不動産売却後の固定資産税は、売主と買主のどちらが負担するのか気になりますよね。
この記事では、固定資産税の概要や固定資産税を売主と買主の両者で負担する際の計算方法、注意点などについて紹介します。また、マンション売却時に気をつけるべきポイントも押さえて、売却に失敗するリスクを抑えましょう。
1.不動産の固定資産税とは
固定資産税とは、固定資産を所有している者に対して課税される税金で、毎年1月1日時点で不動産(土地や建物)を所有し、市区町村の固定資産課税台帳に登録されている者に納税義務が生じます。
また、固定資産税は、市区町村が評価した固定資産の評価額を元に算定された税額を、その固定資産の所在する市区町村が課税する地方税です。固定資産税の納税義務者には、毎年4月~6月頃に市区町村から納税通知書が送られてきます。納税方法は、年4回の分割払いまたは一括払いで納めます。
固定資産税の支払いは、市区町村の窓口支払いや口座振替、コンビニ払いが一般的です。市区町村によっては、決済アプリやクレジットカードでの支払いが可能なケースもあるので、前もって行政のホームページで支払い方法を確認しておくとよいでしょう。
参考:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)』/東京都主税局:
1-1.不動産の固定資産税の決定方法
固定資産税は「固定資産税=固定資産税評価額×標準税率(1.4%)」で決定されます。
固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する際に基準となる、不動産の評価額のことです。固定資産税評価額は「固定資産評価基準」に基づいて、市区町村が一つ一つの不動産を評価し算出されます。固定資産税評価額は、税務署から毎年届く納税通知書の課税明細書に記載されているので、書類が届いたらチェックしてみましょう。
固定資産税評価額は、一度決まればその先もずっと同じ価額ではありません。3年ごと評価が見直されるため、それに連動して納税額も変動します。
固定資産税の計算式で評価額に乗ずる税率は、基本的に標準税率の1.4%を採用している市区町村が多いのですが、異なる税率で計算する市町村もあるため注意しましょう。
参考:『固定資産税・都市計画税(土地・家屋)』/東京都主税局
1-2.不動産の固定資産税の計算方法
不動産の固定資産税額は、固定資産税評価額を元に算出されます。固定資産評価額は、新築の家屋を市区町村の固定資産評価員が調査をして決定されます。
固定資産税評価額は、3年に1度評価の見直しが行われますが、初めにいくらで決定されるのかで、そのあとの支払い額に大きな影響を与えます。
マンションや戸建て住宅だと、建物自体の価値の減少が考慮されるため、固定資産税評価額は年を経るごとに低くなります。
一方、土地は時価の変動の影響を受けて評価額も増減しますので、それに合わせて税額も増減します。
なお、このほかに家屋は新築やバリアフリー住宅などの軽減、土地は住宅用地の軽減などの減額措置の適用の有無によっても税額が増減しますので注意しましょう。
参考:『固定資産税・都市計画税(土地・家屋)』/東京都主税局
2.不動産売却後の固定資産税の支払いは買主と売主のどちら?
