相続した不動産を売却する流れや税金、注意点をわかりやすく解説!

相続した不動産を初めて売却するときには、どのような手順で手続きを進めれば良いかわからないものです。この記事では、不動産を売却するときの全体的な流れや必要な税金、活用できる特例制度などを解説します。

相続した不動産売却の流れを5ステップで解説

相続した不動産を売却するときは、通常の不動産売却と比べて少し流れが違っています。ここでは、以下の5つのステップに分けてそれぞれの手順をみていきましょう。

  1. ステップ①:遺産分割協議書の作成
  2. ステップ②:相続した不動産の名義変更
  3. ステップ③:相続した不動産の売却依頼
  4. ステップ④:売却して受け取った現金を分割
  5. ステップ⑤:相続税の申告・納付

ステップ①:遺産分割協議書を作成する

被相続人が遺言書を残さないまま亡くなった場合、相続を行うにあたって遺産分割協議書を作成する必要があります。遺産分割協議書とは、相続財産の分割の仕方について相続人同士で話し合いを行うものです。

遺産分割協議を有効なものとして成立させるには、協議に参加する相続人を確定させる必要があります。すべての相続人の合意が得られなければ、はじめからやり直す必要が出てくるため注意が必要です。

相続人が誰であるかを戸籍謄本などから調べると同時に、被相続人が所有していた財産を調査しましょう。相続人が1人であれば特に問題はありませんが、複数の相続人がいる場合はどのように相続財産を分割するのかを十分に話し合う必要があります。

不動産を含んだ相続財産の分割方法は主に4つあり、以下のように分けられます。

分割方法の種類 ポイント
現物分割 相続分をそのまま分筆する、または現金を相続する人と不動産を相続する人を分ける方法
代償分割 相続人の1人が不動産を取得し、ほかの相続人に不動産価格を分割した額を支払う方法
換価分割 不動産を売却して金銭に換えたうえで分割する方法
共有分割 相続人で共有の名義にする方法

相続人同士のトラブルを回避する方法として有効なのは、代償分割または換価分割だといえます。相続分を金銭で支払うことによって解決する方法であり、シンプルでわかりやすいのが特徴です。

相続人全員の合意を得て遺産分割協議がまとまれば、証拠として書面に残すために遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員の署名と捺印が必要になるため、早めに話し合いを進めることが肝心です。

相続は相続人の数が多いほど複雑で、時間のかかる手続きとなります。そのため、遺産分割協議書の作成にあたっては弁護士や司法書士などの専門家からアドバイスを受けるなどして、着実に手続きを進めていくようにしましょう。

ステップ②:相続した不動産の名義変更を行う

不動産を売却する際に重要なポイントは、原則として不動産の所有者本人でしか売却できない点です。売却を考えている不動産の名義変更を行わないまま売ることはできないため、相続登記を早い段階で行っておく必要があります。

相続登記は必要な書類をそろえたうえで、法務局に申請を行います。一般的には、司法書士に依頼するケースが多いため、1人で悩まずに相談をすることが大切です。

ステップ③:相続した不動産の売却を依頼する

不動産会社とのやりとりに関しては、通常の不動産売却の場合と手順は変わりません。主な流れとしては次のようになります。

  1. 不動産の査定依頼を行う
  2. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
  3. 購入希望者と取引金額や契約条件などを交渉する
  4. 買主と売買契約を締結する
  5. 物件を引き渡し、残金の決済を行う

不動産の売却までにかかる時間としては、3~6ヶ月程度が目安となります。そのため、安心して売却活動を任せられる不動産会社を選ぶことが重要です。不動産の一括査定サービスを通じて、複数の会社から自分に合ったところを選んでみましょう。

ステップ④:売却ができたら現金を分割する

相続した不動産の売却が完了したら、手元に現金が残るため、遺産分割協議書の取り決めに従い手続きを行います。換価分割の場合は、話し合いによって決めた相続割合に応じて現金を配分します。

換価分割では不動産を現金化したうえで、相続割合に応じて現金を分けることになるため、分割時のトラブルが起こりにくいといえるでしょう。税金の負担についても、相続人全員でしっかりと話し合っておく必要があります。

ステップ⑤:相続税の申告・納付

相続した不動産を売却して、遺産分割協議に沿って遺産を分割したら、相続税の申告を行って納税しなければなりません。相続税の申告書は、被相続人が死亡したときの住所を管轄している税務署宛てに提出します。

