マンション売却で税金がかからないケースは?譲渡所得税を解説

マンションを売却すると譲渡所得税などの税金がかかります。

では、マンションを売却しても税金がかからないケースはあるのでしょうか?またマンションの売却でかかる譲渡所得税はどのように計算すればよいのでしょうか?

今回はマンションの売却でかかる税金と、税金がかからないケースなどについて詳しく解説します。

マンションの売却でかかる主な税金

マンションの売却でかかる主な税金

マンションを売却するとどのような税金の対象となるのでしょうか?かかる主な税金は次のとおりです。

  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 譲渡所得税

登録免許税

登録免許税とは、登記などに対してかかる税金です。マンションの名義を売主から買主へと変更する登記にも登録免許税がかかりますが、これは買主が負担することが一般的です。

一方、売却するマンションに抵当権がついている場合は売却までにこれを抹消する必要がありますが、この抹消に関する登記費用は売主が負担することが一般的です。

抵当権とは、契約どおりにローンを返せなかった場合に、金融機関がそのマンションを売って売却代金からローン残債を得るタイプの担保です。住宅ローンを組んでマンションを買った場合には、そのマンションに抵当権がついていることがほとんどでしょう。

抵当権の抹消登記にかかる登録免許税は「不動産の数×1,000円」です。一戸建て住宅の登記は「建物」と「土地」に分かれていますが、マンションの登記はそれぞれが区分所有する部屋とこれに付随する土地の権利(「敷地権」といいます)が一体となっていることが少なくありません。

そのため、マンションの場合には抵当権を抹消する不動産は1つのみであり、登録免許税は1,000円となることが多いでしょう。

なお、抵当権の抹消登記を司法書士へ依頼した場合には、これとは別途司法書士報酬がかかります。司法書士報酬は依頼先の司法書士によって異なりますが、抵当権の抹消登記のみであれば1万円から2万円程度であることが一般的です。

印紙税

印紙税とは、領収書や契約書などの文書に課される税金です。マンションの売買契約書を書面で作成した場合には、これも印紙税の課税対象となります。

印紙税は納付書などでどこかに振り込むのではなく、法務局や郵便局などで収入印紙を購入し、これを課税対象である契約書に直接貼付して納付します。

マンションの売買契約書にかかる印紙税はその契約書に記載された契約金額によって異なっており、それぞれ次のとおりです。なお、2024年3月31日までに作成されたマンションの売買契約書では、軽減税率が適用されます。

契約金額 印紙税額
(2024年年3月31日までの軽減税率)
50万円以下 200円
100万円以下 500円
500万円以下 1,000円
1,000万円以下 5,000円
5,000万円以下 10,000円
1億円以下 30,000円
5億円以下 60,000円
10億円以下 160,000円
50円以下 320,000円
50億円超 480,000円

マンションの売買契約書は売主と買主が1通ずつ保管することが通例であり、それぞれ自分が保管する分にかかる印紙税を負担します。

なお、マンションの売買契約書を電子契約で締結した場合には課税対象となる文書が存在しないため印紙税は課税されません。ただし、マンションの売買契約書を電子で作成するケースはまださほど多くないでしょう。

譲渡所得税

マンションの売却で利益が出た場合には譲渡所得税の課税対象となります。譲渡所得税は固定資産税などのように納付書が送られてくるのではなく、自分で申告をして納税しなければなりません。次で譲渡所得税については詳しく解説します。

マンションの売却でかかる税金「譲渡所得税」の計算方法

マンションの売却でかかる税金「譲渡所得税」の計算方法

マンションを売却した譲渡益が出た場合には譲渡所得税の課税対象となります。譲渡所得税は次の式で算定します。

  1. 課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
  2. 譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率

各計算要素の概要は次のとおりです。

収入金額

収入金額とは、マンションを売ったことによって買主から受け取った金銭の額です。金銭以外の物や権利で対価を受け取った場合には、その物や権利の時価が収入金額となります。

