マンションを売却する際には、印紙税や登録免許税などの税金がかかります。また、マンションを売ることで譲渡益が出た場合には、確定申告をして譲渡所得税を納めなければなりません。
今回は、マンションを売る際にかかる税金の概要やそれぞれの税金の計算方法などについて詳しく解説します。この記事を読むことで、マンションの売却で発生する税金の全体像を把握できるでしょう。
マンションを売るとかかる税金①:印紙税
マンションを売る際にかかる税金の1つ目は印紙税です。初めに、印紙税の概要や金額について解説します。
印紙税とは
印紙税とは、契約書や領収書など一定の文書に対してかかる税金です。マンションを売る際に締結する売買契約書も印紙税の課税対象とされています。
ただし、マンションの売買契約を電子契約で締結した場合には、印紙税を納める必要はありません。印紙税の課税対象は文書であり、電子で作成された契約書は課税対象ではないためです。
印紙税の納め方
印紙税を納める際には、納付書などでどこかにお金を振り込むわけではありません。印紙税は、「収入印紙」を契約書に直接貼付する形で納付します。
収入印紙とは、政府が発行する切手程度のサイズの証票です。収入印紙は郵便局や市区町村役場、法務局などで購入できます。
なお、コンビニエンスストアでも収入印紙の取り扱いがある場合があるものの、領収証への貼付でよく使用される200円の収入印紙のみであることが少なくありません。
印紙を貼付したら、印紙の使いまわしを防ぐために貼付した印紙に消印を押印します。消印の方法はさまざまですが、売主と買主がそれぞれ契約書に押したのと同じ印鑑で、収入印紙と契約書用紙にまたがるように押印することが一般的です。
印紙税の額
マンションの売却など不動産の譲渡にかかる印紙税額は、契約書に記載された売買金額によって異なり、それぞれ次のとおりです。なお、2024年3月31日までに作成された契約書では、軽減税率が適用されています。
契約金額 | 印紙税額 (2024年年3月31日までの軽減税率) |
---|---|
50万円以下 | 200円 |
100万円以下 | 500円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
1億円以下 | 30,000円 |
5億円以下 | 60,000円 |
10億円以下 | 160,000円 |
50円以下 | 320,000円 |
50億円超 | 480,000円 |
なお、印紙税は契約の件数ごとではなく、契約書ごとに課される税金です。そのため、たとえばマンションを3,000万円で売却する売買契約書の原本を2024年3月31日までに2通作成した場合には、それぞれ1万円(合計2万円)の印紙税がかかります。
印紙税は誰が支払う?
マンションの売買にかかる印紙税は、売主と買主がそれぞれ自分の保管する契約書に貼付する分を負担することが多いでしょう。
たとえば、マンションを3,000万円で売却する売買契約書の原本を2024年3月31日までに2通作成した場合には、買主が保管する契約書に貼付する1万円の印紙税は買主が、売主が保管する契約書に貼付する1万円の印紙税は売主が保管します。
印紙税を払わないとどうなる?
