不動産を売却もしくは購入する場合にはさまざまな経費がかかりますが、その中でも不動産会社へ支払う仲介手数料は案外大きな割合を占めます。
そもそも不動産会社へ支払う仲介手数料とは、一体どのような費用なのでしょうか。この記事では仲介手数料が発生する媒介契約の種類や、実際に支払うタイミングを解説します。
また仲介手数料半額や無料を売りにしている不動産会社も存在しますが、本当にお得なのか考察し、そもそも仲介手数料が発生しないケースを紹介します。
最後に不動産売買時に発生するそのほかの費用や税金について詳しく説明しています。合わせて税金を抑える方法も解説しますので、これから不動産売買を予定している場合はぜひ参考にしてください。
1.不動産売買の「仲介手数料」とは
仲介手数料とは不動産を売却したい売主と、不動産を購入したい買主の間に入って仲介役となり、価格交渉や契約業務を行う不動産会社に支払う手数料のことです。
仲介手数料は成功報酬であり、取引が成立しなかった場合は支払う必要はありません。例えば不動産を売却するために行う広告活動に費用がかかったとしても、基本的にはその費用を支払う必要はありません。
賃貸の場合では、貸主と借主の仲介人となった不動産会社に仲介手数料を支払うことになり、その場合の仲介手数料は家賃1カ月分に消費税を合計した金額が上限です。
ではここから、不動産売買の際にかかる仲介手数料について詳しく解説していきます。
1-1.仲介手数料の上限は法律で決まっている
不動産売買を一度でも経験したことがある人や、不動産の知識がある人なら「3%+ 6万円」という計算式をご存知ではないでしょうか。実はこの計算式で算出された金額は不動産会社が受け取ることができる報酬額の上限であり、この金額を下回ったとしても問題ありません。
また「3%+ 6万円」は速算式であり、実際には以下のとおり不動産の取引額に応じて仲介手数料は定められています。6万円とは「400万円以下」の3%を上回る部分が6万円であるため、簡易的に計算できるようにと一般的には「3%+ 6万円」と計算しています。
不動産の取引額 | 取引額に対する仲介手数料の上限 |
200万円以下 | 5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 4%+消費税 |
400万円超 | 3%+消費税 |
1-2.共益費や駐車場代などを含めた仲介手数料は違法
賃貸物件の仲介手数料の上限は、家賃1カ月分に消費税を加えた金額です。例えばこの家賃に共益費や駐車場代を加えた合計金額を1カ月分として、仲介手数料を計算することは違法です。
仲介手数料はあくまでも物件価格(部屋の家賃)に対して請求するものです。万が一このように計算して請求された場合は、家賃1カ月分に消費税を加えた額を正当な仲介手数料として主張してください。
1-3.仲介手数料に含まれる費用
不動産会社に支払う仲介手数料には、どのような費用が含まれているのでしょうか。例えば不動産を売却する場合には、通常広告活動や案内業務、契約業務などを行います。一般的には以下の費用が含まれていると考えられます。
- 物件調査・販売用図面の作成
- 不動産査定書の作成
- 販売・広告活動
- 案内・内見立会い
- 価格交渉や価格の調整
- 不動産売買契約書・重要事項説明書の作成
- 不動産移転登記の手配・立会い
- 住宅ローンのあっせん
仲介手数料に含まれないのケース
- 通常の広告活動以上の特別な広告を依頼した場合
- 不要物やゴミの廃棄処分を依頼した場合
2.仲介手数料の計算例
実際に取引額4,000万円の仲介手数料を実際に計算してみましょう。
速算式の場合は以下のとおりです。
4,000万円×3%+ 6万円+消費税=1,386,000円
取引額に応じた計算の場合は以下のようになり、速算式で計算した場合と同じ額になります。
200万円以下
200万円×5%+消費税=110,000円
200万円超400万円以下
200万円×4%+消費税=88,000円
400万円超
3,600万円×3%+消費税=1,188,000円
110,000円+88,000円+1,188,000円=1,386,000円
2-1.仲介手数料の早見表
仲介手数料の早見表を作成しました。目安として参考にしてください。
不動産取引額 | 仲介手数料(税込み) |
100万円 | 55,000円 |
200万円 | 110,000円 |
300万円 | 154,000円 |
400万円 | 198,000円 |
500万円 | 231,000円 |
600万円 | 264,000円 |
700万円 | 297,000円 |
800万円 | 330,000円 |
900万円 | 363,000円 |
1,000万円 | 396,000円 |
1,500万円 | 561,000円 |
2,000万円 | 726,000円 |
2,500万円 | 891,000円 |
3,000万円 | 1,056,000円 |
3,500万円 | 1,221,000円 |
4,000万円 | 1,386,000円 |
4,500万円 | 1,551,000円 |
5,000万円 | 1,716,000円 |
3.不動産売買で仲介手数料を安くすることは可能か?