取得費

取得費とは、売却したマンションの取得に要した費用です。たとえば、次の費用などが原則として取得費に計上できます。

  • マンションの購入代金
  • マンションの購入手数料
  • マンションを購入したときなどに納めた登録免許税、登記費用、不動産取得税、印紙税など
  • マンションを購入するために借り入れた資金の利子のうち、そのマンションを実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
  • 既に締結されていたマンションの購入契約を解除して、他のマンション(今回売却したマンション)を取得することとした場合に支出した違約金

ただし、事業所得などの必要経費に算入されたものは取得費として改めて計上することはできません。

なお、マンションの取得費が不明な場合には、簡易的に「収入金額×5%」で取得費を計算することが可能です。

マンションの建物部分の取得費の考え方

マンションの建物部分は購入代金をまるごと取得費に計上できるわけではなく、所有期間中の減価償却費相当額を差し引かなければなりません。建物は使用したり期間が経過したりすることで価値が減少するとされており、減価償却はこの価値の減少分を示すものです。

つまり、マンションの購入代金うち建物部分の取得費として計上することができるのは次の金額となります。

  • マンションの購入代金のうち建物部分の購入代金-建物の減価償却相当額

減価償却費相当額の計算方法

マンションが居住用である場合における減価償却費相当額は次の式で算定します。

  • 減価償却費相当額=建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数

次の前提で、減価償却相当額を計算してみましょう。

  • マンションを事業用に使用していない(居住用)
  • マンションの構造が「鉄骨(鉄筋)コンクリート」である(非業務用の場合の償却率は0.015)
  • マンションは新築で取得しており、建物部分の取得費は3,000万円
  • マンションの取得から売却までの年数は10年0か月

この場合における減価償却相当額は次のように計算されます。

  • 減価償却相当額=3,000万円×0.9×0.015×10年=405万円

つまり、この場合において建物部分の取得費に計上できる購入金額は2,595万円(=3,000万円-405万円)となります。

減価償却の計算は慣れていないと理解が難しいかもしれません。自分で計算することが難しい場合には、管轄の税務署や税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

参照元:

譲渡費用

譲渡費用とは、マンションを売るために直接かかった費用です。たとえば次の費用などが譲渡費用に計上できます。

  • マンションを売るために支払った仲介手数料
  • 印紙税で売主が負担したもの
  • 既に売買契約を締結しているマンションをさらに有利な条件で売るために支払った違約金

一方、たとえマンションを売るためにリフォームをして費用がかかったとしても、この修繕費は「直接」かかった費用とはいえず譲渡費用には計上できません。また、マンションが売れるまでは固定資産税や修繕積立金などの負担が生じていますが、これも譲渡費用には計上できないこととされています。

特別控除額

譲渡所得税にはさまざまな特別控除が設けられています。特別控除は額が大きいものが多く、適用を受けることで譲渡所得税がゼロとなるケースも少なくありません。

自宅不動産を売却した際に適用できる可能性がある主な特別控除とその控除上限額は、それぞれ次のとおりです。

  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例:3,000万円
  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例:3,000万円

これらの適用を受けるためには、多くの要件を満たしたうえで確定申告をしなければなりません。特例の適用要件を満たしているかどうか迷ったら、マンションを売る前に税理士や管轄の税務署へ確認しておくとよいでしょう。

参照元:

税率

譲渡所得税の税率は、マンションの所有期間が「5年超」か「5年以下」かによって2段階に分かれています。譲渡所得税とこれにかかる住民税、復興特別所得税をまとめた税率はそれぞれ次のとおりです。

売却した日の属する年の1月1日時点におけるマンションの所有期間 税率
所得税 復興特別所得税 住民税 合計
長期譲渡所得(5年超) 15% 0.315% 5% 20.315%
短期譲渡所得(5年以下) 30% 0.63% 9% 39.63%

※2037年までは復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加算されます。

なお、5年以下であるか5年超であるかは売却日で判断するのではなく、売却日の属する年の1月1日時点で判断します。たとえば、2023年8月1日にマンションを売却したのであれば、2023年1月1日時点での所有期間を確認するということです。

