憧れのマイホームを手に入れたものの、住宅ローンの支払いが思ったよりもきついとお悩みの方は多いです。収入が増えない、貯金ができない、毎日の生活がギリギリなど、苦しい家計の中でローン返済を続けるのは大変。転職や出産などのライフイベントで予期せぬ出費が重なってしまい、当初の計画どおりに返済が進まないこともあるでしょう。
住宅ローンの返済がきついと感じたらできるだけ早めに対策することが重要です。そこでこの記事では「住宅ローンの返済が苦しくなったときの対処法」についてわかりやすく解説します。近年広がりつつある「リースバッグ」や「リバースモーゲージ」などの手法もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
どうしても返済が厳しい場合は思い切ってマイホームの売却を検討してみましょう。高値で売却できるとローンの完済だけでなく、手元にまとまった現金が残るかもしれません。
ソニーグループのSREホールディングスが運営する「おうちクラベル」は大手不動産会社も多数登録する信頼性の高い「不動産一括査定サイト」ですので、マイホームがどれくらいで売れそうか気になる方はぜひ一度ご利用ください。
1.住宅ローンの返済がきつい、苦しい場合の対処法
住宅ローンの返済がきつい場合には必ず家計を圧迫する原因があります。まずは現状の家計を圧迫している費用を見直し、それでも苦しい状況であればローンの返済計画そのものを見直すなどの対策が必要です。
住宅ローンの返済がきつい場合の対処法としては以下の方法が考えられます。
- 毎月の固定費を見直し(家計の見直し)
- 銀行に相談する(返済計画の見直し)
- 住宅ローンの借り換え
- 住宅の買い替え(売却資金でローンを完済する)
順番に説明しましょう。
1-1.毎月の固定費の支出を抑える
まずやるべきことは「家計の見直し」です。現状での生活での支出を減らすことが最も効果的で簡単にできる対処法といえます。特に「固定費」の支出を抑えることが重要です。
毎月の固定費には住宅ローンをはじめ、水道光熱費、保険料、各種のローン(カーローンや教育ローンなど)、携帯料金などの通信費などが含まれます。この中でも節約効果の高い固定費が「保険料」と「通信費」の2つでしょう。
「保険料」に関しては保障内容の重なる保険をいくつも契約していないか確認することをおすすめします。住宅ローン契約と同時に加入する「団体信用生命保険(団信)」は保障範囲が広いため、ほかの保険とカバー範囲が重なりがちです。
「終身保険」や「養老保険」など貯蓄性の高い保険も見直してみましょう。貯蓄性の高い保険は保険料負担が割高傾向にありますので、思い切って「掛け捨て型保険」へ切り替えることも選択肢の1つです。
「通信費」は3大キャリアから格安スマホへの切り替えを検討してみてください。毎月のスマホ料金を半分以下に抑えることができ、通信環境のいい格安スマホを選べば3大キャリアと変わらない通信環境を維持することも可能です。
1-2.銀行に相談する
家計の見直しだけでは苦しい状況を解決できない場合は、住宅ローンの借入先となっている金融機関へ相談してみるとよいでしょう。銀行側としても返済が滞る状況は避けたいため、可能なかぎりの解決策を提案してくれるはずです。
住宅ローンの負担を軽減する代表的な方法には「借入期間の延長」「繰上返済による返済額の軽減」があります。
「借入期間の延長」は毎月の支払額を軽減できる効果的な方法で、場合によっては月々の負担額を万単位で減らすことも可能です。ただし、返済期間が延びる分だけ「金利負担」が増える点には要注意。月々の負担額と金利負担の増加分、返済期間などをトータルに考えてバランスの取れる方法を選択することが大切です。
