多くの方は、親が亡くなって家を相続する段階になって初めて、相続手続きの大変さを実感します。実際、相続の流れや手続き、費用、税金についてスムーズに説明できる方は、それほど多くはいません。
なぜなら、相続はほとんどの方が人生でそう多く経験するものではないからです。
そのため、親が亡くなっていざ相続をする段階になって、初めて頭を悩ませる方が多くなっているのでしょう。このようなとき、大切になってくるのが冷静な対応です。まずは落ち着いて、流れを理解して必要なものを確認していきましょう。
この記事の内容を1つずつ理解していくことで、思考が整理されスムーズに進めていけるようになります。
今回の記事を読むと、相続に関する手続きや流れはもちろん、税金や費用についての知識も身につけられるでしょう。
家の相続の流れや手続き
家を相続するときに必要になる手続きが「相続手続き」です。
ほとんどの方は、初めての経験に戸惑い、何から手をつけたらいいのか分からなくなるかもしれません。
ただ、しっかりと相続手続きをしておかなければ、後々トラブルに発展する可能性があるので、正しいルールにそって対応していく必要があります。そのためにも、まず相続手続きの流れを理解しなければなりません。
家を相続するまでの流れは、大きく3つに分かれます。
- 流れ①必要書類の確認・収集を行う
- 流れ②遺言書がない場合は遺産分割協議を行う
- 流れ③相続者が決定後、登記申請書を作成する
まずは、この3つのステップを詳しく見ていきましょう。
流れ①必要書類の確認・収集を行う
まずは、必要書類の確認と収集を行います。
相続手続きには次に紹介する8つの書類が必要です。
書類名 | 入手先 | |
---|---|---|
1 | 対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) | 法務局 |
2 | 被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの) | 市区町村の役所 |
3 | 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本 | 本籍地がある市区町村の役所 |
4 | 相続人全員の現在の戸籍謄本 | 本籍地がある市区町村の役所 |
5 | 対象不動産を取得する相続人の住民票 | 市区町村の役所 |
6 | 対象不動産の固定資産評価証明書 | 市区町村の役所(都税事務所、県税事務所) |
7 | 相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村の役所 |
8 | 遺言書(自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合には検認済みのもの。公正証書遺言の場合には検認不要。) ・遺産分割協議書 | 自身か司法書士が用意 |
書類の入手先は、法務局・市区町村の役場・自分で準備する・もしくは司法書士へ依頼するの3つに分けられます。
ここで事前に知っておきたいのが、1つの役所ですべての書類が揃わないケースがあるということです。市区町村の役場で書類を取得する際には、二度手間を防ぐためにも事前確認しておくとよいでしょう。
被相続人の本籍地や相続人の本籍地、不動産の所在地などによっては担当の役所が違うケースがあります。中には被相続人の本籍地が遠方にあり、訪れるのが難しいケースもあるでしょう。
このような場合、各市町村役場に電話して、書類を郵送してもらえるのかを確認しておくと、手間を省ける可能性が高まります。
流れ②遺言書がない場合は遺産分割協議を行う
亡くなられた方の遺言書がある場合には、その旨にそって遺産を分割していきます。
しかし、中には遺言書が存在しないケースや遺言書に記載されていなかった財産が見つかるケースもあります。
この場合、どのように分割するのかは、遺産分割協議によって決定しなければなりません。
遺産分割協議は、相続人同士の話し合いによって決められ、合意した場合には「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員の署名・押印によって完成します。
なお、財産分与を一括で決める必要はなく、決まった順番に、取得者に財産を移転することも可能です。
名義変更や解約の際には、各相続人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書が必要になるので、こちらも予め準備しておくと手続きがスムーズに進みます。
