「家を売りたいけど、何から始めたらいいのかわからない」
「不動産仲介会社に依頼してみたけど、なかなか売れずに困っている」
初めて家を売却する際、このような悩みを抱える人は少なくありません。不動産仲介会社に家の売却を依頼しても、なかなか買い手が見つからなかったり、希望条件を汲み取ってもらえなかったりと、上手く売却活動を進められないとお悩みの人も多いのではないでしょうか。
本記事では、不動産仲介会社を活用した家の上手な売却方法と注意点を詳しく解説します。不動産仲介会社と締結する「媒介契約」の種類のほか、家を売却するために準備しておきたい書類、そしてなかなか売れない家をスムーズに売却するコツも紹介します。
納得のいく条件で家を売却するためにも、不動産売買の全体像をしっかりとつかんでおきましょう。
1.家を売る手順・流れ
家を売却するにあたっては、事前にどのような流れで進むのかを知っておくことで、取引での失敗を防ぐことが可能です。ここでは家の売却が完了するまでの流れを、大まかに解説します。
1-1.おおよその相場を把握する
家の売却を開始する前にまず行っておきたいのが、自分の物件の相場価格を把握するということです。
不動産仲介会社に依頼して買主を探す場合であっても、売り出し価格を決めたり、最終的な売却金額に対して決断を下すのは売主自身です。取引価格を決定する大事な局面で、所有する物件の正確な価値がわかっていないと、高く売出しすぎて売れ残ってしまったり、本来もっと高く売れるはずなのに損をしてしまったりと、不利益をこうむることになりかねません。
そのため、不動産仲介会社を探す前に、売却する物件と類似した不動産がどれくらいの価格で取引されているかという「相場」を把握しておくことが重要です。
インターネットの不動産ポータルサイトで売出し情報を検索するほか、過去の売買情報を閲覧できる「レインズ・マーケット・インフォメーション」、土地の取引情報を検索できる「土地総合情報システム」などを活用し、土地と建物の両方の面から価格を調べておきましょう。
1-2.査定を依頼する
大体の相場がわかったら、不動産仲介会社に査定依頼を出します。このときに重要なのは、最初は1社に絞らずに、複数の不動産仲介会社に依頼するということです。
家の売買仲介を行っている不動産仲介会社は数多く存在しますが、家を査定する際の基準は共通のものではありません。不動産仲介会社ごとに異なる基準で査定するうえ、会社ごとに土地・建物・マンションなど得意分野があるため、当然受け取る査定結果も会社ごとに異なります。つまり、最初から1社に絞って売買活動をスタートしてしまうと、スムーズに買主がみつからなかったり、思ったような条件で売却できなかったりする可能性があるのです。
複数の会社にそれぞれ依頼してもいいですが、不動産一括査定サイトと呼ばれる便利なインターネットサイトも存在します。物件に合った不動産仲介会社を提案してもらえるものもあるため、積極的に活用しましょう。
1-3.机上査定を行う
不動産仲介会社による査定には、「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定(詳細査定)」の2つがあり、まずは机上査定から行うのが一般的です。
机上査定はその名の通り、机上で家の価格を算出する査定方法です。売却する土地や建物に関する資料(登記簿謄本や売買契約など)にはじまり、国が発表している公示価格、周辺での取引事例や、不動産市場の動向などが査定のための情報として用いられます。机上査定で得られる査定価格はあくまでも概算です。しかし、複数社に同時に査定してもらうことで、売却力のある会社や、提案力のある担当者を見極めることが可能になり、満足度の高い不動産売却へと一歩近づくのです。
机上査定の結果は、依頼してから早くて即日、平均3日程度で届きます。送られてきた査定結果を比較し、その中からより詳細な査定である「訪問査定」を依頼する不動産仲介会社を選びましょう。
1-4.訪問査定を行う
机上査定の結果を比較し、その中から訪問査定を依頼する不動産仲介会社を選びます。なお、売却することが決定している人や早く売りたい人は、必ずしも机上査定を行う必要はなく、すぐに訪問査定を受けても問題ありません。
