仲介手数料とは、不動産売買契約が成立した際、不動産会社に支払う手数料です。不動産の売却活動でよく聞く言葉ですが、上限や安く抑える方法があることはご存知でしょうか。今回は、不動産売買時にかかる仲介手数料の仕組みや計算方法、安く抑える方法などを解説します。
1.不動産売買時にかかる仲介手数料とは?
不動産売買時にかかる仲介手数料とは、一戸建てやマンション売却の際、仲介を依頼した不動産会社へ支払う手数料です。
不動産売買契約は個人間でも締結でき、その場合は仲介手数料がかかりません。ただし、不動産売買は、取引額が高額なうえに、権利関係や売買契約成立までの手続きが複雑で、一般的な商品の売買契約よりもトラブルが生じやすくなります。
そのため、不動産を売却する際は不動産会社に仲介を依頼するケースが一般的です。
1-1.仲介手数料は何に対しての手数料?
仲介手数料は、不動産を売却するまでにかかった手間や情報提供をしてもらったことに対して支払う手数料です。
不動産売買取引は高額かつ買主を売却活動によって探す性質を持つため、契約を成立させるためには専門知識やノウハウが必要になります。
売却活動で発生する主な業務は以下の通りです。
- 広告を作成して各媒体へ掲載する
- ダイレクトメールの送信、チラシのポスティング
- 金融機関、税理士など各専門家と連携する
- 購入検討希望者の内覧対応
- 契約手続きの書類作成
このように、不動産の売却には大きな手間がかかります。
さらに、所有権という権利に関する手続き、税金に関する知識、宅地建物取引業法を遵守した手続きなど専門知識も必要です。
仲介手数料は、このような一連のサポートに対する報酬の意味合いを持っています。
1-2.仲介手数料はいつ発生する?支払うタイミングは?
仲介手数料は、不動産売買契約成立時に発生し、契約締結時と引き渡し時に50%ずつ支払うケースが一般的です。
50%ずつ支払う理由には、不動産売買取引の特徴が関係しています。不動産売買契約を締結してから引き渡しまでの一般的な流れは、以下の通りです。
上記のように不動産売買取引は、契約締結から引き渡しまでに期間が空くことがほとんどです。不動産売買の契約締結時に100%の仲介手数料を支払うことも可能ですが、買主のローン審査次第では契約が白紙になる場合もあります。
このような不動産売買取引の特徴から、仲介手数料を契約締結時と引き渡し・決済時に50%ずつ支払うケースが一般的です。
2.仲介手数料の計算方法・仕組みとは?
仲介手数料の請求金額は不動産会社によって異なりますが、宅地建物取引業法では上限が定められています。計算方法や仕組みを理解しておくと、上限以上の支払いを防ぐことができるので、確認しておきましょう。
仲介手数料の上限と具体的な計算方法は、以下の通りです。
仲介手数料の上限=売買代金×3%+6万円(別途消費税)
例えば、売買代金が3,000万円の場合、仲介手数料の上限は96万円(別途消費税)になります。
計算式:仲介手数料96万円=売買代金3,000万円×3%+6万円
2-1.仲介手数料の仕組み
先ほど解説した仲介手数料の計算方法は、簡易化されたものになります。厳密にいうと、仲介手数料は売買代金の金額によって、以下のように定められています。
売買代金 | 報酬額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 売買代金×5%以内 |
200万円超え400万円以下の部分 | 売買代金×4%以内 |
400万円超えの部分 | 売買代金×3%以内 |
※別途消費税がかかります。
例えば、売買代金3,000万円の場合の計算方法は以下の通りです。
①200万円までの部分
10万円=200万円×5%
②200万円超え400万円以下までの部分
8万円=200万円×4%
③400万円超えの部分
78万円=2,600万円×3%
④1~3を合計する
96万円(別途消費税)=10万円+8万円+78万円
上記の方法で計算した場合でも、仲介手数料の合計が96万円(別途消費税)となり、簡易化された計算式で計算した場合と同じです。
不動産の売買代金は400万円以上のケースが一般的なので、基本的には簡易化された計算式を覚えていれば問題ありません。ただし、不動産会社が上記の方法で提示する場合もあるため、仕組みを覚えておいて損はないでしょう。
3.仲介手数料を安く抑える方法
仲介手数料には上限があっても、下限はありません。そのため、値引き交渉やキャンペーンなどを利用して安く抑えることも可能です。
3-1.値引き交渉する
仲介手数料は、不動産を売却する際の費用のなかでも大きな割合を占めるため、値引き交渉することで売却にかかる費用の負担を抑えられる可能性があります。
媒介契約を締結する際の契約書には、仲介手数料の金額を記載するケースが一般的です。値引き交渉する場合は、不動産会社と契約を締結する前がよいタイミングといえるでしょう。
ただし、売却活動に影響を及ぼすリスクがあるため、無理な値引き交渉はおすすめできません。こちらに関する詳細は、次の章で解説するので気になる人はぜひご一読ください。
3-2.値引きまたは無料の不動産会社を探す
不動産会社のなかには、仲介手数料のキャンペーンを行っているところもあります。そのような不動産会社に依頼することも選択肢のひとつです。
不動産会社に仲介を依頼する際は、複数の不動産会社を比較して、受けられるサービスや仲介手数料の金額を比較してみてください。
4.仲介手数料の値引きは売却活動に影響する?