相続税は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に、申告と納税を行う必要があるため注意しておきましょう。また、不動産を売却した翌年の2月中旬から3月中旬にかけて確定申告も行う必要があるため、忘れないようにすることが大切です。

相続不動産の売却にかかる3つの税金

相続した不動産を売却したときにかかる税金として、主に次の3つがあげられます。それぞれの税金の特徴を解説します。

  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 譲渡所得税

登録免許税

登録免許税は、土地や建物などの不動産を取得した際に一度だけ発生する税金であり、相続時にもかかります。相続登記を行うときにかかる登録免許税の税率は一律であり、不動産価格(固定資産税評価額)の0.4%です。

固定資産税評価額とは、固定資産課税台帳に登録された不動産価格のことを指します。自治体から送られてくる固定資産税納税通知書で確認できるためチェックしてみましょう。

印紙税

不動産を取引するときには、買主との間で売買契約書を交わしますが、契約金額に応じた収入印紙を貼付する必要があります。印紙税とは売買契約書や領収書を作成したときに取引金額によって納める税金のことであり、以下のように決められています。

契約金額 本則税率 軽減税率※
100万円超~500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超~1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超~5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超~1億円以下 6万円 3万円
1億円超~5億円以下 10万円 6万円

※2022年3月31日まで軽減税率の特例が適用されています。

売買契約書の作成は不動産会社が行ってくれるため、具体的な金額については担当者にも確認をしてみましょう。

譲渡所得税

不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じたときには、物件の所有期間に応じて一定の税金が課税されます。譲渡所得税とは、所得税・復興特別所得税・住民税の総称であり、相続人全員に納税の義務が発生します。

あくまで利益が生じたときに支払うものなので、売却損となる場合は納める必要がありません。譲渡所得税は不動産を売却した代金(譲渡価格)そのものに課税されるわけではなく、物件を購入したときにかかった費用(取得費)や物件を売却したときにかかった費用(譲渡費用)を差し引いた譲渡所得に課税されます。

計算式としてまとめると、「譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用―特別控除」という式が成り立ちます。一定の要件に当てはまれば、譲渡所得から控除できる税金の特例制度も設けられているため活用してみましょう。

また、譲渡所得税は不動産の所有期間によって税率が定められており、所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得として39.63%、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得として20.315%が課されます。

所得税

所得税は国税の一種であり、相続人全員に課税されるものです。不動産の売却によって利益が生じたときにも課税されるものであり、利益が出ていないときは納める必要はありません。

納税は確定申告が行われている2月中旬から3月中旬となっており、不動産の所有期間によって税率は異なります。短期譲渡所得の場合は30%、長期譲渡所得の場合は15%の税率です。

住民税

住民税は地方税の一種であり、都道府県民税と市町村民税の総称です。所得税の場合と同様に利益が出たときに課税されるもので、相続人全員に納税の義務が発生します。

確定申告を済ませた年の5~6月頃にかけて自治体から納付書が送られてくるため、期日までにきちんと納税を行いましょう。短期譲渡所得では9%の税率、長期譲渡所得では5%の税率となっています。

復興特別所得税

復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源として設けられた税金です。2013年1月1日から2037年12月31日の25年間にかけて課税されるものであり、所得税の税率に2.1%を乗じた金額を納めます。

相続不動産売却時に知っておきたい税金の特例や特別控除

相続した不動産を売却したときにかかる税金は、税金の特例制度を活用することで、税負担を軽減できることがあります。主な制度としては、次の3つがあげられます。

  • 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
  • 相続した空き家を売却したときの3,000万円特別控除
  • 居住用の家を売却したときの3,000万円特別控除

なお、これらの制度は自動的に適用されるものではなく、確定申告を行うことで適用されるため注意しておきましょう。各制度のポイントをさらに解説します。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」とは、相続税の申告期限から3年以内に相続した不動産を売却した場合、税負担が軽くなる制度です。相続税の申告は相続が発生してから10ヶ月以内に行うものであるため、3年10ヶ月以内に相続した不動産を売却すれば、相続税や譲渡所得を計算する際の取得費に含めることができます。

この制度が適用されるための要件は、以下のとおりです。

  • 相続や遺贈により財産を取得した者であること
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること
  • その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること 

相続した空き家を売却した場合の3,000万円特別控除

相続または遺贈によって被相続人が居住していた住宅を取得して、一定の要件を満たす場合には譲渡所得から最高で3,000万円までの控除が受けられる制度です。場合によっては譲渡所得がゼロになるケースもあるため、節税効果は高いといえるでしょう。