「繰上返済」はまとまった金を返済することで返済期間を短縮したり月々の負担額を減らしたりする方法です。手元に資金があることが前提となるため、自己資金のないケースでは資金調達方法も含めて検討することになります。
1-3.住宅ローンの借り換えで返済額を低くする
住宅ローンの「借り換え」も返済負担を軽減する方法の1つです。より条件の有利なローンがあるようなら借り換えを検討してみましょう。金利が1%下がるだけでも総返済額で数百万円、月々で数万円単位の負担軽減につながることがあります。
ただし、住宅ローンの「借り換え」は新たにローンを組むことと同じです。最初にローンを組んだときと同じように各種の「手数料」もかかるうえ、あらためて「与信審査」をクリアしなければなりません。同じ銀行の別の住宅ローンに借り換える場合でも再度「与信審査」が実施されます。「借り換え」のほうが一見お得に見えても「手数料」などを含めると大差ないケースもあるため、しっかりと返済計画をシミュレートすることが大事です。
ちなみに住宅ローンの借り換えで返済負担が軽くなる条件は
- 借り換え前後で金利差が1%以上低くなる
- まだ返済する期間が10年以上残っている
- 残高が1,000万以上ある
の3つ。この3つのうちのどれかに当てはまる場合は「借り換え」によって負担を減らせる可能性があります。
1-4.売却資金で住宅ローンを完済する
「家計の見直し」や「ローンの借り換え」を検討しても返済状況がきついままの場合は「住宅の売却」も検討してみましょう。せっかく購入した住宅を手放すのは心苦しいところですが、現状手詰まりの状況を一気に打開できるかもしれません。ローン残債分を上回る値段で売却できればローンを完済できるだけでなく、次のプランへ向けたまとまった資金を手に入れることも可能です。
注意すべきなのは売却益だけではローンを完済できない場合です。基本的に売却できる住宅は「抵当権」の付いていない土地・建物ですので、ローン残債の残る家や土地の売却は難航します。
抵当権付きの土地・建物を売却する場合は「任意売却」を選択することになるでしょう。「任意売却」とは債権者(ローン借入先の金融機関)の了承を得たうえでローン残債のある不動産を売却する方法のこと。債権者(ローン借入先の金融機関)や保証人となる保証会社と交渉したうえで売却許可を取る必要があります。
1-4-1.売却額を知りたい場合、不動産一括査定サイトで査定しよう
所有する家を売りたい場合は、現時点での家の市場価格を正確に知ることが不可欠。よほどの人気物件でもないかぎり、相場とかけ離れた値段で売り出してしまうとなかなか買い手が見つかりません。
不動産の売却相場を手っ取り早く知るには「不動産一括査定サイト」を利用すると便利です。「不動産一括査定サイト」に登録している会社はいずれも不動産販売のプロなので、かなり現実味のある査定額を計算してもらえます。複数の不動産会社からの査定額を比較することで相場感もつかめる点も大きな利点です。
「不動産一括査定サイト」を選ぶ際は優良企業が数多く参加する信頼性の高いサイトを選んでください。「おうちクラベル」はその有力候補の1つです。
「おうちクラベル」はソニーグループで東証プライム上場中の「SREホールディングス」が運営しており、大手を中心に数多くの優良企業が登録しています。不動産会社各社の査定だけでなく、客観的で精度の高い「AI査定」を利用できるのも大きな強みです。「無料の不動産一括査定」と「AI査定」の組み合わせは「おうちクラベル」にしかないサービスとなっていますので、相場価格をじっくり比較検討したい方はぜひご利用ください。
2.住宅ローンがきついとき自宅に住み続けながら資金を得る方法
「家計の見直し」や「住宅ローンの借り換え」、「売却によるローン完済」などは従来からよく知られている方法ですが、近年は新たに「リースバック」や「リバースモーゲージ」といった方法にも注目が集まっています。