契約書に印紙を貼付しなかったからといって、その契約書が無効になるわけではありません。契約書の効力と印紙の貼付とは無関係です。
印紙を負担するべきであるにもかかわらず印紙を貼付しなかった場合には、納付しなかった印紙税の額に加え、その2倍に相当する金額との合計額に相当する過怠税が徴収されます。たとえば、マンションの売買契約書に1万円の印紙を貼付するべきであるにもかかわらず、貼付しなかった場合には3万円の過怠税が徴収されるということです。
マンションを売るとかかる税金②:登録免許税
マンションを売る場合にかかる税金の2つ目は登録免許税です。登録免許税の概要について解説します。
登録免許税とは
登録免許税は、不動産登記などに対してかかる税金です。不動産の名義を変える登記や住所変更の登記、抵当権を抹消する登記など、登記をするごとに登録免許税がかかります。
マンションの名義変更にかかる登録免許税は買主負担が一般的
マンションを売却すると、マンションの名義を売主から買主に変える名義変更の登記が必要となります。この名義変更登記にかかる登録免許税は、「マンションの評価額の1,000分の20」です。なお、土地部分は令和8年(2026年)3月31日までの間に登記を受ける場合は「1000分の15」、建物部分も一定の要件を満たす場合には軽減税率の適用があります。
ただし、名義変更登記に要する登録免許税はマンションの買主側が負担することが通例であり、売主側が負担することはほとんどありません。
抵当権抹消の登録免許税は売主が負担する
売却するマンションに売主側の抵当権がついている場合、マンションの引き渡し時点までにこの抵当権を抹消しなければなりません。
抵当権とは、契約どおりにローンを返せなかった場合、金融機関などの債権者がその不動産を競売にかけてその対価からローン残債の回収をするためにマンションに付けられた金融機関の権利のことです。売却対価を充てるなどして住宅ローン残債を完済することで、金融機関が抵当権の抹消に応じてくれます。
実際には、マンションの売却代金を買主から受け取る決済の場で売主の住宅ローン残債を返済し、買主への名義変更登記と同時に抵当権抹消登記を申請してもらうことも多いでしょう。
この抵当権の抹消にも登録免許税がかかりますが、これは売主側が負担することが一般的です。
抵当権抹消にかかる登録免許税の額
抵当権の抹消にかかる登録免許税の額は「不動産の数×1,000円」とされています。
比較的新しいマンションの場合、敷地の権利が建物の専有部分に付随している「敷地権」タイプのものがほとんどです。たとえば、敷地権が1個でマンションの部屋数が1室であるときの抵当権抹消の登録免許税は、2,000円となります。
なお、マンションの売買に伴う抵当権の抹消は、司法書士に依頼することが一般的です。この場合には、1万円から2万円程度の司法書士報酬が別途かかります。
抵当権抹消にかかる登録免許税の納め方
抵当権の抹消に要する登録免許税は、次のいずれかの方法で納めます。
- 購入した収入印紙を申請書類に貼付して納付する(税額30,000円以下の場合のみ)
- 現金で納付して、領収証書を登記申請書に貼り付けて提出する
- オンラインで納付する
ただし、抵当権抹消にかかる登録免許税は司法書士が立て替え、司法書士報酬と合わせて請求されることが多いでしょう。
マンションを売るとかかる税金③:譲渡所得税
マンションを売って利益が出た場合には、譲渡所得税の課税対象となります。譲渡所得税には注意点が少なくありません。そのため、マンションの売却想定額がわかった段階であらかじめ税理士や管轄の税務署などに相談しておくとよいでしょう。
マンションを売るにあたって売却想定額が知りたい場合には、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する「おうちクラベル」のご利用がおすすめです。
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譲渡所得税とは
譲渡所得税とは、マンションなどの資産を売って利益が出た場合に利益に対してかかる税金です。マンションを売った場合には、譲渡所得税の対象となるか確認しておく必要があるでしょう。
譲渡所得税の申告方法と申告期限
譲渡所得税はどこかから納付書が送られてくるのではなく、自分で計算をするもしくは税理士に依頼して確定申告をしなければなりません。確定申告は、マンションを売った年の翌年2月16日から3月15日までに行います。
譲渡所得税の申告が必要となるケースとは
譲渡所得税の申告が必要となるケースは次のとおりです。
- マンションを売って譲渡益が生じ、納付すべき譲渡所得税がある場合
- 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」など、特例の適用を受けることで譲渡所得税がゼロとなる場合
- 譲渡損が出たものの、「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」などの適用を受けたい場合
譲渡所得税の計算方法や特例については、次から詳しく解説します。
マンションを売った際にかかる譲渡所得税の計算方法
マンションを売った際にかかる譲渡所得税は次の式で計算します。
- 課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
- 譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率
