対に、正当事由が弱ければ高い立ち退き料を支払わなければ立ち退きを要請できないこともあります。\n\n\n\n 立ち退き料の金額について言及された判例もあるので、目安となる金額は後ほど紹介します。\n\n\n\n 借地借家法で賃借人の権利がしっかりと保護されているため、立ち退きの申し入れは簡単ではありません。しかし、立ち退きの申し入れが必要となるケースがあります。以下で立ち退きの申し入れが必要なケースについて具体的に解説します。\n\n\n\n 貸している建物が老朽化して建て替えたいときに、立ち退きの申し入れをするケースが多くあります。\n\n\n\n 建物の老朽化による建て替えの必要性も「正当事由」の一例としてよく挙げられますが、老朽化だけですぐに「正当事由」と認められるわけではありません。立ち退き交渉に当たって、一定額の立ち退き料を支払う提案を追加的に行うことが少なくありません。\n\n\n\n 貸し出していた持ち家を自己使用したいときも立ち退きの申し入れが必要となります。\n\n\n\n 持ち家を自己使用したいというのは、例えば、遠方に住んでいた大家が、貸し出していた持ち家を自宅として利用したいといったケースです。\n\n\n\n この大家が持ち家に住むといったケースは「自己使用の必要性がある」と、立ち退きの正当な理由として認められるケースが多くあります。正当な自由と認められやすいケースであるものの、立ち退き料を支払うか支払わないかはケースバイケースです。\n\n\n\n 貸し出している物件が再開発地域に含まれている場合も、賃借人に立ち退きを申し入れる必要のあるケースです。\n\n\n\n 賃貸物件が再開発地域に含まれ、賃貸人が再開発に賛成して建物を取り壊したい場合には、賃借人に立ち退きを要請することがよくあります。\n\n\n\n 再開発が正当事由として認められるかどうかは、判例もさまざまです。判例では、十分な立ち退き料の提案とともに「正当事由」と認められた場合や、再開発の計画の実現性が疑われたために「正当事由」と認められなかったケースとがあります。\n\n\n\n 立ち退き料が必要となるのは、正当事由としての説得性が弱い場合です。立ち退き料が必要となるケースにはどのようなケースがあるか、以下で具体的に紹介します。\n\n\n\n 大家が居住目的、または営業目的で物件を自己使用する場合は、立ち退き料が必要です。\n\n\n\n 例えば、大家が、現在住んでいる住宅が手狭になり、貸していた物件に住み替えたいと退去を求めるような場合です。判例では、立ち退き料を支払うことで正当事由と認められているケースがあります。\n\n\n\n ただし、正当事由と認められるのは、賃借人に転居する経済的能力がある場合や、賃借人が現状物件を使っていない場合などです。賃借人が建物内に店舗を構えているなど、貸借人にとって建物の必要性が高いと思われるケースでは、立ち退き料を支払う以前に正当事由と認められなかったケースもあります。\n\n\n\n マンションや店舗を建て替えたい場合も、立ち退き料が必要です。\n\n\n\n 建て替えの理由が、建物の老朽化であっても、極端に老朽化して住民に重大な危険がおよぶような状況でなければ基本的に立ち退き料が必要といえます。\n\n\n\n マンションなどの住居の場合は、賃借人が病気を抱えていて転居の負担が大きい場合や、転居することで家賃が上がる見込みである場合などは立ち退き料が高くなる傾向です。\n\n\n\n 店舗の場合は、賃借人は立ち退きにより常連客を失う恐れがあるため、その補償として比較的高額の立ち退き料が必要です。\n\n\n\n 所有する物件が再開発の対象となった場合、建物を取り壊すために賃借人に退去を要請することがあります。この場合も、再開発というだけでは正当事由とは認められにくく、立ち退き料の支払いが必要となります。\n\n\n\n 再開発による立ち退きの場合も、賃借人が病気を抱えている場合や、賃借人が店舗として物件を利用している場合など、賃借人にとって物件の必要性が高い場合は立ち退き料が高くなります。\n\n\n\n 賃借人に退去を要請しても立ち退き料が不要となるケースもあります。以下では立ち退き料が不要なケースについて具体的に紹介します。\n\n\n\n 賃借人側に賃貸契約違反がある場合は、立ち退きを要求するにあたって立ち退き料は不要です。\n\n\n\n 賃貸契約違反とは、例えば下記に該当するようなものです。\n\n\n\n 賃借人の契約違反を理由に立ち退きを要求する場合は、立ち退き料を支払わなくていいどころか、遅延損害金や違約金、原状回復費用などを請求することができます。\n\n\n\n 物件の賃貸契約が「定期建物賃貸借契約」になっており、その契約が満了した場合には、立ち退きとなっても立ち退き料を支払う必要はありません。\n\n\n\n 建物の賃貸借契約には、賃貸借期間の設定方法により、下記の2つの契約形態があります。\n\n\n\n 期間の定めのある定期賃貸借契約であれば、期間満了後に退去してもらう契約のため、立ち退きにあたっての立ち退き料は不要です。\n\n\n\n 建物が極端に老朽化して重大な危険がある場合は、立ち退き料が不要となることがあります。