中には、その都度、名義変更や解約するのが面倒だと感じる方もいますが、後々のトラブルを防ぐ意味でも、できるだけ早く進めていくようにしましょう。
なお、遺産分割協議は、いつまでに行わなければならないといったルールは存在しません。
流れ➂相続者が決定後、登記申請書を作成する
遺産分割協議によって、家の相続が決まったら名義変更が可能になります。
名義変更を行う際には、土地と建物の所有権移転登記が必要です。所有権移転登記の完了によって、不動産の名義は亡くなった被相続人から、相続した配偶者や子どもに変更されるようになっています。
なお、相続登記の際に必要な書類は以下の通りです。
- 法定相続人が1名、または法定相続分で相続をするケース
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 法定相続人の戸籍謄本
- 法定相続人の住民票
- 相続する不動産の固定資産税評価証明書
遺産分割協議で決めた割合で相続する場合は、上記の書類に以下の書類が必要になります。
- 法定相続人の印鑑証明書
- 遺産分割協議書
手続き自体は法務局まで出向き、自分で行うことも可能ですが、被相続人が何度も本籍地を変えている場合には、さかのぼって書類を集める必要があり、手間も時間もかかる可能性があります。場合によっては司法書士への依頼も検討しておきましょう。
家の相続でかかる費用
相続の手続きを進めていくとき、忘れてはならない存在が相続にかかる費用です。中でも、最も気になる費用が相続税ではないでしょうか。
しかし、ここではまず相続税以外にかかる費用について見ていき、相続税に関してはあとで詳しく説明していきます。
相続にかかる相続税以外の費用は、大きく2つ存在します。具体的には「相続登記」にかかる費用と、「必要書類を集めるため」の費用です。
まずは、この2つの費用について説明します。
費用①名義変更時にかかる費用
名義変更をするためには、相続登記を行う必要があります。
相続登記とは、被相続人の名義になっている家や不動産を相続した相続人の名義に変更する手続きをいい、相続登記を行う際には登録免許税と呼ばれる税金が課税されるのです。
気になる金額は、以下の計算で算出されます。
固定資産税評価証明書に記載された家の評価額 ×0.4% = 登録免許税
なお、計算の際には以下の決まりごとが存在します。
- 固定資産税評価証明書に記載された家の評価額については、1,000円未満は切り捨てる
- 計算によって得られた登録免許税について、100円未満は切り捨てる
- 複数の家を相続する場合には、まず家の評価額を算出してから上記の手順で計算する
以上を踏まえ、簡単な例を紹介すると次の通りです。固定資産税評価額2,000万9,200円の自宅敷地と500万960円の自宅建物を相続する場合で計算してみましょう。
まず、固定資産税評価額の合計を算出します。
2,000万9,200円+500万960円=2,501万160円
千円未満は切り捨てるので、固定資産評価額の合計は2,501万円となります。
この金額に、税率である0.4%をかけます。
2,501万円×0.4%=10万40円となり、100円未満を切り捨てるので、この場合の登録免許税は10万円です。
費用②書類取得時にかかる費用
相続登記を行う際には、多数の書類が必要になります。
当然、書類を集める費用も考えておかなければなりません。
この費用は、一番高いものでも戸籍謄本などの700円なので、軽視されがちですが、不動産の数や相続人の人数によって費用に幅がでてくるので注意が必要です。
1つ1つは小さな金額でも、結果的に思ったよりも費用がかさんでしまう場合もありますし、また、郵送で取り寄せる場合には、郵送料もかかるので、予め計算しておいた方がトラブル防止につながります。
予算としては、5,000円から2万円程度を考えておくといいでしょう。
必要書類 | 費用 |
---|---|
戸籍謄本 | 1通450円程度 |
印鑑証明書 | 1通300円程度 |
住民票 | 1通300円程度 |
固定資産評価証明書 | 1件400円程度 |
登記事項証明書 | 1通450円程度 |
遺産分割協議書 | 費用はかかりません |
被相続人の住民票を削除するための除票 | 1通300円程度 |
家の相続でかかる税金
家を相続するときに、大きな負担になるのが税金です。中でも、有名な税金が相続税となります。
