不動産会社に直接マンションを売却する「買取」は、不動産に関する専門知識がなくても、不要になったマンションを素早く現金化できる点が大きなメリットです。そのため、早く引っ越したい方や、すぐにまとまった資金が必要な方に多く利用される売却方法です。
しかし、買取によるマンションの売却は、不動産仲介会社に依頼して売却するよりも買取価格が安くなるイメージが強く「損をしてしまうのでは?」「不動産会社とうまく交渉できるかな?」と不安に思われる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、不動産会社にマンションを買い取ってもらうことのメリット・デメリットと、利用する際の注意点を詳しく解説します。不動産会社による「買取」の基本構造を知って、賢い不動産取引を目指しましょう。
1.マンション買取とは
マンションの「買取」とは、不動産会社がマンションの所有者から、直接物件を買い取る取引形態のことをいいます。
マンションの所有者が売主、不動産会社が買主となり、間に仲介会社を挟まずに売買契約を締結するのがこの方法です。不動産会社にマンションの査定を依頼し、金額に納得したうえで買い取ってもらうという流れが一般的で、この方法を「即時買取」と呼びます。
一方で、マンションの売却方法には「仲介」という取引形態もあります。これは売主と買主が一対一で取引を行う「買取」とは異なり、売主であるマンションの所有者と、マンションを購入したい人の間に不動産仲介会社が入り、契約締結のサポートを行います。
また、「買取」を行う際は資金力が必要になるため、一部の不動産会社しか対応していない点も特徴の1つです。
1-1.買取保証との違い
上記で解説した「即時買取」のほかに、「買取保証」という取引形態もあります。「買取保証」は、仲介と買取を組み合わせたようなマンションの売却方法です。
不動産会社に売却先を探してもらう「仲介」のみでマンションを売却しようとすると、売却条件によってはいつまでも売れ残ってしまうリスクがあります。一方で最初から「買取」を選択すると、高く売れるチャンスを逃してしまうかもしれません。
買取保証では、最初のうちは不動産会社が間に入って売却先を探し、一定期間経過しても売れなかった場合に不動産会社が買い取ります。
仲介期間に売却先が見つかれば相場価格で売却でき、万が一見つからなくても、不動産会社に買い取ってもらえるのがこの方法です。
2.マンション買取のメリット
不動産会社に直接マンションを買い取ってもらうことには多くのメリットがあります。売却が完了するまでの期間を短縮できたり、売却時にかかる手間や費用を削減できたりするほかにも、仲介の場合に売主が負うべき責任が免除されるという点も大きな利点です。
本章では買取を利用することで売主が得られる7つのメリットについて、詳しく解説します。
2-1.仲介より早く売れる
買取によるマンション売却の最大のメリットは、仲介と比べて圧倒的に短期間で売却完了できるという点にあります。
不動産仲介会社を経由した場合、成約までの期間は3〜6ヶ月ほどが平均とされています。しかし、購入希望者が見つかるまでは売却できないため、場合によっては1年以上売れ残ってしまうことも少なくありません。
マンション買取の場合は、不動産会社にマンションの査定を依頼して買取価格を提示してもらい、金額やその他の条件に納得できれば、すぐに買い取ってもらうことが可能です。
2-2.売主責任を免責できる
仲介でマンションを売却する場合、売主には「契約不適合責任」と「主要設備の補修・修復義務」が課せられます。場合によっては、物件の引き渡し後に売主にとって大きな負担になってしまうこれらの責任・義務が免除されるのが、買取によるマンション売却です。
2-2-1.契約不適合責任
「契約不適合責任」とは、マンションの売買契約を締結したときに、買主に対して伝えられていた物件の状態と、実際に引き渡された物件の状態や品質に相違があった場合に、売主が負う責任を指します。
マンションの売却において追及される可能性のある内容としては、給排水管の詰まりや内装の汚れ、雨漏りなどが例として挙げられます。