訪問査定では、不動産仲介会社の担当者が実際に物件を訪れ、プロの客観的な視点から家の価値を詳細に評価します。机上査定で使用した資料やデータをもとに、建物の場合は劣化の程度やメンテナンスの状況・設備の状態など、土地の場合は日当たりや接道状況の他、周辺環境や駅からの道のりなどを入念に確認します。さらに売主へのヒアリングも行うことで、机上査定ではわからなかった対象物件の良さだけでなく、買主へ告知が必要な事項(欠陥や忌避要素など)がないかを確認するのも重要な手順です。
このように詳細に物件の評価を行うため、訪問査定は2~3時間ほど時間を要することも珍しくありません。原則として売主の立ち合いが必要になるため、スケジュールに余裕をもって依頼するようにしましょう。訪問査定の結果は、多くの場合1週間程度で売主のもとに届きます。
1-5.不動産仲介会社と媒介契約を結ぶ
訪問査定の結果を比較し、正式に売却の依頼をする不動産仲介会社が決まったら、媒介契約を締結します。
不動産仲介会社を選ぶ際に確認したいポイントとしては、査定額が希望売却金額に近いかということ以外に、担当者の知識や経験・提案力も挙げられます。
一般的な商品の売買とは異なり、不動産は2つとして同じものが存在しない「個別性」が大きな特徴です。似たような建物でも、築年数や使い方・メンテナンスの状態によって価値が異なり、同じ面積の土地であっても、形状や立地によって取引価格が大きく変動します。そうした不動産の個別性を理解したうえで、売主の希望や状況を的確に把握しなければ、満足のいく家の売却は実現しません。
そのため、家の売却を正式に依頼する会社を選ぶ際には、会社の規模や査定額だけに着目せず、担当者が査定額の根拠をしっかりと説明できるか、売主の声に真摯に耳を傾けられるかも見極めることが重要です。
なお、不動産仲介会社と締結する媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つの種類があります。それぞれの特徴などに関しては、後の章で詳しく解説します。
1-6.売却活動を開始する
不動産仲介会社と売主との間で媒介契約を締結した後に、いよいよ家の売却活動が開始されます。
不動産仲介会社は自社のホームページのほか、各不動産ポータルサイト、レインズ(指定流通機構)といった不動産の情報サイトに売買物件の情報を登録することで、物件情報ができるだけ多くの人の目に留まるように営業活動を行います。
物件を探している人から問い合わせがあった場合は、売主の立会いのもと、内覧へ案内します。ただし、家を探している人の多くは休日の内覧を希望することが多いため、立ち合いが難しい場合は、事前に担当者に相談しておくようにしましょう。
また、問い合わせ1件1件に対して内覧の案内をする以外にも、内覧会という形で、誰でも気軽に物件を見に来れる機会を設ける場合もあります。
3種類ある媒介契約のうち、「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」を締結している場合は、不動産仲介会社から一定期間ごとに、売却活動の状況報告を受け取りましょう。問い合わせ件数や、内覧の結果購入を検討している人がいるかどうかを知るきっかけになり、状況に応じて売出し条件の見直しを行う場合もあります。
1-7.買主と売買契約を結ぶ
内覧の結果、購入を希望する人から購入申込書を受け取ったら、売買条件の交渉を行います。売買金額や引渡し日、引渡しの状態などさまざまな条件を調整し、合意に至れば売買契約締結に向けた最終的な手続きを行います。
まず売買契約締結の前に、不動産仲介会社に所属する宅地建物取引士が買主に対して行うのが「重要事項説明」です。
重要事項説明では、物件の所在地や構造などの詳細のほか、契約内容や特約といった、売買契約に関して留意しておくべき事項を買主に対して説明します。重要事項説明は売買契約を締結するかの最終判断の場であり、これに買主が合意すれば、売買契約締結へと進みます。