参照元:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)(国税庁)
それぞれの計算要素の概要は次のとおりです。
収入金額
収入金額とは、そのマンションを売却して買主から得た対価です。一般的には買主から受け取った金銭を指しますが、対価として権利や物を受け取った場合には、その権利や物の時価が収入金額として算入されます。
取得費
取得費とは、売却したマンションの取得に要した費用です。取得費には次の金額などが含まれます。ただし、事業所得などの必要経費に算入した費用は取得費に含めることができません
- マンションの購入代金、設備費、改良費
- マンションの購入手数料
- マンションの取得時に納めた登録免許税、司法書士報酬、不動産取得税、印紙税など
- 既に締結されていた別のマンションの購入契約を解除して、今回売ったマンションを取得することとした場合に支出した違約金
なお、マンションの建物部分の取得費は購入代金そのままではなく、所有期間中の減価償却費相当額を差し引かなければなりません。そのマンションが居住用であり、マンションが「(鉄骨)鉄筋コンクリート造」である場合における減価償却費相当額は次の式で算定します。
- 減価償却費相当額=建物の取得価額×0.9×0.015×経過年数
譲渡費用
譲渡費用とは、そのマンションを売却するために直接要した費用です。譲渡費用には次の金額などが含まれます。
- マンションを売却するために支払った仲介手数料
- 印紙税のうち売主が負担したもの
- 既に売買契約を締結したマンションをさらに有利な条件で売るために支払った違約金
特別控除
譲渡所得税にはさまざまな特別控除が存在します。主な特別控除は次のとおりです。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例
参照元:
金額の大きな特別控除制度があるため、居住用マンションを売って譲渡所得税が発生するケースはあまりないといえるでしょう。
ただし、特別控除の適用にはさまざまな要件を満たす必要があるため、売却前に要件をよく確認しておくことをおすすめします。また、特別控除の適用を受けるには確定申告をしなければなりません。
一方で、売却したマンションが投資用などの場合には、適用を受けられる特別控除はほとんどなく譲渡所得税が発生する可能性が高いでしょう。
譲渡所得税の税率
譲渡所得税の税率は、売却したマンションの所有期間に応じて二段階に分かれています。また、これに対応する住民税の税率も二段階です。
譲渡所得税と住民税、2037年まで適用される復興特別所得税を含めた税率はそれぞれ次のとおりです。
売却した日の属する年の1月1日時点におけるマンションの所有期間 | 税率 | |||
所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 | |
長期譲渡所得(5年超) | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
売却した年の1月1日時点における所有期間が5年以下の場合、高い税率が適用されるため注意が必要です。
マンションを売る際にかかる譲渡所得税の計算例
続いて、マンションを売る際にかかる譲渡所得税について計算例を紹介します。ここでは、次の前提で計算をします。
- 投資用のマンション1室を3,000万円で売却した
- このマンションの取得費は1,900万円(減価償却相当額は考慮済)である
- 譲渡費用は100万円
- 適用を受けられる特別控除はない
- 売却した年の1月1日時点におけるマンションの所有期間は5年超である
この場合における譲渡所得税(復興特別所得税を含む)は次のように計算できます。
- 課税譲渡所得金額=3,000万円-(1,900万円+100万円)=1,000万円
- 課税譲渡所得税額=1,000万円×15.315%=153万1,500円
なお、このマンションが居住用であり「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」の適用が受けられる場合は次のように計算され、譲渡所得税はゼロとなります。
- 課税譲渡所得金額=3,000万円-(1,900万円+100万円)-3,000万円=△2,000万円(ゼロ以下なので、課税譲渡所得金額はゼロ)
マンションを売ることで損失が出た場合の譲渡所得税の特例
マンションを売って譲渡損が出た場合には、確定申告をする義務はありません。ただし、確定申告をすることで損失を他の所得と通算したり翌年以後に繰り越したりすることが可能です。ここでは、それぞれの特例の概要について解説します。
なお、適用を受けるにはいずれも細かな要件を満たす必要があるほか、確定申告をしなければなりません。また、いずれも2023年12月31日までにマイホームを売却した場合にのみに適用できる時限的な措置です。
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算等
旧マイホームを売却して新マイホームを購入した場合、旧マイホームの譲渡によって損失が生じた際には、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することが可能です。