契約不適合責任においては、マンションの価値を下げる要因となっているこうした瑕疵(欠陥)が、契約書に記載されておらず、なおかつ引き渡し後に判明した場合は、引き渡し後であっても売主が責任を負うと定められています。
契約不適合責任を問われた売主は、瑕疵部分の修復や売買代金の減額請求を受けたり、場合によっては損害賠償請求を受けたりすることもありますが、買取によるマンション売却では契約不適合責任自体が免除されます。
つまり、中古マンションを売却しようとする所有者にとって、引き渡し後に発生するであろうリスクを抑えることが可能になるのです。
2-2-2.主要設備の補修・修復義務
仲介によるマンション売却の場合、契約不適合責任のほかに「主要設備の補修・修復義務」というものも売主に課されます。
給湯関係 | 給湯器・バランス釜 |
水廻り関係 | キッチン設備・洗面・浴室・トイレ・洗濯機の防水パン |
空調関係 | エアコン・床暖房・換気扇・24時間換気設備 |
その他設備 | インターホン・ドアチャイム |
多くの場合、売主の責任範囲は上記に限定されており、引き渡し後7日以内に不具合が見つかった場合には、売主が補修・修復にかかる費用を負担することとされています。
買取によるマンション売却の場合は、買い取った不動産会社がリフォームなどをおこなうため、上記設備の不具合に関する責任も免除になります。
2-3.周囲に知られず売却できる
近隣住人や親せき、友人などにマンションを売却することを知られたくない方にとって、不動産会社に直接買い取ってもらうという売却方法は非常に有効な手段です。
不動産仲介会社に売却を依頼すると、チラシを作ってポスティングしたりインターネットに物件情報を掲載したりして、購入希望者を探すのが一般的です。
あらかじめ不動産仲介会社に宣伝の方法についての要望を伝えて入れば、周囲に知られない形で売却活動をすることも不可能ではありませんが、買い手が決まるまでに相当な時間がかかることになります。
買取の場合は、依頼から売却完了まで、不動産会社とマンション所有者の一対一のやりとりになります。そのため周囲に知られることなく、マンションを売却することが可能なのです。
2-4.仲介手数料がかからない
仲介でのマンション売却の場合、売主と買主の間に不動産仲介会社が入るため、不動産会社に対して仲介手数料を支払う必要があります。仲介手数料の金額は、取引される物件の売却価格によって変動しますが、数十万円から数百万円になることも少なくありません。
買取の場合は、マンション所有者が売主となり、不動産会社が買主として直接取引するため、仲介手数料がかかりません。その分大きくコストカットができる点は大きな魅力と言えます。
2-5.スケジュール調整がしやすい
マンションの売却を検討している方の中には、新しい家に住み替えることを目的としている方も多くいるでしょう。その場合、もともと住んでいたマンションの売却と、新しい住まいの取得を同時進行で進めなくてはいけないため、綿密なスケジュール管理が必要になります。
仲介でマンションを売却する場合、買主が見つかるまで売却時期の目途が立たないだけでなく、予期せぬトラブルや買主の都合によりスケジュールが急遽変更する可能性もあります。
買取であれば、スケジュールが大きくずれることがないため、家の住み替えを計画的に進められるという安心感があります。
2-6.リフォーム・リノベーションなしで売却できる
仲介によるマンション売却の場合、状態の悪い物件や設備が古い物件はなかなか売れないこともあり、売主自身でリフォームやリノベーションを行ってから売却しなくてはいけないケースもあります。
それに対して買取を行っている不動産会社は、買い取ったマンションに手を加えて再販することを前提にしています。売主側で物件に手を加える必要がないため、無駄な費用をかけることなく、売りたいときにすぐ売ることが可能です。
2-7.内覧の手間がかからない
不動産会社に売却の申し込みをしてから売却完了まで、ほとんど内覧の手間がかからないのも買取のメリットです。
仲介によって買主を探す場合、問い合わせてきた購入希望者に合わせて内覧のスケジュールを組まなくてはいけません。