この2つの方法は自宅を手放すことなく返済負担を軽減できることで注目されており、老後資金を安定して確保したい世帯を中心に2010年代以降急速に広まっています。
2-1.リースバック
「リースバック」とは現在住んでいる家をリースバック会社に売却し、売却先のリースバック会社と新たにリース契約(賃貸借契約)を結ぶことでそのまま家に住み続けられるサービスです。「セール・アンド・リースバック」とも呼ばれる仕組みで、簡単にいえば家を「持ち家」から「貸家」に変更する仕組みと理解しておきましょう。
2010年くらいから広がり始め、コロナ禍や日本経済の不透明感を背景に市場規模が拡大傾向にあります。自宅を売却することで売却益を得られるうえに「固定資産税」を支払わずにすむこと、売却後は賃料を払えば今までどおり家で生活できるなどが注目され、安定した老後を求める世帯を中心に需要が高まっているようです。
また、ほとんどのリースバック契約では「買戻し」が可能な点も大きなメリット。将来的に資金のめどが立った場合は再び家の所有権を買戻すことができます。住宅ローンの残債があっても契約できるため、ローン返済に苦しむ人にとっても有力な選択肢といえるでしょう。
2-1-1.リースバックのメリット
リースバックのメリットについて簡単に解説します。
メリット1:すぐに現金が手元に入る
リースバックは買い手が決まっているのですぐに売却益が手に入ります。引っ越し費用などの経費もかかりません。
メリット2:そのまま家に住み続けることが可能
リースバックの最大の特徴が、家にそのまま住み続けられる点です。家の売買契約と同時に賃貸借契約(定期借家契約)を結ぶだけですので、生活自体に変更はありません。周囲からも持ち主が変わったことが分かりにくい点もメリットです。
メリット3:固定資産税の支払いがなくなる
固定資産税は不動産の持ち主が負担する費用です。リースバック契約によって「借主」になると、このような固定費を支払う必要がなくなります。マンションだと管理費や修繕積立金の支払いもなくなるので負担減につながるでしょう。
メリット4:将来的に買戻すことが可能
将来的に家を買戻すことが可能です。基本的に買戻しに期限はなく、資金的に余裕ができたタイミングで再び住み慣れた家の所有権を取り戻すことができます。
2-1-2.リースバックのデメリット・注意点
リースバックのデメリットや注意点についてもいくつかあげておきましょう。
デメリット1:売却代金は相場よりも安い
売却価格は相場価格よりも安めになります。およそ相場の7〜8割程度となるケースが多いようです。リースバック会社は利益率を重視しますので、買取り額をできるだけ低く抑えたいと考えます。あまりに低い売却額を提示してきた場合はほかの会社を検討しなければなりません。
デメリット2:リース期間や買戻し期間が永続ではない可能性がある。
リース期間や買戻し特約などは売却先のリースバック会社との契約内容次第です。会社によってはリース期間(賃貸借契約期間)が設定されていることがありますので、契約内容をよく確認しなければなりません。
デメリット3:家賃設定は相場よりも高め
リースバック会社は買取り額と諸経費も含めて利回りが高くなるように家賃設定をします。すでに入居者が決まっている物件ですから、入居者を集めるために周辺の家賃相場を気にする必要がないわけです。したがって、家賃設定自体は周辺地域の相場と比べてやや高め。もちろん売却価格が高ければ高いほど家賃も高くなります。
買戻しの場合も注意が必要で、基本的に買戻し価格は売却費用よりも高くなるのが一般的です。売買にかかる経費や売却利益などを上乗せするため、売却価格の1.1〜1.3倍程度の買戻し価格になることが多いです。
2-2.リバースモーゲージ
