【2022年度版】住宅借入金等特別控除とは?仕組みや控除期間、計算方法について解説

住宅借入金等特別控除とは、住宅ローンで家を購入したりリフォームをしたりした人が利用できる控除の制度です。今回は住宅借入金等特別控除の基本的な仕組みや効果、申請に必要な手続きなどをまとめて解説します。

住宅借入金等特別控除とは?

住宅借入金等特別控除とは、住宅ローン等を利用して住宅を新築・購入・リフォームした場合に利用できる制度であり、「住宅ローン控除」あるいは「住宅ローン減税」とも呼ばれています。具体的には、住宅購入後の一定期間にわたって、毎年の年末時点における住宅ローン残高を基に計算された金額が所得税から税額控除される仕組みです。

なお、控除期間についてはさまざまな特例によって変動することもありますが、原則は10年間です。ただ、2022年度の税制改正により、2022年4月からは新築住宅と事業者が売主の中古住宅の場合、控除期間が13年まで延長されることとなっています。

控除を受けるための必要条件

住宅借入金等特別控除を利用するためには、住宅ローンを利用することが前提ですが、それ以外にもいくつか満たさなければならない要件があります。

  • 取得や増改築をした日から6ヶ月以内に住むこと
  • 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 床面積が50平米以上であること(※)
  • 床面積の2分の1以上が居住用であること
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
  • 配偶者や特定の親族、特殊な関係のある法人からの取得でないこと
  • 前年、前々年に居住用財産を譲渡した場合の特例を利用していないこと
  • 中古住宅の場合は、新耐震基準に適合していること(1982年以降に建築されていること)

※特例措置が適用される場合は、40平米以上50平米未満かつ合計所得金額が1,000万円以下であること

要件の数は多いものの、一般的な住宅の購入・新築であれば、自然に該当しているケースも少なくありません。たとえば、「床面積の2分の1以上が居住用」という条件は、主に店舗併用住宅などを建てた方に関係のある項目です。

また、住宅ローンの借入期間は10年を超えるのが一般的であり、取得ルートに関する条件も特殊なケースを除けば多くの方が自然にクリアします。なお、合計所得に関する条件は長らく3,000万円の状態が続いていましたが、2022年4月からは2,000万円以下に引き下げられるため注意しておきましょう。

住宅借入金等特別控除の手続き方法

住宅借入金等特別控除を利用するためには、確定申告を行う必要があります。入居した翌年の確定申告の時期に、通常の確定申告書に加えて「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を用意して、所定の方式で提出すると適用されるようになります。

なお、給与所得者の場合であっても初年度は確定申告が必要となりますが、次年度からは通常の年末調整のみで適用されるため安心です。また、住宅借入金等特別控除は「還付申告」にあたるため、入居の翌年から5年間はいつでも申告することができます。

住宅借入金等特別控除の控除額

住宅借入金等特別控除の具体的な金額は、「毎年の年末時点における住宅ローン借入残高の0.7%」で計算します。金額の計算方法についても、長らく「残高の1%」とされてきましたが、2022年4月以降は大きく引き下げられている点に注意が必要です。

そのうえで、住宅借入金等特別控除には借入限度額が決まっており、旧制度と2022年4月からの新制度では大きな違いがあります。変更内容はとても複雑なため、表で確認しておきましょう。

 旧制度2022年4月以降の新制度
2023年末までの入居2025年末までの入居
新築一般住宅4,000万円3,000万円0円(※)
長期優良住宅・低炭素住宅5,000万円5,000万円4,500万円
ZEH水準省エネ住宅4,000万円4,500万円3,500万円
省エネ基準適合住宅4,000万円4,000万円3,000万円
中古一般住宅2,000万円2,000万円2,000万円
長期優良住宅・低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
2,000万円3,000万円3,000万円

※2023年までに新築の建築確認を済ませていれば2,000万円

たとえば、2022年4月以降に一般の新築住宅を購入して、2023年の末までに入居をすると、1年間の最大控除額は「3,000万円×0.7%=21万円」となります。そのうえで、もう1つ注意しておく必要があるのが、「その年に納めた所得税+住民税」の金額です。