買取の場合はマンションの価格を算出するため、査定員が現地を1〜2回訪問する程度で売却が可能。訪問日時も不動産会社の担当者が合わせてくれるため、仕事や家庭の事情でなかなか予定をずらせない・まとまった時間をとりにくいという方でも、スムーズに売却まで進められるという負担の少なさが魅力です。
3.マンション買取の注意点
売却のスピードが速くスケジュールが組みやすいなど、多くのメリットがあるマンション刈り取りですが、逆に下記のポイントには注意が必要です。
- 買取価格が安い
- 価格交渉が難しい
- ローン残債の確認が必要
- 仲介相場を査定で確認
- 価格以外の条件に注意
- 買取保証やリースバックの検討
- 登記移転の必要書類は入金確認後に対応
- 管理費・修繕積立金を払いきる
- 買取と転売は別物
不動産会社による買取でマンションを売却する場合、不動産のプロを相手にさまざまな交渉を行うことになります。知識が全くない状態で臨んでしまうと、大きく損をすることにもなりかねないため、正しい知識や取引の全体像を必ず知っておきましょう。
3-1.買取価格が安い
不動産会社にマンションを買い取ってもらう一番のデメリットは、買取価格が安くなるという点です。
先述の通り、マンションの買取を行っている不動産会社は、買い取ったマンションにリフォームしたりリノベーションしたりして再販することで利益を得ています。そのため下取り価格での買取となり、同じ条件のマンションの市場相場と比較して、8割程度での買取になるケースが多いのです。買取価格にこだわりたい場合や、仲介で売りやすい条件のマンションを所有している場合は、最初から買取は選択しない方が無難です。
なお、どのような物件が仲介または買取向きかという点に関しては、本記事の後半で詳しく解説します。
3-2.価格交渉が難しい
買取では不動産のプロである不動産会社相手に取引を進める必要があるため、価格交渉が難しいという点も知っておく必要があります。
買取を行う不動産会社は、豊富な知識や経験に基づいてマンションを査定し、明確な根拠をもって査定価格を算出します。そのため、不動産に関する知識面ではどうしてもプロと対等に交渉することは難しく、たとえ交渉したとしても、買取価格が変わらないということは大いに考えられるのです。
しかし、相手がプロだからといって、全く価格交渉ができないというわけでもありません。少しでも高値で売却するコツは、後の章で解説します。
3-3.ローン残債の確認が必要
マンションを買取に出す場合、先に住宅ローン残債を確認しておく必要があります。
住宅ローンで借り入れを行ってマンションを購入した場合、マンションには「抵当権」というものが設定されています。これは万が一ローン債務者が返済不能に陥った場合に、金融機関がマンションを競売にかけ、売却金額によってローン残債を回収する権利のことです。
マンションを売却するためには、住宅ローンを完済したうえで抵当権の抹消登記を行う必要がありますが、マンションの売却金額でローン残債を完済できない場合は、不足分を手持ち資金で補わなくてはなりません。
ローン残債の金額や売却金額によっては、手持ち資産を大きく減らすことに繋がってしまうため、注意が必要です。
3-4.仲介相場を査定で確認
不動産会社の直接買い取りを選んだときも、事前に仲介で売却する場合の相場を把握しておくことをおすすめします。
上記で解説したように、買取の場合は仲介での相場価格の6~8割で取引されますが、基準となる相場がいくらかを知らなければ、不動産会社から提示された価格が適正価格かどうかを判断できません。
最初からマンション買取を行っている不動産会社だけに依頼せず、マンション売買の仲介を行っている不動産会社にも査定依頼をし、売却を検討してるマンションがいくらくらいで取引されているかを確認すると安心です。
ただし、仲介の場合の査定結果はあくまでも「売却見込み額」であるため、必ずしもその価格で売れるというわけではないこと、仲介手数料が発生することを前提にした査定額と認識しておきましょう。
なお、マンションを査定に出す際は、「おうちクラベル」をはじめとした「不動産一括査定サイト」を利用すると便利です。マンションについての情報を一度入力するだけで複数の不動産会社に査定依頼を送れるため、買取でのマンション売却を視野に入れている方でも気軽に利用できます。
3-5.価格以外の条件に注意