「リバースモーゲージ」とは自宅に住み続けながら自宅を担保にお金を借りて、借りたお金を年金がわりとして毎月定期的に受け取る「住宅担保型ローン」のことです。返済はローンの「利息分」だけ支払えばよく、元金を含めた残債については借主が亡くなったときに家を売却処分することで清算します。
基本的に高齢者向け(主に55歳以上から)の貸付制度となっており、通常の住宅ローンと違って最後にまとめて残債分を返済することから「リバース(逆)モーゲージ(抵当権)」と呼ばれます。
「リバースモーゲージ」での負担分は利息分の返済だけですので、通常の住宅ローンと比べると大幅な負担減を実現できます。借入金の使い道に制限はあるものの、自宅のバリアフリー化などのリフォーム工事費用にあてることも可能です。
自宅での生活をつづけながら住宅ローンの返済負担を軽減できるという点で「リースバック」と似ていますが、「リバースモーゲージ」は家の所有権自体を保有したままという点が大きく違います。
また、「リースバック」は売却益として一度にまとまった資金が手に入るのに対し、「リバースモーゲージ」は借入金というかたちで毎月定期的にお金を受け取ります。
2-2-1.リバースモーゲージのメリット
「リバースモーゲージ」にもメリット・デメリットが存在します。まずはメリット面を4つ挙げておきましょう。
メリット1:毎月の返済は利息だけですむ
住宅ローンの返済は「元金+利息分」ですが、リバースモーゲージは「利息分」だけの返済で済みます。特にローン残債が1,000万円以上ある方の場合は返済額が2割程度にまで減額できることもあるようです。
メリット2:借入資金の用途はある程度限られるが自由度は高い
「リバースモーゲージ」の借入金は老後の生活支援を目的としているため、用途はある程度限られます。例えば借入金を事業資金や投機資金に流用するのはNG。ただ生活上必要な用途であれば比較的自由度が高く、住み替え費用やリフォーム費用にあてることは可能です。
メリット3:毎年定額の資金を受取ることが可能
一度に売却資金が入る「リースバック」と違って毎年定額で借入金を受け取ることができます。借入審査自体は比較的緩めで、保証人を立てる必要もありません。
メリット4:契約者が亡くなった場合でも柔軟な清算方法がある
契約者が亡くなったとしてもすぐに清算する必要のない「ノンリコース型」と呼ばれる契約形態もあります。「ノンリコース型」の場合は金利が若干高めになるものの、引き続き同居家族が返済を継続するなどの柔軟な清算方法を選ぶことができます。
2-2-1.リバースモーゲージのデメリット・注意点
リバースモーゲージのデメリット・注意点についても見ていきましょう。
デメリット1:担保価値が下がるリスク
「リバースモーゲージ」を扱う金融機関は担保評価額の50~70%を融資限度額に設定することがほとんどです。そのため、担保価値の変動の影響を受けやすい点には注意したいところ。万が一担保評価額が下がることで融資限度額が借入総額を下回ると、毎月の融資がストップする場合があります。
デメリット2:金利の上昇リスク
リバースモーゲージの貸付け金利は「変動金利」です。経済情勢に大きな変動があれば月々の返済額が変わるリスクがあります。特にリバースモーゲージは金利分を返済するタイプのローンですので、金利変動による返済額への影響は大きいです。
デメリット3:団体信用生命保険を利用できない
リバースモーゲージは「団体信用生命保険(団信)」の対象外です。新たに生命保険や医療保険への加入を検討する必要もあるため、保険料負担が増えることも考えなければなりません。
デメリット4:想定より長生きすると契約期限を迎えることもある
金融機関によりますが、長期返済のリスクを避けるために契約期限が設定されることがあります。契約期限を超えて長生きした場合、期限到来時にローン残債分を一括返済しなければならないケースもあるようです。
3.住宅ローンの返済を滞納したらどうなるのか?