売買契約書の締結時は、売主と買主が同席するのが原則です。契約に際して、書類への署名捺印を行います。この時に売買代金の一部を、買主から売主に対して支払います。これを「手付金」と呼び、取引金額の10%程度が相場です。
1-8.決済・物件の引渡し
売買契約書で定めた物件の引渡しの日には、売主から買主に鍵を渡す以外にも、さまざまな手続きが発生します。
まずは売買代金や諸費用の清算です。売買契約締結時に売主に支払われた手付金は、売買代金に充当されます。また、固定資産税・都市計画税は、引渡し当日から買主が負担することになります。売主と買主それぞれの負担分を日割りにより計算し、売買代金と相殺または上乗せする方法で清算しましょう。
また、物件が買主に引渡されるのと同時に、土地・建物の所有権も買主に移行します。所有権移転登記の申請は、買主が依頼した司法書士が行うため、鍵と合わせて登記に必要な書類も渡すようにしましょう。
上記の決済や必要書類・鍵の引渡しは、売主・買主・不動産仲介会社が立会いのもと、同日に行われるのが一般的です。
1-9.確定申告を行う
家を売却して利益が出た場合、税金を納めるために確定申告を行わなければなりません。不動産を売却することで得た利益のことを「譲渡所得」といい、家を取得した際の売買代金や諸費用と、売却代金や売却にかかった諸費用・税金の控除を比較した際に、プラスになった場合には確定申告を行うことが義務化されています。
譲渡所得の確定申告は、家を売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に行い、売買契約書などの準備も必要になるため、事前に準備しておくと安心です。
なお、確定申告が義務とされているのは売却益が出た場合のみですが、仮に損失が出ている場合でも、確定申告をしたほうがいいケースもある点に注意が必要です。売却の条件によって、所得税に対して特別控除の特例が適用されたり、譲渡所得以外の所得との損益通算ができたりと、納付する税金を抑えられる可能性があるのです。
そのため、譲渡所得がマイナスになりそうな場合でも、税理士に相談するなどして、自身に適用される特例や利用できそうな制度はないかを確認しておくことをおすすめします。
2.不動産仲介会社との媒介契約
不動産仲介会社と締結する媒介契約には3つの種類がある、ということは前述のとおりです。ここではそれぞれの媒介契約の特徴と、どの契約形態を選ぶべきなのかを見ていきましょう。
2-1.一般媒介契約
一般媒介契約は、一度に複数の不動産仲介会社に売却活動を依頼できる契約形態です。この契約形態では不動産仲介会社を介しての取引だけでなく、自分で買主を見つけた場合は、不動産会社を介さずに直接取引することも可能。ただし、不動産売買の直接取引はリスクも大きいため、最終的にはそれまで積極的に売却活動を行ってくれた不動産仲介会社に依頼して、取引を進めるケースが多いと言えます。
一般媒介契約には、「明示型」と「非明示型」があります。「明示型」は、媒介契約上は複数の不動産仲介会社への売却依頼を可能としている一方で、ほかにどの不動産仲介会社に依頼しているかを通知するタイプの契約形態です。
それに対して「非明示型」は、ほかの不動産仲介会社に依頼している場合であっても、依頼先を明示する必要はありません。
いずれの場合も、同時に複数社に依頼できるという点では共通しています。しかし不動産仲介会社の立場からすると、どのような会社が競合なのか、合計何社くらいが同時に動いているかがまったくわからない「非明示型」では、熱心に売却活動を行うことに大きなメリットは生じません。そのため、一般媒介契約を選択する場合は、余程の事情がない限りは「明示型」を選んだ方が無難ということが言えます。
2-2.専任媒介契約
専任媒介契約とは、売買活動を1つの不動産仲介会社のみに依頼する契約形態です。一般媒介契約同様、売主自身で買主を見つけてきた場合には、不動産仲介会社を利用せず直接取引ができます。
法律で定められた有効期間が存在しない一般媒介契約とは異なり、専任媒介契約では契約期間を3ヶ月以内に設定しなくてはならないという取り決めがあります。3ヶ月を超えて依頼を継続する場合は契約更新が可能です。