不動産会社に直接マンションを買い取ってもらう場合、価格以外の条件も必ず確認しておきましょう。
まず確認しておきたいのが「引き渡しの猶予期間」です。売買契約成立から物件引き渡しまでにどれくらいの期間があるかを確認しておけばく、余裕のあるスケジュールで新居へ引っ越すことが可能になります。
また、売却するマンションにある残留物の処分方法も、確認しておくと安心です。不要になった家具や家電は、売主自身で処分もできますが、不動産会社の中には残留物の処分を担ってくれる会社もあります。特に、早くマンションを手放したいと考えている方にとって便利なサービスなので、事前に確認しておくといいでしょう。
上記で挙げた2点以外にも、不動産会社独自のサービスについても調べておくことをおすすめします。
3-6.買取保証やリースバックの検討
不動産会社にその場で買い取ってもらえる買取は、マンションをすぐに現金化できるという点で魅力的な側面もありますが、買取金額という面では、決してお得とは言えない処分方法です。
そのため、今すぐマンションを売却しなければならない事情がない場合は、先に解説した「買取保証」を利用し、市場相場での売却を目指すことをおすすめします。
また、もし住宅ローンの支払いに行き詰まったことを理由に、マンションの売却を検討している場合は、「リースバック」という契約方法も視野に入れましょう。
「リースバック」というのは、マンションを一度不動産会社に買い取ってもらい、買主となった不動産会社と賃貸貸借契約を結ぶことで、同じマンションに継続して住み続けられる契約形態を指します。対応している不動産会社は多くはありませんが、住宅ローンの負担が原因で売却を検討している場合は、リースバック会社に問い合わせてみるのもおすすめです。
買取を利用するかどうかは、必ず他の売却方法と比較したうえで決定するようにしましょう。
3-7.登記移転の必要書類は入金確認後に対応
登記移転に必要な書類は、不動産会社からの入金が確認できてから対応することも重要です。
売買代金が支払われる前に、登記移転に必要な「登記済証(権利証)」や「登記識別情報通知書」を不動産会社に渡してしまうと、マンションの名義は不動産会社に移転したのに、代金は支払われないという事態に陥ります。
これは買取詐欺の典型的な手法のひとつであるため、代金を受け取る前に書類の提出を求められても、絶対に応じないようにしましょう。
3-8.管理費・修繕積立金を払いきる
売却するマンションの管理費や修繕積立金の未払いがある場合は、買取依頼をする前に支払っておくようにします。
滞納状態でも売却自体はできますが、滞納分は売却金額から差し引かれることになり、手元に残る金額が明確にわからなくなる要因になるためです。
売却が完了した際に「思ったよりも手元に資金が残らなかった」という事態にならないためにも、管理費や修繕積立金の滞納分はクリアにしておきましょう。
3-9.買取と転売は別物
本記事の解説において、マンションの買取を行っている不動産会社は、買い取ったマンションに手を加えて「再販」するということに触れてきました。ここで知っておいていただきたいのは、不動産の買取会社が行っているのはあくまでも「再販」であり、「転売」ではないという点です。
不動産会社の種類 | 販売の方法 | 販売先 |
買取再販業者 | 買い取った不動産をリノベーション・開発・分譲するなどして付加価値を与えてから、販売・分譲する。 | エンドユーザー |
不動産転売業者 | 買い取った不動産に付加価値を与えずに転売する。 | 同業者(不動産買取業者や個人) |
上記の表を見てわかるとおり、不動産転売業者はマンションに付加価値を与えずに売却することで利益を得るビジネスモデルのため、買取の際に相場よりも相当安い価格で買い取る必要があります。
つまり、マンションの買取のために査定を依頼した際、相場からかけ離れて安い価格を提示してくる不動産会社は、「再販」ではなく「転売」を行っている可能性があるということです。
不動産の転売自体は違法ではありませんが、マンションの売主としては買取価格の面で大きく損をしてしまうことになりかねないため、細心の注意を払うことが重要と言えます。
4.買取向きのマンションの特徴・条件