住宅ローンの返済を滞納したままだとどのような不都合が生じるのでしょうか?主に以下のような事態が起こると考えられます。
- ブラックリストに登録されてしまう
- 銀行口座が凍結される
- マイホームが差し押さえられ、競売に掛けられてしまう
いずれも生活に重大な支障をきたすため、返済の滞納が起こらないうちに早めに手を打つことが大切です。
3-1.3ヶ月以上滞納するとブラックリストに登録
「ブラックリスト」とは「貸付けを行ってはいけない顧客リスト」のこと。現在日本にある3つの「指定信用調査機関」がデータベースに登録し、各金融機関の間で情報が共有されています。
住宅ローンの滞納でブラックリストに載るのは主に以下の2つのタイミングです。
- 返済の滞納期間が3ヶ月以上になったとき
- 「差押え」手続きに入ったとき(保証会社が代位弁済を実行したとき)
ブラックリストに登録されてしまうと原則として登録から5年間保存されます。登録された側が勝手にリストを消去することはできません。リストに載っている間は新たにクレジットカードを作れないなどのペナルティが続きます。もちろん、住宅ローンの借り換えなどの新たな借入れも難しくなるでしょう。
3-2.銀行口座の凍結
住宅ローンを長期間滞納したまま放置すると、銀行側は借入人名義の銀行口座を凍結します。銀行口座の預金残高とローン残債分を相殺するためです。銀行口座が凍結された段階ですでに保証会社による「差押え」が始まっていることがほとんどで、通常1〜2ヶ月は口座から出金できません。生活基盤の中心となる銀行口座を凍結されると、給料が引き出せない、公共料金の支払いができないといった重大な支障をきたします。もちろんATMなどで残高確認することもできません。
さらに銀行の判断次第では出金だけでなく入金停止となる可能性があります。入金停止で困るのが給与の振り込みです。給与の入金ができないことをきっかけにローン滞納の事実が勤務先にばれてしまうかもしれません。同じ銀行で複数の銀行口座を持っている場合はすべての銀行口座を凍結されてしまうことも考えられます。
3-3.最終的に競売にかけられて立ち退きを命じられる
住宅ローンの滞納を3ヶ月以上続けると「督促状」と「期限の利益の喪失予告通知」が送られてきます。まず滞納してから1~2ヶ月経過後に金融機関などから送付されるのが「督促状」です。これは「返済が滞っているので、至急お支払いください」という内容の催促通知。法的拘束のある書面ではありませんが、債権者(金融機関)側からの重大な警告と考えたほうがよいでしょう。それでも速やかに返済手続きをとらなかった場合、2つ目の「期限の利益の喪失予告通知」が送付されます。
「期限の利益の喪失」とは数十年かけてローンを返済できる返済猶予期間(期限の利益)が失われることを意味します。要するに「期限の利益」を失うとローン残債を一括返済しなくてはならないということ。ローン滞納中の借入人が一括返済することは不可能ですから、この書面が送付された段階で「競売」や「任意売却」に向けた手続きが始まったとみるべきです。
特に避けたいのが裁判所主導の「競売」による立ち退きです。「競売」にかかると自宅を差し押えられてしまい、相場よりかなり安い値段で売却されてしまいます。裁判所が手続きを始める前に債権者(保証会社)の合意を取りつけ、自分で売却(任意売却)した方がよいでしょう。
4.住宅ローンがきついと感じた体験談の中で多い理由は?
住宅ローンの支払いがきつくなる体験談に多い典型例をまとめると、次のようなパターンが見られます。
- 住宅ローン返済分以外の費用を計算に入れていなかった
- 転職や所属先の経営悪化などで、手取り収入が下がってしまった
- 定年後の年金生活だけでは返済が厳しくなってしまった
具体的にどのような点で返済が厳しくなるのかを解説しましょう。
4-1.住宅ローン以外にかかる費用を考えていなかった
住宅ローンの返済が想定よりきつくなる最大の理由が「住宅ローン以外にかかる経費を計算に入れていない」ことにあります。住宅ローン返済分だけに注目すると無理のない計画に見えても、実際の生活では様々なランニングコストがかかってくるものです。
