家を売却すると、確定申告が必要となることがあります。
では、どのような場合に確定申告が必要となるのでしょうか?
また、家の売却に伴う確定申告では、どのような書類が必要となるでしょうか?
今回は、家を売却する際の確定申告の必要書類について詳しく解説します。
家の売却で必要となる確定申告の概要
はじめに、家の売却で必要となる確定申告の概要を解説します。
家の売却で確定申告の対象となる税金は「譲渡所得税」
家や土地を売却して利益が生じると、この利益に譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は国などが計算して納付書が送付されるのではなく、自ら税額を計算して確定申告しなければなりません。
家の売却で確定申告が必要となるケース
家の売却で確定申告が必要となるケースは、次の2つです。
- 家の売却で譲渡益が出る場合
- 家の売却で譲渡損が出たものの、損益通算などの特例の適用を受けたい場合
それぞれの概要について解説します。
家の売却で譲渡益が出る場合
家を売却して譲渡益が出る場合は、確定申告をしなければなりません。
次の計算式がプラスとなる場合は、譲渡益が出ていることとなり、確定申告が義務となります。
- 家の譲渡益(譲渡損)=家の売却による収入金額-売却した家の取得費-家の売却に要した譲渡費用
ただし、「取得費」を計算するうえで建物部分は減価償却相当額の控除が必要となるなど、譲渡益が出ているかどうか自分で判断することは容易ではありません。
そのため、家の査定額がわかった時点で譲渡益が出そうかどうか、税理士などの専門家に相談しておくようにしてください。
家の査定には、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルとは、査定依頼フォームに1度入力するだけで複数の不動産会社に査定の依頼をすることができる不動産一括査定です。
複数社による査定額を比較することで、より正確にその家の売却価額を想定しやすくなります。
家の売却で譲渡損が出たものの、損益通算などの特例の適用を受けたい場合
家の売却で譲渡損が出る場合、確定申告をする義務はありません。
ただし、一定の要件を満たすことで、家の売却で生じた損失を他の所得と通算したり翌年以後に繰り越したりする特例の適用を受けることができます。
このような特例の特例を受けるには、確定申告をしなければなりません。
家の売却で確定申告をする期限
家の売却で確定申告が必要となる場合、申告期限は売却の翌年2月16日から3月15日までです。
ただし、その年分の所得が確定している場合は早く申告することは可能であり、準備が間に合うのであれば1月中などに確定申告をしても構いません。
家の売却に伴う確定申告の主な必要書類
家の売却による確定申告では、さまざまな書類が必要となります。
ここでは、基本となる必要書類を解説します。
- 確定申告書第一表・第二表
- 確定申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書
- 家を売却した時の売買契約書のコピー
- 家を購入した時の売買契約書のコピー
- その他、家の取得費を証明する領収書のコピー
- 譲渡費用がわかる領収書のコピー
- 本人確認書類
- 源泉徴収票
所定の様式は国税庁のホームページから入手できるほか、最寄りの税務署で受け取ることが可能です。
確定申告書第一表・第二表
確定申告書第一表と第二表は、確定申告のメインとなる書類です。
確定申告書の様式にはAとBがあり、家の売却益にかかる譲渡所得税の申告では「B様式」を使用します。
確定申告書第三表(分離課税用)
家の売却益にかかる譲渡所得税の申告では、第一表と第二表に加え、分離課税用である第三表の提出が必要です。
譲渡所得の内訳書
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)が必要です。
この様式で、譲渡所得税の計算過程を記載します。
この書式には「土地・建物用」と「総合譲渡用」があるため、このうち「土地・建物用」を使用してください。
家を売却した時の売買契約書のコピー
確定申告には、家を売却する際の売買契約書のコピーを添付しなければなりません。
家の売却による収入金額を示す資料となります。
家を購入した時の売買契約書のコピー
確定申告には、売却した家を購入したり建築したりした際の売買契約書のコピーが必要です。
家の収入金額から差し引くことができる「取得費」を確認するためです。
なお、家の取得費を証明できる資料がない場合は「収入金額×5%」で取得費を計算することになり、譲渡所得税が高くなる可能性があります。
その他、家の取得費を証明する領収書のコピー
家の購入費用や建築代金以外にも、原則として次の費用などが取得費に計上できます。
- 家の購入手数料
- 設備費
- 家を取得したときに納めた登録免許税、登記費用、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税
- 借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
- 土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
- 土地の取得に際して支払った土地の測量費
- 所有権などを確保するために要した訴訟費用(ただし、相続争いの解決費用を除く)
- 建物付の土地を購入してその後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
- 土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
- 既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金
取得費に算入したい費用については、支出を証明できる領収証のコピーなどが必要となります。