通常、不動産会社は上限額を請求することが多いですが、値切ったりするなどして安くすることは可能なのでしょうか。また、仲介手数料を半額もしくは無料を売りにしている不動産会社が存在しますが、本当のところお得なのでしょうか。
3-1.上限額=仲介手数料が一般的
不動産会社が請求できる仲介手数料は、売買の場合は取引額に対して3%+ 6万円+消費税、賃貸の場合は家賃1カ月分+消費税が上限です。よって上限金額の範囲内であれば不動産会社と依頼者は協議によって別に定めることも法律的には可能です。
しかし多くの不動産会社では、仲介手数料の上限を請求することを想定しており、基本的に依頼者も上限額を支払っているケースが多いのが現状です。
例えば売却を依頼するときに媒介契約を締結しますが、その契約書に報酬額を記載しており、仲介手数料については了承していることになります。よって減額を請求することは、基本的に難しいでしょう。
3-2.値切り交渉は可能だがおすすめしない
絶対に減額を請求することは難しいのでしょうか。例えば媒介契約を締結する前や、購入を検討している場合などで媒介契約を結んでいない場合には、値切り交渉は可能です。
では値切り交渉に成功したとして、本当にお得なのでしょうか。
例えば魅力的な売り物件が出た際、同じ希望・条件の顧客がいたとしたら上限額を支払う顧客へ先に紹介するのではないでしょうか。値切ったことで結果的に損することも考えられます。
絶対に不利になるとも言い切れませんが、基本的に仲介手数料を値切り交渉することはおすすめしません。大切な不動産の仲介を依頼する相手です。もし値切る場合は丁寧で誠実な態度を心がけましょう。
3-3.仲介手数料が無料・半額はお得なのか?
不動産会社の中には、仲介手数料を無料や半額にしている会社があります。一見利用者にとってはお得で、上限を請求しない不動産会社は誠実であるようにも感じます。
ではその不動産会社が無料や半額にするメリットは何でしょう。例えば無料で仲介をしていたら、収入がありませんのでその会社は経営が成り立ちません。
例えば無料や半額にしている場合、売主からの仲介手数料を収入源にしているケースが考えられ、その場合価格や条件について売主が優位になるような取引になる可能性があります。仲介手数料を節約した分、損失を被る可能性もありますので注意が必要です。
4.仲介手数料を支払うタイミング
仲介手数料は成功報酬であるため、依頼者は売買契約が成立したときに支払う義務が発生します。しかし実際に支払うタイミングは不動産会社によって異なります。
一般的にはこれから紹介する3パターンのいずれかに該当しますので、参考にしてください。
4-1.①契約締結時に半額・物件引き渡し時に半額を支払う
売買契約締結時に半額、残代金決済時に残りの半額を支払う方法が、実際には一番多い支払い方法です。売買契約時は成立していますが、実際には残代金決済が終わっていないため、売買契約時には半額という考え方です。
万が一手付解除や契約違反による解除の際は、支払い済みの仲介手数料の半額は戻って来ないものと考え、ローン特約による解除は白紙にするという特約のため、基本的には支払い済みの仲介手数料は戻ってきます。
4-2.②引き渡し時に一括で支払う
残代金を決済し、物件を引き渡す時に仲介手数料の全額を支払う方法です。実際には一番少ない方法かもしれません。売主は残代金を手にしてから、買主はローンが実行されてからになりますので、両者ともに資金的には支払いやすい時期といえます。
不成立になった場合、不動産会社は請求しづらくなる可能性もあります。しかしローン特約などで契約が白紙になった場合をのぞいては、支払い義務はありますのでご注意ください。
4-3.③契約締結時に一括で支払う
不動産売買契約時に全額払う方法は2番目に多い方法です。実際に契約は成立しているので、不動産会社は全額請求するというスタンスです。
ほかの支払い方法と同様で、ローン特約で白紙になった場合は契約はそもそも成立していませんので、仲介手数料の支払い義務はありません。返してもらえない場合は、返還を要求してください。
5.不動産売買で仲介手数料が発生する3つの媒介契約
不動産会社に仲介を依頼する場合、依頼者は不動産会社と媒介契約を締結します。その媒介には3種類あり、依頼者は自分に合った契約を選択することができます。不動産会社に相談する前にそれぞれどんな特長があるのか把握しておくと、実際依頼する際に迷わずに選ぶことができるでしょう。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