マンションの売却方法はさまざまですが、物件の状態や条件によっては、買取による売却を選択した方が、早く確実に売却できるケースも存在します。ここでは買取向きのマンションの特徴や条件を5つピックアップし、詳しく解説します。
4-1.リフォーム・クリーニングの手間を省きたい
買取によるマンション売却の魅力のひとつに、売却時に物件に手を加えなくていいという点を紹介しました。
破損・汚損のある物件は、状態によっては通常の仲介では買主が見つからないことも少なくありません。そうしたリフォームやクリーニングを行わないと売却が難しそうなマンションでも、売主が手を加えずに売却できるという点は、買取を利用する大きなメリットだと言えます。
リフォームやクリーニングにも費用や時間が必要になるため、そうした手間を省いてマンションを手放したい場合は、買取での売却が便利です。
4-2.築年数が古い
地震大国と呼ばれる日本においては、物件の築年数や耐震性に注目して購入物件を決める方も多くいます。そのため、いわゆる「旧耐震基準」によって建設された、1981年以前竣工のマンションは、不動産仲介会社を利用した売買では、買い手が見つからない可能性も否定できません。
買取を利用する場合は、築年数が古いマンションであっても、築年数を考慮した査定額を算出して売却金額を決定します。もちろん新耐震基準の物件よりは査定額が低くなる可能性はありますが、全く売却できない可能性は低いと言えます。
4-3.事故物件
事故物件を仲介で売却する場合、売主から買主に対する「告知義務」があります。事故物件であることを伝えたうえで売買契約を進めなくてはならないため、買い手が見つかりにくい傾向にあります。
また、売却後・引き渡し後に買主側とのトラブルに発展する可能性も否定できません。以上の理由から、事故物件は買取での売却を選択する方が賢明です。
4-4.間取りが狭い・使いづらい
極端に部屋が狭い・部屋数が多いマンションは、仲介では売れにくいため、買取を利用するのがおすすめです。
独身層や子供のいない夫婦などには1LDKや2LDK、子供がいる家庭には3LDKなどが人気ですが、一方で部屋数が多い4LDKは需要があまり高くなく、売れにくい傾向にあります。
4-5.デザインが個性的
個性的なデザインの内装は、トレンドから外れていたり好みが分かれたりする分、リフォームを行わないと買い手が見つかりにくいという難点があります。たとえ売主側で最新のデザイン・人気のデザインにリフォームしたとしても、買取の場合と比較した際に、仲介で売却した方がかえって損をしてしまうケースも少なくありません。
こだわりの内装の物件はできるだけ高く売りたいと思うものですが、総合的には買取を利用した方が、手持ち資金を無駄に使わずに済みます。
5.マンション買取業者の選び方
世の中にはマンションの買取を行っている不動産会社が多数存在しますが、どの会社に依頼するかによって、買取価格に大きな差が生まれることも少なくありません。ここではマンション買取業者を選ぶ際に、着目したい4つのポイントについて詳しく解説します。
5-1.マンション買い取り実績
マンションを売却する際には、マンションの買取実績が豊富な不動産会社を選ぶことをおすすめします。
同じ不動産の買取と言っても、マンションのほかにも戸建てや土地などがあり、不動産会社によって得意分野が異なるという側面があります。マンションの買取を得意とする不動産会社は、マンションの買取・リフォーム・再販のためのノウハウを豊富に持っているため、ほかの不動産会社よりも高値で買い取ってくれる可能性が高いのです。
5-2.買取可能なエリア
マンションの適正な買取価格を提示するためには、取引されるマンションのある地域の不動産相場に精通している必要があります。そのため、不動産の買取を行っている会社は、全国展開をしない「地域密着型」のビジネスモデルを展開しているのが一般的です。
会社によっては、得意エリア以外の物件も買取の対象としていることもありますが、地域密着型の不動産会社と比較すると、高値で買い取ってもらえる可能性は低い傾向にあります。
そのため、マンションを高く売りたいと考えるのであれば、マンションがあるエリアを専門に扱っている不動産会社を選ぶことが重要です。
5-3.不動産会社の規模