住宅借入金等特別控除は、納めた所得税や住民税から差し引かれる「税額控除」にあたるため、仮に最大控除額が所得税・住民税を上回っていたとしても、その分については適用されません。所得税や住民税は、年収や適用される所得控除(配偶者控除など)によって異なるため、自分がどれくらい控除されるのか確認しておくことが大切です。

所得税の場合

住宅ローン控除の適用を受ける場合、新築住宅と中古住宅とでは最大控除額が異なるため注意が必要です。それぞれの最大控除額について一般住宅の場合でまとめると、以下のとおりです。

 借入限度額控除率最大控除額
新築住宅3,000万円0.7%21万円
中古住宅2,000万円0.7%14万円

所得税の最大控除額は物件の種別によって異なるため、どれくらい税負担が軽減されるのかを把握しておくことが重要です。

住民税の場合

住民税も所得税と同様に、新築住宅と中古住宅の場合で違いがあります。それぞれの違いについてまとめると、以下のとおりです。

 控除限度額
新築住宅所得税の課税所得×7%(最高13.65万円)
中古住宅所得税の課税所得×5%(最高9.75万円)

所得税の住宅ローン控除可能額のうち、所得税から控除しきれなかった分は翌年度の住民税から控除します。

住宅借入金等特別控除の必要書類

住宅借入金等特別控除が適用されるには、確定申告を行う必要があります。主に必要となる書類としては、次のものが挙げられます。

書類の種類ポイント
確定申告書税務署やWebサイトから入手可能。電子申告にも対応している
住宅借入金等特別控除額の計算明細書税務署やWebサイトから入手可能。電子申告にも対応している
住宅取得資金にかかる借入金の年末残高等証明書金融機関から送られてくる書類
家屋の登記事項証明書、請負契約書の写し、売買契約書等の写し登記事項証明書は法務局で入手可能。そのほかは物件の購入時に入手

また、上記の書類のほかにもさまざまなシチュエーションごとに追加で必要となる書類もあります。どのような書類が必要となるかを詳しくみていきましょう。

追加書類①土地分の住宅ローンがある場合

住宅ローンに土地が含まれている場合には、土地の登記事項証明書か売買契約書の写しのどちらかが必要になります。登記事項証明書は法務局で入手が可能であり、売買契約書は物件を購入した際に受け取っているはずです。

マンションや建売住宅、中古住宅の場合は売買契約書に土地分も記載されているため、建物分と一緒のもので構いません。

追加書類②認定住宅の場合

長期優良住宅や低炭素住宅の場合、控除限度額が大きくなるため必要な書類も多くなります。追加書類として必要なものは、次のものです。

  • 長期優良住宅建築等計画、低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写し
  • 住宅家屋証明書もしくはその写し、認定長期優良住宅建築証明書、認定低炭素住宅建築証明書

上記の書類は、工事を行った施工会社や売主から入手できます。

追加書類➂2年目以降の手続きの場合

給与所得者の場合、2年目以降の手続きは勤務先の年末調整で行うことになります。1年目の確定申告が終わってから、住宅借入金等特別控除に必要な書類が税務署から送られてくるため、金融機関から送付されてくる年末残高等証明書とあわせて勤務先に提出しましょう。

必要書類としては、以下のものが挙げられます。

  • 住宅借入金等特別控除証明書
  • 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
  • 住宅取得資金にかかる借入金の年末残高証明書

住宅借入金等特別控除ってホントにお得?

住宅借入金等特別控除は、住宅ローン契約者の年収や借入額によって控除額が異なります。そのため、基本的な特徴を押さえたうえで賢く活用することが大事です。

どのような点に気をつけておくべきかを解説します。

新築住宅の場合は控除期間が13年間に

住宅借入金等特別控除は、消費税が10%に引き上げられた2019(令和元)年10月に、控除期間が13年間に延長されました。13年間の特別控除を受けられるのは、新築住宅や事業者が売主の中古住宅で、個人売主の中古住宅は適用の対象外となっています。