5-1.①専属専任媒介契約
依頼者が1社のみに仲介を依頼する場合に結ぶ媒介契約です。また依頼者が自ら発見した購入希望者がいる場合でも、かならず依頼した不動産会社を介して契約しなければなりません。3つの中で一番拘束力が強い媒介契約です。
その分不動産会社の義務も重く、1週間に1回以上の業務報告をしなければなりません。また指定流通機構(レインズ)へ、媒介契約締結の日から5営業日以内に物件情報を登録することが義務づけられています。
媒介契約の有効期間は3カ月以内と決まっており、この期間については他の媒介契約と同じです。両社合意のもと更新することは可能です。
5-2.②専任媒介契約
専属専任媒介契約と同様に、1社のみに仲介を依頼する場合に結ぶ媒介契約です。異なるのは自ら購入希望者を発見した際は、その不動産会社を介さずに直接契約できるという点です。
業務報告は2週間に1回以上、指定流通機関(レインズ)への登録は7営業日以内であり、専属専任媒介よりも不動産会社の義務が軽減されているのが特長です。実際に専属専任媒介が選ばれているケースは少なく、専任媒介契約か一般媒介契約を結ぶケースが多いのが実情です。
媒介契約の期間は同じく3カ月以内で、万が一3カ月を超える期間としても3カ月になります。また更新することは可能です。
5-3.③一般媒介契約
依頼者が複数の不動産会社へ依頼できる媒介契約です。契約できる数に上限はありませんが、2〜3社に依頼するケースが一般的です。
一般媒介契約には依頼した他社を明らかにする明示型と、他社を明らかにしない非明示型があり、依頼者は選択することができます。
専任媒介契約と同様に自己発見した買主と契約することに制限はなく、不動産会社を介さず直接契約することも可能です。
不動産会社の業務報告や指定流通機構への登録義務がないのが特長です。複数の不動産会社へ依頼できるメリットはありますが、少し物足りないと思うかもしれません。
媒介契約の期間は他の媒介契約と同様で3カ月以内で、更新することができます。
6.仲介手数料以外に不動産売買で発生する費用・税金
仲介手数料以外にも不動産売買する上で発生する諸費用や税金があります。あとで慌てないためにも事前に、それぞれどの程度かかるのか把握しておくと安心です。
ここでは一般的に必要となる可能性がある経費や、実際にかかる税金について詳しく解説します。
- 印紙税
- 住宅ローン返済手数料
- 登記費用(抵当権抹消費用)
- 譲渡所得税・住民税
- 測量費用
- ハウスクリーニング費用
- 引っ越し費用
- 家財などの処分費用
- 解体費用
6-1.①印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書など譲渡に関する契約書を締結する際に、印紙を貼付することにより納める税金です。
記載された契約金額により納めるべき税額は異なりますが、それぞれの印紙税は以下のとおりです。(2014年4月1日から2024年3月31日までは軽減措置により減額となります。)
記載された契約金額 | 印紙税 | 軽減措置による印紙税 |
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 | 軽減措置無し |
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
6-2.②住宅ローン返済手数料
住宅ローンの残債がある物件を売却する場合は、完済してから引き渡す必要があり、その住宅ローンを一括返済するのに手数料がかかります。
おおむね手数料を33,000円(税込)としている金融機関が多いですが、例えば三井住友銀行はインターネットバンキングで手続きする場合は5,500円、窓口の専用パソコンで手続きする場合は11,000円としています。
他行についても窓口よりもネットなどで手続きする場合は安く設定していることがあります。詳しくは、お借入れされている金融機関にお問い合わせください。
6-3.③登記費用(抵当権抹消費用)
住宅ローンを借入している場合、不動産には抵当権が設定されていますが、買主へ所有権移転登記をする前に抵当権を抹消する必要があります。
手続きとしては所有権移転登記を依頼する司法書士へ依頼するケースが一般的で、不動産会社が手配や必要書類の確認をしてくれます。