例えば「税金」。特に「固定資産税」と「都市計画税」は毎年課税される税金です。「固定資産税」は基本的に「建物の課税標準額×税率」で計算します。土地に関しては結果的に非課税となるパターンが多いです。
仮に建物の課税標準額を2,000万円とすると、税率は1.4%ほどなので固定資産税額は年28万円(軽減措置がない場合)。月額で約2万3,000円となりますからローン返済分と合わせるとなかなか重い負担です。さらに「火災保険料」などの各種保険料を合わせると、ローン以外の負担分だけで毎月数万円はかかるでしょう。
建物の維持管理費用も必要です。マンションの場合は「管理費」と「修繕積立金」を支払います。特に「修繕積立金」は築年数の古いマンションではかなり高額になる傾向です。駐車場代などを含めると毎月数万円の負担増となることも少なくありません。
一戸建ての場合も10年、20年と住み続けるとどうしても劣化部分が出てきます。壁紙のリフォームや水回りの設備交換などは100万円近くかかることも多いため、いざというときに備えて修繕費用を積み立てておく必要があるでしょう。
このほかにも子どもの誕生や車の買い替えなど、思わぬところで出費は重なるもの。あらかじめローンの返済以外にかかる費用も想定したうえで返済計画を立てておかないと、想像以上に苦しい家計のやりくりとなります。
4-2.手取り収入が急に変わってしまった
住宅ローンの返済は数十年続きます。完済まで先は長く、家の購入時に描いていたプランどおりに進むとはかぎりません。事実、2020年以降の新型コロナウイルスの流行によって収入減や転職を余儀なくされた人は増えました。収入減によってローン返済が苦しくなった人も少なくないようです。
住宅ローン返済が滞ると家計を圧迫するだけでなく、銀行口座の凍結や差押えなどの重大な事態を招きかねません。いざというときに全く手持ち資金がない状態は危険ですから、多少は余裕のある返済計画を立てて自己資金をためておくことが重要です。
将来的な収入増やボーナス払い頼りの返済計画も少々リスキーです。これから先ずっと、安定した収入や一定のボーナスが支払われる保証はないからです。特にボーナス払いありきの返済計画を立てていると、ボーナスが途切れた途端に月々の返済額が増えて生活が苦しくなってしまいます。将来の収入増に頼った返済計画は一度見直してみたほうがよいでしょう。
4-3.定年後の返済が厳しい
住宅ローン完済時期を定年後に設定されている人の多くが老後の生活のやりくりに苦労されているようです。40代以降に住宅ローンを組む人も増えていますが、仮に70歳定年まで働けたとしても定年後数年間ローンが残ります。
退職後は契約社員やパート・アルバイトでの収入となるため、手取り収入が減ることがほとんど。現役世代と同じペースでの返済はかなり厳しいでしょう。さらに定年が近づくにつれて、打てる手が少なくなる現実があります。定年間際の段階で、返済期間の延長やローンの借り換えなどを相談しても、金融機関はなかなか希望に応じてくれません。
定年後のローン返済で多くの方が頼りにするのが「退職金」です。しかし、仮に退職金でローンを完済できたとしても、その後の生活費用を年金収入だけでやりくりするのはかなり大変です。会社の倒産や転職などで、期待どおりの退職金が得られない事態も考えられます。
このように定年後に住宅ローンが残ると、かなり苦しい家計になることは認識しておくべきです。定年後に完済予定の方は、収入のあるうちに資金の積立てや、繰上げ返済などの対策を考えることが大切。特に「期間短縮型」の繰り上げ返済は定年後にローンを残さない方法として効果的なので、ぜひ検討してみましょう。
5.住宅ローンがきついと感じないための、手取りに対する返済額の目安は?
住宅ローンの返済で困らないようにするためには「無理のない返済計画」を立てることが重要です。では「無理のない返済計画」を立てるにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
「無理のない返済額」の判断基準となるのは
- 借入可能上限額
- 返済負担率
の2つです。2つの指標について解説しましょう。
5-1.借入可能上限額の目安は?