ただし、売却したマンションが相続などで取得したものである場合には、亡くなった人(「被相続人」といいます)の所有期間を引き継いで5年超か否かを判断します。

なお、売却したマンションが一定のマイホームであった場合には要件を満たすことで軽減税率の適用が受けられる可能性がありますので、課税譲渡所得金額がプラスとなる場合にはこちらも確認しておくとよいでしょう。

参照元:

マンションの売却で税金(譲渡所得税)がかからないケース

マンションの売却で税金(譲渡所得税)がかからないケース

先ほどの譲渡所得税の解説を踏まえて、マンションの売却で税金(譲渡所得税)がかからないケースをまとめると次のとおりとなります。

  • 譲渡益が生じない場合
  • 特別控除を適用して譲渡所得が発生しない場合

譲渡益が生じない場合

マンションの売却で譲渡益が生じない場合には譲渡所得税はかかりません。ただし、譲渡益が生じるかどうかを判断する際には建物部分の減価償却費を考慮すべきである点には注意が必要です。

特別控除を適用して譲渡所得が発生しない場合

マンションの売却で譲渡益が生じる場合であっても、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」など特例の適用を受けた結果「課税譲渡所得金額」がゼロ以下となる場合に譲渡所得税はかかりません。

ただし、特例の適用を受けるためには確定申告が必要です。

マンションの売却で損失が出た場合に使える特例

マンションの売却で損失が出た場合に使える特例

マンションの売却で譲渡損が生じた場合には、税金(譲渡所得税)はかかりません。しかし、あえて確定申告をすることで他の所得との損益通算や翌年移行への損失の繰り越しが可能となる場合があります。損失が出た場合に使える主な特例の概要はそれぞれ次のとおりです。

  • マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算等
  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算等

なお、いずれも2023年12月31日までにマイホームを売却した場合に適用できる時限的な特例です。また、特例の適用を受けるためには確定申告をする必要があるほかさまざまな要件を満たさなければなりません。

より詳しく知りたい場合には国税庁のホームページを確認するか、管轄の税務署などへご相談ください。

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算等

「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは、マイホーム(旧居宅)を売却して新たにマイホームを購入し旧居宅の譲渡による損失が生じた場合において、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できる制度です。

適用を受けることで事業所得などにかかる税金が少なくなったり、給与などから源泉徴収された所得税が戻ってきたりする効果が期待できます。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の翌年以後3年間繰り越して控除することも可能です。

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算等

「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは、住宅ローン残高を下回る価額で住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じた場合において、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができる特例です。

マンションの売却でいわゆる「オーバーローン」となった場合には、この特例を受けられる可能性があるでしょう。こちらも事業所得などにかかる税金が少なくなったり、給与などから源泉徴収された所得税が戻ってきたりする効果が期待できます。

さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は譲渡の翌年以後3年間繰り越して控除することも可能です。

こちらは1つ上の「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算等」とは異なり、新たにマイホームを取得することは要件とされていません。そのため、マイホームを売って賃貸物件に住み替えた場合であっても適用を受ける余地があります。

参照元:

マンションの売却で税金がかかるのに確定申告をしないとどうなる?

マンションの売却で税金がかかるのに確定申告をしないとどうなる?

マンションの売却で税金(譲渡所得税)がかかるにもかかわらず、確定申告や納税をしないとどうなるのでしょうか?主なリスクは次のとおりです。

  • 使えたはずの特例が使えなくなる
  • 無申告加算税の対象となる
  • 延滞税の対象となる
  • 悪質な場合には重加算税の対象となる

使えたはずの特例が使えなくなる

先ほど解説したように、譲渡所得税には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」などさまざまな特例が存在します。しかし、これらの特例の多くは確定申告をしなければ適用を受けることができません。

ただし、期限を過ぎてからでも適用を受けることができることがあるため、期限を過ぎて気づいたら税理士などの専門家へ相談しましょう。

無申告加算税の対象となる

譲渡所得税の納税が必要であったにもかかわらず期限内に申告や納税をしなかった場合には、無申告加算税などの対象となる可能性があります。無申告加算税とは、期限内に申告をしなかったことに対するペナルティとしての税金です。