\n\n\n\n 過去の判例で、建物が極端に老朽化して重大な危険があるとして、立ち退き料を支払わなくても「正当な理由」と認められたケースがありました。(2016年9月6日東京地方裁判所判決等)\n\n\n\n ただし、このケースでは、賃借人が交渉に応じず不合理な行為を繰り返していたなどの特殊事情も合わせて判断されているため、例外的なケースとして捉えられることもあります。\n\n\n\n 競売で物件を購入した場合、物件の前の居住者が退去していないこともあります。こうしたケースで退去を要請する場合には、立ち退き料は不要です。\n\n\n\n 前の居住者は、競売により物件の所有権を失っているため、競売物件から立ち退いて購入者に引き渡す義務があります。このため、立ち退き料を支払う必要はありません。\n\n\n\n 前の居住者が立ち退かない場合は、物件の購入者は法的手段を行使して、強制的に追い出すことができます。具体的には裁判所へ引渡命令を申し立て、裁判所から引渡命令の決定を受けて、強制執行となります。強制執行できるため、立ち退き料は不要です。\n\n\n\n 立ち退き料を考えるときは、内訳をふまえて考える必要があります。立ち退き料の内訳には「移転費用の補償」「借家権に対する補償」「営業利益の補償」と大きく3つあります。以下で詳しく紹介します。\n\n\n\n 移転費用の補償とは、立ち退き前の物件から新しい物件へ移転するためにかかる費用の補償のことです。移転のための費用であれば何でも立ち退き料に含まれるわけではなく、場合によっては減額できることもあります。以下で詳細について見ていきましょう。\n\n\n\n 賃借人が新居に移転するための引越費用は、立ち退きの要請がなければ発生しなかったもののため、立ち退き料に含まれます。\n\n\n\n 引越費用には、引越代、梱包、運送、保険、分解取付調整料金などが含まれます。\n\n\n\n なお、ここでいう引越費用は、あくまで、立ち退き前の生活状況を転居先に移すために必要なものと考えられています。そのため、不用品の処分費や家電リサイクル費用といったものは含めないこともあります。\n\n\n\n 賃借人が、新居確保のために不動産会社を利用した場合は、不動産会社に支払う仲介手数料も立ち退き料に含めます。仲介手数料も、立ち退きの要請がなければ発生しなかったものだからです。\n\n\n\n なお、仲介手数料の金額の目安としては、法律で定められてる賃貸物件の仲介手数料の上限の「家賃1カ月分+消費税」が参考になります。\n\n\n\n 賃借人が新居確保のために支払う敷金・礼金も、立ち退き要請がなければ発生しなかったもののため、立ち退き料に含まれます。\n\n\n\n 敷金・礼金は一般的に下記のように立ち退き料に含めます。\n\n\n\n 敷金については、転居前の物件の敷金が基本的に全額返還されるため、立ち退き料としては、新居の敷金と返還される敷金との差額だけ含みます。なお礼金は全額、立ち退き料に含みます。\n\n\n\n 賃借人の新居の家賃が転居前の家賃よりも上がる場合には、転居前の家賃との差額分を立ち退き料に含みます。\n\n\n\n 立ち退き前と同水準の住環境を維持できる転居先を確保しようとしても、同じ家賃では確保できない場合があります。\n\n\n\n 立ち退き前と同水準の住環境を保証するために、新居の家賃が転居前よりも上がった場合の家賃の差額は、立ち退き料として支払われます。\n\n\n\n 立ち退き前と同じインターネット・電話などの通信環境を維持するために必要な通信回線の移転費用は、立ち退き料に含まれます。これらの通信回線の移転費用は、立ち退き要請がなければ発生しなかったものだからです。\n\n\n\n なお、電気・ガス・水道などの移転によって発生した開設費用なども同じように、通常は立ち退き料に含まれます。\n\n\n\n 借地権に対する補償も、立ち退き料に含まれます。\n\n\n\n 借地権とは、物件を借りる際に生じる賃借人の権利のことです。借地権は、賃借人が不当に退去させられることがないように賃借人の保護を目的に設定された権利です。立ち退きを要請する際には、借地権の評価額である借地権価格を補償する必要があります。\n\n\n\n とはいえ、借地権は住み心地などあいまいな居住権を指すため、具体的な価格を算定することが難しいといえます。そのため、借地権に対する補償は、実質的に移転費用の補償に含まれると解釈することが一般的です。\n\n\n\n 店舗などに立ち退きを要請する場合には、店舗の営業利益の補償も立ち退き料に含みます。\n\n\n\n なぜなら、店舗の場合は、立ち退きで場所が変わることによって、既存顧客を失ったり、店舗の視認性が悪化したりして大きな営業損失を被ることがあるからです。移転による休業期間中の収益の減少や、固定的な経費、人件費などが立ち退き料に含まれます。\n\n\n\n 住宅や事務所の立ち退きの場合は、営業利益の補償は発生しません。このため、店舗の場合は、住宅や事務所の立ち退きの場合よりも、立ち退き料が高くなる傾向です。