しかし、家を相続した場合に発生する税金は相続税だけではありません。
実は、場合によって「相続税」「固定資産税」「不動産取得税」といった3つの税金が発生するケースがあるのです。
ここでは、それぞれの税金について1つずつ解説していきます。
税金①相続税
家の相続が決まったとき、「相続税がいくらかかるのか?」が気になった方も少なくないでしょう。ある意味では、それぐらい有名な税金です。
しかし、よく知られているはずの相続税ですが、実は多くの方が誤解している点があります。
それは、家単体に支払う相続税は存在しないということです。
相続税は、遺産総額に対して発生するものであり、預貯金や不動産といった単体のものに課税されるものではありません。
もちろん、遺産総額に対して支払う必要があるので、相続税を支払わなくてもいいわけではないので、そこは理解しておく必要があります。
では、自分が支払う相続税はどのように計算していくのでしょうか?相続税は相続で財産を取得した方が対象となり、遺産総額に対して課税されます。
しかし、だからといって単純に相続した人数で割ればいいわけではありません。なぜなら、遺産は平等に分けられるケースの方が少ないからです。
では、各自が支払う相続税はどのようにして求めるのかというと、「相続の配分」によって決められます。つまり、相続した割合に応じて決められるのです。
また、相続税は基礎控除があるので、場合によっては相続税が発生しないケースも考えられます。気になる基礎控除額の算出方法は以下の通りです。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人数
簡単に説明すると、法定相続人が3人いた場合には、600万円×3人で1,800万円。1,800万円+3,000万円で4,800万円が控除される仕組みとなります。
なお、相続人が多い場合や、それぞれが遠方に住んでいるといった場合には、手続きが複雑になりがちなので、早めに税理士に相談した方がいいかもしれません。
税金②固定資産税
不動産を持っていると固定資産税が課税されます。
固定資産税は「土地、家屋および償却資産の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている方」に課税される税金です。
固定資産税は、毎年1月1日時点での所有者に対して課税されるようになっています。
ここで、気になるのが相続したときには、課税対象者は誰になるのかというものです。仮に、6月に親が亡くなり不動産を相続した場合、固定資産税はどうなるのでしょう?
「1月1日時点では親の名義だったので、相続しても来年の1月1日までは免除されるのかな?」と思う方もいるかもしれませんが、相続した場合には支払う必要があります。
なぜなら、この税金は土地や家屋に対してかけられる税金だからです。そのため、支払いが免除されることはありません。
もし、相続手続きが終わっていない段階で、固定資産税を支払うタイミングがきたのであれば、一時的に代表者が立て替える形で納めるようにしましょう。
これは、相続手続きの途中であっても、早急に対応しなければなりません。なぜなら、延滞税が発生してしまう可能性があるからです。
相続手続きが終わった段階で「立て替え金額を相続人が返済」することで、無駄な延滞税の支払いを免れることができます。
なお、名義変更が完了したら毎年固定資産税額が記載された通知書が送られてくるので、記載されている通り、年4回に分けて支払っていきます。
税金➂不動産所得税
不動産取得税とありますが、基本的には不動産を相続したときには不動産取得税はかかりません。「基本的に」と書いたのは、場合によって課税されるケースがあるからです。
それが、以下のケースです。
- 遺言書によって、相続人以外が家を相続するケース
- 贈与によって家を取得するケース
- 死因贈与のケース
死因贈与とは、亡くなったときに相続人以外に家をあげるといった意思表示を被相続人が行い、その意思表示を受けた方が受諾した場合の状況をいいます。
上記のような場合には、不動産取得税が課税されます。
計算式は、固定資産税評価額の3%と定められています。
5,000万円の固定資産税評価額の家であれば、5,000万円の3%で150万円です。
複数人が家を相続した場合のポイント
家を相続するときには、必ずしも1人が相続するわけではありません。場合によっては複数人で相続するケースも考えられます。そのため、しっかりと分割方法を決めなければなりません。