また、専任媒介契約により家の売却を依頼された不動産仲介会社は、「指定流通機構」への物件情報の登録が義務付けられています。指定流通機構は通称「レインズ」と呼ばれ、宅地建物取引業法にもとづいて、賃貸や売買の物件情報や、過去の成約情報を提供しています。依頼を受けた不動産仲介会社がレインズに物件情報を登録することで、広い範囲に物件情報を提供できるようになるため、最適な買主を探すことが可能になるのです。レインズへの物件情報の登録は、専任媒介契約締結の日から7日以内に行うよう定められています。
さらに、専任媒介契約で売却を依頼された不動産仲介会社は、売主に対して業務処理状況(販売活動の状況など)を報告する義務があり、報告頻度は2週間に1回以上です。
2-3.専属専任媒介契約
専属専任媒介契約も専任媒介契約同様、1社の不動産仲介会社のみに売却を依頼する契約形態です。一般媒介契約や専任媒介契約では、売主自身が買主を見つけてきた場合、不動産仲介会社を利用せずに直接の取引が可能でしたが、専属専任媒介契約では必ず不動産仲介会社を通じて取引する必要があるというのが異なる点です。
専属専任媒介契約の有効期間は、専任媒介契約と同じく3ヶ月以内で、売主が希望する場合は契約を更新することもできます。
指定流通機構への登録期限や、売主への業務処理状況報告の頻度も、専任媒介契約よりも厳しい条件が設定されています。
指定流通機構への登録は、媒介契約締結から5日以内に行い、ほかの不動産仲介会社の目にいち早く留まるようにします。売主への業務処理状況の報告は、1週間に1回以上行わなければなりません。問い合わせ状況や内覧件数、購入希望者への提案状況などを詳細に報告し、早期成約につながるよう櫃相に応じた条件の見直しも行います。
2-4.どの契約がいいのか
家の売却は多くの人が初めての経験のため、3種類ある媒介契約のうち、どれを選べばいいのか迷うことがほとんどでしょう。不動産仲介会社と媒介契約を締結する際には、契約形態ごとにメリット・デメリットがあることをふまえて検討することが重要です。
専任媒介契約・専属専任媒介契約は、成約につながれば仲介手数料を受け取れるため、不動産仲介会社のモチベーションが高まることがメリットです。力を入れて売却活動を行ってもらえるため、希望条件で買主が見つかる可能性が高いと言えます。
一方で、販売力のない会社を選んでしまい、なかなか売却が叶わないケースも考えられるという点はデメリットです。
それに対して一般媒介契約は、一度に複数の不動産仲介会社に依頼できるため、販売力の低い会社にあたってしまった場合のリスクを分散できるという点はメリットです。その代わり不動産仲介会社の立場としては、依頼主が他社で成約してしまい仲介手数料を得られない可能性があることから、売却活動を精力的に行ってもらえない可能性があるという点は押さえておくべきです。
こうしたそれぞれの特徴から、立地条件がよく積極的に売却活動をしなくても買い手が見つかりそうな人気物件の場合は「一般媒介契約」、売りづらい条件の物件を売却する場合や売却を急ぐ場合は、「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」を締結するなど、ご自身や物件の状況に合わせて選択しましょう。といいでしょう。
3.仲介手数料の仕組み
上記で解説したいずれの媒介契約の場合でも、不動産仲介会社を通じて買主と契約する場合は、仲介手数料の支払いが発生します。不動産取引においてよく耳にする「仲介手数料」とはどのようなものなのか、いくら必要になるのかを解説します。
3-1.仲介手数料は成功報酬
仲介手数料は、不動産仲介会社が不動産売買を成約に導いたことに対する、成功報酬の意味を持ちます。
不動産仲介会社は家の売主から依頼されると、成約を目指してさまざまな業務を行います。
売却活動開始時には、不動産のポータルサイトや指定流通機構に物件情報を登録するほか、自社の顧客へ物件を紹介するなどし、あらゆる手段で買い手を募ります。購入希望者から申し込みが入ったら、売主と買主の間で折り合いがつくよう、契約条件の調整を行い、契約に必要な書類の作成や重要事項説明を経て、物件が引き渡されて初めて発生するのが仲介手数料です。