これにより、支払うべき所得税額が安くなったり、源泉徴収された税金が戻ってきたりする可能性があります。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失が残った場合には、これを譲渡の翌年以後3年間繰り越して控除(繰越控除)することが可能です。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算等
住宅ローンの残債のあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額(いわゆる「オーバーローン」)で売却して損失が生じた際には、一定の要件を満たすとその譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することが可能です。
これにより、支払うべき所得税額が安くなったり、源泉徴収された税金が戻ってきたりする可能性があります。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失が残った場合には、譲渡の翌年以後3年間繰り越して控除(繰越控除)することが可能です。
こちらは「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算等」とは異なり、新たにマイホームを取得しない場合(たとえば、マイホームを売って賃貸住宅に住み替えた場合など)であっても適用を受けることが可能です。
なお、オーバーローン状態の場合には、自己資金でローンを完済したり、他の不動産に抵当権を付け替えてもらったりするなどの対応が必要です。状況によっては抵当権を外してもらえず、マンションの売却自体が難しくなる可能性もあるでしょう。
そのため、マンションを売却するにあたっては、オーバーローンとならないかあらかじめ確認しておくことをおすすめします。オーバーローンであるかどうかは、住宅ローン残債とマンションの査定額を比較することで確認することが可能です。
マンションの売却をご検討の際には、まず「おうちクラベル」の不動産一括査定をご利用ください。
マンションを売る際の税金で損しないためのポイント
マンションを売る際に、税金で損をしないようにするにはどのような点に注意すればよいのでしょうか?主なポイントは次のとおりです。
- 特例適用の要件をよく確認しておく
- マンション売却に強い不動産会社に相談する
- あらかじめ税理士や管轄の税務署へ相談する
特例適用の要件をよく確認しておく
マンションを売って譲渡益が出た場合にかかる譲渡所得税には、さまざまな特別控除があります。特別控除のインパクトは非常に大きく、適用を受けられるかどうかによって税額に大きな差が出ることも少なくありません。
マンションを売却してから特別控除の要件を満たしていないことに気づいた場合、資金計画に大きな狂いが生じてしまう可能性もあるでしょう。そのため、マンションを売って譲渡益が出そうな場合には、特例の適用要件をあらかじめよく確認しておくことをおすすめします。
マンション売却に強い不動産会社に相談する
マンションの売却の際に損しないためには、税金を無視することはできません。一方で、マンションをよりよい条件で売ることも非常に重要なポイントです。
マンションを高く売るには、そのマンションの売却に強い不動産会社に依頼するのが近道でしょう。しかし、どの不動産会社がそのマンションの売却に強いのかわからない場合も少なくないと思います。この場合には、「おうちクラベル」の不動産一括査定がおすすめです。
おうちクラベルでは、一度の60秒入力で複数の不動産会社へまとめて査定の依頼ができます。査定額や説明、対応などを比較することで、そのマンションの売却に強い信頼できる不動産会社を見つけやすくなるでしょう。
また、優良な不動産会社では譲渡所得税について相談できる税理士とのネットワークを持っていることも少なくありません。そのため不動産会社に依頼することで、マンションを売った際の税金について相談できる税理士を紹介してもらえる可能性もあります。
あらかじめ税理士や管轄の税務署へ相談する
マンションを売る際の税金で損しないためには、あらかじめ税理士や管轄の税務署に相談しておくとよいでしょう。
先ほども解説したように、譲渡所得税は特別控除の適用が受けられるかどうかによって税額に非常に大きな差が出る可能性があります。特別控除を受けるつもりでマンションを売ってから特別控除の適用が受けられないことが判明すると、資金繰りに大きな狂いが生じてしまうかもしれません。
税理士や税務署にあらかじめ相談しておくことで、安心してマンションを売ることが可能になるでしょう。
まとめ
マンションを売ると印紙税や登録免許税、譲渡所得税などの税金がかかります。それぞれの概要を把握し、かかる金額をあらかじめ把握しておくとよいでしょう。
また、特別控除の適用を受けられるかどうかによって、譲渡所得税の税額に大きな差が出ることが少なくありません。そのため、マンションを売る前に税理士や管轄の税務署などで特例の要件などを確認しておくことをおすすめします。
マンションを売る際には税金で損をしないことも重要ですが、それよりも大切なことはよりよい条件でマンションを売却することです。そのためには、そのマンションの売却に強い不動産会社に売却を依頼することが近道でしょう。
そのマンションの売却に強い不動産会社をお探しの際には「おうちクラベル」をご利用ください。おうちクラベルは、東証プライム上場企業のSREホールディングスが運営する不動産一括査定です。査定額や説明などを比較することで、そのマンションの売却に自信のある不動産会社を選択しやすくなるでしょう。