所得額や住宅ローンの条件、入居期限や住宅の条件などを満たす方に適用されるのが特徴です。利用できる方の要件としては、次のとおりです。

  • 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下
  • 住宅ローンの借入期間が10年以上
  • 住宅を取得した日から6ヶ月以内に入居すること
  • 原則として2023年12月31日までに入居すること など

また、適用の対象となる住宅の要件については以下のとおりとなります。

  • 自分が居住するための住宅であること
  • 床面積(登記簿面積)50平米以上(特例措置を活用し、合計所得金額1,000万円以下の人が新築住宅などを取得する場合は40平米以上50平米未満)
  • 店舗併用住宅の場合は床面積の2分の1以上が居住用であること
  • 中古住宅の場合はさらに以下のいずれかを満たすもの

1.木造は築20年以内、マンション等は築25年以内
2.一定の耐震基準を満たすこと
3.既存住宅売買瑕疵保険に加入していること

  • リフォームの場合は工事費が100万円以上 など

適用される要件が細かく定められているため、実際に自分のケースで当てはまるのかは税理士に相談をしてみましょう。

住宅借入金等特別控除の早見表

住宅借入金等特別控除における控除額は、年収や家族構成、借入額などからおおよその目安を知ることができます。建物価格3,000万円、固定金利1.5%、返済期間35年として年収別に住宅ローン控除額をシミュレーションすると、以下のとおりです。

借入額年収600万円
共働き・単身世帯
年収600万円
専業主婦・主夫のいる世帯
年収800万円
共働き・単身世帯
年収800万円
専業主婦・主夫のいる世帯
3,000万円327.4万円327.4万円327.4万円327.4万円
3,500万円371.2万円356.3万円372万円372万円
4,000万円395.2万円362.3万円416.5万円416.5万円
4,500万円400.3万円362.3万円447.4万円447.4万円
5,000万円400.3万円362.3万円459.2万円459.2万円
5,500万円以上400.3万円362.3万円460万円460万円

上記の控除額を踏まえたうえで、住宅ローンの借入額を検討してみると良いでしょう。

住宅借入金等特別控除の控除期間と計算方法

住宅借入金等特別控除は、新築住宅のケースと中古住宅のケースで、控除期間や計算方法が異なります。それぞれの特徴について紹介します。

認定住宅の新築住宅の場合

住宅借入金等特別控除の控除額は、住宅ローンの年末残高の合計額よりも少ないときは、取得費などの費用が控除額となります。国税庁のサイトに控除期間と控除額の計算方法が記載されているため参考にしてみてください。

居住の用に供した年控除期間各年の控除額の計算
(控除限度額)
平成24年1月1日から
平成24年12月31日まで
10年1~10年目
年末残高等×1%
(40万円)
平成25年1月1日から
平成25年12月31日まで
10年1~10年目
年末残高等×1%
(30万円)
平成26年1月1日から
令和元年9月30日まで
10年1~10年目
年末残高等×1%
(50万円)
(注)住宅の取得等が特定取得以外の場合は30万円
令和元年10月1日から
令和2年12月31日まで
13年[住宅の取得等が特別特定取得に該当する場合]
【1~10年目】年末残高等×1%
(50万円)
【11~13年目】
次のいずれか少ない額が控除限度額
①年末残高等〔上限5,000万円〕×1%
②(住宅取得等対価の額-消費税額)〔上限5,000万円〕×2%÷3
(注) この場合の「住宅取得等対価の額」は、補助金および住宅取得等資金の贈与の額を控除しないで計算した金額をいいます。
令和元年10月1日から
令和2年12月31日まで
10年[上記以外の場合] 1~10年目
年末残高等×1%
(50万円)
(注) 住宅の取得等が特定取得以外の場合は30万円
令和3年1月1日から
令和3年12月31日まで
10年1~10年目
年末残高等×1%
(50万円)
※住宅の取得等が特定取得以外の場合は30万円
令和3年1月1日から
令和4年12月31日まで
13年[住宅の取得等が特別特例取得又は特例特別特例取得に該当する場合]【1~10年目】
年末残高等×1%
(50万円)
【11~13年目】
次のいずれか少ない額が控除限度額
①年末残高等〔上限5,000万円〕×1%
②(住宅取得等対価の額-消費税額)〔上限5,000万円〕×2%÷3
※この場合の「住宅取得等対価の額」は、補助金および住宅取得等資金の贈与の額を控除しないで計算した金額をいいます。