つまり、条件交渉が売買契約締結の直前まで進んでいたとしても、最後の最後で条件の折り合いがつかずに契約締結に至らなかった場合は、不動産仲介会社は依頼主から一銭ももらえません。
3-2.仲介手数料(上限)の計算方法
成功報酬とはいえ、売主に対していくらでも請求していいということではなく、不動産仲介会社が一度の取引で受け取れる仲介手数料の金額は、宅地建物取引業法により上限が定められています。
上限金額は取引金額をもとにして、宅建業法で定める計算式によって算出しますが、実際の売買の現場では、法律で定められた計算式を使いやすくした、下記の「速算法」と呼ばれる方法を用いるのが一般的です。
不動産の取引額 | 手数料の上限 |
200万円以下 | 5%+消費税 |
200万円超、400万円以下 | 4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 3%+6万円+消費税 |
上記の計算式で求められる仲介手数料は、あくまでも不動産仲介会社が受け取れる報酬の「上限金額」です。つまり、不動産仲介会社と売主との間で合意した場合は、仲介手数料を減額したり無料にしたりすることも可能ということです。
ただし、いくら仲介手数料を払いたくないからといって、無理に交渉をしてしまうと、不動産仲介会社はただ働き同然になってしまい、積極的に買い手を探してもらえないリスクもあります。家を売却する際には仲介手数料以外にも費用がかかるため、「トータルでどれくらいかかるか」という点に着目することをおすすめします。
3-3.仲介手数料を支払うタイミング
先述のとおり、仲介手数料は売買契約が成立して初めて発生する成果報酬です。そのため、支払のタイミングは「売主と買主の間で売買契約が成立した後」になります。
仲介手数料の支払い方法としては、以下の3つのパターンがあります。
- 売買契約締結時に半額を支払い、残金決算・引渡し完了時に残りを支払う
- 残金決算・引渡し完了時に一括払いする
- 売買契約時に一括払いする
宅建業法上は、不動産売買契約が成立した時点で、不動産仲介会社は仲介手数料を請求できることとされています。しかし、売買契約を締結しただけの時点では、引渡しが完了していない=取引が完了していないことがほとんどです。上記のうち「売買契約時に一括払い」の方法をとってしまうと、契約締結から物件引渡しまでの間の業務を十分に行ってもらえない可能性があり、取引の最後の最後でトラブルが起きる可能性も否定できません。
多くの不動産仲介会社は、売買契約時に半額・残金決算と引渡しの際に半額という方法をとっていますが、会社ごとにルールが異なるため注意が必要です。
仲介手数料の金額は売買金額に左右されるため、支払いの際にまとまった現金を準備しておく必要があります。売却を依頼する不動産仲介会社が決まったら、支払時期と方法を事前に確認しておくことが肝心です。
3-4.仲介手数料以外の費用の取扱い
仲介手数料には、不動産仲介会社が家を売却するために行う、下記の通常業務にかかる費用が含まれています。
- 広告掲載や作成
- 物件案内
- 不動産の登記や権利情報の調査
- 売買契約締結と重要事項説明
- 引渡しに必要な必要書類の準備
- 支払い手続き
上記のような業務においては、不動産仲介会社から売主に対しての追加請求はできません。
一方、売主の特別な依頼にもとづいて発生した費用については、別途追加請求できることがあります。その場合でも、下記3つの条件をすべて満たしている必要があります。
- 売主の依頼にもとづいて発生した費用であること
- 通常の仲介業務では発生しない費用であること
- 実際に発生した費用であること
具体的な例を挙げると、通常行っている宣伝方法以外の方法を依頼された場合や、遠方への出張が必要になった場合などが該当します。
なお、不動産仲介会社によっては、仲介手数料の中に下記をはじめとしたプラスアルファのサービスが含まれている場合もあります。
- 売主のファイナンシャルプランニング
- 建物の耐震診断
- 土地や建物の登記権利情報などの調査
中古住宅を売却する際のリスクを抑えることが可能になるため、含まれている場合は積極的に活用したいところです。