譲渡費用がわかる領収書のコピー
次の費用は譲渡費用に計上できます。
- 家を売るために支払った仲介手数料
- 印紙税で売主が負担したもの
- 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
譲渡費用に算入したい費用については、その支出を証明できる領収証のコピーなどが必要です。
本人確認書類
マイナンバーカードを持っている場合は、マイナンバーカードのコピーを添付します。
一方、マイナンバーカードの発行を受けていない場合などには、原則として次の2種類のコピーが必要です。
- 本人確認書類:運転免許証やパスポートなどの写真付き身分証明書
- マイナンバーの確認書類:マイナンバー通知カードや、マイナンバー付きの住民票の写し
源泉徴収票
源泉徴収票は確定申告で提出する必要はないものの、確定申告書を正しく作成するために必要です。
源泉徴収票は勤務先などから交付されます。
家の確定申告で特例の適用を受ける場合の必要書類
譲渡所得税には、さまざまな特例が設けられています。
特例の適用を受けるには、その特例ごとに要求される書類を添付しなければなりません。
ここでは、家の売却で適用できる可能性がある主な特例の概要と、それぞれの特例の適用を受けるための必要書類を解説します。
- マイホームを売ったときの3,000万円特別控除
- 相続空き家を売ったときの3,000万円特別控除
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 取得費加算の特例
- 特定のマイホームの損益通算等の特例
- マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算等の特例
マイホームを売ったときの3,000万円特別控除
「マイホームを売ったときの3,000万円特別控除」とは、自分が住んでいた家やその敷地を売却して譲渡益が出た場合に、譲渡益から最大3,000万円を控除できる特例です。
この特例の適用を受けることで、譲渡所得税がゼロとなることも少なくありません。
この特例の適用を受けたい場合は、次の書類の添付が必要です。
- 戸籍の附票や住民票の写しなど、売却した家に居住していたことを証明する書類(マイホームを売った日の前日の住所がそのマイホームの所在地と異なる場合のみ)
参照元:No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁)
相続空き家を売ったときの3,000万円特別控除
「相続空き家を売ったときの3,000万円特別控除」とは、相続を機に空き家となった亡くなった人(「被相続人」といいます)が住んでいた家(「被相続人居住用家屋」といいます)やその敷地を売却した場合に、譲渡益から最大3,000万円を控除できる特例です。
相続した被相続人の元自宅を売る場合、この特例の適用を受けることで、譲渡所得税がゼロとなることも少なくありません。
この特例の適用を受けたい場合の必要書類は、ケースごとにさまざまです。
ここでは、家屋を取り壊さず、被相続人居住用家屋とその敷地をセットで売却する場合の必要書類を紹介します。
- 売った家や敷地の登記事項証明書等で、次の事項を証明するもの
- 売主が被相続人居住用家屋とその敷地を被相続人から相続または遺贈により取得したこと
- 被相続人居住用家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 被相続人居住用家屋が区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
- 売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの
参照元:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」とは、一定の要件を満たすことで、通常よりも低い税率によって譲渡所得税を計算することができる特例です。
なお、この特例と「マイホームを売ったときの3,000万円特別控除」とは併用することができますが、両者の適用要件は同じではありません。
代表的な違いとして、この軽減税率の特例は、売却した家やその敷地の所有期間が売却年の1月1日において10年を超えていることが必要とされています。
この特例の適用を受けたい場合は、次の書類の添付が必要です。
- 売却した家の登記事項証明書(一定の場合に省略可能)
- 戸籍の附票や住民票の写しなど、売却した家に居住していたことを証明する書類(マイホームを売った日の前日の住所がそのマイホームの所在地と異なる場合のみ)
参照元:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(国税庁)
取得費加算の特例
「取得費加算の特例」とは、売主が負担した相続税のうちその家に係る相続税相当額を、譲渡所得税の計算上、取得費に加算することができる特例です。
相続税がかかった相続で取得した土地を相続税の申告期限の翌日から3年以内(つまり、相続開始から3年10か月以内)に売った場合は、この特例の適用が受けられる可能性があります
この特例の適用を受ける場合は、次の書類の添付が必要です。
- 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
参照元:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)
特定のマイホームの損益通算等の特例
「特定のマイホームの損益通算等の特例」とは、マイホームを住宅ローン残高を下回る価額(「オーバーローン」といいます)で売却して譲渡損失が生じた場合に、一定の要件を満たすことで、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができる特例です。