ここでは、複数人で家を相続した場合の注意点と3つのシチュエーションにあった相続方法について紹介していきます。
家に住み続けるならば現物分割か代償分割
誰かが相続した家に住み続ける場合には、現物分割か代償分割を選択するのがいいでしょう。現物分割とは、遺産を総額で分割するのではなく、財産ごとに分ける方法です。
たとえば、預貯金関係は弟が相続し、家は兄が相続するといった分け方になります。
この方法だと1つの財産ごとに分けられるので、相続した家にそのまま住み続けることが可能です。
仮に家を売却するときも、弟や他の相続人の同意を得る必要がないので、スムーズに売却へと進んでいくことができます。
代償分割とは、家を相続する方が家を相続する代わりに他の相続人に対して同程度の現金を渡す分割方法です。
家を相続しない相続人は、家を相続した方から同程度の金額を受け取り、家を譲る形となります。
なお、代償分割を実施する際には代償分割を行う事実を遺産分割協議書に記載しておかなければなりません。
なぜなら、遺産分割協議書に記載していなかった場合、受け取った現金が遺産ではなく、家を相続した方の財産と判断されるので、贈与税がかかる可能性があるからです。
代償分割を行うと決めたら、必ずその旨を遺産分割協議書に記載するようにしましょう。
家を売却しないなら共有分割
家を売却する予定がないなら、共有分割といった相続方法もあります。共有分割は、一見すると最も平等な分割方法に見えるかもしれません。
しかし、注意しておかなければ後々トラブルの原因となるので、よく考える必要があるでしょう。
共有分割で相続すると、家を売却したり家を担保に融資を受けたりするのが非常に難しくなります。なぜなら、売却するときも担保にするときも、共有名義人全員の同意が必要になるからです。
逆をいえば、自分の意思に反して勝手に家を売られたり、担保にされたりする心配はなくなります。しかし、家の修繕費や維持費といった支払いが発生する場合も考えられるので、やり取りが続いていく覚悟は必要かもしれません。
話がまとまりやすいといったメリットはありますが、後々のことを考えると、最初にしっかりと話し合いを行い、その内容を書面として残しておく必要があるでしょう。
家を売却するなら換価分割
家の売却が決まっているなら、換価分割と呼ばれる分割方法で相続する方法がいいでしょう。
換価分割は、相続した家を売却して、その売却額を相続人で分ける分割方法です。最初から家を売却すると決まっているなら、一番簡単な方法といえるでしょう。
「相続した家に誰も住む予定がない」「家を相続するために支払う現金がない」「遠方に住んでいて、相続した家を管理するのが難しい」これらの状況に該当する方に選ばれやすい分割方法です。
後々のトラブルを防ぐためにも、予め売却時に発生する仲介手数料などの費用を差し引いた売却額を分配するといった取り決めを行っておくようにしましょう。
また、売却活動を1人で行う場合には代表者だけが手続きに追われ、忙しくなる可能性があります。代表者となる場合には、換価分割を行うときに、多めに分配してもらうなどの取り決めをしておくことで、後々のトラブルを防げます。
遠方に住んでいて、不動産会社を探すのが難しい場合はWebで探す方法がおすすめです。
相続後に売却を考えているなら不動産会社へ
家の相続が決まったら、まずは冷静になる必要があります。なぜなら、相続によるトラブルが他人事ではなくなるからです。
自分だけは大丈夫だと考えずに、冷静に対応していく必要があります。
面倒な手続きがあるうえに、遺産の分割方法など決めなければならないことも少なくありません。流れを理解し、順序にあった準備と対応を行い、相続を完了させましょう。
忙しいときや、手続きが面倒になると予想されたときには、早めに司法書士や税理士といった専門家への依頼も検討する必要があります。また、おうちクラベルでは一括査定も行っていますので、売却時の手間をへらしたい方はぜひご利用を検討してください。
Q.家を相続すると、相続税はいくらかかるの?
A.家自体に相続税が課税されるわけではありません。遺産総額に対して相続税が課税されます。計算方法は、遺産総額によって税率が変わってくるので、まずは遺産総額を知ることから始めましょう。
Q.相続税を支払わなくてもいいケースがあるって聞いたんですけど?
A.遺産総額から基礎控除額を引いたときに、マイナスになれば支払う必要はありません。
基礎控除額の計算方法は、3000万円+600万円×法定相続人数となっています。