3-5.低廉な空き家等の売買に関する特例
不動産仲介会社が受け取れる報酬額は、物件の取引金額によって変動します。そのため、取り扱う不動産の価値があまりにも低いと、売却活動にばかり費用がかかってしまい、損をする可能性のある不動産仲介業者は積極的に売却活動を行えません。
そこで、取引価格が400万円以下の「低廉な空き家等」を売却する場合、仲介する不動産会社は、上記で解説した仲介手数料の上限額に加えて、現地調査などにかかった費用相当額も受領できることとされています。この時に不動産仲介会社が受け取れる報酬額は、仲介手数料とその他の費用を合計して、18万円(税別)を超えない金額が上限です。
日本ではかねてより空き家問題が深刻なため、こうした不動産仲介会社が受け取れる報酬額の特例を設けることで、中古不動産の流通を促すことを目的としています。
4.家を売る際の必要書類
土地や建物を売却する際には、事前に準備しておくべき書類がいくつかあります。媒介契約締結まで・引渡しまでに必要な書類をそれぞれ見ていきましょう。
4-1.査定・媒介契約までに準備する書類
不動産仲介会社に家の査定を依頼する際、できるだけ多くの書類があると、より正確な査定額を算出できます。
まず、査定時に準備すべき重要な書類は下記の2つです。
- 登記識別情報(登記済権利書)
- 確定測量図、境界確認書
下記の書類は必ずしも必要ではありませんが、不動産の正確な価格を算出するのに役立つほか、売買契約締結時に必要になるため、前もって準備しておくと安心です。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 購入時の売買契約書
- 購入時の重要事項説明書
- 建築設計図書
- 建築済確認証
- 検査済証
- 住宅ローン償還表
- 耐震診断報告書、住宅性能評価書など(行っている場合)
- 管理規約、使用細則、維持費関連書類(マンションの場合)
- 購入時のパンフレット、広告資料
不動産査定や媒介契約に必要な書類は、売却の対象が土地・建物・マンションの場合で少しずつ異なります。なかには取得までに時間がかかったり、役所に足を運ぶ必要があったりする場合もあるため、早めに不動産仲介会社に準備すべき書類を聞いておくようにしましょう。
4-2.引渡しまでに準備する書類
引渡し日には、鍵の引渡しのほかにも、売買代金や固定資産税の清算などを行います。そのために必要な下記の書類を準備しておきましょう。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 登記識別情報(登記済権利書)
- 住民票または戸籍の附票
- 実印
- 印鑑証明書(3ヶ月以内発行の原本)
- 銀行口座の通帳
- ローン残高証明書、ローン返済予定表
- 買主に引き継ぐ資料(購入時のパンフレットや管理規約、総会資料、取扱説明書など)
上記のほか、不動産仲介会社に支払う仲介手数料の残金や、買主に引渡す家の鍵一式も忘れないように持参しましょう。
5.売りにくい家を売るにはどうすべきか
複数の不動産仲介会社に査定してもらい、適正価格に設定して売りに出しても、思ったように成約につながらない場合があります。なかでも、築年数が経過した古家・相続した家・住宅ローンが残っている家は売却が難しい傾向にあるため、スムーズな成約のためには対策が必要です。
5-1.古家を売る場合
古家を売却する際の懸念材料は大きく分けて2つ。1つは「資産価値」、もう1つは「耐久性」です。
建物には国が定めた「法定耐用年数」というものがあります。これは「住めなくなる年数」ではなく、「資産価値がなくなる年数」をあらわすもので、日本で一般的な木造住宅の法定耐用年数は22年とされています。法定耐用年数が経過した建物は「価値がない」と判断されるため、建物が建っていても土地のみの価格で売却することになってしまうのです。
また、築年数の古い物件の中には、建築基準法が改定された1981年より以前に建てられた「旧耐震基準」の物件も多くあります。地震大国とも呼ばれる日本において、耐震性・耐久性への不安は、築年数の古い物件を購入することに足踏みをする直接的な要因となってしまうのです。