不動産の固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人にその年1年分の納税義務が生じる税金です。つまり、その年の途中で所有権が買主に移転しても買主に固定資産税の納税義務が発生するのは、名義変更された翌年からになります。
そうなると、年の途中で不動産を売却した後も売主が不動産を所有していない期間について固定資産税を納めることになり、不公平感が生じてしまうのではと懸念される方もいらっしゃるでしょう。
こうした揉め事を回避するための方法として一般的に行われているのが、売買を行った年の固定資産税相当額を売主と買主が所有している日数に応じて日割りで負担するという取引です。それでは、不動産売却後の固定資産税相当額の具体的な精算方法について、詳しく見ていきましょう。
2-1.不動産売却日によって負担する人が異なる
不動産の売買契約を行う際には、一般的に、その年の固定資産税に相当する金額を、売主と買主それぞれの所有期間に応じて日割りで負担するための精算が行われます。
つまり、売却日までの期間の固定資産税は売主負担、売却日以降は買主負担になるのです。これにより、不動産を所有している期間の固定資産税をそれぞれが実質的に負担することになるため、売主が売却後の期間の税金を負担する不公平感が解消されることになります。
ただし、固定資産税の負担を両者の間で分けたとしても、納税義務者は1月1日時点の不動産の所有者である売主であるため、不動産の売買契約時に、買主が固定資産税相当額の日割り分を売主に支払っておき、納税自体は売主が行います。
不動産を所有している期間で固定資産税を分割する方法は、地方税法上で規定されているものではありません。こうした精算方法は、あくまで当事者間の合意によって行われる当事者間の取引であると覚えておきましょう。
2-2.起算日には決まりがない
固定資産税の売主と買主の負担割合は、起算日によって大きく変わります。起算日とは、固定資産税額を日割り計算する際に、起点となる日のことです。
つまり、1月1日が起算日であれば、不動産の売主は1月1日から不動産を売却した日までの固定資産税を支払い、買主は取得日から12月31日までの固定資産税を支払います。
固定資産税の日割り計算における起算日は、一般的に「1月1日」「4月1日」のどちらかに設定するパターンが多いです。最近では「1月1日」を起算日とするケースが増えているようですが、起算日が指定されたルールがあるわけではありませんので両者の合意があればいつに設定しても問題はありません。
不動産業界では、固定資産税の起算日は、関東では1月1日、関西では4月1日に設定するケースが多いことが知られています。 固定資産税の日割り計算の起算日設定には明確な法律がなく、不動産売買契約書に記載されていないケースが多いので、契約時には忘れずにチェックしましょう。
参考:『固定資産税・都市計画税(土地・家屋)』/東京都主税局
2-3.不動産売却後の固定資産税の日割り計算方法
不動産売却後の固定資産税の日割り計算方法を、起算日が「1月1日」と「4月1日」の2パターンに分けてご紹介します。
シミュレーション事例
売主側
起算日 | 固定資産税(売主) | 都市計画税 | 合計 |
---|---|---|---|
1月1日 | 99,178円 (20万円×181日/365日) | 24,794円 (5万円×181日/365日) | 123,972円 |
4月1日 | 49,863円 (20万円×91日/365日) | 12,465円 (5万円×91日/365日) | 62,328円 |
買主側
起算日 | 固定資産税(売主) | 都市計画税 | 合計 |
---|---|---|---|
1月1日 | 100,822円 (20万円×184日/365日) | 25,206円 (5万円×184日/365日) | 126,028円 |
4月1日 | 150,137円 (20万円×274日/365日) | 37,535円 (5万円×274日/365日) | 187,672円 |
※1年を365日として計算しています。
3.不動産売却後の固定資産税精算の注意点
不動産の固定資産税は、その年の1月1日時点の不動産の所有者に納税義務が生じます。しかし、不動産売却時に固定資産税を売主と買主で平等に負担するために、日割り計算をして精算するケースがあります。
ここまで、不動産の取引時に売主と買主で固定資産税の精算を行うことをお話ししました。
その年の固定資産税の納税義務者は売主であるために、当事者間で固定資産税相当額の精算を行ったとしても、受け取った精算金は税金ではなく売買代金の上乗せ(利益)として受け取ることになります。そのため、固定資産税の精算を行う際には、以下の2点に注意しましょう。
- 固定資産税精算金は売買代金の一部とみなされる
- 固定資産税精算金には消費税の納税が必要となる場合がある
それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
3-1.精算金は売買代金の一部とみなされる
不動産売却時に、売主と買主それぞれが負担する固定資産税を日割り計算した際、売主が買主から受け取った精算金は、税金ではなく、売買代金の一部として売買金額に加算されます。
本来その年の1月1日時点に不動産を所有していた売主が負担すべき納税額の一部を、不動産の売買金額とは別に受け取るという認識であっても、これは「税金」として受け取るのではなく、あくまでも「売買代金の一部(上乗せ)」とみなされてしまうのです。
つまり所得税と住民税の計算を行う際に用いられる譲渡所得に、固定資産税の「精算金」として受け取った金額が加算されることになります。
不動産売却時に買主から受け取る固定資産税の精算金は、固定資産税の預かり金ではなく、売買代金の一部であることを押さえておきましょう。
3-2.精算金には消費税が課税される
先に述べたように、不動産売却時に買主から受け取る固定資産精算金は、税金ではなく、売買代金の一部とみなされます。つまり、買主から受け取る固定資産税の精算金は、消費税の課税対象となるのです。
また、個人間で非事業用の不動産を売買する際には消費税はかかりませんが、不動産業者から不動産の購入をする場合は、消費税の支払いを求められます。
また、売主が消費税の納税義務者である場合で事業として不動産を売却した場合には、消費税の課税対象となります。ただし、土地の売買は消費税の非課税取引なので消費税は発生しません。
したがって、土地と建物の両方を売却した際には、固定資産税精算金のうち建物部分のみが消費税の課税取引となります。
固定資産税精算金の受け払いは、あくまでも売主と買主、両者の合意による売買代金の上乗せとみなされるため、消費税の課税対象となることを頭に入れておきましょう。
4.マンション売却後の固定資産税負担はどちら?