先ほど、仲介手数料の無理な値引き交渉はおすすめできないと解説しましたが、もう少し詳しく解説しましょう。
仲介手数料は、不動産会社にとって重要な利益ですが、成功報酬の意味合いを持つため、契約が成立しなければ請求できません。それにも関わらず、不動産取引は契約を成立させることが難しく、手間も時間もかかります。
仲介手数料を値引きまたは無料にしてもらうことは、不動産会社の利益が減ることを意味し、営業担当の士気が下がって、積極的な売却活動をしてもらえなくなることが考えられます。
不動産を売却するためには、不動産会社の協力は欠かせません。したがって、気持ちよく、積極的に協力してもらえるように、過度な値引きを依頼することは避けましょう。
4-1.仲介手数料が安い=優良な不動産会社?
売主にとって、仲介手数料が無料の不動産会社は優良企業で、上限で請求する不動産会社は優良企業ではないのでしょうか。
実は必ずしもそうとは限りません。
売主からすると、仲介手数料が安いほうが嬉しいことは間違いありません。しかし、早く、高く売るためには、仲介手数料の金額だけではなく、手数料に見合ったサービスを受けられるかが大切です。
仲介手数料が無料でも、サービスが最低限の不動産会社と、仲介手数料が上限いっぱいでも充実したサービスを受けられる不動産会社の場合、後者のほうが納得のいく売却活動ができる可能性があります。
不動産は短期間で売却できると、高く売れる可能性も上がります。短期間で相場以上の価格で売却できるように、積極的に活動してくれる不動産会社が優良企業といえるでしょう。
4-2.優良な不動産会社に出会うためには?
優良な不動産会社に出会うためには、複数の不動産会社を比較して、対応・サービス・査定価格を総合的に判断する方法がおすすめです。
そうはいっても、なかなか時間がとれないこともあるでしょう。
そんなときは不動産一括査定を利用すると、時間も手間も削減できます。不動産一括査定は簡単に無料で利用できるので、検討してみてください。
5.不動産売買で仲介手数料以外にかかる費用
不動産会社が売却活動をすることで発生した費用は、仲介手数料に含まれます。そのため、仲介手数料の上限を支払ったうえで、事務手数料や広告費など別の名目で請求することは法律違反です。
ただし、住宅ローンを一括返済する際の住宅ローン事務手数料といった、金融機関に支払う手数料など、不動産売買では仲介手数料以外にも諸費用が発生します。見積もりを提示されたときに混乱しないように、不動産売買ではどのような費用がかかるのか確認しておきましょう。
不動産売買で仲介手数料以外にかかる費用は以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
印紙税 | 不動産売買契約書に貼付する収入印紙代。 目安:2~6万円 |
譲渡所得税 | 不動産を売却して利益が出た場合、利益に対してかかる税金。 目安:売買代金、不動産の所有期間などによって異なります。 |
住宅ローン事務手数料 | 住宅ローンを一括返済する際、金融機関に支払う手数料。 目安:1~5万円 |
抵当権抹消登記費用 | 抵当権抹消登記にかかる登録免許税・司法書士報酬。 目安:登録免許税1,000~2,000円、司法書士報酬 数万円 |
上記のほかに、必要に応じて引っ越し費用や建物の解体費用などがかかります。
5-1.印紙税
印税は不動産売買契約書に貼付する収入印紙代です。不動産売買取引では売主と買主が1部ずつ作成し、それぞれが負担するケースが一般的です。
印紙税の税額は、売買契約書に記載された金額によって異なります。
■不動産売買契約書にかかる印紙税額
本則 | 軽減措置※ | |
---|---|---|
1,000万円超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
※令和4年3月31日まで軽減措置が設けられています。
参考:国税庁「契約書や領収書と印紙税」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/pdf/1504.pdf
不動産売買契約は取引金額が高額になるため、印紙税の負担も大きくなる場合があります。税額の負担がいくらになるのか確認しておき、予算に組み入れておきましょう。
5-2.譲渡所得税