上記のような理由により、古家を売却する場合には、建物の価値ではなく土地の価値を前面に打ち出した売却活動が必要です。「古家付き土地」として売りに出すほか、リフォームして住みやすい状態にしたり、家を解体して土地のみで売却したりといった方法が考えられるでしょう。ただし、家の解体やリフォームには多額の費用がかかるため、どのようにして売るかは不動産仲介会社と打ち合わせることをおすすめします。
5-2.相続した家を売る場合
住まいがある状態で家を相続した場合、住まずに空き家として放置してしまうケースが多く見られます。しかし、空き家を放置しておくことにはさまざまなリスクがあるため、居住しない場合は可能な限り早めに売却することが求められます。
通常不動産を売却して利益が発生した場合、確定申告することにより「譲渡所得税」という税金を納めなければなりません。しかし、売却するのが相続不動産の場合、一定条件を満たした売買・物件であれば、譲渡所得税を抑えられる特例があります。
譲渡所得税の税額計算に使われる「譲渡所得」は、収入金額(対象不動産の売却金額・固定資産税等精算金の合計額)から取得費・譲渡費用を控除することで算出します。相続した家を売却した場合、この取得費に相続税の一部を上乗せできるのが、「相続税の取得費加算」と呼ばれる特例です。譲渡所得を少なくすることで、譲渡所得を抑えることが可能になるのです。
ただし、この特例の適用を受けるためには、家の相続開始から3年10ヶ月以内に売却しなくてはならないという点は覚えておきましょう。
5-3.住宅ローンが残っている家を売る場合
住宅ローンが残っている家を売る場合は、売却代金でローン残債を完済し、物件に設定された抵当権を抹消したうえで引渡すのが一般的です。しかし、物件の状態や市場の動向によっては、売却金額がローン残債を下回ってしまい、売却代金だけでは完済できないケースも考えられます。
このような場合、考えられる方法は2つ。1つは不足分を自己資金で補って完済する方法、もう1つは「住み替えローン」を利用する方法です。
住み替えローンは、旧居の住宅ローン残債と合わせて、新居の購入資金を借りられる住宅ローンのことです。住宅ローンが残っている状態でも新居を購入できるという大きな魅力がありますが、旧居の住宅ローン残債が加わり借入金額が大きくなる分、通常の住宅ローンと比較して審査が厳しくなる傾向にあります。
自己資金で不足分を補えず、住み替えローンの利用も難しい場合は、金融機関に「任意売却」の交渉を行うという方法もあります。任意売却は金融機関の承諾を得ることで、住宅ローンが残った状態でも家を売却できる制度です。ただし、任意売却を利用できるのは、住宅ローンを返済し続けられるほどの収入が見込めない場合や、すでに住宅ローンを滞納してしまっている場合などに限定されます。
6.家を売るには不動産一括査定サイト「おうちクラベル」を活用しよう
家を希望の条件でスムーズに売却するためには、信頼できる不動産仲介会社の力が必要不可欠です。
複数の不動産仲介会社に査定依頼をし、査定結果を比較検討することで、自分にぴったりの会社を探すことが重要ですが、インターネットで不動産会社のホームページを1つ1つチェックしたり、街の不動産屋さんに足を運んでいては、時間や労力を無駄にしてしまう可能性もあるでしょう。
不動産一括査定サイト「おうちクラベル」は、複数の不動産仲介会社に同時に査定依頼を出せる便利なサービスです。売却したい家の情報を一度入力するだけで、物件に合った不動産仲介会社をいくつも紹介してもらえるため、わざわざ自分で不動産仲介会社を探す手間が省けます。
また、周辺の成約情報や売り出し中の物件情報など、膨大なデータを活用したAI査定も利用可能。不動産仲介会社から査定結果が届く前に、おおよその相場を即座に算出してもらえるので、売却価格の目途をつけるのに大いに役立ちます。
不動産売買で失敗しないためには、不動産仲介会社をしっかりと比較し、自分に合った会社や担当者を探すことが肝心です。家の売却を検討し始めたら、まずは不動産一括査定サイト「おうちクラベル」をご利用ください。