ここまで、土地や家屋に関する固定資産税について解説してきました。続いてマンションを売却する場合の固定資産税の負担について見ていきます。
マンション売却の場合も、土地や家屋の売買同様、1月1日時点のマンション所有者が固定資産税の支払い義務を負います。本来であれば、マンションの買主には固定資産税の負担義務はありません。
ただし、買主と合意することができれば、売却日以降の固定資産税相当額を日割り計算し、売買金額に上乗せして精算金として受け取ることも可能です。
4-1.書面で記載しておく
固定資産税の負担割合をどのようにするかは、売買契約する前に話し合っておきましょう。売買契約書には、固定資産税精算金の負担についての記載がされていない場合があります。そもそも固定資産税の納税義務があるのは、その年の1月1日にマンションを所有していた売主です。
そのため、契約書に固定資産税精算金の負担についての記載がないと、売買契約後に買主に対して固定資産税相当額の負担を求めることは難しいでしょう。
そのため、固定資産税相当額をどちらがどのような割合で負担するのかについては、売買契約書に明確に記載しておくことが重要です。
マンション売却は大きなお金が動くことから、トラブルが尽きません。言った言わないといった解決が困難なトラブルを未然に防ぐためにも、固定資産税の精算金の取り決めに限らず、契約内容は口約束ではなく、書面に残しておくよう心がけましょう。
5.固定資産税の精算後は確定申告を行おう
不動産売却時に固定資産税を日割り計算し、一部を買主に負担をしてもらった場合は、売却金額に受け取った精算金額を上乗せした金額を合わせて「収入金額」として、確定申告を行います。
確定申告の際には、収入金額から取得費および譲渡費用を差し引いた譲渡所得がプラスの場合には、所得税と住民税がかかります。ただし、譲渡所得がマイナスの場合には、原則として確定申告の必要はありません。
不動産を売却する際は、固定資産税をはじめ、さまざまな税金を支払う必要があったり、複雑な手続きや申告が必要であったりします。
さらに、個人間の売買では、トラブルが発生した際には当事者間でそれらを解決しなければなりません。
トラブルを回避し、スムーズに売買を進めるためにも、不動産を売買する際は、不動産業者等の専門家に依頼すると安心でしょう。
6.不動産売却後の固定資産税は起算日に注意
本記事では、不動産売却時にかかる固定資産税は、買主と売主どちらが負担するのかについて紹介しました。
不動産売却後に支払う固定資産税を買主にも負担してもらう場合は、売買契約時に買主と交渉し、精算金を受け取る必要があります。精算金の金額は、計算の起点となる「起算日」をいつにするかで大きく変動するため、起算日をいつにするのかも事前に話し合っておきましょう。
Q.固定資産税について教えてください!
A.固定資産税とは、毎年1月1日時点でその固定資産(土地・家屋・償却資産)を所有している人に対して課税される税金のことです。固定資産の所有者は、固定資産評価額をもとに計算された固定資産税を、資産の所在する市町村に納めます。
Q.不動産を売却した年の固定資産税は、売主と買主どちらが負担するのですか?
A.固定資産税は、売却した年の1月1日時点で不動産を所有している人(主に売主)が一年分の納税義務を負います。
年の途中で売買が行われた場合は、売主と買主の合意のもと、売却した年の年間の固定資産税をそれぞれの所有期間に応じて日割り計算し、買主が所有していた期間分の税額相当額を売主へ売買代金の一部として支払う場合もあります。