不動産を売却して得た利益を譲渡所得、譲渡所得にかかる税金を譲渡所得税といいます。譲渡所得税という名称ですが、税金の内訳は所得税と住民税です。
譲渡所得税を計算する際は、以下のように最初に譲渡所得を計算し、譲渡所得に税率をかけて計算します。
譲渡所得=売買代金-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得税=譲渡所得×税率
取得費:土地や建物の購入代金、購入にかかった費用
譲渡費用:土地や建物を売るためにかかった費用
また、譲渡所得税の税率は、不動産を所有していた期間によって異なる仕組みになっています。
所有期間 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
5年超え | 15% | 5% |
5年以下 | 30% | 9% |
(※令和19年までは別途2.1%の復興特別所得税がかかります。)
例えば、所有期間10年の不動産を売却し、1,000万円の譲渡所得を得た場合の譲渡所得税は200万円です(復興特別所得税は考慮しないものとします)。
計算式:譲渡所得税200万円=譲渡所得1,000万円×税率20%(15%+5%)
譲渡所得税は税額の負担が大きくなりやすいため、事前にどれくらいかかるのか計算しておくと資金計画を立てやすくなります。
また、譲渡所得税は、確定申告することで納める税金です。売却した年の翌年2月16日~3月15日までに忘れずに申告しましょう。
所有期間の考え方
譲渡所得税の税率を左右する不動産の所有期間は、実際に所有していた期間ではなく、売却した年の1月1日を基準に、5年を超えているかどうかで考えます。所有期間が実際に5年を超えていても、1月1日基準で5年以下となる場合があるため注意が必要です。
5-3.住宅ローン事務手数料
住宅ローン事務手数料は、住宅ローンの残債を一括返済した場合にかかる手数料です。住宅ローン事務手数料は、金融機関や金利タイプによって料金が異なります。
例えば、変動金利の相場は1~2万円、固定金利の相場は3~5万円です。
ただし、残債によって条件が異なるなど、金融機関よってさまざまなので融資を受けている金融機関へ確認しましょう。
5-4.抵当権抹消登記費用
土地や建物を担保に住宅ローンを組んだ場合、不動産に抵当権が設定されています。抵当権とは、契約者の返済が滞った場合、金融機関が競売にかけられる権利で、ローンを完済することで抹消できます。
一般的には、抵当権を抹消した状態で買主に引き渡すので、引き渡し前に抵当権抹消登記の手続きを行います。
抵当権抹消登記費用の内訳は、抵当権抹消登記にかかる登録免許税と司法書士に手続きを依頼する際の司法書士報酬です。
登録免許税は、不動産1個につき1,000円。例えば土地と建物を売却する場合は、2,000円かかります。
司法書士報酬の相場は1~2万円程度ですが、依頼する司法書士によって異なります。
また、登記手続きは、司法書士へ依頼せずに自分で行うことも可能です。ただし、不動産を売却する際、正しく手続きを行っていないと後にトラブルとなる場合があるため、専門家である司法書士へ依頼することをおすすめします。
6.まとめ:不動産売買にかかる費用と相場を事前に確認してスムーズな売却を
仲介手数料とは、不動産会社へ支払う成功報酬です。宅地建物取引業法では上限が定められているので、上限以上に支払うことがないように気をつけましょう。
また、仲介手数料をはじめ、不動産売買にかかる費用と相場を事前に確認しておくと、資金計画が立てやすくなります。今回解説した内容を頭に入れながら、不動産売却に役立ててください。
Q.仲介手数料はいつ発生しますか?教えてください!
A.仲介手数料は不動産売買契約成立時に発生し、契約締結時と引き渡し時に50%ずつ支払うケースが一般的です。
Q.仲介手数料はいくらかかりますか?気になります!
A.不動産会社によって仲介手数料は異なりますが、宅地建物取引業法で上限が定められています。仲介手数料の上限は、売買代金×3%+6万円(別途消費税)で計算することができます。
Q. 不動産売却時には仲介手数料以外にどんな費用が発生しますか?気になります!
A.「印紙税」「譲渡所得税」「住宅ローン事務手数料」「抵当権抹消登記費用」が発生します。また、必要に応じて引っ越し費用や建物の解体費用が発生します。