住宅ローンの借入可能額は、借入れを申し込む人の年収、家の購入価格に対する借入額の割合(融資率)、対象物件の担保価値や返済負担率など、多くの要素を元に決定されます。
これらの要素を考慮したうえで「借入可能額」は以下の数式で計算します。
借入可能額=(年間返済額の上限額)÷12ヶ月÷(100万円当たりの月返済額)×100万円
「100万円当たりの月返済額」は「返済早見表」という図表で確認できます。金利と返済期間、返済方法(元利均等返済・元金均等返済)から導き出される整数値の金額です。「返済早見表」は各金融機関のHPなどでも公開されているので一度調べてみてください。
「年間返済上限額」は借入人の年収や経済状況から導き出す返済上限額のことです。自分で計算してみる場合は無理なく返済できる金額を設定して計算してみましょう。
一例として次のような事例で計算してみます。
(計算例)
- 年間返済額上限:120万円(月10万円返済と仮定)
- 元利均等返済
- 借入期間:35年
- 金利:4.0%
この事例では「100万円当たりの月返済額」が4,428円です。なお金利は4.0%と高めに設定していますが、これは金融機関が与信審査するときに使う「審査金利」を想定した数字となっています。「審査金利」は実際の住宅ローンよりも高めの3〜4%前後で設定する金融機関が多く、借入れシミュレーションでも3〜4%前後で計算するのが一般的です。
以上の条件から借入可能額を計算してみましょう。
(計算結果)
借入可能額=120万円÷12ヶ月÷4,428×100万円=約2,258万円
この事例では約2,258万円が借入可能上限額とわかります。あくまでも概算値ではありますが、借入可能額を簡単に導き出せる便利な計算式です。借入可能額を超えた借入れは無理な返済計画につながると判断できます。
5-2.返済負担率は25%以下にしよう
「返済負担率」とは額面の年収に対する年間のローン返済額の割合です。住宅ローンだけでなくカーローンや教育ローン、カードローンなどの全ての借入れを合計して計算します。クレジットカードの返済金などももちろん含まれます。
ほぼすべての金融機関では「返済負担率」を与信審査の項目として重視しており、一般的に返済負担率35%以内が融資実行の基準です。しかし、実際には返済負担率30~35%台だと家計的な余裕がないことがほとんど。無理のない返済ペースを保つには返済負担率25%以下に抑えることが望ましいです。
返済負担率の計算式自体は以下のとおりで、比較的簡単です。
返済負担率=年間の返済金額(合計)÷額面の年収×100
例えば年収500万円(額面)の人で年間返済額120万円(月10万円と想定、ボーナス払いなし)と想定しましょう。すると返済負担率は
返済負担率(%)=120万円÷500万円×100=24%
となり、比較的無理のない返済ペースということがわかります。先ほど解説した「借入可能上限額」と合わせて、シミュレーションサイトなどで計算してみてください。
住宅ローンがきついと感じたら売却を視野に入れよう
今回の記事では、住宅ローンの返済がきつくなる理由や対処法について解説しました。もともと住宅ローン以外にかかる費用を計算に入れていなかったり、転職やライフイベント、予期せぬ収入減などによって、当初の返済計画に狂いが生じたりといった原因で返済が苦しくなるパターンが多いようです。
住宅ローンの借り換えや返済期限の延長、リースバックやリバースモーゲージなど、様々な対処方法がありますが、どうしても解決方法が見つからない場合は住宅の売却を検討してみましょう。
せっかく手に入れた家を売却するのは心苦しいかもしれませんが、うまく売却できれば重い返済負担から解放される可能性があります。もし高く買ってくれる相手が見つかればローン完済後にまとまった資金が残るかもしれません。
売却を検討する場合はできるだけ「高値」で売ることが何よりも重要です。その第一歩は正確な「相場価格」をつかむこと。まずは売却相場を知ることのできる「不動産一括査定サイト」を利用して複数の不動産会社から査定額を出してもらいましょう。
ソニーグループのSREホールディングスが運営する「おうちクラベル」は、信頼度の高い複数の不動産会社に一括査定を申し込めるので、現実的な査定額を把握するのに役立ちます。不動産会社からの査定に加えて、より客観的な指標となる「AI査定」も用意されているので、正確な査定評価額をじっくり比較検討したい方はぜひ一度「おうちクラベル」をご利用ください。