所有権移転登記は買主の負担になりますが、抵当権抹消は住宅ローンを組んでいる本人が負担します。
料金の内訳は登録免許税(1件につき1,000円)と司法書士への報酬額になり、おおむね22,000円〜150,000円が相場です。
6-4.④譲渡所得税・住民税
不動産を売却して利益が発生した場合は、その収入は所得税(譲渡所得税)の対象となります。
「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額」により算出した金額に、所有期間に応じて税率をかけます。
不動産を5年を超えて保有していた場合は「長期譲渡所得」となり、5年以内の場合は「短期譲渡所得」となります。住民税も保有期間に応じて異なりますが、計算式は以下のとおりです。
長期譲渡所得税の税率
譲渡所得税15%+住民税5%+復興特別所得税2.1%(譲渡所得に対して課税)
=20.315%
短期譲渡所得税の税率
譲渡所得税30%+住民税9%+復興特別所得税2.1%(譲渡所得に対して課税)
=39.63%
6-5.⑤測量費用
土地の測量図がない、もしくは古い測量図しかない場合は、売買前に測量することをおすすめします。昔の測量は今ほど精度が高くなかったこともあり、登記簿上の面積と実際の面積に差異がある場合があります。
契約時の面積よりも実際の面積が大きければ問題ありませんが、小さい場合はトラブルになる可能性があります。また境界がない場合はトラブルになる可能性が高いため、隣地との境界を確定する「確定測量」をすることをおすすめします。
確定測量する場合の相場は一般的な住宅地であれば40〜50万円、市区町村の道路や水路に面している場合は50〜60万円、国道に面している場合は特に申請や立会いに時間と労力を必要とするため、60〜80万円が相場です。
6-6.⑥ハウスクリーニング費用
ハウスクリーニングについては必ず必要というわけではありませんが、売り出すときに見栄えをよくしたい場合や、引渡し前にプロの手できれいにしてもらいたいときにかかる費用です。
依頼する先や室内の状況によって費用は異なりますが、一般的な相場は以下のとおりです。ちなみに同じ間取りでも、マンションよりも戸建てのほうが費用が高くなる傾向があります。
間取り | 戸建ての料金相場 | マンションの料金相場 |
2LDK・3DK | 6万円~10万円 | 4.5万円~9万円 |
3LDK・4DK | 7万円~11.6万円 | 5.8万円~10万円 |
4LDLK・5DK | 8万円~13.5万円 | 6.8万円~115,000 |
6-7.⑦引っ越し費用
購入・売却どちらのケースでも引っ越し費用はかかりますが、同じ条件でも引っ越し会社やプラン内容、時期や曜日によっても引っ越し料金は異なります。
引っ越し費用をなるべく抑えたい場合は、平日の時間指定なしプランやなるべく自分で荷造りするなど工夫することによって安く抑えることができます。数社に見積もりして比較するとよいでしょう。
また引っ越し会社に依頼せず、トラックなどレンタカーを借りて引っ越しする方法もあります。
6-8.⑧家財などの処分費用
買主と取り決めた場合は別ですが、基本的には物件を引き渡す前にすべての家財を撤去処分する必要があります。とくに粗大ごみは回収までに時間がかかるケースがあるので、スケジュールを確認しておく必要があります。
万が一粗大ごみの回収などがスケジュール的に間に合わない場合は、粗大ごみ収集所に持ち込むか、場合によって不用品回収業者に依頼する方法もあります。
くれぐれも不用品やゴミの処分が、決済日までに間に合わないようなことがないようにしましょう。
6-9.⑨解体費用
戸建てを更地にして土地として売却する場合は、建物の解体費用がかかります。建物の構造や大きさだけでなく、隣地との接近具合や道路の幅員などによっても作業のしやすさが異なるため費用は異なりますが、一般的な相場は以下のとおりです。
例えば木造の建物で30坪の場合は90〜150万円、鉄骨造の場合は150〜210万円、鉄筋コンクリートの場合は180〜240万円です。
ただし家財が多く残っている場合は追加で費用がかかりますので、なるべく事前に撤去しておくようにしましょう。
建物の構造 | 坪当りの相場(坪当り) |
木造 | 3~5万円/坪 |
鉄骨造 | 5~7万円/坪 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 6~8万円/坪 |