無申告加算税の額は、原則として納付すべき税額に対しそれぞれ次のとおりとされています。

  • 50万円まで:15%
  • 50万円を超える部分:20%

当然ながらこの無申告加算税に加え、本来支払うべきであった譲渡所得税も納めなければなりません。

参照元:No.2024 確定申告を忘れたとき(国税庁)

延滞税の対象となる

延滞税とは、本来の支払い期限までに税金を納めなかった場合に課税される利息に相当する税金です。2023年1月1日から2023年12月31日までの期間に適用される延滞税の割合は、それぞれ次のとおりです。

  • 納期限の翌日から2か月を経過する日まで:年2.4%
  • 納期限の翌日から2か月を経過した日以後:年8.7%

悪質な場合には重加算税の対象となる

仮装隠蔽があったと判断される場合には、無申告加算税の代わりに重加算税の対象となります。

重加算税の税率は非常に重く、原則として本来納付すべきであった金額の40%です。また、5年以内の短期間に仮装隠蔽などを繰り返した場合には、重加算税がさらに加重されます。

マンションの売却で後悔しないためのポイント

マンションの売却で後悔しないためのポイント

最後に、マンションの売却を成功させるためのポイントを4つ紹介します。これらのポイントを踏まえ、後悔しない売却を目指しましょう。

  • かかる税金をあらかじめ試算する
  • 特例の適用をあらかじめ検討する
  • 複数の不動産会社に査定を依頼する
  • 売却を急がない

かかる税金をあらかじめ試算する

1つ目は、かかる税金や費用をあらかじめ計算して心づもりをしておくことです。税金や費用を考慮に入れていないと売却で得た資金の手残りが思いのほか少なく、その後の資金計画に支障が出る可能性があるでしょう。

特例の適用をあらかじめ検討する

2つ目は、譲渡所得税の特例の適用要件をあらかじめ確認しておくことです。

先ほど解説したように譲渡所得税にはさまざまな特例が存在し、適用を受けることで税額を大きく減らせるケースも少なくありません。しかし、特例にはそれぞれ要件があります。

マンションを売却してから特例の適用が受けられないことが判明すれば、後の祭りとなりかねません。マンションを売却する際には、あらかじめ管轄の税務署や税理士などの専門家へ相談して特例適用の可否を確認しておくとよいでしょう。

複数の不動産会社に査定を依頼する

マンションの売却を成功させるには、複数の不動産会社へ査定を依頼することが鉄則です。

査定額は絶対的な額ではなく、その不動産会社が独自のノウハウや理論をもとに算定した「売却想定額」でしかありません。つまり、ある不動産会社はそのマンションを3,000万円程度と査定した一方で、その地域のマンション売買に詳しい他の不動産会社はそのマンションを3,500万円と査定する可能性もあるのです。

複数社による査定額を比較することでそのマンションの適性額を把握しやすくなるうえ、そのマンションの売却に強みを持つ不動産会社を選びやすくなるでしょう。しかし、自分で1社1社不動産会社を回って査定の依頼をしていては多大な手間がかかります。

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売却を急がない

マンションの売却を成功させるためには、売却を急ぐことはおすすめできません。

売却を急がない場合には、希望の条件で買ってくれる購入者が現れるのをある程度待つことができるため購入希望者からの無理な値下げ要求を断ることが可能です。

一方売却を急ぐ場合には、多少値下げをしてでも早く売買契約を成立させたいとの意識が働きやすく、値下げに応じてしまう可能性が高くなるためです。

まとめ

マンションの売却では、譲渡所得税などの税金がかかります。この譲渡所得税はすべてのケースでかかるものではなく、マンションを売って儲けが出た場合にのみ課税されます。

また譲渡所得税には特別控除が多く、適用を受けることで税額がゼロとなるケースも少なくないでしょう。マンションの売却で失敗しないためには、あらかじめ税理士などの専門家に税金を試算してもらうことをおすすめします。

また、マンションの売却を成功させるためには複数の不動産会社へ査定を依頼することもポイントです。複数社による査定を比較することでそのマンションの売却適正額が把握しやすくなります。査定額や対応などを比較することで、そのマンションの売却に自信のある不動産会社を見つけやすくなるでしょう。

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