マイホームの譲渡損を給与所得など他の所得と損益通算することで、給与所得やなどにかかる所得税が安くなる効果が得られます。
また、損益通算をしてもなお控除しきれない譲渡損失が残った場合は、これを翌年以後3年間に渡って繰越控除することが可能です。
この特例の適用を受けたい場合は、次の書類の添付が必要です。
- 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
- 「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5の2用)」
- 売却した家の登記事項証明書
- 売買契約前日を基準日とする住宅ローンの残高証明書
こちらは時限的な措置であり、2023年12月31日までに家を売却する場合にのみ適用を受けられます。
参照元:No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)(国税庁)
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算等の特例
「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、マイホームを買い換えて旧居宅の譲渡で損失が生じた場合に、一定の要件を満たすことで、旧マイホームの譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できる特例です。
マイホームの譲渡損を給与所得などと通算できるため、給与所得などにかかる所得税が安くなる効果が得られます。
損益通算をしてもなお控除しきれなかった譲渡損失がある場合は、残った損失を翌年以後3年内に渡って繰越控除することが可能です。
この特例の適用を受けるには、次の書類の添付が必要です。
- 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
- 「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5用)」
- 売却した家の登記事項証明書
- 戸籍の附票や住民票の写しなど、売却した家に居住していたことを証明する書類(売却日の住所がその売却した家の所在地と異なる場合のみ)
- 購入した居宅の登記事項証明書や売買契約書の写しなど、購入した年月日や家屋の床面積を明らかにするもの
- 購入した家の、年末における住宅借入金等の残高証明書
- 確定申告書提出日までに買い換えた資産に住んでいない場合には、その旨および住まいとして使用を開始する予定年月日その他の事項を記載したもの
この特例は時限的な措置であり、2023年12月31日までに家を売却する場合にのみ適用を受けることができます。
参照元:No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)(国税庁)
家を売却して確定申告をする流れ
家を売却して確定申告をする際は、どのような流れで進めればよいでしょうか?
最後に、一般的な進め方について解説します。
- 必要書類を準備する
- 特例の適用要件を確認する
- 確定申告書を作成する
- 確定申告する
- 納税する
必要書類を準備する
はじめに、必要書類を用意します。
必要書類はここまでで解説したとおりですが、状況や年度などによって別の書類が必要となることもあります。
そのため、確定申告をする際は、国税庁が公表するその年分の手引きを読み込んだり、管轄の税務署に相談したりすると確実です。
特例の適用要件を確認する
併せて、特例の適用要件を確認します。
譲渡所得税の特例にはさまざまな要件が設けられており、要件から1つでも外れると適用を受けることができません。
家を売却する際は、特定の適用要件を入念に確認するようにしてください。
確定申告書を作成する
特例の要件が確認でき、必要書類が揃ったら、確定申告書を作成します。
確定申告書は紙で作ることもできますが、e-Taxを使ってインターネット上で作成することも可能です。
確定申告する
確定申告書が作成できたら、申告期限までに確定申告をします。
申告はオンラインのほか、窓口への持ち込みや郵送で行うことも可能です。
税理士へ依頼せず自分で申告する場合は、窓口へ持ち込んであらかじめ確認を受けるようにしてください。
ただし、確定申告時期の税務署は非常に込み合います。
突然出向いても長時間待つこととなる可能性があるほか、相談が予約制であったり整理券が必要になったりすることもあるため、あらかじめ情報を確認してください。
納税する
計算の結果として納付すべき税額が生じた場合は、期限内に納税します。
申告だけをして納税を忘れることのないよう注意が必要です。
まとめ
家を売却して譲渡益が出る場合は、譲渡所得税の確定申告が必要です。
また、譲渡損が出た場合の確定申告は義務ではないものの、要件を満たして確定申告をすることで、他の税金が安くなる特例の適用が受けられます。
家を売却した際の確定申告では、さまざまな書類が必要となります。
確定申告期限間近になって慌てないよう、あらかじめ書類を整理しておくとスムーズに進められるでしょう。
家の売却益にかかる譲渡所得税は、高額となることも少なくありません。
また、特例の適用を受けることで税額が大きく軽減できる可能性が高いものの、特例の適用にはそれぞれ異なる要件が設けられています。
そのため、査定額が出た時点で税理士や管轄の税務署へ相談し、譲渡所得税の試算をしておくようにしてください。
家の査定には、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する「おうちクラベル」をご活用ください。
おうちクラベルとは、査定依頼フォームへ1度入力するだけで複数の不動産会社に査定の依頼ができる不動産一括査定です。
複数社による査定額を比較することで、予想される家の売却価格(譲渡所得税の「収入金額」をより正確に把握しやすくなります。