この特例制度の対象となるには、被相続人居住用家屋の要件を満たしておく必要があります。具体的な要件は、以下のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

居住用財産を売却した場合の3,000万円特別控除

個人がマイホームを売却して一定の要件を満たすときには、譲渡所得から最高3,000万円までを控除できる制度です。相続人が相続をした家に住んでいたときに受けられるものであり、たとえば以下のようなケースがあげられます。

  • 自宅に夫婦で住んでいたがどちらか一方が他界し、自宅を相続した場合
  • 親子で一軒家に住んでいて親が他界し子どもが相続した場合

一方で、次のような家屋には適用されないため注意しておきましょう。

  • この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
  • 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
  • 別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋

これらの特例制度は、要件がそれぞれの制度で異なる部分があり、重複して使うことができないケースもあります。詳しくは税理士などの専門家に、早めに相談をするようにしましょう。

相続不動産を売却する際に気をつける3つの注意点

相続した不動産を売却するときに気をつけておきたい点として、次の3つがあげられます。それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。

  • 相続した不動産で売却益が発生した場合は、確定申告を行う
  • 相続不動産を売却する前に相続人同士でしっかりと話し合う
  • 相続不動産を売却するときは複数社に査定依頼する

注意点①相続した不動産で売却益が発生した場合は、確定申告を行う

相続した不動産を売却したときに利益が生じたときは、翌年の2月中旬から3月中旬にかけて確定申告を行う必要があります。確定申告を行うことで、一定の要件を満たせば税金の特例制度を受けられる可能性があるため、忘れずに確定申告を行いましょう。

また、売却損が出た場合でも、確定申告を行うことで税負担が軽減される可能性があります。不動産会社の担当者や税理士に相談をしながら、必要な手続きを行うことが大切です。

注意点②相続不動産を売却する前に相続人同士でしっかりと話し合う

相続人が多ければ、それだけ話し合いがまとまるまでに時間がかかってしまいがちです。しかし、十分な話し合いを行わなければ後からトラブルになる可能性もあるため、相続に関する話し合いは早めに進めるほうが良いでしょう。

感情的な部分で揉めてしまいがちなときは、弁護士や司法書士など第三者に間に入ってもらって、冷静に話し合える場を設けてみることが大事です。

注意点③相続不動産を売却するときは複数社に査定依頼する

不動産の売却を考えるときは、不動産会社に査定依頼を行う必要があります。遠方にある不動産を相続するケースもめずらしくなく、売却によって損をしてしまわないためにも査定は重要なポイントになります。

1社だけに査定をしてもらっても、他社との比較ができないため、相場の適正価格がわからないでしょう。査定依頼を行うときは複数の会社に査定をしてもらうほうが良く、自分に合った会社を見つけやすくなります。

個別に問い合わせていると時間や手間もかかってしまうため、不動産の一括査定サービスを通じて、負担を軽減しながら効率良く査定を進めてもらいましょう。「おうちクラベル」ならAI査定ですぐに大まかな査定額がわかり、複数の不動産会社から査定結果を受け取ることができるため、積極的に活用してみましょう。

相続不動産の売却には信頼できる不動産会社選びが重要!

相続によって得た不動産は、相続人が複数いる場合は話し合いによってどのように分割するのかを決める必要があります。不動産を売却するまでの基本的なプロセスを理解したうえで、一つひとつの手順をきちんと押さえておきましょう。

相続登記を行って不動産を売却するまでにはそれなりに時間がかかるため、何でも相談できる不動産会社を見つけることが大切です。不動産の一括査定サービスである「おうちクラベル」を活用して、スムーズな売却につなげてみましょう。

Q.納税の期日までに相続した不動産が売れるか心配。何か良い方法ありますか?
A.不動産を売却するときには一般的に仲介で売却します。ただし、いつ売却できるかは買主が見つかるタイミングにもよるので、不安を感じてしまう部分もあるでしょう。できるだけ早期に売却したいという方の場合、不動産会社が直接購入する買取の仕組みもあります。納税の期日までに売れるか不安な方は買取も検討してみましょう。

Q.相続人が複数いるのですが、登録免許税もそれぞれにかかりますか?
A.譲渡所得税・住民税・復興特別所得税は相続人それぞれにかかりますが、登録免許税・印紙税は全員にかかりません。よくあるのは代表者1人が立て替えて支払った後に、現金で分割する方法です。

この記事の監修者

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