マンションの買取を依頼する不動産会社は、できる限り規模が大きく資金力のある会社を選ぶことをおすすめします。
会社の規模に着目して選ぶ理由には、マンションの買取金額の高さだけでなく、信用の高さも挙げられます。先に解説したとおり、不動産買取会社のなかには、売主に対して代金を支払わないまま登記を行うなど詐欺を行う会社も一部存在します。規模が大きく、マンションの買取実績が豊富な不動産会社であれば、売主側が不必要なリスクを追わずに済むのです。
5-4.買取専門かどうか
ひとくちに「不動産会社」といっても、賃貸・売買の仲介を得意とする会社や、不動産の管理を得意とする会社、土地や建物の開発を得意とする会社などさまざまです。なかでも、買取を専門に行っている不動産会社は、「どのような物件にどのような形で手を加えれば高く売れるか」というバリューアップの手段や活用方法を熟知しています。
そのため、マンションを高額で買い取ってもらうためには、マンションの買取を専門にしている不動産会社を選ぶことをおすすめします。
6.マンション買取の流れ
不動産会社でマンションを買い取ってもらうためには、大きく分けて下記3つのステップを踏みます。
- 売却相談・査定
- 買取金額の交渉・契約
- 引き渡し
マンションの買取を初めて経験するという方でも、相談から売却完了までの大まかな流れを知っておくことで、スムーズに取引を進められます。
6-1.売却相談・査定
マンションの売却を検討し始めたら、まずはマンションの買取を行っている不動産会社に相談します。買取は仲介による売却活動と異なる点も多いだけでなく、不動産会社ごとに必要な費用や書類、売却完了までの期間などが少しずつ異なります。そのため、最初のうちはいくつかの不動産会社に買取相談をし、疑問点を解決しておきましょう。
相談の方法は、各不動産会社のホームページから、メールや電話で問い合わせるほか、近くに店舗がある不動産会社であれば、直接足を運んで相談することも可能です。
売却相談と合わせて、手放したいマンションの査定も依頼しましょう。査定の方法には、書類を使用して概算を出す「机上査定(簡易査定)」と、実際に物件を訪れて細かくマンションを評価する「訪問査定」があります。とりあえず概算のみ知りたい場合は机上査定を、本格的に売却に向けて動き出したい場合は訪問査定を受けるようにしましょう。
6-2.買取金額の交渉・契約
訪問査定の結果を受け取ったら、必要に応じて価格交渉を行います。不動産会社は、同じエリアでの類似物件の取引事例や、自社で過去に買い取った物件のデータなどをもとに査定を行いますが、万が一査定結果に納得のいかない部分や疑問点がある場合は、この時点で質問しておきましょう。
買取金額のほか、売却のスケジュールやその他の契約条件に納得がいけば、不動産会社と売買契約を締結します。売買契約締結時に、売主は買主から「手付金」を受け取ります。手付金の金額は、売買金額の10%程度が相場で、残金は物件の引き渡し時に支払われます。
逆に、条件に納得がいかなかった場合は、他の不動産会社に相談してみることをおすすめします。相談や査定は無料で行えるため、納得のいく条件を提示してくれる不動産会社を探すことが肝心です。
6-3.引き渡し
売買契約締結後、買主である不動産会社から売買代金の残りを全額受領したタイミングで、物件の引き渡しを行います。
引き渡し時に必要なのは、物件の登記手続きに必要な書類と物件の鍵です。必要書類や登記手続きに関する案内は、不動産会社から案内がありますが、書類や鍵の引き渡しは、売買代金全額の入金が確認できてから行うようにしましょう。
また、引っ越し業者や不用品回収業者の手配・着手についても、万が一売買代金が支払われず、契約が流れてしまうリスクを考えて、売買代金入金後に行うほうが安心です。
7.高値でマンション買取するコツ
不動産会社にマンションを直接買い取ってもらう場合、仲介での売却よりも買取価格が低く、また交渉が難しいという側面があります。しかし、いくつかのポイントを押さえたうえで売却活動をスタートさせると、希望の価格で買い取ってもらえる可能性が高まります。
本章では、買取によりマンションを売却する場合に、高値で買い取ってもらうための5つのポイントを解説します。
7-1.希望の売却額と時期をはっきり伝える