※【国税庁】No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)より引用

中古住宅の場合

一方、中古住宅のケースでは以下のようになっています。居住した年によって細かく計算方法が異なるため、国税庁のサイトに掲載されている表を参考にして、税理士に相談をしてみましょう。

(注) この場合の「住宅取得等対価の額」は、補助金および住宅取得等資金の贈与の額を控除しないで計算した金額をいいます。

居住の用に供した年控除期間各年の控除額の計算
(控除限度額)
平成19年1月1日から
平成19年12月31日まで
15年1~10年目
年末残高等×0.6%
(15万円)

11~15年目
年末残高等×0.4%
(10年)

平成20年1月1日から
平成20年12月31日まで
15年1~10年目
年末残高等×0.6%
(12万円)

11~15年目
年末残高等×0.4%
(8年)

平成24年1月1日から
平成24年12月31日まで
10年1~10年目
年末残高等×1%
(20万円)
平成25年1月1日から
平成25年12月31日まで
10年1~10年目
年末残高等×1%
(20万円)
平成26年1月1日から
令和元年9月30日まで
10年1~10年目
年末残高等×1%
(40万円)
※住宅の取得額が特定取得以外の場合は20万円
令和元年10月1日から
令和2年12月31日まで
13年[住宅の取得等が特別特定取得に該当する場合]
【1~10年目】
年末残高等×1%
(40万円)
【11~13年目】
次のいずれか少ない額が控除限度額
①年末残高等〔上限4,000万円〕×1%
②(住宅取得等対価の額-消費税額)〔上限4,000万円〕×2%÷3
(注) この場合の「住宅取得等対価の額」は、補助金および住宅取得等資金の贈与の額を控除しないで計算した金額をいいます。
令和元年10月1日から
令和2年12月31日まで
10年[上記以外の場合]
1~10年目
年末残高等×1%
(40万円)
(注) 住宅の取得等が特定取得以外の場合は20万円
令和3年1月1日から
令和3年12月31日まで
10年1~10年目
年末残高等×1%
(40万円)

(注) 住宅の取得等が特定取得以外の場合は20万円

令和3年1月1日から
令和4年12月31日まで
13年[住宅の取得等が特別特例取得又は特例特別特例取得に該当する場合]
【1~10年目
年末残高等×1%
(40万円)

【11~13年目】
次のいずれか少ない額が控除限度額
①年末残高等〔上限4,000万円〕×1%
②(住宅取得等対価の額-消費税額)〔上限4,000万円〕×2%÷3

(注) この場合の「住宅取得等対価の額」は、補助金および住宅取得等資金の贈与の額を控除しないで計算した金額をいいます。

※【国税庁】No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)より引用

住宅借入金等特別控除は適切なタイミングで!

住宅ローンの借入を行うときは、住宅借入金等特別控除の基本的な仕組みについて理解をしておく必要があります。年収や家族構成などによって控除額は異なりますが、うまく活用することで税負担の軽減につながるはずです。

住宅を取得する際に大まかな目安を把握していれば、前向きに検討できる材料となるでしょう。ただし、居住を始めた年などで控除額の計算は細かく分けられているため、気になるときは早めに税理士に相談をしてみましょう。

Q.住宅借入金等特別控除についてよく分かりません。教えてください!
A.住宅借入金等特別控除とは、住宅ローン等を利用して住宅を新築や購入または増改築した場合で、一定の要件に当てはまるときは、その借入金等の年末残高の合計額を基として計算した金額をその住宅を居住の用にした年以後の各年分の所得税額から控除するという特例のことです。詳しくは本記事を参考にしてください。

Q.住宅借入金等特別控除に必要な書類ってなんですか?
A.住宅借入金等特別控除に必要な書類は、確定申告書や控除額の計算明細書、住宅取得資金に関する年末残高証明書、家屋の登記事項証明書等が挙げられます。ほかにもシチュエーションによって必要書類が異なるため、本記事を参考にしてください。

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