7.不動産売買で仲介手数料が発生しない3つのケース
通常不動産を売却もしくは購入する場合、基本的には仲介手数料はかかりますが、仲介手数料が発生しないケースもあります。ここでは3つの仲介手数料がかからないケースを紹介します。
- 仲介手数料無料の仲介会社に依頼する
- 仲介会社ではなく不動産会社に売却する
- 仲介会社を入れずに個人間で売買する
7-1.仲介手数料無料の仲介会社に依頼する
例えば不動産会社が売主になっている場合は、仲介手数料がかかりません。つまり売主から直接購入する場合は、その売主が不動産会社だったとしても仲介に当たらないため、仲介手数料がかからないということになります。
ほかにも売主もしくは買主から十分な仲介手数料を受領することにより、もう一方へは仲介手数料を無料もしくは半額にするというスタイルの不動産会社もあります。
仲介手数料が無料になる場合は、物件または相手方が限定的になるため、希望する物件が見つからない可能性があります。自分にとって本当に得なのか見極める必要があるでしょう。
7-2.②仲介会社ではなく不動産会社に売却する
物件を売却する場合に不動産会社へ仲介を依頼し、一般の個人に売却するのが一般的な方法であり、その際には仲介手数料がかかります。
例えば不動産会社に買い取ってもらうのであれば、仲介ではないので仲介手数料はかかりません。
しかし不動産会社は再販することを想定して購入する為、買い取り価格は非常にシビアです。仲介手数料は節約できたとしても、個人に売却するよりかなり安くなってしまう可能性があります。
一方で不動産会社による買い取りは現金化が早く、内見希望者にそのたびに立ち会う必要がないのがメリットです。売却を急いでいる人にはおすすめの売却方法といえます。
7-3.③仲介会社を入れずに個人間で売買する
仲介会社(不動産会社)を入れず、個人間で売買であれば仲介手数料はかかりません。ネットなどで調べることができる時代ですから、個人であっても契約書や重要事項説明書などを作成することもできるでしょう。
しかし個人間の売買は想定しないようなトラブルが起きる可能性が高く、仲介する立場がいないため、何かあったときには弁護士などに相談し、解決することになります。
その際には多大な費用がかかることも考えられます。個人間売買は物理的には可能ですが、返って大きな損失が発生することもあり、おすすめできる方法ではありません。
8.仲介手数料以外の税金を抑える方法
これまで解説したとおり仲介手数料を安く抑えるのは難しいかもしれません。しかし条件によっては税金を安く抑えることができます。
ここからは不動産売買にともなう税金が安くなるパターンを紹介します。
- マイホームを売ったときの3,000万円控除
- 所有期間が5年を超える物件を売却する
- 所有期間が10年を超える物件を売却する
- マイホーム売却の譲渡損失で所得税・住民税を節税する
8-1.マイホームを売ったときの3,000万円控除
不動産を譲渡して所得(利益)が発生した場合には、不動産譲渡税がかかりますが、マイホームを売却した際には、この所得から3,000万円控除することができます。以下の計算式の「特別控除額」がこれに当たります。
「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額」
この計算式で課税譲渡所得がゼロになった場合は、譲渡所得税はかかりません。しかし自動的に控除される訳ではありません。
この特例の適用を受けるためには、売却した翌年に確定申告をすることが必要ですので、忘れずに申告するようにしましょう。
8-2.所有期間が5年を超える物件を売却する
仲介手数料以外にかかる費用のところでも説明しましたが、不動産譲渡所得税は所有期間によって税率が異なります。
所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得になります。長期の場合は課税長期譲渡所得金額に対して15%の税率ですが、短期の場合は30%ですので倍の税率になります。
つまり長期譲渡所得になる時期を待って売却すれば、不動産譲渡所得税は半分に抑えることができますので、数日の違いが大きな税額の違いを生むかもしれません。
ただし単なる所有期間ではなく、その売却した年の1月1日現在で5年を超える必要がありますのでご注意ください。