マンションの買取を行っている不動産会社のなかには、売主に十分な不動産の知識や相場観がないことを理由に、不当な価格で買い取ろうとする会社も存在します。
不動産会社に買取を依頼する場合は、事前にネットを活用したマンション査定を複数回行っておき、希望価格をはっきりと伝えておくことをおすすめします。
自分でマンションの査定を行う場合は、「おうちクラベル」をはじめとした、不動産一括査定サイトを活用しましょう。一度に複数の不動産会社に査定依頼を出せるだけでなく、取引データを活用したAI査定もあり、手軽に所有マンションの価格を知ることが可能です。
また、新居への引っ越しを予定している場合は、マンションの売却と新居取得を同時進行で行う必要があるため、スケジュール管理が重要になります。「いつまでに売りたい」という希望がある場合も、相談のタイミングで必ず伝えておきましょう。
7-2.利益還元制度
「利益還元制度」とは、不動産会社が買い取ったマンションを再販して利益が出た場合に、その利益を売主に対して還元する制度のことを言います。
不動産会社にマンションの買取を依頼すると、下取り価格での買取になるため、仲介による売却と比較して買取価格が安くなる傾向にあるというのは解説したとおりです。しかし、あまりに安い価格で買い取られてしまっては、売主は大きく損をすることになってしまいます。
「利益還元制度」を利用することで、売買当初に安く買い取られた場合でも、利益分が売主に還元されるため、買取価格に透明性を持たせることが可能になっています。
7-3.買取保証制度
不動産会社によるマンションの買取は、マンションをすぐに現金化できるというメリットがある一方で、仲介による売却相場よりも買取価格が安くなってしまいます。一方、仲介売却を選ぶと購入希望者が現れない限り売却が決まらず、マンションの状態や売却条件によっては、いつまでも売れ残ってしまうリスクがあります。
「買取保証制度」というサービスを活用すれば、最初のうちは市場相場で買い取ってくれる買主を探す「仲介」の期間とし、一定期間が経過しても売却が決まらなかった場合は、不動産会社に買い取ってもらうことが可能です。
7-4.部屋を掃除して不用品は処分しておく
不動産会社による査定を受ける際、可能な限り室内を掃除し、不用品は処分しておくことをおすすめします。
不動産会社によるマンション査定前に室内をきれいにしておくと、広くてメンテナンスが行き届いている物件に見せることが可能になり、訪問査定時の査定額がアップする可能性があるのです。
マンションの買取においては、掃除されていない・不用品が残っている状態でも売却可能で、不動産会社によっては不用品処分まで請け負ってくれる場合もあります。しかし、最終的に手元に残る資金を少しでも増やすためには、こうした査定額アップの工夫も重要だと言えます。
7-5.リフォーム歴・修繕履歴を伝える
売却するマンションにリフォーム歴や修繕歴がある場合は、売却相談や査定の際に不動産会社に伝えておきましょう。
過去にリフォームをしているマンションであれば、リフォーム箇所が評価の対象となり、内容次第では査定額がアップする可能性もあります。
物件の状態を詳細に伝えることで、査定額も正確に算出してもらうことが可能になるため、リフォームや修繕履歴は漏れのないよう、事前にまとめておくことをおすすめします。
8.注意点を理解してスムーズにマンション売却をしよう
買取によるマンションの売却は、不要になったマンションをすぐに現金化できる点や、売主に課される責任の免除など、仲介とは異なるメリットがあります。一方で買取価格が安くなる点や、不動産のプロ相手に交渉をしなくてはならないなど、注意点を理解して取引を行わないと大きく損をするリスクがあるのも事実です。
特に買取価格については、査定や売却を依頼する前に売主自身で相場観を把握しておくことが重要です。
所有するマンションが、現在の相場でいくらくらいで売却できそうかを知るためには、一度に複数の不動産会社に査定依頼を送れる「不動産一括査定サービス」が便利です。不動産会社による査定だけでなく、周辺の取引データを活用したAI査定も可能なため、マンションの売却を検討し始めたら、積極的に活用することをおすすめします。