\n\n\n\n 立ち退き料の金額は、立ち退きを要請する際の正当事由の内容によって異なります。ただし目安となる金額はあるため、下記で立ち退き料の相場を紹介します。\n\n\n\n 一軒家について立ち退きを要請する場合、立ち退き料の相場は、家賃の約10ヶ月分といわれています。ただし、法定の算出方法ではなく、広く使用されている算出方法の1つです。\n\n\n\n 例えば、家賃10万円の場合の立ち退き料の目安は約100万円となります。同じ家賃10万円の場合で、個別の費用を積み上げて計算した場合と比較してみましょう。\n\n\n\n 上記のケースで、立ち退き料を計算すると下記のようになります。なお家賃差額の補償については2年分を対象とします。\n\n\n\n 立ち退き料=(12万円-10万円)×24ヶ月+10万円+12万円×3ヶ月+1万円+2万円=97万円\n\n\n\n ほぼ、家賃10万円の10ヶ月分に相当していることが分かります。\n\n\n\n アパート・マンションの立ち退き料の相場は、過去の判例を参考にすると家賃5~10万円の場合、大体40万~200万円が目安となります。\n\n\n\n 実際の交渉場面では、「家賃の6ヶ月分」と引越費用を立ち退き料として提案することが多くあります。算定の考え方は法定の考え方ではなく通例で使われているものです。\n\n\n\n 計算結果は、最終的に100万~200万円程度となることが多くなっています。\n\n\n\n 店舗・テナントの立ち退き料の相場は、判例を参考にすると、家賃10万円前後の店舗でも立ち退き料は1,000万〜1,500万円ほどとなっています。\n\n\n\n 店舗・テナントの場合は、通例で「店舗の賃料の2〜3年分程度」を目安に立ち退き料を提案することもあります。実際の交渉では、新店舗への移転費用や移転により生じる営業損失の補填を考慮して決められます。\n\n\n\n 事務所・オフィスの立ち退き料の相場は、過去の判例を参考にすると、家賃10万〜20万円の場合、大体300万〜400万円となっています。\n\n\n\n 事務所・オフィスの場合は、通例で「事務所の賃料の1年分」を目安に立ち退き料を提案することが多くあります。店舗と比べると、既存顧客を失う恐れが低いのと、特殊な設備を構える必要がないため、立ち退き料が安くなっています。\n\n\n\n1-1 .立ち退きを求めるには「正当事由」が必要\n\n\n\n
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1-2 .立ち退き料は賃借人の請求権ではない\n\n\n\n
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1-3 .立ち退き料に相場はないと言われている\n\n\n\n
2 .立ち退きの申し入れが必要となるケース\n\n\n
2-1 .築年数が古い建物を建て替えたいとき\n\n\n\n
2-2 .持ち家を自己使用したいとき\n\n\n\n
2-3 .再開発の対象となったとき\n\n\n\n
3 .このような場合には立ち退き料が必要\n\n\n
3-1 .大家都合で退去を求める場合\n\n\n\n
3-2 .マンションや店舗の建て替えの場合\n\n\n\n
3-3 .再開発による立ち退きを依頼する場合\n\n\n\n
4 .退去を要請しても立ち退き料が不要なケース\n\n\n
4-1 .賃借人側に賃貸契約違反がある場合\n\n\n\n
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4-2 .定期建物賃貸借契約が満了した場合\n\n\n\n
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4-3 .建物が極端に老朽化して重大な危険がある場合\n\n\n\n
4-4 .競売でオーナーが変わったケース\n\n\n\n
5 .立ち退き料の内訳は?\n\n\n
5-1 .移転費用の補償\n\n\n\n
5-1-1 .引越費用\n\n\n\n
5-1-2 .不動産会社への仲介手数料\n\n\n\n
5-1-3 .新居の敷金・礼金\n\n\n\n
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5-1-4 .家賃が上がるときはその差額分\n\n\n\n
5-1-5 .通信回線の移転費用\n\n\n\n
5-2 .借家権に対する補償\n\n\n\n
5-3 .営業利益の補償\n\n\n\n
6 .立退料の相場はいくら?\n\n\n
6-1 .一軒家の相場\n\n\n\n
【家賃10万円の戸建てからマンションへ転居した場合】立ち退き前の戸建ての家賃:10万円新居のマンションの家賃:12万円引越代金:10万円仲介手数料・礼金・敷金:それぞれ家賃の1ヶ月分通信環境移設費用:1万円火災保険:2万円\n\n\n\n 6-2 .アパート・マンションの相場\n\n\n\n
6-3 .店舗・テナントの相場\n\n\n\n
6-4 .事務所・オフィスの相場\n\n\n\n
7 .一般的な立ち退きの流れ\n\n\n