8-3.所有期間が10年を超える物件を売却する
所有期間が5年を超える場合の税率は15%ですが、所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合は更に軽減税率が適用され、6,000万円以下の部分については税率が10%になり、6,000万円を超える部分は15%として計算し合算します。
ここでいう「所有期間10年」も売却した年の1月1日現在で10年を超える必要があり、マイホーム限定の軽減措置です。
マイホームの買換えや交換の特例とは併用できませんが、マイホームを売ったときの3,000万円控除とは重ねて受けることができます。
課税長期譲渡所得金額(=A) | 税額の計算式 |
6,000万円以下 | A×10% |
6,000万円超 | (A-6,000万円)×15%+600万円 |
8-4.マイホーム売却の譲渡損失で所得税・住民税を節税する
マイホームを買換えする場合において、旧自宅の譲渡によって生じた損失(譲渡損失)がある場合は、その年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。
更にその年で控除しきれなかった譲渡損失は、翌年以降3年以内に繰越して控除(繰越控除)することができます。
この特例を「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といいます。なおこの特例は2023年12月31日にマイホームを売却して、新たに新居を購入した場合に使える特例ですので、期限についてはご注意ください。
9.不動産売買の仲介手数料についてよくある質問
不動産売買の仲介手数料に関する、いまさら聞けないけれど気になる疑問やよくある質問があるのではないでしょうか。ここでは以下の3つについて解説します。
- 仲介手数料に消費税はかかる?
- 売却できなかった時も仲介手数料はかかる?
- 2018年1月からの仲介手数料引き上げはなぜ?
9-1.仲介手数料に消費税はかかる?
日本国内での不動産売買における仲介手数料には、基本的に消費税がかかります。非課税や免税、不課税などに該当する場合は例外となりかかりませんが、通常は消費税はかかると考えるのが自然です。
消費税がかかる理由としては事業者が事業として行うものであり、対価を得て行われるものであるからです。
ちなみに土地は「消費されないもの」という位置づけのため、土地の譲渡や貸付には消費税はかかりません。ちなみに住宅の貸付も同じ概念から、非課税と規定されています。
9-2.売却できなかった時も仲介手数料はかかる?
仲介手数料は成功報酬のため、例えば不動産が売却できなかったときは仲介手数料を支払う必要はありません。ちなみに購入できなかった場合も同様で、物件の紹介など受けていても、仲介手数料はかかりません。
ただし特別に広告を依頼した場合や遠方への出張など、通常の仲介業務を超えた場合はその費用を別途請求される可能性があります。
不動産取引に伴うことであっても不動産会社へ業務を依頼する場合は、費用の有無などを事前に確認するようにしましょう。
9-3.2018年1月からの仲介手数料引き上げはなぜ?
仲介手数料は取引額に応じて異なり、例えば300万円の場合は「300万円×4%+ 2万円=14万円」となります。
しかし2018年1月からは取引額が400万円以下の場合、不動産会社は一率18万円受け取ることができるようになりました。
この背景には昨今問題になっている、空き家や空き地の問題があります。政府には仲介手数料が安いがために不動産会社から敬遠されがちだった、低価格物件の売買を活発にしたいねらいがあります。
10.まとめ
仲介手数料は、不動産取引にかかる経費の中でも大きな割合を占める費用です。無料や半額を売りにしている不動産会社もありますが、その値引きには理由があります。安いからといって安易に飛びつかず、本当に自分にとって本当に得なのか見極める必要があるでしょう。
仲介手数料のほかにも不動産売買には経費や税金がかかります。税金は所有期間によって税率が異なる場合もありますので、売却する時期は慎重に決定したいものです。
またマイホームを売却した場合は、確定申告をすることによって控除を受けることができます。税金の控除や軽減措置は申告しなければ適用になりません。
不動産譲渡所得が発生しない場合でも、売却した翌年に忘れずに申告するようにしましょう。